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グランプリ・京都2018

トピック

前回チームグランプリ王者『Monyjapan』(早川、阿部、橘チーム)のこれまでと今と、これから

Text by Genki Moriyasu

3月21日。3日後のグランプリ・京都2018本戦へ向けて。

 前回の国内グランプリ王者チーム『Monyjapan』のメンバー、阿部 倫央は銭湯に通うことをルーティーンとしている。

 温かいお湯と冷たい水風呂に交互に入ることで血流を良くする『交互浴』の実践者であった。

 グランプリ・京都2018本戦の3日前にあたる3月21日も、普段と変わらず通いの銭湯に姿を見せた。

 交互浴の後には近くの居酒屋で友人らと笑い話に華を咲かせる。

 そこはグランプリ・静岡2017秋以降、いろいろなマジック・プレイヤーが彼の勝利を祝った場所でもあった。

「それでもやっぱりマジック、楽しいんですよね。」

 仕事と趣味の兼ね合いをどうするか......という話のとき、阿部は語った。
 土曜出勤の多い職場でもあるようで、常に公私のバランス調整は気にかけている。

「チームメンバーとは練習のタイミングがなかなか合わせられなかったですけど、モダンの練習はしてますよ。」

 モダン担当の阿部自身は、すでに持ち込むデッキのリストもほとんど決まっているとのことだ。

 また3つのフォーマットによるチーム構築という初の試みである今大会においては、チームメンバー内で密な練習量を図るよりも、各々のスキルアップを重視すべきだろうという考えもあるようだった。

 どこかで集まらなくとも、それぞれの状況報告・連絡はしっかり取り合っているようだ。

 スタンダード担当、早川のデッキ選択についてのLINEのやりとりをその場でもしていた。

当日の様子。

 水曜の夜も悩んでいたデッキ選択は、いよいよ決まったようだ。

 
(写真左から)橘・阿部・早川

 スタンダード担当の早川が「青白・王神の贈り物」。
 プロツアー予備予選などにもこれで参加しており、「好感触」と話す。

 モダン担当の阿部が、「ホロウワン」。
 「呪禁オーラ」や「バーン」と悩んだようだが、その独特な動きを気に入っているようだ。

 レガシー担当の橘が「グリクシス・デルバー」。
 3人とも普段レガシーを触っていないなかでの「消去法的座席」とも表現していた。
 しかしそれは小回り・選択肢の多いなかでもそれを乗りこなす自信との両立でもあったようだ。

 実際にマッチが始まると、しばらくの間は早川の青白王神が景気良く回っていたようだ。

 
早川 翔

 早川は「4ターン目王神(《復元》で墓地の《王神の贈り物》を戻す。)が3ゲーム決まってるよ」と3マッチ終了地点で話してくれた。
 事実、フィーチャーマッチテーブルで行なわれた第1ラウンドでは《大災厄》を打たれながらも4ターン目・《王神の贈り物》を決めている。

 「ホロウワン」の阿部も「デッキは良いポジション」と話す。

 
阿部 倫央

 Magic Onlineと異なり、《燃え立つ調査》や《ゴブリンの知識》の際のランダム・ディスカードのときの相手とのコミュニケーションが楽しいとも話して、「自分はホロウワンに合っている」と語った。
 ただ、意識されてきている感覚もあり、「緑系にはベイロス(《強情なベイロス》)もいるね」と付け加えた。

 対して、橘だけは「グリデル(グリクシス・デルバー)は立ち位置がかなり悪かった。意識されている」と口にする。
 現状、グリデル環境とも呼ぶ者のいるレガシーにおいて、その王座陥落を狙ったアンチ・デッキはかなりの数がいたようだ。

 
橘 健太郎

 それぞれに勝ち負けが積み重なったようだが、チームとしては噛み合い悪く、結果としては5回戦終了地点で2勝3敗となっていた。
 2敗ラインで足切りとなる今戦においては2日目進出の目はなくなったが、まだまだ戦いへの意欲は枯れていないようだ。

プロツアー『イクサランの相克』での想い。

 その意欲の根源は、やはり先日のプロツアー『イクサランの相克』での敗戦にあった。
 3人とも「ナヤ・ブリーチ」をシェアしての参加であったが、想定外に苦手な「5色人間」が多かったことから苦戦を強いられた。

 プロツアーの感想を聞いたとき、早川が「初日落ちは悔しかった。」と、最初に口を開いてくれた。

「あと、最終戦の相手が瀬畑さん(市川ユウキプロ)だったんですが、『俺も初めてのときは初日落ちだったよ。その悔しさをバネに、頑張ってね』って伝えてくれて。より頑張ろうって思いました」

 プロツアー。プロしかいない大会。やはりその難度、緊張感は初めて触れる人々を興奮させ、高揚させるものだったようだ。

「仕事の関係でマジック・コミュニティも今までのところから移り変わったんですが、皆さん受け入れてくれていて楽しく遊べています。」

 そしてそれは大舞台だけでなく、日常の生活にも連なっていた。

 阿部も「やっぱり、もう1回行きたいですね。」と続けた。

「練習するようになりました。まだ自分のなかでも固まってないんですが、マジックに対する向き合い方が変わりました。プロ・ポイント、欲しいです!」

 阿部はマジックに対する情熱を口にし続けた。

「賞金でレガシーも組みました。選択肢が広がりましたね。」と、「オール・イン」の気配もうかがわせる。

 その2人とは対照的に、橘は「これまでと変わらないスタンスでマジックを楽しみ続けてる。」という。

「橘は一番マジックに触っていないが、一番マジックの知識がある。」とも阿部は付け加えた。

team_hayakawa_abe_tachibana_03.jpg

 熱い2人。それを客観的に支える1人。バランスの取れたチームの面もあるようだ。

 5年ほど前に違うカードゲームで知り合い、PWC(関東の大規模な草の根大会)に参加するためにチームを組んでいる。

 練習の感覚もマジックに対するスタンスも異なる3人だが、「もう他の人とは組めないよ」と、これからもチームで在り続けることを当然のように全員が笑って話す。

 プロツアーへの再挑戦。
 その願いは4勝4敗という記録を残したグランプリ・本戦では叶わなかったが、まだチャンスは残されている。
 1日の最後には明日のプロツアー予選に向けて気持ちを新たにしていた。

 そう、明日のプロツアー予選のフォーマットはチーム・シールド。
 彼らにグランプリ優勝の杯をもたらしたフォーマットだ。

「明日こんなに負けたら、言い訳できないよ。」

 早川が笑いながらももらした一言には、少なからず決意がこもっていた。

 チーム『Monyjapan』。

 熱意だけではない、想いだけではない、知識だけではない。

 彼らがプロ・シーンに戻るのに、そう日はいらないことだろう。

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RESULTS

対戦結果 順位
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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