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グランプリ・千葉2015

観戦記事

第11回戦:岡田 渉(東京) vs. Suh Jae-Yong(韓国)

By 矢吹 哲也

 グランプリ・千葉2015の2日目を迎えた幕張メッセに足を踏み入れると、異様な静けさを感じた。会場内は、本戦開始を待つ者やサイドイベントに興じる者、バイヤー・ブースをめぐる者、フリー・スペースで友人と(あるいはグランプリで出会った人と?)ドラフトや構築戦を楽しむ者などで賑わっているにも関わらずだ。

 その静けさの正体、それは会場内の人数の圧倒的な差だった。2日目の本戦に残ったプレイヤー数は、379人。かなりの人数と言えるだろう。トップ8を目指す戦いは過酷なものになるはずだ。しかし、379人。昨日、この会場には3,551人もの本戦参加者で溢れていた。このグランプリ史上に残る大型大会は、その競技者をおよそ1/10まで減じているのだ。

 今この2日目に残る379人は、「10人にひとりの達人」。彼らはここからさらに「およそ440人にひとりの達人」となるトップ8を目指し、そして「3,662人の頂点」を目指す。

 初日全勝を果たした岡田 渉は、2日目第1ドラフトの1回戦を引き分けで終え、「まだ負けてはいない」状況。強力な白黒のスピリット・デッキをドラフトした彼としては、しっかり勝利を重ねていきたい。

 一方のソウ・ジェイユン/Suh Jae-Yongは、韓国出身のマジック・プレイヤー。「1年に必ず1回は日本に来る」と語る彼は日本語で岡田と試合前の雑談を楽しみ、筆者にも名前の読み方を丁寧に教えてくれた。彼のドラフト・デッキも赤緑の強力な仕上がりで、初日を8勝1分けで抜けた後の2日目第1ドラフト1戦目を勝利で飾り、岡田の戦績と並んでいる。


岡田 渉(白黒スピリット) vs. ソウ・ジェイユン(赤緑)

ゲーム展開

 互いに2ターン目にクリーチャーを展開し、白黒スピリットの岡田と赤緑のソウの試合が始まった。岡田は3ターン目に《希望の盗人》を追加すると、続くターンに《遥か忘れられし御幣》。岡田のスピリットたちが強化され、さらなるスピリット展開がソウを悩ませる。

 しかし、《細胞質の根の血族》を展開した次のターン、ソウは《大竜巻》を放つ。X=3で撃たれたそれは、岡田の盤面を一掃し形勢を逆転させた。「みんな《大竜巻》持ってるなあ。さっきなんか3回も撃たれましたよ」と苦い顔の岡田。

 そこからはソウの強烈な攻勢が岡田を襲った。ソウは《ゴブリンの投火師》2枚から《コジレックの捕食者》で一気に盤面の展開を進めると、《ゴブリンの投火師》でじっくりと岡田のライフを焼いていく......

......かと思いきや、返しのターンにフル・アタック。やや早急にも思えたこの攻撃だが、《急報》の兵士トークンも含めて全軍でブロックに入った岡田のライフは削られ、残り7点まで落ち込んだ。

 《希望の盗人》を展開し、耐える岡田。しかしその返しのターンにソウの手札から現れたのは、《鏡割りのキキジキ》! モダン構築でも採用されるこの強力なレアが、《細胞質の根の血族》のコピーを生み出し、岡田に対して強烈な時間制限をかけた。岡田は《細胞質の根の血族》本体をスピリット2体でブロックしこれを討ち取るが、これで残りライフは3。

 それでも岡田は展開を止めず《小走りの死神》を繰り出し、ライフを1点吸収。4点と心許ないライフを削り切られる手段をソウが引かぬよう、祈るように手を合わせた。

 が、ソウのトップは《噴出の稲妻》。すぐさまキッカー込みで放たれたその一撃に対し、岡田は――

 「秘儀」呪文を唱えたことで《希望の盗人》のドレイン能力が誘発し、ライフを1点残した。一方のソウは《細胞質の根の血族》を失ったことで、《鏡割りのキキジキ》の能力を活かせない。その後の引きも芳しくないソウは、やがて岡田のスピリット軍団に押し込まれていくのだった。


長いゲームにも集中を切らさず、綱を渡り切った岡田。

 長い戦いを終えて2ゲーム目、岡田はマリガン・スタート。だが1ゲーム目に時間がかかったため不運を嘆く暇はない。1枚ずつテーブルにこすりつけるようにして引いた6枚にも天を仰ぐが、「さっきよりはマシになったんでやります」とキープを宣言。

 動き出しはソウの1ターン目《ゴブリンの投火師》。さらに《ヴィーアシーノの殺戮士》を続けるものの、岡田の《蝋鬣の獏》をはじめとしたスピリットたちを前に思うように攻勢に出られない。

 ソウは「招集」を活かし早い段階で《カヴーの上等王》を「キッカー」込みで召喚するものの、《蝋鬣の獏》の能力で攻撃は阻まれた。一方の岡田も《月明かりの徘徊者》、《遥か忘れられし御幣》と続けて展開し、盤面を築いていく。

 そのターンの終わりに《噴出の稲妻》で《蝋鬣の獏》を1体除去したソウは、ようやく《カヴーの上等王》で攻撃を始めた。ブロックを吟味した岡田はこれを全軍で止めにかかるが、しかし、ソウの手札から放たれた《焼却》により岡田は《月明かりの徘徊者》を生け贄に捧げざるを得なくなり、この戦闘で岡田の盤面にはプロテクションで守られた《蝋鬣の獏》1体が残るのみとなった。


屈強なクリーチャーと火力で古き良きビート・ダウンを進めるソウ

 ソウは「狂喜」した《血のオーガ》で攻撃を続け、展開を続ける。さらに岡田の《不退転の大天使》にも《苦悩火》を差し向けるが、岡田はこれを《使徒の祝福》で守り意地を見せた。

 両者とも一歩も引かず手札と盤面を消耗し一進一退の攻防を続けたこの試合、ソウがようやく優位を確定させたところで、無情にも時間切れを告げるジャッジの声が届いた。

 1勝を取っている岡田は延長ターンになんとか勝利の道を探るが、しかしこの盤面を返す手立てはなし。初日を全勝で飾った彼だが、2日目の第一ドラフト2連続引き分けという苦難の道を歩むことになったのだった。

岡田 1-1 ソウ

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