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【戦略記事】 スタンダードの基本の「き」 Part2:Tempt

【戦略記事】 スタンダードの基本の「き」 Part2:Tempt

by Jun'ya Takahashi

 みなさんお待ちかね。ここではPart1に引き続き、グランプリ・名古屋本戦に見られるであろうデッキの紹介をしていこう。

 Part1では、アメリカで行われたグランプリ・サンアントニオの覇者であるラクドスミッドレンジの魅力と、それに抗うコントロールたちを紹介した。重くもタフな速攻クリーチャーがいかに驚異的だったかが伝わったと思う。

 ただ、そんな圧倒的な攻撃力を持ったデッキはラクドスミッドレンジだけではないのだ。

 わずか4ターン目に20点ものライフが削りきられてしまった。

 3ターン目の攻撃で2桁に届かんばかりのダメージを受けた。

 こんな光景は現在のスタンダード環境ではそう珍しくもない話なのである。

 このPart2においては、そんな攻撃性や展開力に特化したアグロデッキたちを紹介しよう。

緑白アグロ
9 《森》
4 《平地》
4 《寺院の庭》
4 《陽花弁の木立ち》
2 《ガヴォニーの居住区》

-土地(23)-

4 《東屋のエルフ》
4 《アヴァシンの巡礼者》
4 《絡み根の霊》
4 《ロクソドンの強打者》
4 《銀刃の聖騎士》
2 《国境地帯のレインジャー》
4 《修復の天使》
3 《ウルフィーの銀心》

-クリーチャー(29)-
4 《怨恨》
2 《セレズニアの魔除け》
2 《情け知らずのガラク》

-呪文(8)-
2 《スレイベンの守護者、サリア》
2 《剛胆な勇士》
3 《ケンタウルスの癒し手》
2 《セレズニアの声、トロスターニ》
1 《スラーグ牙》
1 《信仰の盾》
2 《地の封印》
2 《獰猛さの勝利》

-サイドボード(15)-

 1ターン目の《アヴァシンの巡礼者/Avacyn's Pilgrim(ISD)》から、2ターン目の《ロクソドンの強打者/Loxodon Smiter(RTR)》。そして、それが3ターン目には《怨恨/Rancor(M13)》と《銀刃の聖騎士/Silverblade Paladin(AVR)》のバックアップを受けて二段攻撃をもったパワー6のクリーチャーとなって対戦相手に襲いかかる。

 こんな圧倒的な攻撃力をもったデッキこそが、この緑白アグロだ。

 マナクリーチャーを経由して2ターン目に3マナを捻出する古典的な構築だが、現在でも尚、そのシンプルかつ強力な戦略には多くのファンがついている。

 基本セット2013で再録された《怨恨/Rancor(M13)》による定評通りの攻撃力に、《銀刃の聖騎士/Silverblade Paladin(AVR)》と《ウルフィーの銀心/Wolfir Silverheart(AVR)》というどこか壊れた2種類の強化クリーチャーのバックアップも加わると、ゲーム開始時にある20点ばかりのライフが非常に小さな数字に思わされる。

 見ての通り対戦相手の行動を邪魔するカードは数えるほどにしか入っておらず、自分の行動を攻撃に偏らせていることから防御に回るとめっぽう弱いのが玉に瑕だ。それでも、その代わりに防御を捨ててでも手に入れた攻撃力と決定力には眼をみはるものがある。

 ただ、このデッキの戦略はマナクリーチャーの有無で勝率が大きく変動してしまうため、やや不安定な一面も持ち合わせているのが気にかかるところだろう。これはマナクリーチャー戦略ならではの欠点でもあるので、構造的な問題とも言えるのだが、アグロデッキを選ぶプレイヤーの中にはこのピーキーさを嫌う人は多い。

