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Round 9: 小室 修(東京) vs. 山本 明聖(和歌山)

Round 9: 小室 修(東京) vs. 山本 明聖(和歌山)

By 金 民守

"神の存在は信じるよ
でも、勝つのは僕だ
神様のおかげじゃない"
―― ケニー・ロバーツ  


 グランプリ・神戸初日最終戦。2敗同士、2日目進出を賭けて負けられない戦いに臨むのは『華麗なる天才』小室修。プロツアー・名古屋05優勝、グランプリ・横浜03優勝、グランプリ・台北08優勝を始め、グランプリトップ8多数というこのモンスターに対するは、こちらもThe Finals09優勝、プロツアー・京都09ベスト4、グランプリ・岡山08ベスト8という絢爛たる成績を誇るトッププロ、山本明聖だ。

Round 9

 マジックというランダム性を飼い慣らす競技において、もしくはランダム性にもてあそばれる競技において、彼らトッププロは何を見ているのだろうか。何を求め、何を割り切り、そして何を賭けて戦っているのだろうか。その一端がこの一戦に垣間見えるであろう。


Game 1

 二人が選択したデッキは赤緑純正ヴァラクートとフェアリーだ。
 お互いが初手7枚をキープして、現環境を象徴する一戦が始まった。

 先手山本が1ターン目から《思考囲い/Thoughtseize(LRW)》で小室のハンドを攻める。
 公開されたハンドは《風景の変容/Scapeshift》《不屈の自然/Rampant Growth(MIR)》《探検/Explore》、土地4枚。《風景の変容/Scapeshift》が小室の手から墓地に送られ、小室のグッドハンドが平凡ハンドに成り下がる。《思考囲い/Thoughtseize(LRW)》というカードの強さにはつくづく呆れさせられる。

 小室が土地を置くだけでターンを返すと、山本は《苦花/Bitterblossom(MOR)》をキャスト。苦笑交じりに「ドブンやないけ」と漏らす小室。このカードが登場して以降、常にエクステンデッドのトップメタに居座り続けたフェアリーというデッキタイプ。その基本にして最高の回りを、山本は小室に叩きつけた。

 しかし山本の表情は未だ硬い。それもそのはず山本のハンドには3枚目の土地がなく、2枚の《謎めいた命令/Cryptic Command(LRW)》と《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine(MBS)》が窮屈そうに出番を待っているだけで、その他にキャストできる有効なスペルが無いのだ。

 対する小室は《不屈の自然/Rampant Growth(MIR)》によってマナを伸ばし、有効牌の受け入れを整えてターンを返す。

 山本の3ターン目。是が非でも土地がほしい山本。ゆっくりとライブラリーに手を伸ばす。そして引いてきたカードをそのまま場に置いて3マナをマナ・プールに供給して《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine(MBS)》を設置する。
 「テンパイやん!!」小室が天を仰ぐ。

 返すターンで《探検/Explore》からのダブルセットで《砕土/Harrow》につなぎ、さらに《探検/Explore》を重ねて、キーである6マナに達成しつつハンドのクオリティアップを図る小室。二度の悲痛な叫びとは関係なく、その目は眈眈と何かを狙っている。

山本 明聖
山本 明聖


 現状は圧倒的有利な山本だが、一撃死が十分ありえるヴァラクートに対してカウンターを構えられないままではいくらダメージを重ねても、何枚アドバンテージを重ねても油断はできない。
 しかしここでも山本の勝負強さが光る。そう、そこには4枚目のランドが、さも当然のように山本を待っていた。4枚目の土地を手に入れた山本が姿勢を正す。さぁここからは詰将棋だ。

 最早勝つための無限の選択肢を模索する必要はない。有限の「負けてしまう選択肢」のみを回避しながら、山本は丁寧に、それはそれは丁寧に小室の首を締めていく。
 小室の《山/Mountain(ROE)》が立っている。《稲妻/Lightning Bolt(M11)》を警戒して装備はせずに苦花トークンでアタック、ターンを返す。

