EVENT COVERAGE

グランプリ・静岡2017秋

観戦記事

第4回戦:チーム 秋山/三田村/柳田 vs. チーム 藤本/大森/片岡

By Genki Moriyasu

復活の三田村 和弥、熟練の大森 健一朗

 第4回戦のフィーチャーマッチ・テーブルについた面々は、現役最前線のプロとはまた少し異なる、ベテランかつ強豪の面々だ。

秋山/三田村/柳田チーム
r4_team_mitamura_akiyama.jpg

 秋山 貴志。

 かつて、太陽拳(ソーラーフレア)と呼ばれたデッキの使い手として名を馳せたプレイヤーだ。

 今年復活した日本選手権でも入賞経験を持ち、グランプリのカバレージでもその名を見つけることができる。

 そして、三田村 和弥。

 プロツアー・ホノルル2009で優勝しており、2015年にプロツアー『戦乱のゼンディカー』で瀧村 和幸が優勝するまで、長らく最後の日本人プロツアーチャンピオンとしてその名が刻まれていた。

 しばらくマジックの競技シーンからは離れていたようだが、最近グランプリなどではその姿を見かける。

 柳田 祐也も、当時三田村がホームとしていた千葉の草の根大会「LMC」の一員であったようだ。


藤本/大森/片岡チーム
r4_team_fujimoto.jpg

 藤本 岳大。

 BIG MAGICとユニフォーム契約を結ぶ「BIGs」の一員として名を連ね、大阪を中心に活躍するプレイヤーだ。

 ゲーム・マナーなどの踏み込んだ記事の執筆などでも知られている。

 大森 健一朗。

 その卓越・安定したプレイングは現役プロにも高く評価されている。

 エクステンデッドで開催されたグランプリ・神戸2011ではトップ4入賞の経験も持つ。

 その後も度々観戦記事やプレイヤー間の話題では名前の挙がる、強豪だ。

 片岡 麻美。

 6人中唯一の女性プレイヤーだ。

 しかし確実にマジック史に名を残しているプレイヤーである。

 プロツアー・チャールストン2006で18位入賞......プロツアー本戦で賞金を得た初の日本人女性プレイヤーだ。

 同プロツアーもチーム戦であり、本領を発揮するフォーマットのようだ。


 彼らを以前から好きな人には「垂涎」ともいえるマッチアップ。

 個人戦と異なり、チーム戦はこうしたプレイヤー間に交流があるのか、と読み取れる楽しさもある。

r4_team_mitamura_team_fujimoto.jpg

 関東を中心にした秋山/三田村/柳田チームと関西圏で活動する藤本/大森/片岡チームが静岡という地でぶつかる。


A卓 秋山(赤白恐竜) vs. 藤本(赤緑白恐竜) ゲーム1

 スピード感を持つ赤い恐竜の相方に、よりスピードを高める白を合わせた秋山。

 同じく赤白恐竜に、さらにサイズを補強する緑を組んだ藤本。

 先んじて《ティロナーリの騎士》から《縄張り持ちの槌頭》と展開した藤本だが、ここで土地が止まった。

 《激情の猛竜》《猛竜の群れ》とよりマッシブな恐竜を並べる秋山。

 そして《薄暮の賛美者》をプレイして止まらないアタッカーを並べきると、藤本はチャンプ・ブロックさえも許されなくなった。

秋山 1-0 藤本

A卓 秋山(赤白恐竜) vs. 藤本(赤緑白恐竜) ゲーム2

 高速で終えたゲーム1の勢いのまま、ゲーム2も進行する。

 そしてゲーム2の主導権を握るのもまた、秋山であった。

 《軍団の上陸》から《猛竜の幼生》。そのまま《火炎砲発射》で藤本の初動である《縄張り持ちの槌頭》を焼いて、攻勢を止めない。

 均等3色の弊害もあって藤本の初速は悪く、それを隙と読んで秋山が突き貫いた形となった。

秋山 2-0 藤本


 他卓がゲーム1を終わらせる前に、A卓はマッチを完了させた。

 秋山は三田村と柳田の間に移り、藤本は大森と片岡をその場から、応援する。


B卓 大森(青黒海賊) vs. 三田村(青黒海賊) ゲーム1

 青黒海賊のミラーマッチだ。

 《勇敢な妨害工作員》からの《巧射艦隊の略取者》という美しいムーブを決めてゲームを開幕する大森。《水罠織り》でブロッカーを寝かし、さらにこれらのダメージも押し通してゆく。

