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Round 9: 安部 元気(福岡) vs. 中村 修平(東京)

Round 9: 安部 元気(福岡) vs. 中村 修平(東京)

"The Bubble Match"

By Keita Mori


 グランプリ・広島の第9回戦をはじめるにあたって、ここまでを6勝2敗という成績で迎えているプレイヤーは63人。具体的には、29番テーブルから80番テーブルにまで、勝ち点18というラインのプレイヤーたちがずらりと並んでいる。

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 ところで、皆さんはインディ500という競技をご存知だろうか? これは米国のインディアナポリス・モーター・スピードウェイで毎年5月の第4週(メモリアルデー・ウィークエンド)に開催されるイベントで、アメリカンモータースポーツの代表的レース(*第一回大会は1911年に開催された)である。

 なぜ唐突に別ジャンルのスポーツの話題になったか? それは、マジック:ザ・ギャザリングのグランプリというイベントが、このインディ500と非常に似通った予選形式をとっていることに起因する。
 具体的には、予選ラウンドが複数日にまたがって開催され、参加選手は翌日のラウンドに勝ち進むために一定以内の順位に勝ち残らねばならないというシステムが共通しているのだ。

 このインディ500では「一人でも自分よりいいスピードを出されると予選を通過できない崖っぷちの順位のドライバー」の状況をオン・ザ・バブル (on the bubble)と表現する。転じて、マジックのイベントでも初日最終戦で「負ければそこまで」という立場の選手のことをオン・ザ・バブルと形容することが一般的になったという。

 そして、いつしか「薄氷を踏む状態の二人が直接対決を行う初日最終ラウンドの試合」のことを「バブルマッチ(Bubble Match)」と呼ぶことが、ここ日本でもマジック語として定着したのだ。

 今からお届けする41番テーブルの試合も、まさにその好例なのだが、対峙した二人のうち、ひとりは勝者翌日のステージに勝ち上がり、もうひとりは敗者としてトーナメントから敗退することになる。ある意味、グランプリというイベントの初日のコンペティションを総括するかのような試合がバブルマッチなのである。

 半数が散り、半数が生き残るという過酷な戦いに六十余名が挑む。


Game 1

「僕の試合にライターさんがついてくださるの、はじめてですよ」

 と、はにかみながら試合開始の準備をしていた安部 元気。しかしながら安部は特に緊張した様子も見せず、堂々たるカードさばきでシャッフルを終え、後手7枚をキープ。

 一方、おそらくカバレージライターとのやりとりには飽き飽きしているであろうワールドクラスのアークメイジが先手マリガンを宣言。数週間後のプロツアー殿堂入りが内定している中村 修平は、ポーカーフェイスと呼べなくもない微妙な表情を浮かべてから、結局6枚をキープした。

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 先手中村は開幕ターンに《アヴァシンの巡礼者/Avacyn's Pilgrim(ISD)》召喚という立ち上がりだが、安部がこれを見事にさばき、その上で見事な陣立てを完成させた。

 安部はファイレクシアマナを活用しての《はらわた撃ち/Gut Shot》で即座にマナクリーチャーを焼き払った上で、1ターン目の《流城の貴族/Stromkirk Noble(ISD)》から2ターン目「狂喜」《嵐血の狂戦士/Stormblood Berserker》という好展開。速度と威力を兼ね備えたクロックを仕掛けた上で、さらに《燃え上がる憤怒の祭殿/Shrine of Burning Rage》を設置し、そこに《トゲ撃ちの古老/Spikeshot Elder(SOM)》をも追加する盤石ぶりだった。

 とりあえず中村も《ミラディンの十字軍/Mirran Crusader》を出すだけ出しては見るものの、すでに建立されていた《燃え上がる憤怒の祭殿/Shrine of Burning Rage》がこれを始末する。そこから安部が全軍突撃を宣言しかかったところで、中村は何かを確認するようにうなずいた。直後、中村は投了を宣言した。

 一方的な試合、そのものだった。

安部 1-0 中村


Game 2

中村 修平
中村 修平

 中村 修平はグランプリ・広島という大会のディフェンディングチャンピオンである。
 前回、2006年に開催されたコールドスナップのリミテッドを制した際、彼は初日予選通過者の中では最下位というポジションから日曜日をスタートした。

 過去のサクセスストーリーの筋書きが筋書きであるだけに、広島の地で中村 修平が薄氷を踏む戦いに臨んでいるという舞台設定そのものに、我々傍観者は惹かれる。陳腐だが、「メイクミラクル」という演目は悪くない。

 しかし、ここで我々が目にしたのは、安部による「ジャイアントキリング」だった。

 またしても先手6枚スタートとなってしまった中村は、一縷の望みをかけて開幕ターン《極楽鳥/Birds of Paradise(M12)》展開からゲームスタート。しかし、これを安部は即座にペイライフしながらの《四肢切断/Dismember》で対処。
 ここから2マナ域で土地がとまってしまう悲劇的展開の中村を前に、安部は刺客として《流城の貴族/Stromkirk Noble(ISD)》と《オキシド峠の英雄/Hero of Oxid Ridge》を送り込んだ。

 そして、(これだけで)終幕。

 3枚目の土地を引けぬまま散った中村が・・・試合を終えて足早に立ち去るところまで一貫して紳士的に振舞っていたことを、せめて記しておこうか。

安部 2-0 中村


安部 元気
安部 元気

「いやあ、あれはブンまわりでしたね」

 試合後、安部は自分の幸運ばかりを強調しようとしたが、それは謙遜のしすぎといったところだろう。
 一期一会の巡りあわせを、運という要素を含めてこそのマジック:ザ・ギャザリングなのである。

 グランプリのバブルマッチで世界的強豪を倒したという事実がそこにあり、安部 元気はプレイオフ進出を狙うコンテンダーとして日曜日に勝ち進んだのだ。


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