By 矢吹 哲也

　２日目第１ドラフト最終戦のフィーチャー・テーブルでは、ここまで２敗同士のトップ・プロが賑やかにライブラリーをシャッフルしていた。

　それぞれの敗北について「こんなに運がなかったんだぜ」自慢を繰り広げる両者は、そのままお喋りを続け、笑顔を絶やさない。彼らを含め、プロ・シーンの最前線で活躍するプレイヤーたちはみな、最高レベルの戦いを通して友情を育んでいる。愛するゲームの競技的な成功を求め、切磋琢磨する良き仲だ。

　それでもトップ８入賞への行く手を遮るというなら、打ち倒すまで。シャッフルを終えた両者は、ジャッジに「始めていいの？」と尋ねる。

「始めてください」

　お互いにとって、目の前の友人が強敵に変わった瞬間だった。

マーティン・ジュザ/Martin Juza（白青）vs.ブラッド・ネルソン/Brad Nelson（緑青）

　先に動いたのはネルソン、２ターン目《ナーガの生気論者》を繰り出すと、ジュザは《巧みな軍略》で手札を整える。墓地には《実績ある戦闘員》を送ることにも成功し、後半戦の戦力も確保した。

　だがネルソンの展開は早い。彼は《オアシスの祭儀師》を加えてさらにマナを加速すると、《ラムナプのハイドラ》、《川ヤツガシラ》と立て続けに繰り出した。これに対しジュザは、《強制的永眠》で《ラムナプのハイドラ》を封じる。

　一方のジュザの盤面は《空からの導き手》と《ター一門の散兵》。さらに彼は５ターン目に、《ナクタムンの侍臣、テムメト》と《レト一門の槍の達人》を一気に展開し、盤面を固めた。ネルソンは《活力のカルトーシュ》を駆使して《空からの導き手》を除去するが、立ちはだかるジュザの軍勢を前に攻撃には出られない。

　ジュザは墓地の《実績ある戦闘員》の「永遠」を起動し、４/４のクリーチャーを盤面に加えた。

　このフィーチャー卓にはTwitchでの配信用にすべてのトークン・カードが用意されているのだが、『アモンケット』ブロックのトークンの種類が膨大であるため《実績ある戦闘員》のトークンがすぐに見つからず、ジュザは「永遠」のトークンが置かれた場所をしばらく探る。

「ええと、どれだ。４/４、４/４......」

「いや、全部４/４だよ」と、ネルソンがお目当てのトークンを渡すのだった。

　一瞬戦いの雰囲気が緩んだものの、ネルソンが《主張》でそれを奪うと仕切り直し。ジュザも盤面へのクリーチャーの供給を止めず、戦場は膠着状態へ。

　しかし全体的にクリーチャーのサイズで劣るジュザの盤面は、ネルソンの攻撃を食い止めるうちに少しずつ削られていった。それでもなお止まらないネルソンの攻勢が《エイヴンの修練者》による飛行戦力まで獲得すると、ジュザはライブラリーへ手を伸ばすことになった。

序盤の高速展開から見事に押し切ったネルソン。

　第２ゲーム、初手を眺めて「OK」と発声したジュザに対し「NO」と７枚のカードをライブラリーへ戻すネルソン。６枚のカードに頷くと、勢い込んで《平地》を出そうとしたジュザを止めて占術を行う。

　ジュザは１ターン目から《扇持ち》、続けて《ミイラの大王》と展開。３ターン目には《空からの導き手》を追加し素早く攻め込む。

　ネルソンは《活力のカルトーシュ》と《苦しめる一射》でそれを防ぐが、ジュザは《尽きぬ希望のエイヴン》、そして２枚目の《扇持ち》と展開を続け高速ビートを決める。

第１ゲームから一転、軽量クリーチャーによる高速の攻めを見せるジュザ。

　返しのターンを何もプレイせず終えたネルソンに「面白い......」とつぶやくジュザは、意を決して《微光鱗のドレイク》をプレイ。しかしそれは《検閲》を受け、今度はネルソンが盤面を構築する時間が生まれた。

　互いに手札を使い切り、戦場は膠着。しかしネルソンの盤面には《川ヤツガシラ》がおり、その能力でアドバンテージ差を生み出していく。さらに《約束の刻》で２/２のゾンビを２体追加したネルソンの盤面は、突破困難なものになる。

　ジュザは《空からの導き手》を加えてなんとか攻撃を通そうとするが、《尽きぬ希望のエイヴン》が《主張》で奪われると、その希望も断たれた。まだライフは残っているものの、手札も盤面も、両者の間にある差はいかんともし難い。

　しばらく最後のドローを眺めたジュザだが、やがてひと息つくと右手を伸ばしたのだった。

ジュザ 0-2 ネルソン

　試合の決着後も有用なカードや戦略について意見を交わす両者。今大会２日目のフォーマットは、来週のプロツアーでも行われる『アモンケット』ブロック・ドラフトだ。彼らにとっての「本番」に向けて、練習は続く。