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【戦略記事】 『君の名は。』渡辺雄也の心の支えとなるチームメイトと『A』の存在

【戦略記事】 『君の名は。』渡辺雄也の心の支えとなるチームメイトと『A』の存在

By Sugiki, Takafumi

京都と渡辺の因縁

「心のなかに、いつも彼女がいてくれる。」

 渡辺はこう語り、さらに続ける。

「彼女のことを考えていれば、いつのまにか試合に勝っている。」

 殿堂顕彰者である渡辺がそこまで心の支えとしているのは、この京都を舞台にした、いわゆる日常系アニメの走りの作品に出てくるツインテールの女子高生。そして、この京都といえば、2007年に開催されたグランプリ・京都で渡辺雄也が超特大の《悪魔火/Demonfire(DIS)》を叩きつけ、その名をマジックトーナメントシーンに轟かせた。彼にとって京都は因縁の地である。

 グランプリ・京都2007での優勝以来、渡辺はずっとマジックのトップシーンを走り続けている。その年のルーキー・オブー・ザ・イヤー、2009年プレイヤー・オブ・ザ・イヤーを獲得、2012年プレイヤー選手権(現世界選手権)優勝等、常に日本のプロプレイヤートップレベルの戦績を残し続けてきた。そしてプロキャリア10年目を迎えた今年、ぶっちぎりの得票率で殿堂顕彰者に選出された。殿堂までの道のりは、奇しくも彼のプロキャリアが始まった2007年に連載が開始された漫画のキャラクターであった、ツインテールの女子高生とともに歩んだ10年といっても過言ではない。

 そんな彼の偉業を祝福し、マジック公式サイトで4コマ漫画を連載しているアノアデザインさんが、渡辺と彼女のツーショットの色紙を作り、プレゼントするというサプライズも、本戦のニコニコ生放送で催された。

チーム結成

 渡辺は2007年以前から関東では知られる存在で、神奈川で開催されているプレインズウォーカーカップというトーナメントで、圧倒的な強さを誇り「草の根の帝王」の二つ名をほしいままにし、第三世代と呼ばれるプレイヤー集団の中心的存在であった。

 彼がチームメイトとして今回選んだのは、そのプレインズウォーカーカップのころからの旧知の仲である、中村肇と井川良彦である。彼らもまた、ツインテールの女子高生同様、公私ともに渡辺の心の支えである。

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 近年、プロツアーまでの2週間のプロプレイヤーの過ごし方は、発売週は発売日の金曜日から日曜日までドラフトをし、翌週はプロツアーの開催地近くで行われる、いわゆるコネクトGPに参戦しながら、現地で調整を続けるといったスタイルが一般的となっている。中村は、その前半のメニューである、ドラフト合宿というトレーニング手法の走りとも言える通称『菊名合宿』の主宰であり、彼の関東プロコミュニティへの貢献は高い。また、過去に自身もプロツアー継続参戦権を持ついわゆるグレーヴィートレインに乗っていたこともある強豪プレイヤーである。

 また井川はプロツアー・サンディエゴ2010トップ8、プロツアー『タルキール覇王譚』10位入賞などの活躍をした経験を持つ。高いプレイング精度で調整メンバーとしても関東プロコミュニティから信頼されており、現在はHareruya Prosに所属している。

 そんな3人のチーム結成の経緯を彼らに聞いてみたところ、この3人でのチーム構想は昨年のグランプリ・北京(チーム戦)の時からあったそうだ。しかし、中村の都合がつかなくなり、渡辺は、三原、市川と、井川は石村、瀧村と参戦し、ともにトップ4に残るという戦績を残した。さらにその以前から、旅行を兼ねて3人での旅行がてらアジアグランプリに参戦するという計画もあったが、シーズンの切れ目とプロツアー権利の都合から結局おじゃんになってしまったということもあったそうだ。

今日に至るまでの練習とチームオーダー

 渡辺は世界選手権に向けての調整、井川はグランプリ・広州に向けてのモダンの練習であまり時間が取れず、中村が個人でチームシールドの練習をしていたとのことだ、その回数なんと30回。その練習経験を、渡辺、井川とも信頼し、渡辺に言わせれば、「中村が絶対的エースであり、リーダーであり、キャプテンである」とのことだ。

 そんな彼らは、八十岡との親交も深くチーム名は『Shota Yasooka Fanclub』。ファンクラブ会員番号1番の渡辺がA席、会員番号2番の中村がB席、会員番号3番の井川がC席に座る。両隣のプレイヤーの相談を受けることができるということで、渡辺が中心に座るのが自然かと思ったが、渡辺いわく、中村、井川のプレイには絶対の信頼を置いているとのことで、特にプレイの相談をしたりというのはこのチームではあまり無いとのことだ。それ以上に、渡辺はA席の『A』というアルファベットにこだわっており、その理由は、前述の心のなかにいつも住むアニメキャラクターの名前の頭文字が『A』であるからとのことだ。どこまでもそのキャラクターへの愛を語る渡辺。清々しい。

