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【戦略記事】 What has happened? / is happening? / will happen?

【戦略記事】 What has happened? / is happening? / will happen?

By Masami Kaneko

カバレージライターの憂鬱

 その日、とあるカバレージライターは頭を抱えていた。

 彼はこの「グランプリ・静岡」のカバレージを書くにあたって、スタンダードについて勉強していた。

 既に『テーロス』の発売から二ヶ月が経ち、環境の研究は大きく進んだ。環境初期のプロツアー「テーロス」を皮切りに、多くのグランプリや「StarCityGames オープントーナメント」を含め数多くの大会で、様々なデッキが陽の目を見て、そして没していった。

 数々のデッキが洗練され、そして淘汰されていく中で、ある程度の「勝ちやすい」デッキが見えてきた。そう、「青単信心」「黒単信心」「青白系(エスパー含む)コントロール」の三種類である。この環境はこのローテーションでの三つ巴環境。

 が、しかし。

 そこからメタゲームは回転した。グランプリ・ダラス/フォートワースでは上の3つのデッキを意識したオルゾフコントロールが優勝し、赤単タッチ白信心が活躍し、それはMagic OnlineのDaily Eventが復活したことによって更に加速した。

 そしてこのグランプリのたった一週間前に、Magic OnlineのDaily Eventで勝利したデッキが彼を更なる混乱に導いたのだ。

mafmaf / エスパーミッドレンジ
4 《神無き祭殿》
4 《神聖なる泉》
4 《静寂の神殿》
4 《湿った墓》
3 《変わり谷》
3 《平地》
3 《欺瞞の神殿》

-土地(25)-

4 《万神殿の兵士》
3 《果敢なスカイジェク》
2 《カルテルの貴種》
2 《威圧する君主》
4 《リーヴの空騎士》
4 《ザスリッドの屍術師》
3 《冒涜の悪魔》
3 《幽霊議員オブゼダート》

-クリーチャー(25)-
2 《遠隔》
1 《破滅の刃》
1 《究極の価格》
4 《拘留の宝球》
1 《魂の代償》
1 《エレボスの鞭》

-呪文(10)-
3 《思考囲い》
2 《破滅の刃》
2 《否認》
1 《異端の輝き》
1 《ファリカの療法》
2 《地下世界の人脈》
2 《至高の評決》
1 《エレボスの鞭》
1 《ヴィズコーパの血男爵》

-サイドボード(15)-
_Batutinha_ / シミック・フラッシュ
7 《島》
6 《森》
4 《繁殖池》
4 《変わり谷》
4 《神秘の神殿》

-土地(25)-

4 《シュラバザメ》
4 《空殴り》
4 《加護のサテュロス》
4 《茨群れの頭目》
4 《地平線のキマイラ》

-クリーチャー(20)-
4 《シミックの魔除け》
3 《中略》
2 《サイクロンの裂け目》
4 《解消》
2 《好機》

-呪文(15)-
4 《感覚の剥奪》
2 《トリトンの戦術》
3 《反論》
3 《垂直落下》
3 《タッサの二叉槍》

-サイドボード(15)-

 わからない。全くわからない。スタンダードで一体何が起こっているのだろう。さっぱりわからない。

 強いデッキとは何なのか。勝てるデッキは何なのか。このグランプリの勝ち組デッキは何なのか。

 カバレージライターの憂鬱は続く。

What has happened? ~何が起こっていたのか?~


彌永 淳也

「基本的には『青単信心』からスタートしての、『黒単信心』『青白コントロール』のローテーションですね。」

 世界選手権2011・チャンプの彌永淳也はそう語る。

「毎週勝つデッキが入れ替わる。『青単信心』『黒単信心』が半々になったと思ったら、次の週には『青単信心』しか勝たなくて、その次の週には『黒単信心』ばっかり勝って、次の週には『青白系コントロール』が勝つ。毎週勝つデッキが変わるよね。」

 基本的に強いデッキ自体は既にいくつか絞られている。このあたりは、「帰ってきたスタンダード・アナライズ グランプリ・静岡に向けて:第1回第2回」でも語られた通りだ。デッキの分布は変わっていても、強いデッキは変わっていない。彌永もまた強いとされるデッキから一つをチョイスしたとのことだ。

 プロツアーからのメタゲームの変化。しかし環境自体は変わっていない。カードプールにプロツアーからの変化は無いのだ。それならば、ただメタゲームが変わるだけだ。いくつかのデッキの群雄闊歩。

 これは、今までに起こって「いた」こと。

What's happening ~何が起こっているのか?~

 グランプリ・静岡の本戦は今日からだが、このグランプリ・静岡のイベントは昨日既に始まっている。そう、「ラストチャンストライアル」だ。本戦での不戦勝を得るため真剣にスタンダードを戦い、そして戦い抜いたデッキ達。

そう、今、まさに起こって「いる」こと。それが読み取れるのがラストチャンストライアルだ。

そして、このラストチャンストライアルでもまた何かが「起こった」。

Tanehashi, Shigeharu / 赤タッチ緑白信心
ラストチャンストライアルトーナメントB 優勝
5 《山》
4 《聖なる鋳造所》
4 《踏み鳴らされる地》
4 《奔放の神殿》
4 《凱旋の神殿》
3 《ニクスの祭殿、ニクソス》

-土地(24)-

4 《灰の盲信者》
4 《炎樹族の使者》
3 《凍結燃焼の奇魔》
2 《森の女人像》
4 《ボロスの反攻者》
2 《鍛冶の神、パーフォロス》
4 《嵐の息吹のドラゴン》

