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【戦略記事】 Deck Tech: 小林“kbr3”崇人のジャンドゾンビ、そしてMagic Onlineという舞台

【戦略記事】 Deck Tech: 小林“kbr3”崇人のジャンドゾンビ、そしてMagic Onlineという舞台

by Masami Kaneko

 マジックをする舞台はなにも現実だけではない。

 Magic Online。その電脳世界にも数多くのプレイヤーが存在し、そして日々マジックに明け暮れている。実際のところ「Magic Online無しでのマジック生活は考えられない」というようなプレイヤーも多いのではないだろうか。

「kbr3」。Magic Onlineプレイヤーなら、この名前を聞いたことのある方も多いだろう。Magic Onlineの大会上位常連であり、先日はMagic Online上のプロツアー「テーロス」予選を抜けたことも記憶に新しい。Magic Onlineのプロツアー予選は、参加人数から「グランプリなのでは」と言われることもあり、そんな予選を勝ち抜いているその実力は本物だろう。それも彼がMagic Online上のプロツアー予選を突破したのは、なんと3回目なのだ。


小林 崇人

 そんな小林 "kbr3" 崇人が、このグランプリ・北九州になんとも気になるデッキで参戦し勝ちを重ねているというのだ。やれ「《墓所這い/Gravecrawler(DKA)》から《ロッテスのトロール/Lotleth Troll(RTR)》って展開されたから黒緑ゾンビだろうと思ってたら《ファルケンラスの貴種/Falkenrath Aristocrat(DKA)》が飛んできた」だの「速攻持ちなんて《ファルケンラスの貴種/Falkenrath Aristocrat(DKA)》だけだろうと思ったら《屑肉の刻み獣/Dreg Mangler(RTR)》まで飛んできた」だの「2ターン目に出てきた《ロッテスのトロール/Lotleth Troll(RTR)》に《ミジウムの迫撃砲/Mizzium Mortars(RTR)》を打ってみたら6/5のモンスターに殴られていた」だの。

 ここでは初日8-1という輝かしい結果を残したこの「ジャンドゾンビ」と、そしてMagic Onlineについて話を訊いてみようではないか。

小林 崇人
グランプリ・北九州2013 / スタンダード
4 《血の墓所》
4 《魂の洞窟》
4 《竜髑髏の山頂》
4 《草むした墓》
4 《沼》
4 《森林の墓地》

-土地(24)-

4 《戦墓のグール》
4 《墓所這い》
4 《ラクドスの哄笑者》
4 《悪名の騎士》
4 《ロッテスのトロール》
4 《屑肉の刻み獣》
4 《ゲラルフの伝書使》
4 《ファルケンラスの貴種》

-クリーチャー(32)-
4 《悲劇的な過ち》
4 《破滅の刃》

-呪文(8)-
3 《強迫》
2 《電謀》
1 《悲劇的な過ち》
2 《戦慄掘り》
4 《吸血鬼の夜鷲》
3 《ヴェールのリリアナ》

-サイドボード(15)-
d1_deck03.jpg

ジャンドゾンビについて

――なぜこのデッキを選択したのですか?

小林「速攻クリーチャーや、《ロッテスのトロール/Lotleth Troll(RTR)》《墓所這い/Gravecrawler(DKA)》といったカードによって、コントロールデッキ全般に明確に強いからですね。ジャンドやトリコロールといったデッキには圧倒的に相性が良いです。

 グルールに対しても五分五分で戦えますし、《ロッテスのトロール/Lotleth Troll(RTR)》さえ引ければ有利にゲームを進めることができます。

 上手いプレイヤーはコントロール系デッキを使うことが多いと思ったので、特に2日目やTop8で有利になれると思いデッキを選びました。」

 はっきりと「2日目」「Top8」と口にした小林。実際に「Top8、いや、優勝することを考えてデッキを選択してます」と話しており、明確な目的意識が伺える。そう考えた時に上位のプレイヤーが選択しそうなデッキに相性が良いというのが決め手となったという。

――逆にデッキの弱点などは有りますか?

小林「アリストクラッツとかは、近いことをしているのに相手のほうがカードパワーが高いため若干苦手ですね。あと、カードパワー自体が高いわけではないので、想定と違うデッキ相手には負けてしまうこともあります。」

 なるほど、メタゲームを根拠にデッキを選択したということで、想定外のデッキには弱い。ローグデッキの宿命ともいえるかもしれない。

――もし今回デッキの内容を変更出来るとしたら、何処を変更しますか?

小林「サイドボードの《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil(ISD)》ですかね......。「呪禁バント」とかの対策のつもりで取ったんですけど、中途半端でした。ビートダウンを意識して《戦慄掘り/Dreadbore(RTR)》の追加とか、もしくは《肉貪り/Devour Flesh(GTC)》とかに変えたほうが良いと思います。」

――今のスタンダード環境についてどう考えていますか?

小林「環境末期なのに色々なデッキにチャンスがあって面白いと思いますよ、バランスが取れていると思います。個人的にはコントロールよりビートダウン優位な環境だと思いますね。」

 確かにスタンダード末期、ともすれば一強のデッキが現れることも多い環境だが、今回は一強というようなデッキは全く現れない。どのデッキにもチャンスが有り、環境は混沌としている。そんな中、いわゆるTier1に対してかなり有利に戦えるこのデッキは素晴らしい選択肢の一つと言えるだろう。

――こちらのデッキの調整はどこで行ったのですか?

