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決勝: 平賀 優宏(神奈川) vs. 行弘 賢(和歌山)

決勝: 平賀 優宏(神奈川) vs. 行弘 賢(和歌山)

By Yusuke Yoshikawa


 対戦前、行弘が自身の背を指して言う。
「(仕切りが遠いので)これだと誰も見えないと思うんですけど......」
 すぐさまスタッフが対応し、ギャラリーとの距離が近づけられる。
 観られる、観るということを、行弘はいつも考えているのだろう。

 テーブルジャッジに、余裕がありますね、と聞かれると、行弘は笑って謙遜する。
「いやいやいや・・・せっかくだし」
 その次の言葉がわずかに緊張を帯びる。
「決勝まで来たの初めてなんで」
 ライジングスターと目される行弘にとっても、タイトルは「せっかくの」舞台、特別なものだ。
「昨日からすごいツイてるんで・・・このまま行きたいですね」

 対して、撮影のためスリーブの入れ替えを求められた平賀は、黙々と作業をこなしながら言葉を聞いている。
 彼にとっては、「見られるマジック」ということは初体験なのかもしれない。
 それでも、スリーブを入れ替えて、丁寧にシャッフルを繰り返すうち、平賀も自分のペースを取り戻してきた。

 ここはグランプリの決勝。他の1115名が夢見た、タイトルを懸けた舞台。注目も当然のこと。
 注目されることは、時にメリットはないかもしれない。緊張や制約ばかりがもたらされて、不都合しかないかもしれない。
 でも、力に変えられたなら、そのときはタイトルのほうが一歩、こちらに歩いてきてくれるだろう。
 丁寧に、丁寧にカードをたぐるその手に、平賀の秘めた気持ちが見えた。

Final

「お願いします」
 そう言葉を交わして、いつものゲームをはじめよう。


Game 1

 ダイスロールで12を出した平賀が先攻の意思表示。
「こちらはキープを宣言します」
 確かめるように平賀が言う。行弘もそれに応える。

 行弘の《無私の聖戦士/Selfless Cathar(ISD)》に、平賀が《銀筋毛の狐/Silverchase Fox(ISD)》と、この環境の白優位を示すかのような立ち上がり。
 行弘が《修道院の若者/Cloistered Youth(ISD)》を出せば、平賀は《アヴァシン教の僧侶/Avacynian Priest(ISD)》を出して対応の意志を。

 行弘も《修道院の若者/Cloistered Youth(ISD)》は人間のままにしておいて、《礼拝堂の霊/Chapel Geist(ISD)》を出す。
 平賀は《アヴァシンの仮面/Mask of Avacyn(ISD)》。
 戦場の土地はいまだ《平地/Plains(M11)》のみ。

 行弘が初めてとなる《沼/Swamp(ROE)》を置き、《村の食人者/Village Cannibals(ISD)》。
 見慣れたカードかもしれないが、誘発する条件を平賀が改めて確認する。

 土地3枚で止まってしまった平賀は、《アヴァシンの仮面/Mask of Avacyn(ISD)》を《銀筋毛の狐/Silverchase Fox(ISD)》に装備し守りを固めるのだが、《アヴァシン教の僧侶/Avacynian Priest(ISD)》の起動コストをまかなえない。
 そこに行弘は2枚目の《沼/Swamp(ROE)》から《死の愛撫/Death's Caress(DKA)》で、《アヴァシン教の僧侶/Avacynian Priest(ISD)》を排除して、《礼拝堂の霊/Chapel Geist(ISD)》が再び攻撃を始める。

 傾き始めた戦況を立て直すには、平賀にも2色目の土地が必要だ。
 力を込めて引いたカードは《戦慄の感覚/Feeling of Dread(ISD)》。
 これも、《島/Island(M11)》なしでは魅力十分とはいいがたい。

 さらに攻撃されて、次にようやく平賀が引いたのは土地、しかし《平地/Plains(M11)》。
 でもこれが、平賀にチェックリスト・カードの提示を可能にする。
「スレイベン」
 行弘がつぶやく。
 もちろん、それは《スレイベンの歩哨/Thraben Sentry(ISD)》である。

「考えます......」
 自らのターン、行弘はそう断ると、実際にカードを動かしながらシミュレーション。
 そして「コンバット」と宣言して、《無私の聖戦士/Selfless Cathar(ISD)》を除く《不浄の悪鬼/Unholy Fiend(ISD)》《村の食人者/Village Cannibals(ISD)》《礼拝堂の霊/Chapel Geist(ISD)》を横に倒した。

