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【戦略記事】 スタンダードの基本の「き」 Part3:Providence

【戦略記事】 スタンダードの基本の「き」 Part3:Providence

by Jun'ya Takahashi

 それでは、名古屋における主要なデッキ紹介の最終回である第3回を始めよう。

 今回は、ミッドレンジと呼ばれる中速のタフなデッキ群を中心に取りあげる。対戦相手の速度に応じて攻防自在かつ柔軟なゲーム展開ができるミッドレンジには、その柔軟性を支えるため幅広いマナ域に各色の強力なカードが散りばめられている。それは除去であったり、1枚でゲーム展開を左右できるほどのインパクトのあるクリーチャーだったりすることが多い。ゲーム展開が早まっても遅くなっても、攻防どちらの立場に立たされても機能するような、とにかく価値が変わりにくいカードこそがミッドレンジを構築する際のカードを選択する基準の一つになっている。

 現在のスタンダード環境におけるミッドレンジを象徴するカードは、《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》だ。これはカードの効果を読んでもらえれば、その破格さはわかっていただけると思う。5点のライフを得て、パワー5のブロッカーとなり、頑張って倒してもおまけで3/3のビーストを残していく。戦闘しても除去しても何かしらの問題が押し付けられる最高スペックのクリーチャーなのだ。

 アグロデッキには最高のブロッカー。コントロールには除去耐性のあるタフなアタッカー。

 中盤戦では序盤に失ったライフを補填し、終盤では消耗戦によって摩耗した戦力を増強する。

 この八面六臂の活躍を見せる5マナのビーストをどのようにサポートし、それをいかにうまく使い切るか。この一点こそが現在のミッドレンジのコンセプトである。今回紹介するデッキたちも『《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》の使い方』においてそれぞれの違いが見える。

  • ナヤ
  • 緑白祝福
  • リアニメーター
  • ジャンド

 これらが今回紹介する4つのデッキなのだが、ジャンド以外の3つでは《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》を利用したとあるシナジーがデッキの主軸となっている。それが《修復の天使/Restoration Angel(AVR)》+《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》という組み合わせであり、《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》を《修復の天使/Restoration Angel(AVR)》の能力で明滅させることで、《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》の「戦場に出たときの能力」と「戦場を離れたときの能力」を誘発させることができるのだ。

 普通に強力なカードでもある《修復の天使/Restoration Angel(AVR)》が、《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》がいることで更に強さを増すとなれば、それだけでデッキを構築する理由にはなるだろう。それではまず、緑白系の3種であるナヤ、緑白祝福、リアニメーターの構成を見てみよう。

ナヤ
4 《魂の洞窟》
4 《森》
4 《根縛りの岩山》
4 《寺院の庭》
3 《断崖の避難所》
3 《山》
2 《ケッシグの狼の地》

-土地(24)-

4 《アヴァシンの巡礼者》
4 《ロクソドンの強打者》
4 《高原の狩りの達人》
4 《修復の天使》
4 《雷口のヘルカイト》
4 《スラーグ牙》

-クリーチャー(24)-
4 《忌むべき者のかがり火》
4 《セレズニアの魔除け》
4 《遥か見》

-呪文(12)-
4 《火柱》
3 《安らかなる眠り》
3 《忘却の輪》
2 《原初の狩人、ガラク》
3 《静穏の天使》

-サイドボード(15)-

 2種類のマナ加速である《アヴァシンの巡礼者/Avacyn's Pilgrim(ISD)》と《遥か見/Farseek(RAV)》を軸に、4マナや5マナの強力なクリーチャーをより早いゲームでプレイすることを目的にした緑白赤のミッドレンジだ。

 マナ加速+《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》+天使という緑白系の骨子に加えて、スパイスとして散りばめられているのが赤いカードたちだ。

  • 《高原の狩りの達人/Huntmaster of the Fells(DKA)》
  • 《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite(M13)》
  • 《忌むべき者のかがり火/Bonfire of the Damned(AVR)》
  • 《ケッシグの狼の地/Kessig Wolf Run(ISD)》

 「小さな《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》」とも言える《高原の狩りの達人/Huntmaster of the Fells(DKA)》はかゆいところに手が届くグッドスタッフで、コントロールと同型を打破するための《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite(M13)》と《ケッシグの狼の地/Kessig Wolf Run(ISD)》に、あらゆるアグロの努力を無に帰す《忌むべき者のかがり火/Bonfire of the Damned(AVR)》といった具合である。

 サイドボードに4枚採用されている《火柱/Pillar of Flame(AVR)》は、ラクドスミッドレンジの《ゲラルフの伝書使/Geralf's Messenger(DKA)》を対処するに便利な1枚であり、万能除去の《忘却の輪/Oblivion Ring(LRW)》とともにラクドスミッドレンジへの警戒が伺える。

 緑白という色の特性の問題で対戦相手の行動に干渉できないため、クリーチャーで盤面を制圧していくことが緑白系ミッドレンジの主な戦略となっている。そのため、展開力を武器にしているアグロデッキには圧倒されることも珍しくないのだが、赤を採用したナヤは、《高原の狩りの達人/Huntmaster of the Fells(DKA)》と《忌むべき者のかがり火/Bonfire of the Damned(AVR)》によってそのような一方的な展開に待ったをかけられるように構築されている点が魅力だろう。