 小室のターン。小室に弾を出し渋る余裕はない。小室が放つノーオーメンでの《風景の変容/Scapeshift》に、山本はタップリと時間を使って考えた上で《謎めいた命令/Cryptic Command(LRW)》をカウンター&ドローで使用。小室の寿命が1ターン消費される。

 装備により強化された苦花トークンが、残り一枚になった小室のハンドを目がけて襲いかかる。小室が最後のハンドをディスカードさせられ、山本は《謎めいた命令/Cryptic Command(LRW)》の構えを整えながらターンを返す。

 小室は自分の残りライフを確認し、かろうじて次のターンが回って来ることを確認した後にライブラリーを圧縮すべく《不屈の自然/Rampant Growth(MIR)》をキャストしてエンドを宣言する。山本はそれに対応して《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》をキャストして自分の手札を整え、Game 1が終了した。


小室修 0-1 山本明聖


Game 2

 小室のサイドボーディングは《耳障りな反応/Guttural Response(SHM)》《余韻/Reverberate》を投入してカウンターを対策しつつ、《霧縛りの徒党/Mistbind Clique(LRW)》を睨んで火力を《焼却/Combust》に入れ替えるというものだった。

 対して山本は《見栄え損ない/Disfigure》×3《マナ漏出/Mana Leak》×2をアウトして《瞬間凍結/Flashfreeze(10E)》×3、《喉首狙い/Go for the Throat(MBS)》×2を投入。あまり対策カードを多く積んでデッキのバランスを崩すようなことはせずに、上位互換カードによる優位性のアップを図る作戦だろう。

 お互い何度も練習しただろうマッチアップ。勝ちパターンも負けパターンも完全に把握してこそのこのサイドボーディングだろう。

 準備が整いGame 2が始まる。
 先手、小室のファーストハンドは《耳障りな反応/Guttural Response(SHM)》《カルニの心臓の探検/Khalni Heart Expedition》《虹色の前兆/Prismatic Omen》《砕土/Harrow》に土地が3枚というまずまずのもの。序盤に《砕土/Harrow》が安全に通せる展開にさえなればグッドハンドと言えよう。

 対する山本は《苦花/Bitterblossom(MOR)》《霧縛りの徒党/Mistbind Clique(LRW)》《喉首狙い/Go for the Throat(MBS)》×2に土地3枚。土地は揃っていて最高の2ターン目が迎えられることも保証されているが、2枚の《喉首狙い/Go for the Throat(MBS)》に不安が残るハンドをキープ。

 お互いに静かに1ターン目を終え、小室はハンデスが飛んでこないことに胸をなで下ろす。2ターン目はお互いにエンチャントを置きあい、迎えた3ターン目。小室は《苦花/Bitterblossom(MOR)》の隙をついて《砕土/Harrow》から《虹色の前兆/Prismatic Omen》というカウンターされたくない2枚を同時に通しつつ《カルニの心臓の探検/Khalni Heart Expedition》のクエストを満たすという理想的な動きを見せる。先手後手の差が如実に出た瞬間だろう。

 ターンを返された山本だが、1ゲーム目とは打って変わってドローが芳しくない。
 3ターン目にして準備万端の小室とは対照的に、今まで山本がドローした10枚にはただの1枚のハンデスもカウンターも含まれていないのだ。山本は土地をセットするのみでターンを返す。エンドに起動される《カルニの心臓の探検/Khalni Heart Expedition》。

 小室の4ターン目。小室は確認する。長考というよりも一つ一つ確認するように場を、ハンドを見返す。ハンドには《耳障りな反応/Guttural Response(SHM)》、そして《風景の変容/Scapeshift》。山本の場には3枚のランド。数秒後、プロツアーチャンプのもとに4枚のヴァラクートが並んだ。