 《銀筋毛の狐/Silverchase Fox(ISD)》(3/5)が《村の食人者/Village Cannibals(ISD)》(3/3)をブロック。《スレイベンの歩哨/Thraben Sentry(ISD)》はブロックに参加せず。
 《無私の聖戦士/Selfless Cathar(ISD)》が起動されて、《村の食人者/Village Cannibals(ISD)》が《銀筋毛の狐/Silverchase Fox(ISD)》を倒し、平賀ライフ5。戦場の変化に呼応して、《スレイベンの民兵/Thraben Militia(ISD)》が怒りをあらわにする。

 平賀、ドロー。
 まだ《島/Island(M11)》を引かない。
 平賀は落胆をおくびにも出さない。

 平賀は攻撃宣言前に、《戦慄の感覚/Feeling of Dread(ISD)》で《村の食人者/Village Cannibals(ISD)》《礼拝堂の霊/Chapel Geist(ISD)》を抑えこんで猶予を求める。
 それに対し、5枚の土地を片手で90度回転させて、行弘が提示するのはタイトルを前にした《高まる野心/Increasing Ambition(DKA)》。
 デッキでいまもっとも必要とするカードが、行弘の手札に送られる。

 平賀に猶予はなくなってきた。
 なにせ、場で押されている上にデッキのエースの予告先発だ。
 こちらも力を見せねばなるまい。

 ここで力強く引き当てたカードは、《神聖なる報い/Divine Reckoning(ISD)》。
 これで行弘の盤面を《村の食人者/Village Cannibals(ISD)》を残して一掃し、ライフで押されてはいるものの、五分の戦況へと近づける。

 だが、行弘の《未練ある魂/Lingering Souls(DKA)》がすぐさま追加のスピリット、それも通常から即座にフラッシュバックで4体を追加してくる。
「苦しいー」
 わずかな吐息に混じって、平賀の本音が漏れる。
 土地はまだ5枚、力を込めてドロー、しかしそこには《無私の聖戦士/Selfless Cathar(ISD)》。《神聖なる報い/Divine Reckoning(ISD)》のフラッシュバックはまだ遠い。

 ついぞ平賀の《島/Island(M11)》は現れず、スピリットを前に押し切られることとなった。

平賀 0-1 行弘


Game 2

行弘 賢

行弘 賢

 互いにマリガンなし、今度は《島/Island(M11)》が姿を見せて平賀も一安心か。
 《霧のニブリス/Niblis of the Mist(DKA)》で、まず先攻の構えをとる。

 しかし行弘から提示されたのは、先ほどの勝負を決めた《未練ある魂/Lingering Souls(DKA)》。
 これには2/1である《霧のニブリス/Niblis of the Mist(DKA)》を向かわせる気にもなれないのか、平賀は攻撃せずにターンを返す。

 1・2体目の攻撃を受けて、3・4体目の出現を確認してから、平賀は終了フェイズ《村の鐘鳴らし/Village Bell-Ringer(ISD)》から、これに《同族の呼び声/Call to the Kindred(DKA)》をエンチャントする。

 これは・・・?
 対戦相手の行弘だけでなく、ギャラリー全体が「そのカード」を不思議そうに見つめた。

 闇の隆盛の発売からまだ2週間ほど、出会う頻度が多くないレアでは、見つめるプレイヤーはもちろんのこと、さしもの行弘も、もしかすると使っている平賀自身も、真価を知らないかもしれない。
 読む限りは猛烈なアドバンテージを生みそうであるが、ともあれ未知数ではある。行弘は気を取り直し、《銀爪のグリフィン/Silverclaw Griffin(DKA)》を追加する。

 飛行の数で押されると厳しいかに見えた平賀だが、このままでは終わらない。
 《同族の呼び声/Call to the Kindred(DKA)》の効果で、まずは戦場を支える《アヴァシン教の僧侶/Avacynian Priest(ISD)》を得て、さらに通常プレイで《銀爪のグリフィン/Silverclaw Griffin(DKA)》が航空戦力として与えられる。

 《銀爪のグリフィン/Silverclaw Griffin(DKA)》には行弘の《信仰の縛め/Bonds of Faith(ISD)》。守りを構築させることなく、タイトルに向かって邁進する。

