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【戦略記事】 行弘賢のシールドデッキ構築

【戦略記事】 行弘賢のシールドデッキ構築

By Masami Kaneko

 グランプリ・上海2014は、『タルキール覇王譚』が発売されて世界で最初のグランプリだ。当然そこに「環境の定石」のようなものは存在せず、ある意味平等に、自分の練習の成果を試すことになる。日本からも距離の近いこの上海には、その練習の成果を試すべく、多くの日本人が参加していた。


ゴールドレベルプロ・行弘賢

 行弘賢。プロプレイヤーとしてのキャリアはわざわざ語らなくてもご存じの方は多いだろう。ゴールドレベルプロとして、プロツアーとグランプリを周っているプロプレイヤーだ。話によると先日のプロツアー『マジック2015』では、ぴったり25位以内に滑りこんでギリギリゴールドレベルを維持し、会場中に響き渡る雄叫びをあげたとかあげてないとかそんな話もあるが、ともあれ彼が一流の実力者であることは疑いようもない。

 不戦勝持ちのプロの多くがスリープインスペシャルという「合法遅刻」をしている中、Byeのないプレイヤーと同じようにデッキを組んでいる行弘。何故スリープインスペシャルを利用しないのか?と訊いてみると、こんな答えが返ってきた。

行弘 「朝からデッキ組んだほうが、強いパックが引ける気がするんですよね! スリープインのデッキはクソ! これ、僕のジンクス!」

......なんともオカルティックな回答である。ともあれ、彼のシールドデッキ構築に注目していこう。

デッキを組むための冴えたやりかた by 行弘賢

 シールドデッキを構築する手順とは?

 色ごとに分ける、弱いカードを脇によける、マナバランスを確認するなど、シールドデッキの構築手順にも色々あるが、何が優先されどの順番で行うかは、環境に大きく依存する。この『タルキール覇王譚』のシールド環境においては、どのような手順でデッキ構築を行うべきなのだろうか? 構築後のインタビューで聴きだしたことも交えて、その手順について説明していこう

 同じく『タルキール覇王譚』リミテッドで行われる、来年の「グランプリ・静岡2015」のためにも、ぜひ行弘の手順を参考にしてほしい。

手順1:多色土地の確認

 ぱっとひと通りのカードを流し見すると、行弘はまず、その広大なカードプールから、多色土地カードのみを抜き出した。


抜き出された多色土地

 その内訳は、

  • 《血染めのぬかるみ/Bloodstained Mire(KTK)》
  • 《神秘の僧院/Mystic Monastery(KTK)》
  • 《砂草原の城塞/Sandsteppe Citadel(KTK)》
  • 《岩だらけの高地/Rugged Highlands(KTK)》
  • 《平穏な入り江/Tranquil Cove(KTK)》2枚

の6枚だ。

 これを見た行弘、即座に5色の中から3色だけを抜き出す。

 それが白と青と赤、いわゆる「ジェスカイ」だ。

行弘 「土地を見た瞬間、組める3色と組めない3色がほぼ決まります。氏族に合わせた3色っていうのは、実際かなりマナベースがタイトなんですよ。今回のプールの場合、《平穏な入り江/Tranquil Cove(KTK)》が2枚、それに《神秘の僧院/Mystic Monastery(KTK)》があるので、ジェスカイは組めます。3色にしたいなら、3枚くらいはその色のサポートがないとですね。だけど、今回の6枚だと正直他の氏族は厳しい。他は『2色+タッチ1色』みたいな形になると思います。」

 これは、後のインタビューでの行弘の言葉だ。「土地を見た瞬間、組める3色と組めない3色が決まる。」これほどまでに、この環境の土地は重要なのだ。このまた、この時行弘は《アブザンの戦旗/Abzan Banner(KTK)》を代表とする戦旗シリーズには全く手を付けず、見もしなかったことにも注目したい。それほどまでに多色土地は重要なのだ。

