By Masashi Koyama

　フィーチャーマッチの組み合わせがアナウンスされプレイヤーたちが移動する中、先に席に着いていたレイヤーを見るやいなや、香港からの遠征組ウォンホイキウ・イヴァン/Wong Hoi Kiu, Ivanは天を仰ぎ「Oh no!」と大きく声を上げた。

　それも仕方のないことで、なぜなら彼の対戦相手は日本が誇るトップ・プロ、山本賢太郎なのだから。

　その山本はウォンホイキウが席に着くと「Good luck」と声をかけ握手を求める。

　ウォンホイキウは握手に応じ、我々取材班に対し「君たちは日本から来たんだよね？フィーチャーマッチ緊張するなあ」と言いながらもマイペースで試合の準備を始める。

　山本がいかにトップ・プロと言えど、このグランプリでは１敗の山本に対し、ウォンホイキウはここまで全勝。

　そこから来るものかは分からないが、マリガンチェックの最中もウォンホイキウは自分のペースで山本に対し積極的に話しかける。

　山本もにこやかに応じ、初日最終ラウンドは賑やかに幕が開いたのだった。

第９回戦 山本(写真右)vsウォンホイキウ(写真左)

ゲーム１

　ダイスロールで先手を取った山本が使用するのは「グリセルシュート」と呼ばれるデッキで、《御霊の復讐》と《裂け目の突破》を駆使し、《引き裂かれし永劫、エムラクール》と《グリセルブランド》のコストを踏み倒して戦場に出し強力な一撃をお見舞いするコンセプトのものだ。

　そんな《御霊の復讐》で墓地を利用する山本に対しウォンホイキウが１ターン目に突き付けたのは《ウルザの魔力炉》から《大祖始の遺産》！

　どうやらウォンホイキウは山本のデッキを絞り込めているわけではないようで、《忍び寄るタール坑》《血の墓所》と並べた山本が《手練》を唱えると「Storm?」と声を上げる。

　とは言え、《大祖始の遺産》が鎮座している状況では山本はうかつに動けない。

　ウォンホイキウの《森の占術》を《イゼットの魔除け》で打ち消し、《集団的蛮行》で《グリセルブランド》を墓地に送りつつ、《思考囲い》でウォンホイキウの《古きものの活性》×２、《濃霧》《森の占術》という手札から《古きものの活性》を取り除く。

　だが、もちろん返すターンでウォンホイキウがプレイするのはもう１枚の《古きものの活性》。これで《解放された者、カーン》を手に入れ、さらに《森の占術》で「ウルザトロン」最後の１枚である《ウルザの魔力炉》を手札に加える。

　次のターンにいきなり脅威にさらされることが確定してしまった山本は《信仰無き物あさり》と《血清の幻視》でライブラリーを掘り進める。

　なんとか《裂け目の突破》を見つけるが、土地が４枚で止まっている山本はこれを唱えるための５マナ目が確保できない。

　さらに《世界を壊すもの》がウォンホイキウの手札から降臨し、《忍び寄るタール坑》を破壊されると、山本は《信仰無き物あさり》で打開策を探してはみるものの、《解放された者、カーン》の前ではどうしようもないのであった。

ウォンホイキウ 1-0 山本

ゲームを落とした山本は静かに２本目へと気持ちを切り替える

ゲーム２

　ワンマリガンの山本に対し、ウォンホイキウがダブルマリガン。

　山本の手札は

• 《流転の護符》
• 《御霊の復讐》
• 《猿人の指導霊》
• 《思考囲い》
• 《忍び寄るタール坑》
• 《湿った墓》

　というもの。

　ウォンホイキウが《探検の地図》を置いた返しの山本の２ターン目。山本は自らに《思考囲い》を打ち込む...そう、山本はファーストドローで《グリセルブランド》を引き込んだのだ！

　山本はこれを墓地に送ると《猿人の指導霊》でマナを捻り出し、《御霊の復讐》というビッグプレイ！

　これを見たウォンホイキウは「Good play!」と感嘆の声を上げ、手札の《大祖始の遺産》を見せて苦笑いする。

　山本は《グリセルブランド》で14枚カードを引き攻撃。さらに《グリセルブランド》の能力を使用し、潤沢と言うに余りある戦力を手に入れる。

　ウォンホイキウもなんとか山本に対抗すべく「ウルザトロン」を揃え脅威を叩きつけたいところだが、《思考囲い》で《解放された者、カーン》を落とされ、手札に残る《絶え間ない飢餓、ウラモグ》召喚までの道のりはあまりに遠い。

　そして、山本はもちろん５ターン目に《裂け目の突破》から《引き裂かれし永劫、エムラクール》を提示してみせ、星をタイへと引き戻した。

ウォンホイキウ 1-1 山本

ゲーム３

　ウォンホイキウが《探検の地図》、山本が《血清の幻視》というスタート。

　山本がさらに《手練》《血清の幻視》と続け、ウォンホイキウは《探検の地図》から２枚目の「ウルザトロン」である《ウルザの塔》と、お互いに着々と決戦への準備を整えていく。

　山本が《思考囲い》に対応してウォンホイキウは《手練》へ《外科的摘出》。

　これで明らかになった山本の手札には《血清の幻視》に《裂け目の突破》《グリセルブランド》。コンボが揃っていたのだ！

　これを見たウォンホイキウはまたも「Oh no!」と大きく声を上げ頭を振る。相当にヒートアップしているようだ。

　一方、冷静な山本は《思考囲い》で《忘却石》を捨てさせ、さらに２枚目の《思考囲い》で《約束された終末、エムラクール》をも奪い取り、ウォンホイキウの残る手札は《幽霊街》のみとなってしまう。

　が、ウォンホイキウもここまで全勝と勢いにのる男。《ウルザの鉱山》《解放された者、カーン》と連続で引き込みみ、一転山本に対処を迫る。

トップデッキで活路を見出すしかないウォンホイキウ

　だが、山本の手札には前述したように《御霊の復讐》シュートを決めるだけの材料が揃っている。

　《グリセルブランド》を墓地に送り込み、すかさず《御霊の復讐》でこれを蘇らせ《解放された者、カーン》を葬る。

　そして、ここで《グリセルブランド》と契約し、またも14枚もドローした山本に対し、トップデッキに賭けるしかないウォンホイキウの差はあまりに絶望的だった。

　一度は《塵への崩壊》で山本を足止めしてみるものの、山本は問題なく５マナへ到達し、《裂け目の突破》から《引き裂かれし永劫、エムラクール》をシュート！

　まさに盤面を塵ひとつ残らない更地とされてしまったウォンホイキウはゲームを続けてみるものの、山本はすぐにこのデッキの名前ともなっている《御霊の復讐》からの「グリセルシュート」でゲームセットの笛を鳴らしたのだった。

ウォンホイキウ 1-2 山本

山本 Win!