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【戦略記事】 Deck Tech:遠藤 亮太の緑白ミッドレンジ

【戦略記事】 Deck Tech:遠藤 亮太の緑白ミッドレンジ

by Jun'ya Takahashi

 今大会は日本最高記録となる出場者、実に1,689人を誇るトーナメントである。つまりその人数と等しい1,689個のデッキが会場には存在する。これほどまでの数になると会場で最も強いデッキを探すことはとても困難なことなのだが、その最強のデッキに心当たりがあることを今思い出した。

岩崎 「1500人のなかで最も強いデッキを作った。もう不安がないことが不安だわ」

 これは渡辺 雄也(神奈川)の初タイトルであるグランプリ・京都2007の決勝を戦った岩崎 裕輔(大阪)の弁である。『Project X』という難解なコンボデッキを操った構築巧者の一人で、どうやら噂の『会場で最強のデッキ』はこの岩崎が制作したデッキらしい。

 デッキ選択に悩んでいたプレイヤーの一群は、この言葉を信じてそれに乗り換えていったのだ。そして、第14回戦を終えた時点での上位プレイヤーに、それを操るプレイヤーの名前を見つけた。


遠藤 亮太

 若手のホープである遠藤 亮太(埼玉)だ。トッププレイヤーでありつつ優れたデッキビルダーでもある彼は、グランプリ・横浜2012において旋風を巻き起こした『Kiki-Pod』の製作者である。そんな今をときめくデッキルダーが惹かれたデッキとはどのようなものだったのだろうか。

 その『最強』の秘密に迫ってみる。

遠藤 「ラクドスミッドレンジ?さすがに事故るでしょ、あれは」

 開口一番に最強の一角と噂されるデッキをバッサリと切り落とした彼は、現在のスタンダード環境の基本を語り出した。

遠藤 「この環境は『事故との戦い』がテーマだからさ。まあ《寺院の庭/Temple Garden(RAV)》とかのショックランドでマナベースは確かに安定したように見えるよ? でも使用するカードのマナコストは色拘束が強かったりして、現在のトップメタともいえる一群のデッキたちは常に事故するリスクを抱えつつ戦っている。リスクには相応のリターンがあるものだけど、他人がリスクを背負っているところに自分もわざわざリスクを選好する理由は薄いよね。対戦相手が自滅してくれるなら、その恩恵は最大限に受けなきゃさ」

 ショックランドがラヴニカへの回帰で再録されてからというもの、多くのデッキが色を加えてデッキの可能性に挑戦し続けてきた。色を増すことでデッキにある1枚1枚は強くなり、パワーカードの叩きつけあいを見る機会も増えたように思える。

遠藤 「たしかにカード1枚の強さで決まるゲームもあることは事実だけど、そういったカードの強さを手に入れるために支払っている『事故』というリスクの増加を軽く見ているよね。特にグランプリのような長丁場が想定されるトーナメントにおいては、ギャンブルが好きなプレイヤーでもなければマナ事故などのトラブルは限りなく避けるべきだと思う」

 その後を促すと、ラクドスミッドレンジは『低マナ域と高マナ域が混在している点』と『黒マナがメインのデッキで赤い除去を採用している点』が事故の原因だという。呪文のマナ域が広がることで安定性は失われ、打ちたいときに打てない可能性のある除去は戦略を歪めてしまうからだ。

遠藤 「で、マナトラブルが少なさそうな緑系に手を出したんだけど、《遥か見/Farseek(RAV)》があるナヤでさえも頻繁にマナの問題があることがわかった。そこでもう3色のデッキは環境的に厳しいな、と考えてたところに岩崎が持ってきてくれたデッキが今回のこれなんだよね」

遠藤 亮太
グランプリ・名古屋2012 (スタンダード)
8 《森》
4 《ガヴォニーの居住区》
4 《陽花弁の木立ち》
4 《寺院の庭》
2 《魂の洞窟》
2 《平地》

-土地(24)-

4 《アヴァシンの巡礼者》
3 《絡み根の霊》
2 《東屋のエルフ》
4 《ロクソドンの強打者》
2 《大軍のワーム》
2 《国境地帯のレインジャー》
3 《修復の天使》
4 《スラーグ牙》

-クリーチャー(24)-
4 《セレズニアの魔除け》
4 《忘却の輪》
4 《情け知らずのガラク》

-呪文(12)-
2 《悪鬼の狩人》
2 《墓掘りの檻》
1 《ケンタウルスの癒し手》
1 《安らかなる眠り》
4 《獰猛さの勝利》
2 《根生まれの防衛》
2 《忌まわしきものの処刑者》
1 《絹鎖の蜘蛛》

