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【戦略記事】 デッキテク:「ミラクルマスター」たちの競演

【戦略記事】 デッキテク:「ミラクルマスター」たちの競演

by Masashi Koyama

 レガシー現環境本命デッキと目される奇跡コントロール。『アヴァシンの帰還』発売時の2012年から存在するデッキタイプということもあり、グランプリ・千葉2016でも間違いなく多くの使用者がいることだろう。

 だが、長きに渡って存在するデッキタイプとは言え、奇跡コントロールを「極める」ということは非常に難しい。何せ、レガシーは一部を除きマジック発売当初からのカードがほぼ全て使用できる環境であり、まさに多種多様なデッキが存在する。それらに対し、コントロールデッキという特性上、奇跡デッキは常に適切にプレイし、迫りくる脅威を対処しなければいけない。

 だが、その「適切に」ということがあまりにも難しいのだ。なにせ、一般的な奇跡コントロールでは1マナ域のカードだけで、《渦まく知識/Brainstorm(5ED)》《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top(CHK)》《思案/Ponder(LRW)》《剣を鍬に/Swords to Plowshares(ICE)》といった複数のカードがあり、さらに《渦まく知識/Brainstorm(5ED)》や《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top(CHK)》《思案/Ponder(LRW)》でのカードの取捨選択などを鑑みれば、無数にプレイの選択肢がある。ゆえに、奇跡コントロールは正しいプレイにたどり着くことが想像以上に難易度の高いデッキなのだ。

 そんなプレイの難しい奇跡コントロールではあるが、このデッキを使い込み、「ミラクル(=奇跡)マスター」として知られるプレイヤーたちがいる。

斉藤伸夫(東京)
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クリストファー・ジョー・ロセット/Christpher Joe Lossett(アメリカ)
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ヴァレンティン・マックル/Valentin Mackl(オーストリア)
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 国は違えど日米欧それぞれで自らの奇跡コントロールを磨き、「ミラクル=奇跡マスター」と呼ばれるまでに熟練した3人がグランプリ・千葉で揃い踏みとなった。

 本記事ではこの3人にインタビューをお願いし、それぞれの奇跡コントロールの差異を取り上げてみよう。

斉藤伸夫の奇跡コントロール

 斉藤は友人たちと7名の奇跡コントロールの調整チームを組み、時にはチーム合計で1か月500マッチもの試合をこなし、このグランプリに備えてきた。

 奇跡コントロールは《師範の占い独楽/Sensei's Divining Top(CHK)》《相殺/Counterbalance(CSP)》に代表される固定スロットが非常に多く、数枚ずつのクリーチャーとスペルのフリースロットが調整の鍵となっている。

 斉藤はエルドラージとデス&タックス、そして奇跡コントロールのミラーマッチを念頭に調整を重ねてきたようだ。

斉藤 伸夫 - 「奇跡コントロール」
グランプリ・千葉2016 / レガシー (2016年11月26~27日)
4 《島》
2 《平地》
1 《山》
3 《Tundra》
1 《Volcanic Island》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《沸騰する小湖》
2 《乾燥台地》

-土地(21)-

2 《瞬唱の魔道士》
1 《ヴェンディリオン三人衆》

-クリーチャー(3)-
4 《師範の占い独楽》
4 《渦まく知識》
3 《思案》
3 《剣を鍬に》
1 《呪文嵌め》
1 《仕組まれた爆薬》
4 《相殺》
2 《予報》
1 《対抗呪文》
1 《議会の採決》
4 《意志の力》
4 《終末》
2 《天使への願い》
3 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文(37)-
1 《封じ込める僧侶》
1 《僧院の導師》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
3 《狼狽の嵐》
2 《紅蓮破》
1 《赤霊破》
1 《外科的摘出》
1 《仕組まれた爆薬》
2 《基本に帰れ》
1 《罠の橋》
1 《摩耗+損耗》

-サイドボード(15)-

 なんと61枚デッキ!

