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【観戦記事】 決勝:Ang Jan(フィリピン) vs. Chye Yian Hsiang(マレーシア)

【観戦記事】 決勝:Ang Jan(フィリピン) vs. Chye Yian Hsiang(マレーシア)

By 矢吹 哲也

マジックを始めたのは『第4版』のころ。「スターター」を買って、《大地の怒り/Force of Nature》を引いたんだ。《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves(5ED)》と《森》を駆使してそいつを使ってたよ。いい時代だった!――アン・ヤン/Ang Janの「オリジン・ストーリー」(グランプリ・香港2015、トップ8プレイヤープロフィールより(英語) )

「あの頃」の自分が座っている。

学生のころ、『ゼンディカー』でマジックを始めた。そのときからずっと、相互作用の強いデッキが大好きだ――チェ・ヤンシャン/Chye Yian Hsiangの「オリジン・ストーリー」(グランプリ・香港2015、トップ8プレイヤープロフィールより(英語) )

 ここにいるのは、マジック:ザ・ギャザリングというゲームに出会ったばかりの自分だ。それぞれの「オリジン・ストーリー」を思い出した両プレイヤーは、きっとそう錯覚したことだろう。無我夢中になって遊んだあの頃。その思い出を胸に秘めたまま彼らはこのゲームとの付き合いを続け、今、グランプリ決勝の舞台で再びそれを思い起こしている。

 彼らの中に今も生き続けるオリジン――「原点」は、両者をグランプリの決勝まで導いた。だが、試合前の雑談を交わす両プレイヤーに気負いは一切感じられない。それも当然だろう。今彼らは、マジックを始めたばかりのあの頃に戻っているのだから。

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 決勝開始のアナウンスと拍手に片手を挙げて応えるヤンシャン。それを見つめ、笑顔をこぼすヤン。

 これは、両プレイヤーの中に根付く「原点」同士のぶつかり合い。

 灯を点したプレインズウォーカーたちの、力くらべ。

ゲーム展開

 先手のヤンがマリガンを喫したものの、2ターン目《ルーンの苦役者/Runed Servitor(ORI)》から3ターン目《ヴァレロンの管理人/Valeron Wardens(ORI)》と展開。一方のヤンシャンは2ターン目《領事補佐官/Consul's Lieutenant(ORI)》と強力なスタートを見せると、《包み込む霧/Enshrouding Mist(ORI)》も駆使して《ヴァレロンの管理人/Valeron Wardens(ORI)》を突破した。

 ヤンも《野性の本能/Wild Instincts(ORI)》でヤンシャンの《領事補佐官/Consul's Lieutenant(ORI)》を打ち倒し、ヤンシャンが《トーパの自由刃/Topan Freeblade(ORI)》を戦線へ追加すると、返しのターンには《業火の侍祭/Acolyte of the Inferno(ORI)》を送り出す。それに対して《トゲイノシシ/Prickleboar(ORI)》を繰り出すヤンシャンだが、それはすぐにヤンの《稲妻の投槍/Lightning Javelin(ORI)》が撃ち抜いた。


この戦いの鍵となる盤面の掌握を目指し、一歩も譲らないヤン。

 ヤンは《満月の呼び声/Call of the Full Moon(ORI)》を《ルーンの苦役者/Runed Servitor(ORI)》にエンチャントし、5点で攻撃。これを受けたヤンシャンは自らのターンを迎えると、《抑制する縛め/Suppression Bonds(ORI)》でヤンの脅威を封じる。これで攻守が逆転し、ヤンシャンは《秘儀術師の掌握/Grasp of the Hieromancer(ORI)》を《トーパの自由刃/Topan Freeblade(ORI)》へエンチャントすると、攻勢に出た。

 ブロッカーをタップされ、ヤンシャンの攻撃を止められないヤン。どうにかクリーチャーを並べた頃には彼のライフは風前の灯となっていた。勢いよく《トーパの自由刃/Topan Freeblade(ORI)》を戦闘へ送り出すヤンシャンに対して、ヤンはブロック後の《剛力化/Titanic Growth(ORI)》で形勢逆転を図るが、ヤンシャンは待ってましたとばかりに笑顔で《包み込む霧/Enshrouding Mist(ORI)》を差し出した。目論見を破られたヤンは次のドローを見ると、カードを片付けたのだった。

古き良き「コンバット・トリック」を絡めた攻防が、第1ゲームの決め手となった。

 2ゲーム目、ヤンシャンはまたしても2ターン目《領事補佐官/Consul's Lieutenant(ORI)》。ヤンも《ボガートの粗暴者/Boggart Brute(ORI)》で対抗するものの、ヤンシャンは早くも《天界のほとばしり/Celestial Flare(ORI)》を使い、電撃戦を仕掛ける。

 続けてヤンが繰り出す《業火の侍祭/Acolyte of the Inferno(ORI)》も《抑制する縛め/Suppression Bonds(ORI)》で縛り、《領事補佐官/Consul's Lieutenant(ORI)》による攻撃を続けるヤンシャン。ヤンが《燃えさし口のヘリオン/Embermaw Hellion(ORI)》を呼び出しても、《秘儀術師の掌握/Grasp of the Hieromancer(ORI)》を付けてなおも攻撃を通した。


この大一番で、ヤンシャンの白赤デッキが燃え上がる。

 火力で《領事補佐官/Consul's Lieutenant(ORI)》を除去すると、今度はヤンの反撃だ。《燃えさし口のヘリオン/Embermaw Hellion(ORI)》による大きなクロックが、序盤につけられた差を取り戻す。ヤンシャンも快調にクリーチャーを展開してダメージを与え合い、気づけば両者ともライフが5点まで落ち込んでいた。

 ヤンシャンはひと呼吸置くと、「これでどうだ」とばかりに切り札の《ピア・ナラーとキラン・ナラー/Pia and Kiran Nalaar(ORI)》を送り出す。

 祈るように《燃えさし口のヘリオン/Embermaw Hellion(ORI)》で攻撃するヤン。ヤンシャンはこれを受けることを選択する――火力やコンバット・トリックの追撃はなく、ヤンシャンのライフは残り1点で止まった。

 そして。ヤンの戦場に残るブロッカーを《ピア・ナラーとキラン・ナラー/Pia and Kiran Nalaar(ORI)》の能力で除去し、ヤンシャンが一斉攻撃を宣言すると、ヤンはこの戦いの熱に浮かされたかのように柔らかく投了を宣言したのだった。

ヤン 0-2 ヤンシャン

 歓声と拍手が、ふたりを夢のような戦いから醒まさせる。試合後の興奮にしばらく我を忘れていた両者は再び笑顔を向け合い、固く握手を交わした。

 寂しいけれど、「グランプリ」というお祭りはこれでおしまい。

 じゃあね、また今度。このゲームでまた遊ぼう。

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チェ・ヤンシャン、グランプリ・香港2015優勝おめでとう!

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