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【戦略記事】 デッキテク:山本 賢太郎の「青白フラッシュ」

【戦略記事】 デッキテク:山本 賢太郎の「青白フラッシュ」

By 伊藤 敦

 プロツアー『カラデシュ』は八十岡 翔太と彼の駆るグリクシス(青黒赤)・コントロールの優勝で幕を閉じた。

 決勝の対戦相手、カルロス・ロマオのデッキも青白赤のコントロールであったことから、そのわずか一週間後に開催されるこのグランプリ・クアラルンプール2016でも、さぞ八十岡やロマオに感化されたコントロールデッキが爆発的に増加していることだろう。

 ......というのが大方の予想だったのだが。

 グランプリが始まってから数回戦が経ち、会場を見回した日本人たちは口を揃えてこう言っていた。

『青白フラッシュ』多すぎじゃない?」

 確かにプロツアー『カラデシュ』でもトップ8デッキに「青白フラッシュ」の姿はあった。だがそれにしても、今回はメタゲーム・ブレイクダウンを見なくても想像がつくほどに青白の数が多い。

 この急激な増加の背景にはどういった理由が隠されているのか?

 今やスタンダードの最先端のデッキとなった「青白フラッシュ」について、今回のグランプリで同デッキを選択したゴールド・レベル・プロ、山本 賢太郎選手に話を伺ってみた。

deck_yamamoto.jpg

――今回はどういった理由から「青白フラッシュ」を選択したのでしょうか?

「プロツアー『カラデシュ』のマッチポイント24点以上のリストを見て、9勝1敗以上の4人が全員『青白フラッシュ』だったんですよね。それ自体はプロツアーに《霊気池の驚異/Aetherworks Marvel》デッキなどのコンボデッキとコントロールデッキがたくさんいたからではあるんですが、実際に試してみて『単純にデッキが強いな』と感じたのと、『プロツアー後でコントロールデッキが増えそうだな』と思ったので、気に入らない部分やサイドボードだけ市川 (ユウキ) さんと意見を交換しながら手直しして持ってきました」

――どういった部分を手直しされましたか?

「『青白フラッシュ』にはサイドボードに《虚空の粉砕/Void Shatter》や《即時却下/Summary Dismissal》などのカウンター呪文をとっている枠が4~6枚程度あるんですが、市川さんのアイデアで、その枠に《呪文萎れ/Spell Shrivel》を4枚とっていることが主な調整部分になります。このデッキは青マナを14枚しかとっていないので、ダブルシンボルのカードを3ターン目にプレイするのは厳しくて。もちろんそれらの枠は後半にプレイする想定で入っているのですが、赤白の『機体』などを相手にする場合でも相手が《稲妻織り/Weaver of Lightning》や《領事の旗艦、スカイソブリン/Skysovereign, Consul Flagship》などでデッキを少し重くして捌きにくるパターンがあり、そういったサイドプランを相手がとってきた場合に3ターン目から構えられる《呪文萎れ/Spell Shrivel》の方が、サイドインしやすくて頼もしいですね」

――メインがかなり綺麗に組みあがっていることもあり、サイドボードでどういったカードを抜くのかわかりづらい気がするのですが、たとえばビートダウン相手とコントロール相手でそれぞれどういったカードをサイドアウトするのでしょうか?

「基本的には、どのマッチアップも《鎖鳴らし/Rattlechains》をサイド後に全部抜きますね。メインはビートダウンの形をとっているので2マナ域の能動的なアクションとしての役割がありますが、サイド後にはまずビートダウン相手はダメージレースで負けてしまうので、《折れた刃、ギセラ/Gisela, the Broken Blade》《保護者、リンヴァーラ/Linvala, the Preserver》などのより重くて単体で強いカードが欲しいですし、コントロール相手でもサイド後は《氷の中の存在/Thing in the Ice》や《稲妻織り/Weaver of Lightning》など相手もクリーチャーが入ってきてミッドレンジ寄りになることが多く、いずれにせよ単体の弱さがネックになります」

