By 矢吹 哲也

　17人を２日目に送り出した日本勢だが、さらなる激戦に多くの仲間が倒れ、今大会最後の舞台に立ったのはただひとりになった。

　その男、市川ユウキ。これまでも数々の戦績を重ねてきた彼は、今大会でまたひとつその経歴に「グランプリ・トップ８入賞」の文字を刻んだ。今大会では初日の段階で２敗――トップ８入賞への最終ライン――に追い詰められた市川だが、そこから脅威の粘りを見せ勝ち上がってきたのだ。この瀬戸際での強さもまた、過去にプロツアー『ニクスへの旅』などで逆境からの大きな巻き返しを見せてくれた市川の真価と言えるだろうか。

　その市川の前に、中国のヤン・ドゥファ/Yang Dehuaが立ちはだかる。ドラゴン満載のデッキを操る「龍使い」に、市川のアブザンはどう戦うか。現地の放送の準備が整うまでの間、時間をたっぷり使ってお互いのデッキリストを研究する両者は、逸る思いを押し留めて戦いに臨んだ。

ゲーム展開

　大きな試合でこそ不運は起こるものだ。この試合の１ゲーム目はヤンがダブル・マリガンを喫し、５枚でのスタートとなった。

　それでも先手のヤンが《エルフの神秘家》で先に動きだす。続けて２ターン目に飛び出したのは《クルフィックスの狩猟者》。上々の滑り出しだ。

　一方の市川は２ターン目に《サテュロスの道探し》を繰り出し、《死霧の猛禽》を墓地へ送りつつ土地を確保。ヤンも着実に土地を増やし、《灰雲のフェニックス》で空から攻め始める。

　《クルフィックスの狩猟者》も含めた強気な攻勢に対し、市川は《灰雲のフェニックス》を《アブザンの魔除け》で追放した。手札の差は明らかだが、土地をしっかり確保したヤンのマナはやがて《龍王アタルカ》まで届く。

　だが《思考囲い》でさらに手札を攻めた市川は、戦場の《龍王アタルカ》も《アブザンの魔除け》で対処。一対一交換の消耗戦でアドバンテージ差を有効に使っていく。

　しかしヤンもまたここまで勝ち上がってきたプレイヤー。ただでは終わらない。《クルフィックスの狩猟者》が公開しつづける彼のデッキ・トップは強力なものが続いた。ヤンは《歓楽者ゼナゴス》を戦場に加え、２/２トークンで市川の《包囲サイ》への防御に立たせた。市川はそこへ《英雄の破滅》を差し向け、《歓楽者ゼナゴス》も退場させた。

除去を有効に使い、ヤンの脅威に立ち向かう市川

　だがヤンの盤面にさらに続く《龍王アタルカ》と《雷破の執政》。対処しても対処しても終わらないヤンの猛攻に、今度は市川が押され始める。市川が強力なドラゴンの対処に追われている間に戦場に残った《クルフィックスの狩猟者》と《エルフの神秘家》の攻撃が市川のライフを徐々に奪い、そして《嵐の息吹のドラゴン》を引き込んだヤンは《龍詞の咆哮》で市川のブロッカーを取り去り、一気にライフを奪い去ったのだった。

ダブル・マリガンの不運に襲われたヤンだが、ここまで共に戦ってきた龍たちが彼を救った

　第２ゲーム、今度は市川がマリガンを宣言すると、ヤンも初手に首を傾げマリガンを選択。６枚の手札を吟味したヤンは、なんと再びのダブル・マリガン。

　《森の女人像》を展開したヤンに対し、３ターン目《クルフィックスの狩猟者》からゲームを始める市川。ヤンは土地が２枚で止まり、動き出すことができない。

　市川は２枚目の《クルフィックスの狩猟者》を繰り出し、続けて《包囲サイ》。それは《焙り焼き》で対処するヤンだったが、しかし《棲み家の防御者》を加えた市川の攻勢に、なす術なく敗れていった。

　迎えた第３ゲーム、両者ともに初手をキープし雌雄を決する一戦は、静かな立ち上がりからヤンの《雷破の執政》で幕を開けた。市川は即《究極の価格》を撃ち込み、「変異」クリーチャーを戦場へ。

　ヤンも《龍詞の咆哮》でそれを対処し、譲らない。それでも市川は《クルフィックスの狩猟者》、《死霧の猛禽》と展開を進め、盤面上の優位を得る。だが、ヤンの戦場に《前哨地の包囲》が置かれると、アドバンテージ差は明確なものとなった。

　しかしここで市川は決断する。戦場にいる《クルフィックスの狩猟者》と《死霧の猛禽》に、《アブザンの魔除け》２枚で＋１/＋１カウンターを一気に乗せるビッグ・プレイ。突然巨大なクロックが完成し、ヤンは守勢に回らざるを得なくなった。

　ヤンの《前哨地の包囲》は彼にカードをもたらすが、この状況を打開できるものは見えてこない。チャンプ・ブロックでなんとか時間を稼ぐヤンの盤面に、市川は《棲み家の防御者》の「大変異」から回収した《究極の価格》を撃ち込み、この戦いに終止符を打ったのだった。

市川 2-1 ヤン

市川 ユウキがヤン・ドゥファを２勝１敗で下し、準決勝へ！