-クリーチャー(23)-
4 《岩への繋ぎ止め》
4 《ミジウムの迫撃砲》
3 《歓楽者ゼナゴス》
2 《紅蓮の達人チャンドラ》

-呪文(13)-
1 《寺院の庭》
4 《霧裂きのハイドラ》
2 《空殴り》
1 《垂直落下》
2 《峰の噴火》
1 《古代への衰退》
2 《シヴの抱擁》
1 《歓楽者ゼナゴス》
1 《軍勢の集結》

-サイドボード(15)-
Kodama, Yu / オーラ・ナヤ
ラストチャンストライアルトーナメントC 優勝
4 《草むした墓》
4 《聖なる鋳造所》
4 《セレズニアのギルド門》
4 《踏み鳴らされる地》
4 《寺院の庭》
2 《凱旋の神殿》

-土地(22)-

4 《林間隠れの斥候》
4 《復活の声》
4 《魔女跡追い》
3 《ゴーア族の暴行者》

-クリーチャー(15)-
4 《天上の鎧》
4 《ボロスの魔除け》
4 《向こう見ずな技術》
3 《セレズニアの魔除け》
4 《ひるまぬ勇気》
3 《オルゾヴァの贈り物》
1 《オレリアの憤怒》

-呪文(23)-
4 《岩への繋ぎ止め》
3 《繕いの接触》
4 《頭蓋割り》
4 《空殴り》

-サイドボード(15)-
Yamamoto, Takahiro / グルール・ビート
ラストチャンストライアルトーナメントG 優勝
10 《山》
4 《踏み鳴らされる地》
4 《奔放の神殿》
3 《変わり谷》

-土地(21)-

4 《火飲みのサテュロス》
4 《ラクドスの哄笑者》
4 《灰の盲信者》
4 《炎樹族の使者》
4 《火拳の打撃者》
4 《チャンドラのフェニックス》
4 《ゴーア族の暴行者》

-クリーチャー(28)-
4 《稲妻の一撃》
3 《マグマの噴流》
2 《武装》
2 《グルールの戦唄》

-呪文(11)-
1 《変わり谷》
4 《霧裂きのハイドラ》
1 《武装》
1 《マグマの噴流》
4 《ボロスの反攻者》
3 《モーギスの狂信者》
1 《グルールの戦唄》

-サイドボード(15)-

 ナヤ信心、ナヤバント、グルールビート。一風変わった構成、一風変わったカードの採用。

 確かに強いデッキはある。しかしそれでも。

 スタンダードはこれほどに、こんなにも自由なのだ。


行弘 賢

「最初わりと普通の青白で出たんですよ。でもすぐに負けちゃって。で、思い切ってメインボードを15枚くらい入れ替えたら、トライアルを勝ち進めました。」

 昨日のラストチャンストライアルに出場した行弘賢が語ってくれた。一風変わった青白を持ってきた行弘は、この変化の理由をこう語る、

「確かに環境のデッキはある程度は絞られてるんですよ。あんまり『こんな新しいコンセプトが!?』ってなデッキは出てこないと思います。でも、この環境はプールが一番狭い。だから実はどのデッキもそんなに強くないんですよね。大体どのデッキも60点くらい。だから、60点と65点の違いが勝負を分ける。それがまさに細かい工夫だと思います。シミックフラッシュとかも、二日目まで行けたりしたら勝てるデッキになると思いますよ。」

 行弘はこの環境のデッキを「実際にはあまり強くない」と評した。群雄闊歩するデッキ達は巨人のように見えて、その実ただの人間だったのだ。だからこそ、細かいところが勝負をわける。

 デッキは絶えず進化する。メタゲームは常に変化する。そこに追いついていけるかどうか。今、まさにことは「起こっている」のだ。

What will happen? ~何が起こるのか?~

 では、実際にこの静岡の地で勝つのは何なのか。どのようなデッキが勝つのか?

 本当のところは神のみぞ知るこの難題に、「神」と呼ばれうるあのプレイヤーに訊いてみた。


渡辺 雄也

「何が勝つか? うーん、正直さっぱりわからないですね......。基本的には強いデッキが勝つとは思うんですけど......。」

 あの渡辺雄也に訊いてみてもこの回答。それ程にこの環境で何が起こるのかはわかりにくいのだ。

「今あるデッキの強さは大体同じくらいなんですよね。だからこれらよりも圧倒的に強いようなデッキが存在すればもちろん勝ってもおかしくないんですけど、もう十分にスタンダードが研究されてこうなってるんですよね。だからとんでもない新しいデッキが出てきたりはしない、と思うんですけど......。マジックですからね、何が起こるか。もちろん、エスパーミッドレンジや青緑フラッシュみたいな変わったデッキにもチャンスはあると思いますよ。」

 渡辺が言葉を濁す。この「なんでもアリ」の環境においてはあの渡辺でさえも予測ができない。一体何が起こるのかわからない。何が勝ってもおかしくない。そんな中でも、渡辺はキーとなりそうなカードをあげてくれた。

「予測はしにくいんですけど、《変わり谷/Mutavault(M14)》の採用されたデッキが勝つと思います。もちろん僕のデッキも《変わり谷/Mutavault(M14)》が入ってますね。」

 《変わり谷/Mutavault(M14)》。このちっぽけな無色の土地が、しかし環境のキーだというのが渡辺の予想だ。

カバレージライターたちの沈黙

 実際に何が勝つのか、それは誰にもわからない。各々のプレイヤーが研究をし、工夫をしたこのグランプリの地で勝利するのは一体どんなデッキなのか。どんなプレイヤーなのか。

 全ての参加者が夢見る「優勝」。それぞれがその頂を目指し、何が起こったかを研究し、何が起こっているのか読み取り、何が起こるのかを予想する。

 グランプリという大舞台。その優勝という頂。神の頂に挑むべく、全てのプレイヤーが登頂を始めたのだ。今はただ、その行程を見守ろう。

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