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グランプリ・千葉2016

観戦記事

準々決勝:渡辺 雄也(東京) vs. 劉 今(中国)

By 宮川 貴浩

 とれる練習時間が少ないこともあり、レガシーのグランプリはプロにとって厳しいものになるかもしれない。渡辺は事前にそう語っていた。

 しかし、気がついてみれば予選ラウンドは渡辺が1位通過、同チームに所属する山本 賢太郎が2位通過と、プロがワンツーフィニッシュ。そのスキルの高さを見せつける結果となった。

 そんな渡辺が選んだデッキは「奇跡」。デッキパワーの高さは誰もが認めるが扱いが難しいという、まさにプロがスキルの差で勝つにはもってこいのデッキだ。

 中国からやってきた劉は、「グランプリでトップ64になったことくらいしかないよ」と照れながら話してくれたが、トッププロの渡辺を前にしても臆した様子はない。相棒のデス&タックスもフルフォイル仕様となっており、本気度が伝わってくる。プロの底力を見せつけたい渡辺を返り討ちにすることができるだろうか。

 試合前、渡辺は劉の緊張をほぐすかのように笑顔で話しかける余裕を見せていたが、戦いの火ぶたが切って落とされると、渡辺、劉ともに顔つきは鬼気迫るものに変わった。

ゲーム1

 1位通過の渡辺は先手ながら、土地がなくマリガンをせざるを得ない。しかし《師範の占い独楽》からゲームをスタートすることができ、試合が長引けば徐々に潜在的アドバンテージを取り戻せるだろう。

 劉は《リシャーダの港》、《霊気の薬瓶》とコントロールデッキには有効なカードを並べ、さらに《スレイベンの守護者、サリア》までをも追加する。さすがにこれを見過ごすわけにはいかない渡辺は、すぐさま《剣を鍬に》で追放した。

 劉は《スレイベンの守護者、サリア》こそ失ったものの、《霊気の薬瓶》から《ルーンの母》、《不毛の大地》と続け、いよいよデス&タックス(「死と税」=「逃れられないもの」の意)の本領を発揮し始める。渡辺が送り込んだ《僧院の導師》は《剣を鍬に》のお返しでトークンを生むことすら許さなかった。

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仲間の声援に後押しされて突き進む劉。ここまで来たら優勝トロフィーを母国に持ち帰りたい。

 劉の《霊気の薬瓶》が止まらない。コントロール殺しのこのカードが、《石鍛冶の神秘家》から《殴打頭蓋》という連鎖を生み、《聖域の僧院長》を戦力に加える。《聖域の僧院長》ではしっかりと「6」を指定し、渡辺の《終末》をシャットアウトした。

1マナ。唱えないでクリーチャーを出せる。相手をする側にとっては悪夢のようなカード。

 しかし、まだまだ渡辺も諦めない。《僧院の導師》を着地させると、2枚の《師範の占い独楽》を戦場、ライブラリートップと行き来させ、生み出したモンク・トークンの群れであっという間に頭数で追いつく。

 渡辺が巻き返す前にとどめを刺したい劉は、《護衛募集員》で《ちらつき鬼火》をサーチし、《ちらつき鬼火》で《護衛募集員》をちらつかせてさらに《聖域の僧院長》を獲得。そしてダメ押しに《宮殿の看守》で《僧院の導師》を追放しつつ「統治者」となった。

 こうなってしまうと、さすがの渡辺も打点、アドバンテージともに追いつけない。《渦まく知識》で数少ない打開策を探しにいくが見つからず、勝負ありとなった。

渡辺 0-1 劉

 先手か後手か。相手がサイドインしてくるカードは何か。想定されるゲーム展開は。無数ともいえる選択師を天秤にかけ、入念にサイドボーディングする両者。ゲーム2からは互いにどのようなプランを立ててくるのだろうか。

『コンスピラシー:王位争奪』でデス&タックスが得たものは多い。
ゲーム2

 渡辺が《師範の占い独楽》、劉が《ルーンの母》と、ともに1マナから動いた2ゲーム目。劉はまたしても《スレイベンの守護者、サリア》で渡辺を大きくスローダウンさせようとする。しかし、渡辺が繰り出したのはスペルではなくクリーチャー、《硫黄の精霊》だった。

まさに白ウィニーを駆逐するために生まれてきたクリーチャーが、劉に突き刺さる。

 刹那を持つ《硫黄の精霊》の前では《カラカス》で《スレイベンの守護者、サリア》を戻すこともかなわず、劉の戦場は一気に寂しくなってしまう。

 劉は3/1となった《僧院の導師》と《硫黄の精霊》こそ《議会の採決》、《宮殿の看守》で退場願ったものの、渡辺の戦場に威圧感たっぷりで登場したのは《精神を刻む者、ジェイス》。そこに《基本に帰れ》で蓋をされ、劉は《カラカス》と《リシャーダの港》をアンタップさせることができなくなってしまう。

