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グランプリ・静岡2014

観戦記事

決勝:高尾 翔太(東京) vs. 仲田 涼(神奈川)

By Masami Kaneko

FN_MtFuji.jpg

 古来より「神の山」としてあがめられてきた富士山。
 その麓で行われたこのグランプリも、ついに最後の試合を迎えることになった。

 プロツアー「テーロス」で《海の神、タッサ》《死者の神、エレボス》を始めとした神々への「信心」から始まり、《至高の評決》を中心とした「青白系コントロール」も流行り始め、それらのデッキがローテーションしていたと思われたこのスタンダード環境。

 ここで初日の記事、「3Byeプレイヤークイックインタビュー」を読み返してみよう。いわゆる「トッププロ」達が、今回の勝ち組デッキを予想した記事だ。話題に出てくるデッキはといえば、「青単信心」「黒単信心」「青白系コントロール」ばかりだ。そう、思われていた。


 それでは実際に何が起こったか。
 初日無敗を飾った6つのデッキのうち、3つが白をメインにしたビートダウンデッキだった。そしてこの決勝戦を戦うのは。

 高尾 翔太。エスパー人間ミッドレンジ。
 仲田 涼。白タッチ黒人間。

 一体誰がこの対戦カードを予想しただろうか? いったい、どんなプレイヤーならこの結末を予測できただろうか。


 たっぷりとお互いのデッキリストを確認した両者。
 ゆっくりとカードのシャッフルに入る。誰もが憧れたグランプリの決勝戦で。今、最後の一歩を踏み出すべく、入念に、心を込めて、今日の相棒をメンテナンスしていく。デッキを差し出し、軽くうなづきながらお互いのデッキをシャッフルし。

 そして勝負は始まる。

「神の山」富士山の麓。「テーロス」によって「信心」が試され、「評決」が下り、「神々」に支配されたこの世界で。
 しかし最後に残り、勝利を争うことになったのは。

 そう、「人間」達だ。


高尾 vs. 仲田

ゲーム1

 素早くキープを宣言した高尾。少し考えてキープした仲田。
 仲田の《万神殿の兵士》と高尾の《威圧する君主》が相打ちし、仲田がさらに《万神殿の兵士》を追加する。

 これを迎え撃つべく高尾は《ザスリッドの屍術師》を展開するが、しかしこれはすぐに仲田の《放逐する僧侶》に追放されてしまう。

 攻められている高尾は考える。《湿った墓》をアンタップインし、《冒涜の悪魔》をプレイした。
 この悪魔に対処しなくてはいけない仲田。人間たちにとって、あの悪魔はあまりに強大だ。《果敢なスカイジェク》を加えるものの、攻撃はできない。ただの人間では悪魔に刃向かえないのか。とはいえ高尾もうかつには攻撃できない。《冒涜の悪魔》をさらに追加し、人間たちの反逆を待ち構える。


仲田 涼

 しかしここで仲田の《精霊への挑戦》が炸裂した。精霊の力をもって悪魔を乗り越えた人間たちが高尾に7点のダメージを与え、残りライフを7とする。攻め切る構えだ。手札に次の《精霊への挑戦》が有ることが予測できる。

 高尾も負けてはいない。《エレボスの鞭》で神の力をも手に入れた悪魔達が仲田に襲いかかろうとする。これはたまらんと仲田は《変わり谷》を悪魔の生贄に差し出した。もう一匹の悪魔は《オルゾフの魔除け》が仲田の命を犠牲に葬り去る。

神の力を得た悪魔

 とはいえ高尾も辛い。《エレボスの鞭》の加護を得た《冒涜の悪魔》が攻撃できればライフは安全圏になるのだが、それができない。《リーヴの空騎士》で「留置」しようとするものの、ここには《精霊への挑戦》が飛ぶ。これは先程のプレイで想定済みだ。そう、ここまでは理解している。ここからの負け筋が有るとしたら。たったひとつ。いや、しかしそんなはずは。まさか、そんなはずは。

「そんなはずはない。」そう考えた高尾は、《果敢なスカイジェク》を追加で展開した。そう、《変わり谷》を寝かせて。

三度炸裂!