「他にサイドアウトするカードとしては、コントロールには《反射魔道士/Reflector Mage》を抜くとして、ビートダウン相手は《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar》と、後手だと《呪文捕らえ/Spell Queller》も減らしますね。ただ赤白『機体』相手に限れば、先ほど述べたように相手がコントロール気味に立ち回ってくるときがあるので、そうしたプランを相手がとっているとわかった場合には《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar》を戻して《折れた刃、ギセラ/Gisela, the Broken Blade》は入れません。相手のサイドプラン次第なので、このデッキ相手だからこう、とは一概には言い切れませんね」


――今回「青白フラッシュ」がかなり増加しましたが、同型戦は何が勝負の焦点になるんでしょうか?

同型戦は8割が《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn》をめぐる攻防で決まります。《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn》を戦場に定着させた方が勝つので、サイド後もカウンターを入れますし、《停滞の罠/Stasis Snare》をなるべく《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn》用にとっておく、などのプレイングも重要になります。序盤のつつき合いはゲームを決定づけるものではなくて、たまに《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar》が4ターン目に着地して勝ってしまうこともありますが、それも全体の2割といった印象です。とにかく《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn》が強いですね」

――「青白フラッシュ」がここまで多いとわかっていたら、デッキ構築の面で何か変化はありましたか?

「《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn》に対処できる追加の除去として《空鯨捕りの一撃/Skywhaler's Shot》の投入を検討するくらいですかね。全方位的に戦えるデッキなので、あまり『これを使ったら勝てる』というようなサイドボードはないかな、と思います。ただ、一応《消えゆく光、ブルーナ/Bruna, the Fading Light》は、《折れた刃、ギセラ/Gisela, the Broken Blade》と揃って『合体』したらさすがに勝てるので、このメタゲームがわかってたら、サイドボードに《折れた刃、ギセラ/Gisela, the Broken Blade》と《消えゆく光、ブルーナ/Bruna, the Fading Light》を1枚ずつ増やして、たぶん《否認/Negate》と《石の宣告/Declaration in Stone》を1枚ずつ減らしていましたね」

――インスタントタイミングのクロック、除去とカウンターが揃ったデッキということで、仰ったように全方位的に戦えるデッキだとは思うのですが、苦手なデッキはないのでしょうか?

「試していて唯一厳しかったのは、赤黒のゾンビ+マッドネスのデッキですね。《墓所破り/Cryptbreaker》などのシステムに触れませんし、『マッドネス』で《ヴォルダーレンの下層民/Voldaren Pariah》が出てくるとどうしようもないといった印象です。ただ他のデッキは、特にコントロールデッキ相手に有利で、赤白『機体』などにも、《無謀な奇襲隊/Reckless Bushwhacker》が入ったトークン型だと少し厳しいですが、オーソドックスなら形ならば五分以上に戦えるので、非常に強力なデッキです」


 プロツアーで生まれたコントロール増加の機運が、皮肉にも「青白フラッシュ」の隆盛を導く結果となった。

 インスタントタイミングの行動が多く、隙を作ることなく立ち回れる万能型デッキ「青白フラッシュ」は、スタンダードの次なる定番デッキとなっていきそうだ。


山本 賢太郎 - 「青白フラッシュ」
グランプリ・クアラルンプール2016 / スタンダード (2016年10月22~23日)
10 《平地》
6 《島》
4 《港町》
4 《大草原の川》
1 《ウェストヴェイルの修道院》

-土地(25)-

4 《スレイベンの検査官》
4 《無私の霊魂》
2 《鎖鳴らし》
4 《反射魔道士》
4 《呪文捕らえ》
4 《大天使アヴァシン》

-クリーチャー(22)-
1 《石の宣告》
4 《停滞の罠》
4 《密輸人の回転翼機》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文(13)-
3 《折れた刃、ギセラ》
1 《保護者、リンヴァーラ》
2 《断片化》
2 《石の宣告》
2 《否認》
4 《呪文萎れ》
1 《秘密の解明者、ジェイス》

-サイドボード(15)-

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