 やや重い印象のある《忌むべき者のかがり火/Bonfire of the Damned(AVR)》だが、マナ加速の助けがあれば十分な効果が期待できる上に、デッキに4枚も入っていれば「奇跡」はしばしば起こるものだ。

緑白祝福
8 《森》
4 《ガヴォニーの居住区》
4 《陽花弁の木立ち》
4 《寺院の庭》
2 《魂の洞窟》
2 《平地》

-土地(24)-

4 《アヴァシンの巡礼者》
3 《東屋のエルフ》
3 《ロクソドンの強打者》
3 《国境地帯のレインジャー》
4 《修復の天使》
2 《霊誉の僧兵》
4 《スラーグ牙》

-クリーチャー(23)-
3 《セレズニアの魔除け》
3 《忘却の輪》
4 《情け知らずのガラク》
3 《集団的祝福》

-呪文(13)-
2 《セレズニアの声、トロスターニ》
3 《ケンタウルスの癒し手》
3 《安らかなる眠り》
1 《ロクソドンの強打者》
1 《天啓の光》
2 《押し潰す蔦》
2 《静穏の天使》

-サイドボード(14)-

 ナヤのように補色をすることなく、純粋に緑白という2色で綺麗にまとめたものが緑白祝福と呼ばれるデッキだ。デッキ名の由来となっている《集団的祝福/Collective Blessing(RTR)》がデッキの鍵となっている。

 マナクリーチャーのマナ加速に始まり、《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》や《霊誉の僧兵/Geist-Honored Monk(ISD)》といった制圧力の高いクリーチャーを展開して殴り切ることが基本的な戦略である。しかし、周囲も《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》を使用している可能性は十分にあり、お互いに《修復の天使/Restoration Angel(AVR)》まで採用していることを加味すると、ぐだぐだのにらみ合いになることは必至なのだ。

 そこで輝く1枚が《集団的祝福/Collective Blessing(RTR)》である。

 お互いが似通ったサイズのクリーチャーをコントロールしている場合に、片方だけが+3/+3の修正を受けたならばゲームの行方を察することはそう難しくない。ナヤが《忌むべき者のかがり火/Bonfire of the Damned(AVR)》による突破口を見つけたように、緑白祝福では《集団的祝福/Collective Blessing(RTR)》を突破口に構築しているのだ。

 多くの緑白系で採用されている《ガヴォニーの居住区/Gavony Township(ISD)》に加えての《集団的祝福/Collective Blessing(RTR)》は、地上戦や愚直なクリーチャー同士の戦闘を想定しているデッキに対して強力で、ゲームの終盤には使用価値が薄まってしまうマナクリーチャーを4/4の巨大なアタッカーとして再活用できる点も見逃せない。

 パーマネントによる制圧を目論んでいるため、ナヤのようにパーマネントに偏っている系統のデッキには有利であるものの、《至高の評決/Supreme Verdict(RTR)》や《終末/Terminus(AVR)》を採用しているコントロール系にはやや分が悪いことが悩みではある。それでも《集団的祝福/Collective Blessing(RTR)》は継続して後続のクリーチャーたちをバックアップし、4枚の《情け知らずのガラク/Garruk Relentless(ISD)》が安定してクリーチャーを供給してくれることは心強い。

 今大会の注目株の一つである。

リアニメーター
4 《草むした墓》
4 《寺院の庭》
3 《魂の洞窟》
3 《森》
3 《陽花弁の木立ち》
3 《森林の墓地》
1 《平地》
1 《沼》
1 《大天使の霊堂》

-土地(23)-

4 《東屋のエルフ》
4 《アヴァシンの巡礼者》
3 《国境地帯のレインジャー》
4 《修復の天使》
4 《静穏の天使》
4 《スラーグ牙》
2 《孔蹄のビヒモス》

-クリーチャー(25)-
4 《忌まわしい回収》
4 《根囲い》
4 《堀葬の儀式》

-呪文(12)-
2 《死儀礼のシャーマン》
1 《魂の洞窟》
3 《ケンタウルスの癒し手》
1 《天啓の光》
2 《忘却の輪》
2 《集団的祝福》
2 《血統の切断》
2 《絹鎖の蜘蛛》

-サイドボード(15)-

 墓地に落として釣り上げる。なんとも大雑把だが、その釣り上げてくるクリーチャーが強力ならば、それだけで一級線の性能を持ったデッキになる。

 このリアニメーターは《忌まわしい回収/Grisly Salvage(RTR)》や《根囲い/Mulch(ISD)》によって《静穏の天使/Angel of Serenity(RTR)》あるいは《孔蹄のビヒモス/Craterhoof Behemoth(AVR)》を墓地に落とし、《堀葬の儀式/Unburial Rites(ISD)》で彼らを「リアニメート」することを主戦略にしている。