 しかし、そのビクトリーロードは予想もしない曲がり角を迎えた。

 《突然の消失/Sudden Disappearance(DKA)》が告げられ、トークンが二度と戻らない旅路へ。ついでに《信仰の縛め/Bonds of Faith(ISD)》も一時消失し、急激に盤面がクリアになった。
 だがクリーチャーと返す攻撃に備え、攻撃はわずかにとどめ、平賀は慎重にターンを返した。戻ってきた《信仰の縛め/Bonds of Faith(ISD)》は元の位置=《銀爪のグリフィン/Silverclaw Griffin(DKA)》へ。

 しかし《未練ある魂/Lingering Souls(DKA)》への未練を断ち切って、行弘も《弱者の師/Mentor of the Meek(ISD)》から《村の食人者/Village Cannibals(ISD)》、すぐにドローとまだまだ押し込んでくる。

 だが平賀は、《同族の呼び声/Call to the Kindred(DKA)》が有効に機能するデッキを仕上げていた。
 《村の鐘鳴らし/Village Bell-Ringer(ISD)》の呼び声に応えた優秀な人間がどんどん集まり、その中の《エルゴードの審問官/Elgaud Inquisitor(DKA)》で失ったライフを取り戻しにかかる。

 アップキープに《金切り声のコウモリ/Screeching Bat(ISD)》を《忍び寄る吸血鬼/Stalking Vampire(ISD)》に変身させるが、行弘の攻め手がついに止まる。
 平賀は《深夜の出没/Midnight Haunting(ISD)》で、先ほどはあれだけ攻められたスピリット・トークンを我が手に得る。

Final_Game2

 地上5/5になったことで《エルゴードの審問官/Elgaud Inquisitor(DKA)》は攻撃できなくなったが、《霧のニブリス/Niblis of the Mist(DKA)》とスピリットが攻撃を開始。

 だが、まだまだ。行弘も《礼拝堂の霊/Chapel Geist(ISD)》から《弱者の師/Mentor of the Meek(ISD)》の誘発能力で引き増しつつ、戦場を固めにかかる。

 戦線は延々と左右に伸び、ゲームは膠着戦の様相を呈するかに見えた。

 ところが、《平地/Plains(M11)》《沼/Swamp(ROE)》2枚のみを残して終了宣言した行弘に対し、平賀が断りを入れて行弘のカードを動かす。こちらもシミュレーションに入った。平賀の手元、行弘のクリーチャーは、「2体ずつ」まとめられている。

 そうして計算を終えると、平賀は鮮やかな収束に向かった。。
 《戦慄の感覚/Feeling of Dread(ISD)》表・裏から《アヴァシン教の僧侶/Avacynian Priest(ISD)》起動、さらにアンタップを経てメイン起動。
 次のターンはありえないという、意を決した全軍突撃。

 行弘はただひとり残された《弱者の師/Mentor of the Meek(ISD)》で最大限のブロックを試みるが、《無私の聖戦士/Selfless Cathar(ISD)》の起動で《スレイベンの歩哨/Thraben Sentry(ISD)》が反応し、行弘が受けるダメージは致死量を超えた。

平賀 1-1 行弘


Game 3

平賀 優宏

平賀 優宏

「先攻いただきます」
 1117人のザ・ラスト・ゲームは、行弘の丁寧な言葉とともに、互いにマリガンなく開始する。

 行弘の《修道院の若者/Cloistered Youth(ISD)》がゲームを急加速させていく。
 平賀も《銀筋毛の狐/Silverchase Fox(ISD)》で譲らない。

 行弘は予告通りの《不浄の悪鬼/Unholy Fiend(ISD)》で攻め、《礼拝堂の霊/Chapel Geist(ISD)》が守りを固めつつ次の攻撃戦力となる。

 平賀も《ガヴォニーの鉄大工/Gavony Ironwright(DKA)》で《不浄の悪鬼/Unholy Fiend(ISD)》への解答を提示するが、行弘も《修道院のグリフィン/Abbey Griffin(ISD)》で航空戦力を増員する。
 だが、平賀も《声無き霊魂/Voiceless Spirit(ISD)》《修道院のグリフィン/Abbey Griffin(ISD)》で譲らない。

「こちらスルーを選択します」
 ひとつの戦闘で発せられた言葉にも、平賀の真摯な気持ちが感じ取れる。

 平賀は《霧のニブリス/Niblis of the Mist(DKA)》で戦線をこじ開けると、《修道院のグリフィン/Abbey Griffin(ISD)》と《声無き霊魂/Voiceless Spirit(ISD)》で攻撃。
 ここに3枚の土地を倒して少し悩み、行弘は《叱責/Rebuke(ISD)》の対象を《修道院のグリフィン/Abbey Griffin(ISD)》にする。