 斉藤によると、デッキバランスの都合上、土地は21枚のスロットが不可欠であり、40枚のスペルから1枚減らすことを検討したが、どうしても抜くべきカードが見つからなかったのことだ。

斉藤「メインデッキから《剣を鍬に/Swords to Plowshares(ICE)》を3枚にして《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives(5DN)》を採用しているのは《虚空の杯/Chalice of the Void(MRD)》のためで、《呪文嵌め/Spell Snare(DIS)》はミラーマッチのため採用しています。《相殺/Counterbalance(CSP)》《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage(ISD)》をカウンターできるので。他のデッキ相手でも例えばエルドラージであればX=1の《虚空の杯/Chalice of the Void(MRD)》、デス&タックスであれば《スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben(DKA)》と《ファイレクシアの破棄者/Phyrexian Revoker(M15)》、続唱スゥルタイであれば《悪意の大梟/Baleful Strix(C13)》など、対象にできる呪文が多く、腐りにくいカウンター呪文です」

 普通であれば何も考えず4枚採用しそうな《剣を鍬に/Swords to Plowshares(ICE)》を3枚のみにとどめているのは《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives(5DN)》と《議会の採決/Council's Judgment(CNS)》で代用できるという考えからだ。1枚刺しの《呪文嵌め/Spell Snare(DIS)》とともに丹念な調整が光る構成だ。

 《予報/Predict(ODY)》は不要牌を処理しながら2枚ドローが可能なカードで、実質的には3枚ドローに近いアドバンテージを得ることができるという。特にミラーマッチでは軽いドローカードとして重宝することになりそうだ。

 サイドボードには土地対策として《基本に帰れ/Back to Basics(USG)》が採用されている。

 奇跡コントロールでよく見られる《血染めの月/Blood Moon(9ED)》と比較すると、例えばエルドラージが相手であれば土地を並べられ《全ては塵/All Is Dust(ROE)》で対処されてしまうこともあるため、《基本に帰れ/Back to Basics(USG)》をに落ち着いたという。

 また、意外だったのがデス&タックスを相手にしても《基本に帰れ/Back to Basics(USG)》を投入するということだ。

斉藤「サイド後は《霊気の薬瓶/AEther Vial(DST)》を対処できるカードが4枚あるので、対処後に蓋をするためですね。実はデス&タックスは《リシャーダの港/Rishadan Port(MMQ)》や《魂の洞窟/Cavern of Souls(AVR)》などを多く採用していて、《平地/Plains(ROE)》は7〜8枚しか採用されていないので」

 確かに、そう聞くと納得である。それにしても、《剣を鍬に/Swords to Plowshares(ICE)》の減量といい、斉藤たちのやり込み具合には恐れ入るばかりだ。


 さて、ここまで斉藤伸夫と彼の仲間が作り上げた奇跡デッキをご紹介した。

 次はアメリカのロセットのデッキについて見てみよう。

クリストファー・ジョー・ロセット

 アメリカ随一の奇跡コントロールの使い手として名高いロセット。彼が本グランプリに持ち込んだデッキリストが以下だ。

Christpher Joe Lossett - 「奇跡コントロール」
グランプリ・千葉2016 / レガシー (2016年11月26~27日)
4 《島》
2 《平地》
2 《Tundra》
2 《Volcanic Island》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《沸騰する小湖》
1 《乾燥台地》
2 《カラカス》
1 《魂の洞窟》

-土地(22)-

3 《瞬唱の魔道士》
3 《ヴェンディリオン三人衆》
2 《造物の学者、ヴェンセール》

-クリーチャー(8)-
4 《師範の占い独楽》
4 《渦まく知識》
2 《思案》
3 《剣を鍬に》
2 《呪文嵌め》
4 《相殺》
3 《意志の力》
4 《終末》
2 《天使への願い》
2 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文(30)-
3 《狼狽の嵐》
2 《仕組まれた爆薬》
2 《赤霊破》
2 《外科的摘出》
1 《紅蓮破》
2 《基本に帰れ》
2 《Moat》
1 《摩耗+損耗》

-サイドボード(15)-

 真っ先に目を引くのは《魂の洞窟/Cavern of Souls(AVR)》と2枚の《カラカス/Karakas(EMA)》だろうか。《魂の洞窟/Cavern of Souls(AVR)》で「ウィザード」を指定すれば、カウンターを恐れずに全てのクリーチャーをプレイすることができる。

 また、《カラカス/Karakas(EMA)》で《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique(MOR)》や《造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Savant(FUT)》を使い回すことでボード上の優位を取りやすいと主張している。

 興味深いのは、斉藤がミラーマッチなどで《予報/Predict(ODY)》でのカードアドバンテージを重視しているのに対し、ロセットは上記のようにボード(盤面)で対戦相手を制圧することを重視しており、両者の思考の差異が見て取れる。