デッキ構築

 そんな八十岡ファンの3人に渡されたプールは以下のようなものであった。

Shota Yasooka Fanclub カードプール
グランプリ・京都2016 1日目 / 『異界月』『イニストラードを覆う影』チームシールド
1 《ウェストヴェイルの修道院》

-土地(1)-

2 《大胆な刺突者》
1 《岐路の聖別者》
1 《傲慢な新生子》
1 《ケッシグをうろつくもの》
1 《療養所の骸骨》
1 《厳格な巡邏官》
1 《果敢な捜索者》
1 《死天狗茸の栽培者》
1 《耕地這い》
1 《霧歩き》
1 《隠れるホムンクルス》
1 《孤独な夜番の霊》
1 《墓ネズミ》
1 《巡礼者の守護霊》
1 《躁の書記官》
1 《ムーアランドの流れ者》
1 《首絞め》
1 《苛虐な魔道士》
1 《不動の聖戦士》
1 《流城の死刑囚》
1 《ぼろぼろの憑依者》
1 《熱錬金術師》
1 《ウルヴェンワルドに囚われしもの》
1 《嘆きのグール》
3 《巧妙なスカーブ》
2 《猛々しい狼》
2 《夜明けのグリフ》
2 《歓喜する信者》
2 《スカースダグの嘆願者》
2 《冷静な建築家》
2 《スレイベンの異血種》
2 《森林の巡回者》
1 《血茨》
1 《裏道の急使》
1 《嵐の伝導者》
1 《既決殺人犯》
1 《捨て身の歩哨》
1 《邪悪の使者》
1 《白髪交じりの釣り人》
1 《鉄覆いの処刑者》
1 《リリアナの精鋭》
1 《薄暮のニブリス》
1 《敬虔な福音者》
1 《稲妻織り》
2 《悟った狂人》
2 《悪鬼を縛る者》
2 《ガヴォニーの不浄なるもの》
1 《薬剤師の霊》
1 《ドルナウの死体あさり》
1 《性急な悪魔》
1 《審問官の雄牛》
1 《鼓舞する隊長》
1 《剛胆な補給兵》
1 《研究室の粗暴者》
1 《気紛れな霊》
1 《火の猟犬》
1 《腐敗心のグール》
1 《くすぶる狼男》
1 《信仰持ちの聖騎士》
1 《グール馬》
1 《セルホフのランプ灯し》
1 《夜深の死体あさり》
1 《爪の群れのウルリッチ》
1 《ヴィルディン群れの除けもの》
1 《不憫なグリフ》
2 《厄介な船沈め》
1 《甚だしい大口》
1 《忌まわしい群れの存在》
2 《溺墓のビヒモス》

-クリーチャー(84)-
1 《聖戦士の盾》
2 《邪悪借用》
2 《流電砲撃》
1 《司祭の祈り》
1 《死の重み》
1 《爆発性の機器》
1 《よろめく帰還》
1 《突発的変化》
1 《縫い師の移植》
1 《奇妙な増強》
1 《テラリオン》
3 《神聖な協力》
2 《信者の杖》
2 《過去との取り組み》
2 《安らぎ》
2 《騎乗追撃》
2 《エムラクールの囁き》
1 《狙いは高く》
1 《内部着火》
1 《有事対策》
1 《血の不穏》
1 《溺墓での天啓》
1 《奇怪な突然変異》
1 《リリアナの憤り》
1 《月皇の外套》
1 《溶岩の地割れ》
1 《月夜の狩り》
1 《ナヒリの策謀》
1 《回答の強要》
1 《無差別な怒り》
1 《信条の香炉》
1 《満ちゆく月》
2 《自暴自棄》
2 《エムラクールの加護》
2 《巻き込み》
2 《異界の進化》
2 《木こりの気概》
1 《秋の憂鬱》
1 《恩寵借用》
1 《集団的努力》
1 《相変位》
1 《癇しゃく》
1 《鉄大工の浄化》
1 《悪戯》
1 《無慈悲な決意》
1 《ナヒリの怒り》
1 《知恵の拝借》
1 《詮索》
1 《根から絶つ》
1 《ステンシアの晩餐》
1 《ウルヴェンワルドの謎》
1 《突き刺さる雨》
1 《悪魔と踊る》
1 《エムラクールの影響》
1 《乗馬術》
1 《銀の一撃》
1 《金縛り》
1 《春の賢者の儀式》
1 《実地研究者、タミヨウ》
1 《錬金術師の挨拶》
1 《内部衝突》
1 《床下から》
1 《行方不明》
1 《灰と化す》
1 《狼族の絆》
1 《生命の危機》
2 《神の導き》
1 《炎の散布》