 仲田は土地をアンタップすると、「そんなはずはない」3枚目の《精霊への挑戦》を叩きつけ、人間達が神と悪魔を従えた高尾を討滅したのだった。

高尾 0-1 仲田

 一瞬の隙をモノにした仲田。隙を作ってしまったことが悔やまれる高尾。感情は正反対ながら、2人の空気はどこか似ている。

 共通しているのは、そのプレイの判断の早さ、サイドボーディングのスムーズさだ。こんな変わったマッチアップでも、彼らのプレイスピードに淀みはない。たとえ大舞台が初めてであろうとも、彼らにとっては「スタンダード」という慣れ親しんだ環境。そこで行われるゲームでのプロセスは、選択肢は知り尽くしている。

 この速度はまさに彼らの練習の証。これは彼らの「人間」として努力だ。

 そして彼らは「神」に祈る。次のゲームの勝利を。


ゲーム2

 仲田のマリガンから始まった2ゲーム目。続いての6枚も満足できるものではなかったようで5枚でのスタートとなってしまった。
 ふたたび仲田の《万神殿の兵士》に対して高尾は《究極の価格》で応える。
 仲田が《ザスリッドの屍術師》を出せば高尾も鏡打ち。お互いに《ザスリッドの屍術師》が睨みを効かせる。仲田は「人間」としての《変わり谷》を攻撃に向かわせ、さらに《管区の隊長》を追加と、ダブルマリガンにしては順調な展開だ。


高尾 翔太

 高尾は考える。安易な対応はできない。《ザスリッドの屍術師》がいるために手札の《冒涜の悪魔》も力を発揮しにくい。考えた末に《異端の輝き》で《管区の隊長》に対処。この輝きには屍術師の力も及ばない。

 高尾はついに《幽霊議員オブゼダート》を展開した。少し押されたが、このギルド指導者さえいればあっという間に巻き返しが可能だ。さらには《冒涜の悪魔》も加え、圧倒的な場を形成していく。
 仲田も《罪の収集者》で手札を覗いてみるが、これは《拘留の宝球》と《冒涜の悪魔》で、見えたのは絶望だった。どうにか人間を繋げて耐えてみるものの、《幽霊議員オブゼダート》も《冒涜の悪魔》もどうにもならない。

 ついに高尾の《拘留の宝球》が《ザスリッドの屍術師》を封じ込めてしまえば、仲田にできることはもう何も無かった。

高尾 1-1 仲田

 全てが決まるゲーム3を前に緊張しているのが見て取れる2人。
 このようなグランプリという大舞台、当たり前だ。ここで戦っているのは、マジックが強い、しかし普通の「人間」なのだから。


ゲーム3

 三度、仲田の《万神殿の兵士》からゲームがはじまった。

三度好展開

 これに高尾は《威圧する君主》で応えるが、仲田の《ザスリッドの屍術師》によって満足な戦闘ができない。仲田の攻撃を止めることもできず、《威圧する君主》《ボロスの精鋭》と並ぶのを見守るだけの高尾。
 どうにか《リーヴの空騎士》を展開するものの、《ザスリッドの屍術師》が戦闘を一方的なものにしてしまっている。仲田はさらに《管区の隊長》と《ボロスの精鋭》を追加。

FN_board.jpg

 高尾もなんとか《幽霊議員オブゼダート》で対抗しようとするものの、《威圧する君主》の効果でブロッカーとして機能させるのが精一杯だ。

 仲田の戦線は広がる一方。高尾は人間たちを止める術が無い。先ほどまでは頼りになった《冒涜の悪魔》も、《ザスリッドの屍術師》と沢山の人間たちが展開されてはどうにもならない。高尾は《拘留の宝球》などで生きる道を検討する。

 しかし、そこに、救いの道は無く。

 そのはにかんだ笑顔と共に、仲田に向かって右手を差し出した。


決着の刻

高尾 1-2 仲田

 神々に支配されたかと思われたこの世界で、頂上を争ったのは「人間」達。

 最後に残った「人間」達に惜しみない賞賛を。

 おめでとう、仲田 涼!!

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