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目まぐるしい攻防を繰り広げる両者。最近新たに加わった「統治者」というシステムが、ゲームをさらに面白くする。

 なんとか食い下がりたい劉は《石鍛冶の神秘家》、《スレイベンの守護者、サリア》と少ないマナで働くクリーチャーたちを順番に送り出すが、《精神を刻む者、ジェイス》でカードを多く見ている渡辺は《終末》、《剣を鍬に》と適切に対処。

 統治者の座を奪い取った渡辺が劉の切り札《大変動》を《対抗呪文》で却下すると、試合の行方は3ゲーム目に託されることとなった。

渡辺 1-1 劉

 地味ながら実に幅広い活躍をするが、それだけに使い方が難しいこのカード。実際に使用してみればその悩ましさを肌で感じていただけるだろう。《師範の占い独楽》をいかに素早く正確に運用できるかが、奇跡デッキを使って引き分けないための最重要ポイントだ。

ゲーム3

 なんと、3ゲーム連続で《師範の占い独楽》スタートの渡辺。劉の《石鍛冶の神秘家》が《火と氷の剣》を手札に加えることは許すものの、《火と氷の剣》を戦場に出すのは《剣を鍬に》で許さない。

 劉は、打ち消し呪文を相手にするときにはこれ以上なく頼もしい《魂の洞窟》で「人間」を指定して、《護衛募集員》をキャスト。《宮殿の看守》を選び、アドバンテージ勝負に備えた。

 2度目の《石鍛冶の神秘家》は《対抗呪文》で弾いた渡辺。《火と氷の剣》が通常キャストで戦場に出てくるが、もちろんこれは想定済み。しっかり積んでおいた《摩耗 // 損耗》で即座に破壊する。

 このままではジリ貧になる。そう判断したのか、劉は「統治者」になるのを目的で《宮殿の看守》を使用し、勝負に出た。これに対して渡辺は《瞬唱の魔道士》を瞬速で呼び出し、墓地の《剣を鍬に》を再利用しようとする。だが、劉は待ってましたとばかりに《外科的摘出》を唱え、渡辺の《剣を鍬に》を根絶やしにしにかかった。

 やむなく対応で手札の《剣を鍬に》を使っておく渡辺。《宮殿の看守》は戦場を去ったが、《外科的摘出》が解決されて、渡辺の手札にある《瞬唱の魔道士》、《師範の占い独楽》が明らかになる。

 渡辺は《瞬唱の魔道士》のアタックで「統治者」の座に就くと、劉の《護衛募集員》のアタックには《師範の占い独楽》のドローからの《終末》で手作りの「奇跡」を起こし、「統治者」の座を死守。物騒極まりない《ミラディンの十字軍》の攻撃にも《瞬唱の魔道士》を差し出した。

 ゲームもいよいよ終盤の様相を呈してくる。そろそろ主導権を握りたい渡辺は、《渦まく知識》、《思案》、《師範の占い独楽》、フェッチランドと、シャッフルを交えながらガンガン手札を回していく。

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複雑なギミックがいくつも組み込まれている奇跡デッキ。しかし、渡辺は間違えない。機械のような正確さで、勝利への階段を着実に一歩ずつ上がる。

 なんとか攻撃を通して「統治者」に返り咲きたい劉は《議会の採決》を贅沢に唱えるが、渡辺は奇跡デッキのお家芸、《師範の占い独楽》をトップに戻してドローからの《意志の力》で応じる。劉に残された道は、《ルーンの母》でプロテクション(青)をつけた《ミラディンの十字軍》でのアタックだった。

 これで、渡辺のライフは9。「統治者」もようやく劉へと移動する。しかし、これは渡辺の計画通り。《瞬唱の魔道士》があっさりと渡辺を再び「統治者」に擁立すると、ついに現れた《精神を刻む者、ジェイス》が《ミラディンの十字軍》を劉の手札に戻し、徐々にテンポで差をつけ始めた。

 ここを勝機と見た渡辺は、《僧院の導師》と2枚の《師範の占い独楽》を並べる必勝の布陣。

1マナ払うごとにSensei! Sensei! と1/1果敢のモンクが次々はせ参じる光景は圧巻。果敢によって打点も跳ね上がる。

 劉は《聖域の僧院長》で1マナの呪文を封じ、これ以上のモンクの増殖を防ぎにかかるが、渡辺の準備はもう整っていた。《ファイレクシアの破棄者》を《対抗呪文》で消し去り劉の望みを絶つと、《精神を刻む者、ジェイス》を使い捨ててバウンスでブロッカーを排除。自らの《師範の占い独楽》を起動に対応で《摩耗 // 損耗》で破壊するテクニックも見せた。

 そして、《僧院の導師》がモンクたちとともにアタックすると、これぞプロという渡辺の芸術的なダメージ計算によって、劉のライフはきれいに0になっていたのだった。

渡辺 2-1 劉

渡辺 雄也、プロの意地で2時間を超える大激戦を制し、準決勝進出決定!
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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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