小室修 1-1 山本明聖


Game 3

小室 修
小室 修

 最終戦。3ゲーム目。山本の元にもたらされたハンドは1ゲーム目を思い起こさせるものだった。つまり2枚の土地と必殺の5枚だ。山本はそれをキープした。

 対する小室のファーストハンドは《不屈の自然/Rampant Growth(MIR)》《耳障りな反応/Guttural Response(SHM)》《原始のタイタン/Primeval Titan》《風景の変容/Scapeshift》という素晴らしい4枚と3枚の土地。しかしその土地が問題だった。小室のハンドに集まった土地からは緑マナが供給されないのであった。

 小室は考える。そして悲痛な表情で決断する。
 この7枚は、あと2枚のドローで緑マナソースが引けさえすればこれ以上のハンドは無い。そう言っていいレベルのハンドだ。

 しかし、小室は誘惑には乗らなかった。小室は神を信じない。このゲームは、神に愛されたものが勝つのではない。強いものが勝つのだ。まるでそうとでもいうかのように小室は手にとった7枚をライブラリーに戻した。

 小室が信じるのは自分が積み重ねた練習の結果だ。納得いくだけの試行を繰り返し、納得したはずのマリガン基準。小室にとってそれは絶対だった。新たに手にとった6枚は、小室のキープ基準を満たしていた。

 そしてゲームが始まった。
 お互いに土地を置くのみで1ターン目が終わる。
 そして2ターン目。山本が《コジレックの審問/Inquisition of Kozilek》によって1マリガンした小室から《カルニの心臓の探検/Khalni Heart Expedition》を奪い去った。
 3ターン目。山本は《思考囲い/Thoughtseize(LRW)》をプレイ。小室の手から《風景の変容/Scapeshift》がさらに奪い去られる。この時山本のハンドには次のターンセットされるであろう土地と、小室に残された僅かな希望を絞りとる《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》、そして小室の動きを縛る《霧縛りの徒党/Mistbind Clique(LRW)》《謎めいた命令/Cryptic Command(LRW)》が控えていた。

 山本の詰将棋が再度始まった。
 《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》によって小室の手から《余韻/Reverberate》が消える。返すターンこの3点クロックに小室は《焼却/Combust》を使う。使わざるを得ない。解決され、山本は4マナを立ててターンを返す。

 小室はキャストする。《原始のタイタン/Primeval Titan》。
 山本はカウンターする。《謎めいた命令/Cryptic Command(LRW)》。
 小室はキャストする。《虹色の前兆/Prismatic Omen》。
 山本はカウンターする。《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite(LRW)》。

 ・・・小室は一呼吸置いて手札に手を伸ばす。もう無くていいだろう。もう無いはずであろう。小室はキャストする。《風景の変容/Scapeshift》。そして突き刺さる《瞬間凍結/Flashfreeze》。

 小室が力なくターンを返す。
 山本が静かに、静かに詰将棋をすすめる。ドロー。ゴー。アップキープに《霧縛りの徒党/Mistbind Clique(LRW)》。丸裸になった小室を妖精が縛る。小室はなすすべなくフルタップしてターンを返す。
 そして山本はアタックし、小室のアップキープに再度《霧縛りの徒党/Mistbind Clique(LRW)》をキャストして詰将棋を完成させる。

 このタップ能力によって小室に残された最後の一撃必殺のチャンスが摘み取られた。そしてこれは、この時点でプロツアー・名古屋11に参加権のない小室のベスト16の目が摘み取られたことと同義だった。

 小室に残されたプロツアー・名古屋の出場権を得るチャンスはあと2回。前PT名古屋チャンプが防衛戦に臨む姿を我々は見ることができるのだろうか?
 そして2ゲームにわたり驚異的な強さと緻密なプレイで我々を圧倒した山本は、はたして2日目でどんな活躍を見せてくれるのか!? 2日目にはどんな激戦が我々を待っているのか!?

 みなさんにはトッププロたちの濃密な駆け引きと勝利の栄光、そして敗北の無常さを、明日も期待してもらいたい。


小室修 1-2 山本明聖

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