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【観戦記事】 決勝:市川 ユウキ(神奈川) vs. Devsharan Singh(マレーシア)

【観戦記事】 決勝:市川 ユウキ(神奈川) vs. Devsharan Singh(マレーシア)

By 矢吹 哲也

 ここ中国の地には、古くから「龍信仰」が根付いている。

 かつては国を治める皇帝の象徴として、現代では装飾や祭りを華やかにするシンボルとして。龍は至るところにその姿を見せている。

 そして龍は今、私たちの愛するマジックの世界でもその力を振るっている。『韃契龍王』――「龍」の字を冠するセット、『タルキール龍紀伝』。その名に相応しく登場以来様々な「ドラゴン」デッキが多くの活躍を見せてきたが、中国・上海で行われている今大会でも、マレーシアのデフシャラン・シン/Devsharan Singhをその背に乗せ、決勝の舞台へと連れてきた。

 しかし現在のスタンダードには、空を駆ける龍たちを地上から狙う「猛禽」がいた。プロツアー『タルキール龍紀伝』以降猛烈に勢力を広げている《死霧の猛禽/Deathmist Raptor(DTK)》と《棲み家の防御者/Den Protector(DTK)》のコンビは、今大会でもその力を遺憾なく発揮し、市川 ユウキの快進撃を支えてきた。

 目覚ましい活躍を続ける市川にいまだ欠けているもの、それはマジック最高レベルの大会での「優勝」の二文字だ。今こそそのとき。龍の息づくこの土地で、蒼穹へ翔び上がり歓喜の咆哮をあげるべく、市川は全霊をもって最終戦に挑む。

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ゲーム展開

 初手のキープを互いに確認し合うと、スイス・ラウンド上位のデフシャランが「占術」土地を置き試合が始まった。

 と、次の瞬間。2ターン目《爪鳴らしの神秘家/Rattleclaw Mystic(KTK)》から3ターン目《灰雲のフェニックス/Ashcloud Phoenix(KTK)》、4ターン目には《嵐の息吹のドラゴン/Stormbreath Dragon(THS)》という完璧な回りを見せるデフシャラン。

 《アブザンの魔除け/Abzan Charm(KTK)》で《灰雲のフェニックス/Ashcloud Phoenix(KTK)》を追放する市川だが、デフシャランは攻撃が通った《嵐の息吹のドラゴン/Stormbreath Dragon(THS)》へ《加護のサテュロス/Boon Satyr(THS)》を「授与」。デフシャランの飛行戦力は目にも留まらぬ凄まじいスピードで、市川を圧倒したのだった。


最高の舞台で最高の動き。デフシャランのドラゴン・デッキが躍動する

 衝撃的な1ゲーム目を終えて2ゲーム目、デフシャランは1ターン目《エルフの神秘家/Elvish Mystic(M15)》から2ターン目に「変異」クリーチャーを繰り出す。対する市川は2ターン目《サテュロスの道探し/Satyr Wayfinder(M15)》。

 市川は続くターン、《英雄の破滅/Hero's Downfall(THS)》でデフシャランの「変異」クリーチャーを除去し、攻撃に出た。さらなる追撃にデフシャランは《加護のサテュロス/Boon Satyr(THS)》で阻みにかかるが、市川はここで《ドロモカの命令/Dromoka's Command(DTK)》。エンチャントを生け贄に捧げさせるモードと格闘のモードで、土地が2枚で止まったデフシャランの盤面を一掃する。

 《包囲サイ/Siege Rhino(KTK)》を盤面に加えた市川は、動けないデフシャランに猛攻を仕掛けた。デフシャランの勝利を支えるドラゴンが彼の手札から繰り出されることはついになく、市川がゲームを取り返したのだった。


市川の鋭い攻めは、今大会を通して何度も見受けられた。ひとたび攻勢に転じた市川を止めるのは極めて困難だ。

 信じられないほどの高速勝負となったこの試合は、シャッフルを終えた両プレイヤーが「Good Luck」と声をかけあい最終局面を迎えた。

 デフシャランは再び1ターン目《エルフの神秘家/Elvish Mystic(M15)》。市川も2ターン目《サテュロスの道探し/Satyr Wayfinder(M15)》で軽快な動きを見せる。

 互いに土地を置き合いマナが出揃ったゲーム中盤、ここでデフシャランは《火口の爪/Crater's Claws(KTK)》をプレイヤーに撃ち込み、ターン・エンド――彼の手札には、ドラゴンがいなかった。市川は《黄金牙、タシグル/Tasigur, the Golden Fang(FRF)》を盤面に追加し、続けて《ドロモカの命令/Dromoka's Command(DTK)》で+1/+1カウンターを置いて《焙り焼き/Roast(DTK)》の圏外にしつつデフシャランの盤面をまっさらにする。

 デフシャランは市川の攻撃を受けながら苦しい表情でカードを引き続けるが、見えるのは土地ばかり。そしてデフシャランの残りライフを5点まで追い詰めたところに、市川は《死霧の猛禽/Deathmist Raptor(DTK)》を2枚同時に繰り出した。しばらく手札を見つめたデフシャランはふっと表情を和らげ、すべて土地の手札を開いて右手を差し出したのだった。

市川 2-1 デフシャラン

「『そろそろ(グランプリ)勝てる』と信じてから長かった......! ようやく勝ちました!」

 試合後、市川は大きく息を吐きながら勝利を噛み締めた。「ようやく」と語る彼の満面の笑顔は、《セラのアバター/Serra Avatar(USG)》や《双頭のドラゴン/Two-Headed Dragon(MMQ)》で無邪気に遊んでいた、彼の少年の頃を思い起こさせる。

 その頃の彼はまだ知らない。のちに自身が、そのゲームの頂きに登りつめることを――

 少年は、大人になった。


市川、歓喜の咆哮

 各メディアから写真攻めに遭いながらも、健闘を称え合う市川とデフシャラン。たとえ言語が異なり十全に意味が通じなくとも、「マジックが楽しい」という想いが少しでも伝わればいい。何度も握手を繰り返し語り合う両者の姿は、ただただ眩しく、清々しい。

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 市川 ユウキ、グランプリ・上海2015優勝おめでとう! これからさらなる高みへ!

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