手順2:色の選択

「ジェスカイ」の3色を抜き出し、白と青を並べ、赤に手をかけたところで手が止まる行弘。


白と青のカードを並べ、赤のカードに手をかけたところで固まる行弘。

行弘 「いやー、赤は弱すぎましたね......。並べるまでもない。」

 後にそう語る行弘、そのまま赤のカードを脇によけて、青のカードも一部の強力カード以外は取り除いていく。《対立の終結/End Hostilities(KTK)》という強力なレアを擁する白については、メインカラーに据えたいと考えており、そのまま白に足していく2色目を探していく。行弘が次に手にとったのは黒のカードの束だった。


白黒のデッキを並べてみるが......。

行弘 「《対立の終結/End Hostilities(KTK)》があったので、アドバンテージが取れる2枚の《ラクシャーサの秘密/Rakshasa's Secret(KTK)》と《苦々しい天啓/Bitter Revelation(KTK)》は魅力的だったんですよね。」

 軸となるカード、色に相性の良いカードを入れて、デッキを作りたい。デッキ全体の方針をきっちり考えていく行弘。そう、作るのはカードの束ではなくてデッキなのだ。

行弘 「でも、やっぱり微妙でした。枚数も不足気味で。クリーチャーも弱いし。で、まぁパッと見た時からメインカラーになりそうだと思っていた緑を並べました。《頭巾被りのハイドラ/Hooded Hydra(KTK)》という強力レアと、《増え続ける成長/Incremental Growth(KTK)》という強力アンコモンもあり、クリーチャーもしっかりしてましたしね。」

 そう、ここまで引っ張り、最後に並べた「緑」という色を、行弘はパッと見た時から「メインカラーになりそうだ」と思っていたのである。使うであろう色にうすうす気づいていながら、しかしそれ以外の可能性を模索するために、順番に色を並べていく。『タルキール覇王譚』という3色環境でも、しっかり検討できるところは検討する。シールドの基本も忘れない。

 しかもこの時、並べたのは白と緑ではなく、まず黒と緑だったのだ。


使いたかった白を除外し、黒と緑を並べた。

行弘 「で、並べたところで『まあ白緑かな、と。』」


白緑のカードを並べ、メインカラーを決定した。

 あくまで、確認したうえで、「白緑がメインカラー」。ぱっと見からこの未来を想定していたが、色々な可能性を検討する。シールドデッキ構築のお手本のような色選択だった。

 こうして、デッキのメインカラーは白緑に決定した。

微調整

 メインカラーは決定したが、カード枚数は多少不足している。行弘はタッチで入れるカードを検討しはじめた。候補にあがったのは、以下のカードである。

  • 《宝船の巡航/Treasure Cruise(KTK)》
  • 《隠道の神秘家/Mystic of the Hidden Way(KTK)》
  • 《焼き払い/Burn Away(KTK)》
  • 《グドゥルの嫌悪者/Abomination of Gudul(KTK)》

 《神秘の僧院/Mystic Monastery(KTK)》と2枚の《平穏な入り江/Tranquil Cove(KTK)》の関係で、《宝船の巡航/Treasure Cruise(KTK)》と《隠道の神秘家/Mystic of the Hidden Way(KTK)》は問題なく運用が可能だ。《焼き払い/Burn Away(KTK)》も《岩だらけの高地/Rugged Highlands(KTK)》がある関係で《神秘の僧院/Mystic Monastery(KTK)》と合わせてタッチしやすいカードといえるだろう。《グドゥルの嫌悪者/Abomination of Gudul(KTK)》は一応《砂草原の城塞/Sandsteppe Citadel(KTK)》から表にできるとはいえかなり無理があり、実際に効果を発揮するのかかなり検討したが、結局行弘は青の2枚のカードのみをタッチすることに決めたようだ。

行弘 「そんな凄い強いってわけじゃないですしね、《焼き払い/Burn Away(KTK)》。」

 ただの除去であり、1枚で勝てるカードではないので、わざわざタッチするほどの価値はないと考えたのだろう。

マナベースの調整

 ここまでで満足のいくメインデッキを組み上げた行弘、ここから凄い勢いでメモと指を使用して数をカウントしていく。知らない者が見れば一体何が起こったのか!? と思うようなシーンだが、これこそがシールドデッキを作るのに最も大切な、マナベースの構築だ。「森は◯枚、平地は△枚」といった単純な、カウントは通用しない。この環境のシールドデッキは、多くの場合多くの多色土地の入ったデッキとなる。「必要な緑マナは◯枚、必要な白マナは△枚」といった形で、厳密に計算していかなくてはならない。ある意味、最も頭を働かせる瞬間だ。


メモと指を駆使し、マナベースを検討していく。

 そして、行弘のデッキは完成した。

デッキ感想


行弘賢の白緑タッチ青

 彼が組み上げたのは、白緑にタッチで青のカードが少しだけ入った、環境の氏族の色とは違うデッキ。なかなか珍しいパターンのように感じるが、実際デッキについてどう思っているのだろうか?