小林「ひたすらMagic Onlineですね。現実では全く練習していないです。Magic Online上で基本的には一人で調整をしてデッキを作りました。」

 なんと小林はほとんど一人でこのデッキを作り上げたという。そしてその原動力となったのは「Magic Online」。かつてBrad "FFfreak" NelsonやReid "reiderrabbit" DukeがMagic Onlineで活躍した後プロシーンに現れたのを彷彿させる。いわゆる「Magic Online世代」である彼に、Magic Onlineの魅力についてとことん訊いてみようではないか。

 そして。今、Magic Onlineで活躍する日本人といえばkbr3だけではない。

「triosk」。

「瀬畑」というハンドルネームで知られる彼もまた、次のプロツアー「テーロス」の権利をMagic Onlineで得た一人だ。そんな彼もこのグランプリに参加している。今回は残念な結果に終わってしまったようだが、しかし彼もまたMagic Onlineのプロツアー予選を突破したのが2回目の強豪。

 この小林 "kbr3" 崇人と市川 "triosk/瀬畑" ユウキは、二人共いわゆる「ニコ生勢」と呼ばれる、Magic Online動画を放送している二人であり、その中でも強豪として有名な二人だ。Magic Onlineのことについてとことん教えてもらおうではないか。


市川 "triosk/瀬畑" ユウキ(左奥)、小林 "kbr3" 崇人(右手前)

Magic Onlineについて

――Magic Onlineを始めたきっかけはなんですか?

小林「高校の頃からマジックをやっていて、マジックをするために首都圏の大学に来たんですよ。でも、千葉の柏だったんですけど来てみたら意外と首都圏から遠くて。それでマジックしようと思った時に、Magic Onlineがありました。」

市川「私も昔、ウルザズ・サーガ辺りでマジックやってたんですよね。で、復帰してみようと思った時に、でも現実のカードやコミュニティ探すのは大変だし......って時にMagic Onlineがありました。」

 それぞれ事情は違えど、共通するのはMagic Onlineの手軽さ。確かに、さっと始めてみたい時に現実のカードを揃えなくても良いMagic Onlineのお手軽さは魅力的だろう。

――一日にどれくらいの時間をMagic Onlineに費やしていますか?

小林「一日に大体2回のDE(デイリーイベント、4回戦の大会)に出ているので、平均7時間くらいですかね。」

市川「私は一日平均DE1回くらいなので、3時間半くらいでしょうか。」

一日平均7時間も練習している人間が、プロプレイヤーにさえ一体何人居るだろうか。そう考えると、二人の実力にも納得出来る。平均しても7時間。これだけの時間をマジックに費やしている彼らの実力派本物だ。

――それでは「ニコニコ生放送」をやってる理由って何ですか?

市川「楽しいからですね。最初は上手くなるために始めたつもりだったんですけど、反応をもらえるというのが楽しくって。最近はもっぱらこれをモチベーションにして放送してます。」

小林「僕も同じですね。やっぱり視聴者の人から反応がもらえるというのは面白いものです。それによって簡単に上手くなれるってわけではないですけど、でも続けるモチベーションになるってのは強いですよ。あ、もちろん目立ちたいってのもあります(笑)」

 継続は力なり。共通して「それが楽しいから」と語ってくれた二人。続けるモチベーション、それは何物にも代えがたい力だろう。

――お二人ともプロツアー「テーロス」の権利を得ていますが、どのように練習される予定ですか?

市川「新セット発売直後ってことで、Magic Onlineで練習できないのが厳しいんですよね......。Magic Onlineでばかりやっているので、現実での練習が難しくて。特にドラフトで8人集めるのとかはなかなか。どこかコミュニティに所属できれば良いんですけど。」

小林「僕も今は実家在住なので、ほぼMagic Onlineでしか練習できないのが厳しいです。プロツアーの練習に関してもかなり困っていますね。どうしようかなぁ......。」

 二人の共通した悩み、それは「現実での練習」。なるほどMagic Onlineは素晴らしいツールではあるが、プロツアーの時期が新セット発売直後であり、発売が現実よりも遅いMagic Online上ではどうしても練習が遅れてしまう。現実でいち早く練習したいものの、その環境に対して不安を抱えているようだ。

――Magic OnlineでPWPが貯まるようになるとか、そういったMagic Onlineと現実のマジックとの統合が少しずつ進もうとしているとの噂がありますが、お二人としては?

小林・市川「もちろん大歓迎です!!」


「日本のプロプレイヤーに若手が現れない。」「日本はトップは凄いけど、層が薄い。」

 そんな話を最近よく聞く。確かに渡辺雄也や中村修平は間違いなく世界トップクラスのプロプレイヤーだ。他にも有力な選手は多くいる。

 だが、そのメンバーは、ほとんど5年前と変わっていない。新しいメンバーが現れていないのだ。プロのメンバーの固定化、若手層の薄さ。循環しない組織に未来はない。

 本当に、日本のマジックシーンで若手は育っていないのだろうか?

 日本に若手がいない、そう言われながらも、確実に日本のマジック人口は増えている。つい先日もグランプリ・横浜で国内グランプリで最大動員数を更新したように、明確に日本に「マジック」という遊びは広まっている。

「若手が育っていない。」「マジック人口は増えている。」

 一体どういうことなのか。

 そう、「これから」なのだ。まだ誰かが頭角を表すほどではないかもしれない。しかし、日本のマジックシーンでは確実に若手が育っている。

 そして、かつて、Brad NelsonやReid Dukeがそうであったように、Magic Online出身のプレイヤーが大活躍するようになる日も来るかもしれない。

 二人にインタビューしてて、とにかく前向きに、積極的に話をしてくれたのが印象的だった。それはまさにプロツアーに憧れ、プロシーンを目指したがる若手プレイヤーのように。

 いや、彼らは、小林と市川は、既に次のプロツアーの権利を掴みとっている。それも、「激戦区」と言われるMagic Onlineで、だ。

 そう、既に彼らはプロへの道を一歩踏み出している。その一歩が、どうか次の一歩に繋がるよう、頑張ってほしい。

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