 そんな心配性な彼らにぴったりな安定した緑白系アグロは、この緑白人間だ。

緑白人間
4 《森》
4 《平地》
4 《寺院の庭》
4 《陽花弁の木立ち》
4 《魂の洞窟》
4 《ガヴォニーの居住区》

-土地(24)-

4 《アヴァシンの巡礼者》
4 《教区の勇者》
2 《ウルヴェンワルドの足跡追い》
4 《栄光の騎士》
4 《アヴァブルックの町長》
2 《スレイベンの守護者、サリア》
4 《悪鬼の狩人》
4 《銀刃の聖騎士》
4 《ガヴォニーの騎手》
4 《荘厳な大天使》

-クリーチャー(36)-

-呪文(0)-
4 《近野の巡礼者》
1 《スレイベンの守護者、サリア》
2 《忌まわしきものの処刑者》
1 《墓場の浄化》
3 《勇壮の時》
2 《天啓の光》
2 《安らかなる眠り》

-サイドボード(15)-

 こちらも同じ緑白の攻撃的なデッキながら、緑白アグロとは異なるアプローチを取ったデッキである。

 注目すべくは、呪文が全く採用されていない点だろう。

 あれほど強力な《怨恨/Rancor(M13)》や《セレズニアの魔除け/Selesnya Charm(RTR)》さえ1枚たりとも採用されていない。これはなぜなのだろうか。

 その答えは『人間』という種族シナジーを追求した点にある。

 《教区の勇者/Champion of the Parish(ISD)》や《アヴァブルックの町長/Mayor of Avabruck(ISD)》などは、同種族である『人間』の数が増すほどに力強く、効果の規模が広がっていくデザインがされている。そしてこの『人間』が増えることでのメリットを限りなく強調したデッキこそが、この緑白人間なのである。

 呪文がクリーチャーをバックアップする構造をとっていた緑白アグロに対して、緑白人間ではクリーチャーをクリーチャーがバックアップするという波状の構造をしている。

 《ガヴォニーの騎手/Riders of Gavony(AVR)》や《荘厳な大天使/Sublime Archangel(M13)》は明確に突破口をこじ開けることに貢献し、《ウルヴェンワルドの足跡追い/Ulvenwald Tracker(AVR)》や《悪鬼の狩人/Fiend Hunter(ISD)》はクリーチャーでありながらも除去として機能するのだ。

 どこを引いても『人間』か土地。どの人間を引いてきたかは重要な問題ではあるが、基本的には安定したゲーム展開を期待できるだけの重心が緑白人間にはある。

赤単
22 《山》
3 《魂の洞窟》

-土地(25)-

4 《ラクドスの哄笑者》
4 《流城の貴族》
4 《流血の家の鎖歩き》
4 《灰の盲信者》
4 《紅蓮心の狼》
4 《地獄乗り》
4 《雷口のヘルカイト》

-クリーチャー(28)-
3 《火柱》
4 《灼熱の槍》

-呪文(7)-
1 《火柱》
4 《ミジウムの迫撃砲》
3 《いかづち》
3 《裏切りの血》
4 《炬火の炎》

-サイドボード(15)-

 マナクリーチャー戦略に種族シナジー戦略と、新しいカードを使用しつつも既視感のある2つのデッキを紹介してきたが、3つ目に紹介するこのデッキもどこか懐かしさを感じさせるものだ。

 それが赤単アグロである。

 軽量クリーチャーによる速攻や、大量の火力呪文で焼ききるイメージが強い従来の赤単アグロではあるが、今回のスタンダード環境においては一風変わった構成になっている。

 《ラクドスの哄笑者/Rakdos Cackler(RTR)》に《流城の貴族/Stromkirk Noble(ISD)》と最高レベルの1マナ域に始まり、パワーアタッカーである《地獄乗り/Hellrider(DKA)》と《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite(M13)》で締める、というゲームの序盤から終盤に渡って戦いぬく構成をとっているのだ。

 かつて《貪欲なるベイロス/Ravenous Baloth(ONS)》や《ロクソドンの教主/Loxodon Hierarch(RAV)》に苦しめられた赤系のデッキは、今現在においても《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》や《スフィンクスの啓示/Sphinx's Revelation(RTR)》という破格のライフゲインカードに悩まされており、この赤単アグロもその被害者の会の一員である。