行弘 「70点デッキですね。初日突破、頑張れるとは思います。ですが、凄い強い!とは言えないです。でも、クリーチャー自体はかなりしっかりしてますし、《対立の終結/End Hostilities(KTK)》や《頭巾被りのハイドラ/Hooded Hydra(KTK)》、《増え続ける成長/Incremental Growth(KTK)》なんかはかなり強いので良いと思いますよ。」

 言葉の通り、クリーチャーがしっかりしていて強力レアやアンコモンのあるデッキを組み上げた行弘。言葉通りの初日突破、いや、彼の戴冠に期待しよう。


......なお、その彼のデッキを見ながら、友人の加藤一貴が一言。「70点は甘いと思うわ。もっと弱いよ。」

行弘 「ええー。いやいやそこそこ強いやろ!」

加藤「いやこれで勝てる程甘くないって!」

 なるほど、マジックは「話の種」だ。2人は仲良く会話しながら、お互いのデッキについて検討会を続けていた。これもまた、マジック。

行弘 賢
グランプリ・上海2014 / 『タルキール覇王譚』シールドデッキ
8 《森》
4 《平地》
1 《島》
1 《神秘の僧院》
1 《砂草原の城塞》
2 《平穏な入り江》

-土地(17)-

1 《族樹の管理人》
1 《アイノクの盟族》
1 《射手の胸壁》
1 《高地の獲物》
1 《煙の語り部》
1 《ティムールの軍馬》
1 《頭巾被りのハイドラ》
1 《牙守りの隊長》
1 《雪花石の麒麟》
1 《機を見た軍族朋》
1 《隠道の神秘家》
1 《松歩き》
1 《わめき騒ぐマンドリル》
2 《長毛ロクソドン》

-クリーチャー(15)-
1 《抵抗の妙技》
1 《必殺の一射》
1 《タルキールの龍の玉座》
1 《龍鱗の加護》
1 《大物潰し》
1 《対立の終結》
1 《増え続ける成長》
1 《宝船の巡航》

-呪文(8)-
1 《血染めのぬかるみ》
1 《岩だらけの高地》
1 《精霊龍の墓》
1 《果敢な一撃》
1 《縁切られた先祖》
1 《消去》
1 《炎蹄の騎兵》
1 《族樹の管理人》
1 《マルドゥの悪刃》
1 《殻脱ぎ》
1 《僧院の速槍》
1 《頑固な否認》
2 《帰化》
1 《消耗する負傷》
1 《心臓貫きの弓》
1 《軍団の伏兵》
1 《ジェスカイの長老》
1 《跳躍の達人》
1 《マルドゥの頭蓋狩り》
1 《凶暴な殴打》
1 《秘密の計画》
1 《テイガムの策謀》
1 《谷を駆ける者》
1 《湿地帯の水鹿》
2 《ジェスカイの戦旗》
2 《マルドゥの戦旗》
2 《ラクシャーサの秘密》
1 《石弾の弾幕》
1 《取り消し》
1 《悪寒》
1 《龍の握撃》
1 《軍族童の突発》
1 《ジェスカイの隆盛》
1 《マルドゥの隆盛》
1 《僧院の群れ》
1 《境界の偵察》
1 《ラッパの一吹き》
1 《苦々しい天啓》
1 《略奪者の戦利品》
1 《地平の探求》
1 《山頂をうろつくもの》
1 《不撓のクルーマ》
1 《矢の嵐》
1 《焼き払い》
1 《峡谷に潜むもの》
1 《クルーマの盟族》
1 《朽ちゆくマストドン》
1 《賢者眼の侵略者》
1 《旋風の達人》
2 《大蛇の儀式》
1 《グドゥルの嫌悪者》
1 《アイノクの足跡追い》

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