-呪文(83)-

 デッキ構築が開始されると、3人とも慣れた手つきで、デッキに入らないレベルのカードをより分け、色別にカードをマナカーブ順に並べていく。

 ものの3分でこの作業を終え、ここからは分割する色を検討する。

 チームシールドでは3つのデッキがそれぞれ2色で構築されることが多いと思うが、マジックには5色しか色がないため、どれかの色を2つのデッキで分割することになる。

 このチームは、青緑現出は固定の組み合わせとし、それ以外の3色の組み合わせに青緑のいずれかの色の余ったものを足すという方針のようだ。

 そうなると、

1.青赤、白黒、青緑

2.青黒、白赤、青緑

3.青白、赤黒、青緑

 の組み合わせが候補となる。

 今回のプールはマッドネスパーツが少ないことより、3.の赤黒を含む組み合わせは無いということで、1.か2.に絞られることとなり、まずは、1.の青赤、白黒の組み合わせを試してみることとなった。

 結果、白黒が攻め手に欠けるため辛いということが判り、1.の選択肢は無しに。次に2.の検討に入ろうとしたところで「赤も分割して、黒を使わない」赤青、白赤、青緑という組み合わせはどうだという話が上がる。この『奇策・黒無し』を具体的に詰めていく。

 赤青は3体の強力コモン《巧妙なスカーブ/Ingenious Skaab(EMN)》を中心に据えた果敢ビート、白赤は2枚の《騎乗追撃/Ride Down(EMN)》を携え、通常ではデッキに入るような《神聖な協力/Blessed Alliance(EMN)》も一切使用しない、超前のめりビートダウン。青緑現出は、タッチで《爪の群れのウルリッチ/Ulrich of the Krallenhorde(EMN)》、《炎の散布/Spreading Flames(EMN)》を足す。この組み合わせに対する3人の印象は悪くない。

 現時点で残り40分。

 今の組み合わせを第一候補として、第二候補の組み合わせを検討していく。セカンドプランとして検討を始めたのが、赤緑、青黒、白赤という組み合わせ。この組み合わせをしながら3人が気づいたのが、「このプールは黒も弱いが、白のカードプールが前のめりな方向に寄っており、赤としか組み合わせられない」ということである。そのため、マジック本能的に白赤の組み合わせを残したプランが第二候補として自然と上がっていたのだ。しかし、赤緑は《爪の群れのウルリッチ/Ulrich of the Krallenhorde(EMN)》しか見どころが無く、青黒もゾンビシナジーが無いためどちらもぱっとしない。

 そのため、青赤、白赤、青緑の3色のデッキが決定した。ここからは複数のデッキに入りうるカードの分別を決めていく。まずは《ウェストヴェイルの修道院/Westvale Abbey(SOI)》。これは土地が伸び、クリーチャーの並びやすさも期待できる青緑が引き取ることに。

 次に《内部着火/Burn from Within(SOI)》が最初は白赤に入っていたが、果敢シナジーのある青赤のソーサリー呪文を増やしたいということせ青赤に移動させる。変わりに決め手が薄くなった白赤へ青赤から《ヴィルディン群れの除けもの/Vildin-Pack Outcast(EMN)》を持ってくる。そして、まるまる使われていない黒は、白赤の後手プランとして、白赤のサイドボードにすべて寄せる。

 このようにして、3つのデッキの微調整までが終了し、最後に誰がどのデッキを使うかを決める。経験値の豊富な渡辺が長引きやすいであろう青緑現出を、白赤の《船団の出航/Launch the Fleet(JOU)》デッキプロツアー『タルキール覇王譚』10位入賞した井川が白赤を、中村が青赤を使用するということでまとまり、彼らのデッキは以下のようになった。

デッキ

渡辺 雄也
グランプリ・京都2016 1日目 / 『異界月』『イニストラードを覆う影』チームシールド (2016年9月10日)
8 《森》
7 《島》
2 《山》
1 《ウェストヴェイルの修道院》

-土地(18)-

1 《ケッシグをうろつくもの》
1 《死天狗茸の栽培者》
1 《首絞め》
1 《ウルヴェンワルドに囚われしもの》
2 《歓喜する信者》
1 《裏道の急使》
1 《邪悪の使者》
1 《白髪交じりの釣り人》
1 《冷静な建築家》
2 《悟った狂人》
1 《絡み爪の人狼》
1 《不憫なグリフ》
2 《溺墓のビヒモス》
1 《爪の群れのウルリッチ》