 ただ、それら釣り上げる先の枚数はデッキの中に6枚しかないため、1回や2回の《忌まわしい回収/Grisly Salvage(RTR)》や《根囲い/Mulch(ISD)》では墓地に落とせない可能性も十分にある。そこで第2のプランとなる対象が《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》なのである。

 除去された《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》、《忌まわしい回収/Grisly Salvage(RTR)》で墓地に落ちた《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》、戦闘で死んだ《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》。ゲームの中の多くの場面において《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》は墓地に行きやすく、《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》の枚数でゲームの行方は左右されることも少なくない。

 そのため、このリアニメートでは、《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》を最大限に活用するために《堀葬の儀式/Unburial Rites(ISD)》の力で幾度も《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》を展開しようというコンセプトも内蔵しているのだ。《静穏の天使/Angel of Serenity(RTR)》の能力で自身の《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》を回収することも思えば、その回数は予想できないほどだ。

 通常の《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》デッキが、

『《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》+《修復の天使/Restoration Angel(AVR)》+X』

 程度の構成であるのに対し、このリアニメートにおいては

『《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》+《修復の天使/Restoration Angel(AVR)》+《静穏の天使/Angel of Serenity(RTR)》+《堀葬の儀式/Unburial Rites(ISD)》』

 という徹底して《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》を連打する意志が見える。

 この《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》祭りによって遅くなったゲームには《孔蹄のビヒモス/Craterhoof Behemoth(AVR)》や《静穏の天使/Angel of Serenity(RTR)》が間に合い、うっかり序盤の墓地肥やしで彼らが墓地に落ちてしまえば《堀葬の儀式/Unburial Rites(ISD)》で釣り上げていきなりクライマックスな序盤を迎えることもできる。

 最速でありつつも最遅のゲームプランを持つ強力なデッキなのだ。

 ただ、その戦略の多くを墓地利用に頼っているため、サイドボード後に対戦相手が施すであろう「墓地対策」には苦労することになる。骨子はマナクリーチャーと《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》+《修復の天使/Restoration Angel(AVR)》であるため、デッキの構造が崩壊してしまうといったほどではないのが救いではあるものの、厳しいゲーム展開は避けられない。

 今大会での墓地対策への意識のされ具合がリアニメーターの成功の鍵を握っている。

ジャンド
4 《血の墓所》
4 《草むした墓》
4 《根縛りの岩山》
4 《森林の墓地》
2 《森》
2 《ケッシグの狼の地》
1 《魂の洞窟》
1 《沼》

-土地(22)-

4 《高原の狩りの達人》
2 《オリヴィア・ヴォルダーレン》
4 《スラーグ牙》

-クリーチャー(10)-
3 《忌むべき者のかがり火》
2 《戦慄掘り》
2 《火柱》
2 《ラクドスの復活》
1 《突然の衰微》
1 《悲劇的な過ち》
4 《遥か見》
2 《究極の価格》
1 《ミジウムの迫撃砲》
3 《原初の狩人、ガラク》
3 《ラクドスの魔鍵》
1 《血統の切断》
1 《ニンの杖》

-呪文(26)-
2 《死儀礼のシャーマン》
2 《火柱》
1 《突然の衰微》
1 《脳食願望》
1 《強迫》
1 《ラクドスの復活》
1 《ミジウムの迫撃砲》
3 《殺戮遊戯》
2 《雷口のヘルカイト》
1 《血統の切断》

-サイドボード(15)-

 これまでの3つは《修復の天使/Restoration Angel(AVR)》によって《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》をより良く活用するデッキを紹介してきたが、最期に紹介するジャンドでは、その他多くの除去呪文の一つとして《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》を利用しているという少し変わったコンセプトを採用している。

 《戦慄掘り/Dreadbore(RTR)》に始まり、数多くの赤と黒の除去呪文が搭載されたジャンドの戦略は、対戦相手の脅威を緑白系のようにパーマネントで受けるのではなく除去呪文で捌くという点にある。ブロッカーを用意するのではなく、脅威の一つ一つへと対応するため、緑白系よりも守備的かつ確実に対戦相手の行動を阻害できる。

 ただ、そのような除去呪文では対応できない類のカードが跋扈しているのが現在のスタンダードである。その典型的な1枚は《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》と《高原の狩りの達人/Huntmaster of the Fells(DKA)》である。どちらも1枚の除去呪文では対処しきれない優秀なクリーチャーであるため、彼らに対してはそれ専用の対抗策が必要なのだ。

 そして、ジャンドが採用したものは、対戦相手の脅威と全く同じものを利用するというアイデアだった。《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》が怖ければ自分も《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》を使えばいい。《高原の狩りの達人/Huntmaster of the Fells(DKA)》がややこしければ自分も同様に使用することで少なくとも不利ではなくなるだろう。

 赤黒という除去呪文に、除去呪文では対応できない数枚への回答として緑の強力なカードをタッチしているのだ。

 豊富な除去に囲われた強力なカードという構成は、かつてアラーラブロックの環境で活躍した続唱ジャンドを彷彿とさせる。このグランプリ・名古屋でジャンドこそが最強のカラーリングであることを証明できるかに期待がかかる。

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