-サイドボード(15)-

遠藤 「緑白で綺麗にまとめてあるのが一番の魅力だね。《アヴァシンの巡礼者/Avacyn's Pilgrim(ISD)》や《東屋のエルフ/Arbor Elf(WWK)》が使いやすいし、マナ事故の心配なく《ガヴォニーの居住区/Gavony Township(ISD)》っていう最高の土地が使えるから」

 1ターン目のマナクリーチャーに必要な緑マナと《東屋のエルフ/Arbor Elf(WWK)》のための《森/Forest(LRW)》は、多色化するほどに難しくなるのは当然だ。それでもリスクを背負って3色にするデッキも存在するが、遠藤はそんな僅かな甘えも許さない。

遠藤 「《ロクソドンの強打者/Loxodon Smiter(RTR)》とか《修復の天使/Restoration Angel(AVR)》、《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》とかは説明いらないよね。タフなクリーチャーたちだからだよ。珍しいカードとしてはこれかな」

 そう言いながら遠藤が差し出したカードは《大軍のワーム/Armada Wurm(RTR)》だった。

遠藤 「同じ緑白の2色でまとめたデッキには緑白祝福があるんだけど、あの《集団的祝福/Collective Blessing(RTR)》ってカードはマナクリーチャーを強化するために入っているにもかかわらず、あれを設置するためにマナクリーチャーの力を借りなければならないから、その効果を実感できるのは次のターンからなんだよね。だから設置することで防御面に隙ができてしまうのが欠点だった。劣勢の時にはやや使いづらいってイメージかな。でも、この《大軍のワーム/Armada Wurm(RTR)》ならば戦場に出した段階で巨大なブロッカーとしての役割を果たすし、《修復の天使/Restoration Angel(AVR)》とのシナジーもあるからより強力なカードなんだよ」

 この他にも《情け知らずのガラク/Garruk Relentless(ISD)》の反転後、《ヴェールの呪いのガラク/Garruk, the Veil-Cursed(ISD)》のクリーチャーサーチ能力から《スラーグ牙/Thragtusk(M13)》以外の選択肢として強力だという説明をしてくれた。

 たしかに《集団的祝福/Collective Blessing(RTR)》は設置するために苦労する割にはやや使いづらい面があったので、そのかわりの《大軍のワーム/Armada Wurm(RTR)》は素晴らしい代案に見える。もちろん《忌むべき者のかがり火/Bonfire of the Damned(AVR)》への耐性がついたり《霊誉の僧兵/Geist-Honored Monk(ISD)》との相性といった要素も加味すると、《集団的祝福/Collective Blessing(RTR)》と《大軍のワーム/Armada Wurm(RTR)》の優劣は難しいものの、単純に強力な一枚として採用するには《大軍のワーム/Armada Wurm(RTR)》に軍配が上がりそうだ。

遠藤 「メインボードに4枚採用している《忘却の輪/Oblivion Ring(LRW)》は、ラクドスや緑白系に対して強力だね。あと、この緑白でこそ《忘却の輪/Oblivion Ring(M13)》が輝くんだよね。このカードでしか対処できない数枚のカードが環境にあるし」

 《オリヴィア・ヴォルダーレン/Olivia Voldaren(ISD)》や《イゼットの静電術師/Izzet Staticaster(RTR)》コンボなど、除去できなければ勝敗に直結する致命的なシステムカードが存在する現在のスタンダードでは、除去能力に乏しい緑白という色の組み合わせにとって万能薬である《忘却の輪/Oblivion Ring(M13)》は素晴らしい1枚だ。

遠藤 「強いて言うならサイドボードがやや不安かな。《獰猛さの勝利/Triumph of Ferocity(AVR)》は4枚では少し多かったし、《墓掘りの檻/Grafdigger's Cage(DKA)》は《安らかなる眠り/Rest in Peace(RTR)》でも良かった。あと、《絹鎖の蜘蛛/Silklash Spider(ONS)》はもう数枚入れても良かったくらい強かった」

 『最強のデッキ』だとは認めつつも、更なる改善点を見つけていることは流石の一言だろう。リアニメートが跋扈する上位卓では《安らかなる眠り/Rest in Peace(RTR)》が必要で、どのテーブルを見ても一人はいるラクドスを倒すために《絹鎖の蜘蛛/Silklash Spider(ONS)》はたしかに必要そうだ。

 このデッキが会場で『最強』であるかは、2ラウンド後の結果にかかっている。

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