-クリーチャー(17)-
2 《過去との取り組み》
1 《狙いは高く》
1 《ウルヴェンワルドの謎》
1 《金縛り》
1 《炎の散布》

-呪文(6)-
1 《岐路の聖別者》
1 《爆発性の機器》
1 《果敢な捜索者》
1 《躁の書記官》
1 《月夜の狩り》
1 《満ちゆく月》
2 《異界の進化》
2 《木こりの気概》
2 《森林の巡回者》
1 《血茨》
1 《巻き込み》
1 《相変位》
1 《根から絶つ》
1 《冷静な建築家》
1 《ドルナウの死体あさり》
1 《エムラクールの影響》
1 《乗馬術》
1 《剛胆な補給兵》
1 《金縛り》
1 《春の賢者の儀式》
1 《行方不明》
1 《狼族の絆》
1 《忌まわしい群れの存在》

-サイドボード(26)-
中村 肇
グランプリ・京都2016 1日目 / 『異界月』『イニストラードを覆う影』チームシールド (2016年9月10日)
9 《山》
8 《島》

-土地(17)-

1 《苛虐な魔道士》
1 《ぼろぼろの憑依者》
1 《熱錬金術師》
3 《巧妙なスカーブ》
1 《嵐の伝導者》
1 《薄暮のニブリス》
1 《気紛れな霊》
1 《火の猟犬》
1 《くすぶる狼男》
1 《セルホフのランプ灯し》
1 《厄介な船沈め》

-クリーチャー(13)-
2 《流電砲撃》
1 《内部着火》
1 《溺墓での天啓》
1 《回答の強要》
1 《癇しゃく》
1 《ナヒリの怒り》
1 《悪魔と踊る》
1 《錬金術師の挨拶》
1 《灰と化す》

-呪文(10)-
1 《傲慢な新生子》
1 《有事対策》
1 《信者の杖》
1 《霧歩き》
1 《自暴自棄》
1 《巻き込み》
1 《悪戯》
1 《稲妻織り》
1 《身分泥棒》
1 《研究室の粗暴者》
1 《厄介な船沈め》

-サイドボード(11)-
井川 良彦
グランプリ・京都2016 1日目 / 『異界月』『イニストラードを覆う影』チームシールド (2016年9月10日)
10 《平地》
7 《山》

-土地(17)-

1 《厳格な巡邏官》
1 《スレイベンの検査官》
1 《巡礼者の守護霊》
1 《ムーアランドの流れ者》
1 《不動の聖戦士》
2 《猛々しい狼》
2 《夜明けのグリフ》
1 《敬虔な福音者》
2 《悪鬼を縛る者》
1 《薬剤師の霊》
1 《性急な悪魔》
1 《鼓舞する隊長》
1 《信仰持ちの聖騎士》
1 《ヴィルディン群れの除けもの》

-クリーチャー(17)-
2 《騎乗追撃》
1 《信者の杖》
1 《ナヒリの策謀》
1 《信条の香炉》
1 《集団的努力》

-呪文(6)-
1 《聖戦士の盾》
2 《大胆な刺突者》
2 《邪悪借用》
1 《司祭の祈り》
1 《死の重み》
1 《療養所の骸骨》
1 《よろめく帰還》
1 《奇妙な増強》
3 《神聖な協力》
2 《安らぎ》
2 《エムラクールの囁き》
1 《血の不穏》
1 《耕地這い》
1 《孤独な夜番の霊》
1 《墓ネズミ》
1 《奇怪な突然変異》
1 《リリアナの憤り》
1 《月皇の外套》
1 《溶岩の地割れ》
1 《無差別な怒り》
1 《流城の死刑囚》
1 《嘆きのグール》
2 《エムラクールの加護》
2 《スカースダグの嘆願者》
2 《スレイベンの異血種》
1 《自暴自棄》
1 《恩寵借用》
1 《捨て身の歩哨》
1 《鉄覆いの処刑者》
1 《鉄大工の浄化》
1 《リリアナの精鋭》
1 《無慈悲な決意》
1 《知恵の拝借》
1 《詮索》
1 《ステンシアの晩餐》
2 《ガヴォニーの不浄なるもの》
1 《突き刺さる雨》
1 《審問官の雄牛》
1 《腐敗心のグール》
1 《銀の一撃》
1 《ステンシアの亭主》
1 《内部衝突》
1 《床下から》
1 《グール馬》
1 《夜深の死体あさり》
1 《生命の危機》
2 《神の導き》
1 《甚だしい大口》

-サイドボード(59)-

 渡辺は、2人の気の置けないチームメイトと、心の中の『A』とともにこの因縁の地『京都』でのグランプリに挑む。

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