 サイドボードは《Moat(LEG)》を採用しているため、《僧院の導師/Monastery Mentor(FRF)》は不採用。《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique(MOR)》が3枚と多めに採用されており、前述の《カラカス/Karakas(EMA)》ギミックを上手く活用すればこれ1体でゲームを制することができそうだ。

 土地対策は斉藤と同じく《血染めの月/Blood Moon(9ED)》でなく《基本に帰れ/Back to Basics(USG)》をチョイスしている。これは後から引き込んだフェッチランドが無駄カードになることを嫌ってのことだ。


 さて、最後に残るはヨーロッパの強豪、ヴァレンティン・マックル。彼の奇跡コントロールはどのようなものだろうかーー

ヴァレンティン・マックルの奇跡コントロール

 ゴールレベル・プロでもある彼は先週行われたワールド・マジック・カップ2016に参加し、その足でレガシーをプレイするためはるばる来日している。

 早速、ヨーロッパのマスターのデッキをご覧いただこう。

Valentin Mackl - 「奇跡コントロール」
グランプリ・千葉2016 / レガシー (2016年11月26~27日)
3 《島》
2 《平地》
3 《Tundra》
3 《Volcanic Island》
4 《溢れかえる岸辺》
2 《霧深い雨林》
2 《汚染された三角州》
2 《乾燥台地》

-土地(21)-

2 《瞬唱の魔道士》
2 《僧院の導師》

-クリーチャー(4)-
4 《師範の占い独楽》
4 《渦まく知識》
4 《思案》
4 《剣を鍬に》
1 《仕組まれた爆薬》
4 《相殺》
2 《対抗呪文》
1 《議会の採決》
4 《意志の力》
4 《終末》
3 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文(35)-
1 《封じ込める僧侶》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
3 《紅蓮破》
2 《狼狽の嵐》
1 《外科的摘出》
2 《血染めの月》
2 《コジレックの帰還》
1 《天使への願い》
2 《摩耗+損耗》

-サイドボード(15)-

 斉藤とロセットのデッキとの大きな違いはメインデッキに《天使への願い/Entreat the Angels(AVR)》を採用せず、《僧院の導師/Monastery Mentor(FRF)》を2枚組み込んでいることだ。

 《不毛の大地/Wasteland(EMA)》が跋扈する環境で《天使への願い/Entreat the Angels(AVR)》を唱えるために十分なマナを用意することは簡単ではなく、《僧院の導師/Monastery Mentor(FRF)》の方がより素早くゲームを終わらせることができるためこのような構成に至ったという。

 なお、斉藤によると、ヨーロッパでは《僧院の導師/Monastery Mentor(FRF)》の評価が日米に比べて高い傾向にあるそうだ。

 サイドボードの土地対策として斉藤、ロセットと異なり《血染めの月/Blood Moon(CHR)》を選んでいる。《血染めの月/Blood Moon(CHR)》設置後にフェッチランドを引いた場合、単なる《山/Mountain(KLD)》となってしまうため、奇跡コントロールで重要な、デッキのシャッフルができない問題があるということはマックルも認めるところだ。だが、面白いのは斉藤とロセットが土地対策をあくまで妨害手段と考えているのに対し、マックルは勝利手段としてカウントしていることだ。

 前述のデメリットもマックルいわく「《血染めの月/Blood Moon(CHR)》をプレイする時はゲームに勝つ時だからそのデメリットはあまり問題ではないね」とのことだ。

 また、デス&タックスに対する追加の全体除去として《コジレックの帰還/Kozilek's Return(OGW)》が鎮座している。このカードは無色の呪文であるため、《ルーンの母/Mother of Runes(EMA)》を問題にせず、またインスタントであることも重要だという。ソーサリーである《紅蓮地獄/Pyroclasm(M11)》の場合、《リシャーダの港/Rishadan Port(MMQ)》でアップキープに赤マナをタップされてしまうのが非常に苦しいから、とのことだった。


 さて、ここまで3人の奇跡コントロールをご紹介してきた。

 冒頭で述べたように、奇跡コントロールはフリースロットが比較的少ないデッキではあるが、それぞれの思考の違いが細かな違いを生み出している。

 これから奇跡コントロールを組んでみたいという方や、今奇跡コントロールを使用している方は、ぜひ3人のミラクルマスターによるデッキを参考にしていただければと思う。

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