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グランプリ・北京2017

観戦記事

第9回戦:Yin, Xin(中国) vs. 熊谷 陸(宮城)

By Kazuki Watanabe

 第9回戦。いや、初日最終戦と言うべきであろう。


イン・シン/Yin, Xin(写真左) vs. 熊谷 陸(写真右)

 この卓に座るのは、イン・シン/Yin, Xinと熊谷 陸。両者、無敗でここまでの8回戦を勝ち上がり、初日全勝を賭けた一戦だ。

 両者言葉少なく挨拶を交わし、デッキをシャッフル。試合開始の合図が、英語、そして中国語で告げられる。

ゲーム1

 熊谷は《扇持ち》。インは《砂丘甲虫》からゲームがスタート。

 熊谷が《扇持ち》でアタック。そして《試練に臨むギデオン》をプレイする。

 ここから《試練に臨むギデオン》が熊谷が挑む「初日全勝」という試練の手助けを行う。

 インが繰り出す《不毛地の蠍》《ホネツツキ》《魂刺し》といったクリーチャーの攻撃を軽減しながら熊谷のクリーチャーを守り続ける。インも《試練に臨むギデオン》を沈めることに全戦力を投入するため、熊谷のライフは微動だにしない。

 その間、熊谷は《結束の試練》で全軍を強化し、相手の攻撃に合わせて《飛びかかるチーター》を唱えてブロック。さらに《採石場の運び屋》を戦線に加えていく。《試練に臨むギデオン》も攻撃に参加し、インのライフを大きく削っていく。

 《試練に臨むギデオン》の能力で相手のブロッカーからのダメージを軽減しながら、攻撃を繰り広げる熊谷。このまま《試練に臨むギデオン》とともに勝利を掴むかと思われたが、インが《砂時計の侍臣》をサイクリングして《不毛地の蠍》をアンタップ。接死で戦力を削ると、《ホネツツキ》で飛行戦力を増強。そのまま、《試練に臨むギデオン》を墓地へと沈める。


熊谷 陸

 頼りになるプレインズウォーカーを失った熊谷は《突風歩き》を追加。ところがこれも《釣りドレイク》で戻されてしまう。

 熊谷は落ち着いて《仕える者たち》、次のターンに《アン一門の勇者》を追加。対するインは《エイヴンの修練者》《ター一門の散兵》を唱えてクリーチャーは4体。さらに、《ヘクマの歩哨》《呪われたミノタウルス》を追加してクリーチャーは6体!

 熊谷、万事休すか。インが圧倒的戦力の中から選び抜き、《エイヴンの修練者》と《ホネツツキ》で攻撃を仕掛ける。

 熊谷は落ち着きながらも手早く、自身のメモにライフを記す。14

 このゲーム初めてのダメージ。《試練に臨むギデオン》は戦場から姿を消したものの、存分に熊谷を助けた。その証拠に、インのライフはわずか3まで減少しているのだ。

 残る3点を削るために、熊谷は慎重に攻撃を繰り返す。14点のライフも気を抜けば削りきられてしまうだろうが、それでも精神的な負担は文字どおり桁違いだ。ここでは落ち着いて《アン一門の勇者》を「督励」しつつ《仕える者たち》で攻撃。インは悩みながらブロックを考える。

 そして《アン一門の勇者》に唱えられる《蜘蛛の掌握》。ブロックに参加していた《釣りドレイク》と《ター一門の散兵》を沈める。続くターンも2体で攻撃を仕掛け、《ホネツツキ》と《エイヴンの修練者》を除去。自身も《アン一門の勇者》と《仕える者たち》を失ってしまうが、《巨大百足》を戦場に送り出す。3点を削るには十分な戦力だ。

 インはひるまずに《エイヴンの修練者》を「不朽」。さらに次のターン、《象形の守り手》を唱えて残りライフを守りきろうとするが、それ以降の戦力は続かず。熊谷が《ター一門の精鋭》、そして《束縛のミイラ》と戦力を追加したところで、一度大きく頷いてから土地を畳んだ。

イン 0-1 熊谷

 素早く土地を畳んだインはそのままシャッフル。深く息をついてから、デッキを机に差し出した。

 対する熊谷はデッキケースに手を伸ばすと、スリーブに入ったカードを取り出し、入念にサイドボーディングを始める。入れ替えている枚数の多さから、色を入れ替えていることは間違いない。

 シールドデッキは、与えられたカードプールの中から「どの色を選ぶか」という段階からゲームが始まっている。同じプールでも、組み合わせが変われば異なるゲーム展開が起こり、まったく違った結果が待っている。

 ゲーム1では、熊谷は白と緑のカードを余すことなく活用し、見事に勝利を掴み取った。果たして、ゲーム2はどのような色の組み合わせ......色彩を見せてくれるのだろう。

ゲーム2

 両者キープを選択。インが《古代ガニ》を唱えてターンを返すと、熊谷は《平地》を2枚並べてターンを返す。

 そして、3ターン目、熊谷が手札から並べた土地は......《》。そして《アン一門の壊し屋》を唱え、「督励」しながら速攻!

 新たな色を目の当たりにしたインは《ナーガの神託者》を出してターンエンド。

 熊谷は順調にクリーチャーを続けて展開していく。熊谷は《ター一門の精鋭》、さらに《ター一門の精鋭》《扇持ち》と並べて戦力は十分。


イン・シン/Yin, Xin

 対するインは《エイヴンの修練者》。さらに《大水》で《ター一門の精鋭》2体を戻して展開を巻き戻す。熊谷は落ち着いて、再度《ター一門の精鋭》を唱えた。

 ここから《扇持ち》の能力が活躍する。毎ターン、《エイヴンの修練者》をタップし相手の攻撃を緩めていく。インが《魂刺し》を唱えても、その動きは変わることがない。手札に舞い戻った《ター一門の精鋭》を再び戦場に降り立たせて、相手のライフを削り始める。

 インは《砂の撹拌》で地上を固めるものの、熊谷の飛行戦力の前では腐敗した眼で上空を見上げるのみ。《叱責の風》で戦力を削るものの、相手の攻勢をわずかに緩めるのみ。

 熊谷の攻撃が終わり、両者はライフメモに手を伸ばす。そこに記された数字は......3点。またもや、わずか3点を巡る争いとなった。


 とはいえ、ゲーム1と違い、ゲーム2の終幕はあっさりと、その数秒後に訪れた。ゲーム1にはなかった要素、つまり、サイドボードによって加えられた色彩が、ゲームに終止符を打ったのだ。

 このゲーム、最初に戦場に降り立った《アン一門の壊し屋》を《投げ飛ばし》たことで、熊谷の試練は終わった。

イン 0-2 熊谷


 試練を終えた熊谷に「初日全勝、おめでとうございます」と伝えると、少し気恥ずかしそうにしながら「ありがとうございます」と答えてくれた。短い時間ではあったが、今日一日の対戦と、構築を振り返る会話をさせていただき、最後に「明日の目標は?」と問いかけると、再び照れくさそうにしながらも、力強い言葉で答えてくれた。

熊谷「6-0を目指します」

r9_kumagai_winner.jpg

熊谷 陸、初日全勝! おめでとう!

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