 だが、この苦しい状況にあっても赤単アグロは生き抜く方策を模索し続け、その結果としてたどり着いた形が上で紹介したデッキ構成だったのだ。

 《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》を《紅蓮心の狼/Pyreheart Wolf(DKA)》と《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite(M13)》ですり抜け、《スフィンクスの啓示/Sphinx's Revelation(RTR)》には序盤からの強いプレッシャーと《地獄乗り/Hellrider(DKA)》が猶予を与えない。

 ラクドスミッドレンジでも見られた《地獄乗り/Hellrider(DKA)》と《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite(M13)》という2種類の巨大な速攻クリーチャーこそが他のアグロデッキと一線を画する部分であり、最高速度やシナジー等では緑白系を筆頭とした他のアグロデッキには敵わないものの、火力呪文や速攻による奇襲は赤単アグロならではの魅力だ。

黒赤ゾンビ
10 《沼》
4 《血の墓所》
4 《竜髑髏の山頂》
1 《ラクドスのギルド門》
4 《魂の洞窟》

-土地(23)-

4 《戦墓のグール》
4 《墓所這い》
4 《ラクドスの哄笑者》
4 《血の芸術家》
4 《血の座の吸血鬼》
3 《悪名の騎士》
4 《ゲラルフの伝書使》
4 《ファルケンラスの貴種》

-クリーチャー(31)-
2 《悲劇的な過ち》
4 《反逆の印》

-呪文(6)-
3 《火柱》
2 《脳食願望》
2 《強迫》
3 《忌むべき者のかがり火》
1 《夜の犠牲》
2 《吸血鬼の夜鷲》
2 《士気溢れる徴集兵》

-サイドボード(15)-

 黒赤といえばラクドス。ラクドスといえばラクドスミッドレンジ。

 ラクドスというカラーリングから連想されるデッキは、もはやラクドスミッドレンジの印象が強い昨今ではあるが、半年ほど前のスタンダードを思い出すとラクドスといえば黒赤ゾンビだった。多くの『ゾンビ』はイニストラードブロックのものであったため、半年前の異なる環境のスタンダードから顔ぶれはあまり変わっていない。

 Part1で紹介したラクドスミッドレンジと明確に異なる部分は、ラクドスミッドレンジの特徴とも言える《地獄乗り/Hellrider(DKA)》や《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite(M13)》といった軽量アグロには異質な存在がすっぽりと抜け、代わりに本来のアグロデッキらしい軽量クリーチャーがその穴を埋めている。

 そのすき間を埋めた1枚である《血の座の吸血鬼/Bloodthrone Vampire(M13)》は、ゾンビデッキらしい『生け贄システム』を強調するカードだ。墓地から帰還する《墓所這い/Gravecrawler(DKA)》との相性はもちろんのこと、《血の芸術家/Blood Artist(AVR)》や《反逆の印/Mark of Mutiny(ZEN)》といった面々も『生け贄システム』を構成する特徴的なカードとして採用されている。

 大量の1マナ域を惜しげもなく戦場に放り込みながら、《血の芸術家/Blood Artist(AVR)》によって細かくライフを削りとり、混雑した地上戦を飛び越える《ファルケンラスの貴種/Falkenrath Aristocrat(DKA)》がゲームを決める。とにかくカードが軽いことが魅力であり、それを生かした手数の多さこそが黒赤ゾンビの真骨頂だ。

 《反逆の印/Mark of Mutiny(ZEN)》や《血の座の吸血鬼/Bloodthrone Vampire(M13)》などトリッキーなカードが多く、赤単アグロ以上に対戦相手の意表をつくことには長けている。

 重く太くを目指したラクドスミッドレンジに対して、軽く細かくを目指した黒赤ゾンビと両極端にわかれたラクドス陣営だが、この名古屋の地で活躍するのはどちらなのかは注目すべきトピックの一つだろう。

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