 クリーチャーは増えるがレッドゾーンの人口密度は低い。
 気づけば、《不浄の悪鬼/Unholy Fiend(ISD)》は足を止めて、そればかりか行弘の足を引っ張り始めている。
 急加速したゲームは、確かに長期戦へと減速を見せていた。

 平賀はドローをするが、それは6枚目の土地ではない。
 しかし黙っていれば射程圏に落ちてくれる。
 しかし、欲が出れば悟られかねない。
 行き来する思考は推察できる。しかし平賀は表情を変えない。変えないのか、変わらないのか、変わらなかったのか。

 行弘の《礼拝堂の霊/Chapel Geist(ISD)》の攻撃に、ライフ7の平賀は通して《ガヴォニーの鉄大工/Gavony Ironwright(DKA)》の「窮地」条件を満たす選択もあったが、《邪悪の排除/Spare from Evil(ISD)》による突然死を考慮に入れたのか、《深夜の出没/Midnight Haunting(ISD)》をキャストすると、このうち1体と《霧のニブリス/Niblis of the Mist(DKA)》で《礼拝堂の霊/Chapel Geist(ISD)》を撃退し、ライフの水準を保つ。
 行弘は《村の食人者/Village Cannibals(ISD)》を追加。
 平賀は《エルゴードの審問官/Elgaud Inquisitor(DKA)》を送り込む。
 戦線が横に、横に、横に伸びる。

 横に並べば。
 そのときはあのカードが待っている。
 平賀の希望であり、行弘の悪夢であるあの呪文が。

 行弘は《銀爪のグリフィン/Silverclaw Griffin(DKA)》を送り込むのみ、1/4の《ガヴォニーの鉄大工/Gavony Ironwright(DKA)》を前にして、行くも退くもままならない《不浄の悪鬼/Unholy Fiend(ISD)》が時を刻む。

 行弘にも《突然の消失/Sudden Disappearance(DKA)》の影は見えているのだろう。
 ドローをするたび、わずかな緊迫の色が見える。
 近づいたはずの勝利。それを前にして、にわかにかき曇った視界。
 だが守りを固める平賀の前に膠着、動けない。
 平賀を追い詰めるカードは、行弘にもたらされない。、

 平賀は待望の6マナ源となる《壁の守部/Warden of the Wall(DKA)》をキャストする。
 しかしその手つきには、特別な力は入らない。

 行弘は引けず、ただ《不浄の悪鬼/Unholy Fiend(ISD)》が時を刻む。

 どんどん横に伸びる戦線にあって、このまま黙っていても勝利は転がり込んでくるだろう。
 踏み込めば思わぬトリックが、ということを考えてしまうこともあるだろう。
 手を下さないでよいなら、どうしても自らの決断を避けてしまいがちだ。

 しかし平賀は、慎重が落とし穴を生むかもしれない、ということを知っていた。
 いつ何時、行弘が《邪悪の排除/Spare from Evil(ISD)》を狙っているかもわからないのだ。

 改めて、自軍のクリーチャーが叩き出すであろうダメージを試算する。
 そして、それまでにも増して丁寧に、6マナのソーサリーをキャストし、決断に身をさらした。

 果たして、「deathsnow」行弘は、苦笑いを浮かべながら両手でカードをまとめたのだった。

平賀 2-1 行弘

Shakehands


「白が強いと思っていて、無理矢理にでも白を取りに行くと決めていました」
 ゲーム後に勝因を聞くと、いまだ緊張を帯びた声で、しかししっかりと平賀は答えてくれた。
 《平地/Plains(M11)》が並ぶ決勝のゲームの光景は、その言を証明しているかのようであった。
 その中でも大切なカード、中心にした戦略は?
「人間、ですね。それも、死んでもトークンが出るもの、ですね」
 《宿命の旅人/Doomed Traveler(ISD)》や《エルゴードの審問官/Elgaud Inquisitor(DKA)》といったクリーチャーを並べ、戦線を横に伸ばして膠着させ、《邪悪の排除/Spare from Evil(ISD)》で決めるのが基本戦略だという。

「今回はたまたまレアでしたけど」
 《突然の消失/Sudden Disappearance(DKA)》を指して、平賀ははにかんだ。
 フィニッシュは確かに大技であったが、確固たる戦略の延長線上にあったに過ぎないのだろう。

 栄光のカップも、まず1回のドラフト、1枚のピックから。
 おめでとう! グランプリ・神戸2012チャンピオン、平賀 優宏!

チャンピオン・平賀 優宏

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