 対して、《流血の空渡り》から《巧射艦隊の操舵手》、《海賊のカットラス》サーチと、動きの質では負けていない三田村。

 扱いやすくアドバンテージにも繋がりえる《セイレーンの見張り番》を鏡打ちしてからは少し睨みあいが続いたが、《川の叱責》に繋げた三田村がゲームの舵を握った。

......かのように見えたが、序盤にライフレースの手綱を握っていたのは大森だ。

 既に三田村のライフはごくわずかで、攻撃を受けるわけにはそうそういかない。

 三田村は《深海艦隊の船長》という攻守に優れたクリーチャーを戦線に送り、海賊・トークンを生成してゆく。

 しかしブロッカーとして立てた海賊・トークンが2枚目の《水罠織り》でタップされると、三田村のライフはピッタリ削りきられた。

三田村 0-1 大森


C卓 柳田(青緑マーフォーク) vs. 片岡(白黒吸血鬼) ゲーム1

 マリガンで6枚スタートの片岡が《司教の兵士》《魔学コンパス》と続ける。

 柳田も《大物群れの操り手》、《ティシャーナの道探し》、《水罠織り》と順調な展開を見せる。

 ここで片岡の手札に土地はなくなるが、幸い《魔学コンパス》の起動マナは用意できている。起動と展開を交互に繰り返す形で、土地を伸ばしつつ吸血鬼を戦場に送り込んでゆく。

 片岡の展開スピードが緩やかなうちに攻勢を固めたい柳田は《水罠織り》に《風と共に》をエンチャントして、即席フライヤーを用意した。対応されなければ即座にゲーム終了を迎える、強烈なクリーチャーだ。

......対応されなければ。

 片岡は《軍団の裁き》でこの4/4飛行を叩き落とすと、柳田の展開自体をも遅くさせた。

 そして今度は逆に、《選定された助祭》に《吸血鬼の印》をつけて7/5絆魂アタッカーを用意するという大胆不敵な戦法に自らの行く末を託す。

 柳田は、この恐竜にも勝るサイズの吸血鬼を止めるべく、持てるクリーチャー全てでこれの攻撃をブロックする。《噛み付く帆背びれ》、《自然形成師》、《ティシャーナの道探し》。

 おおむね2体を犠牲に、サイズの膨れ上がった《選定された助祭》を打ち取れるはずであったが......

 ここに合わせて片岡がプレイしたコンバット・トリックは《吸血鬼の士気》。

 《選定された助祭》は吸血鬼であり、+2/+2と先制攻撃を得る。

 9/7 先制攻撃。

 そして柳田が差し出したブロッカー3体のタフネスの合計は、9。

 《吸血鬼の士気》1枚とクリーチャー3体という交換となった。

 攻め手と受け手を一気に失った柳田に、ここから逆転の手立てはない。

柳田 0-1 片岡

C卓 柳田(青緑マーフォーク) vs. 片岡(白黒吸血鬼) ゲーム2

 ゲーム1の負けを取り戻すべく、柳田が攻め立て続ける。

 《ティシャーナの道探し》に《風と共に》。《深根の戦士》に《風と共に》。「対応されなければ勝てる」という形で、飛行アタッカーを次つぎに用意していく。

 すれ違いの絆魂アタックでライフの低減を緩やかにする片岡。ライフが致死圏に及ぶ前に、再び《軍団の裁き》で飛行を1体落とす。《不死の古き者》のマナ域にたどり着いて、他の飛行もシャットアウトにかかる。

 柳田が一瞬攻撃の手を緩めたところへ、片岡は《不死の古き者》に《吸血鬼の印》をエンチャント。圧倒的に不利であったライフレースを超高速で巻き返しにかかった。

 柳田も《自然形成師》で飛行クリーチャーのサイズを上げ《不死の古き者》を食い止めるが、一手遅い。

 相打ちにこそ持ち込むが、片岡はトークンをタップして《不死の古き者》の能力を起動させると、今後永遠に飛行クリーチャーを用意できることを示した。

 すでに2枚の《風と共に》を失っている柳田だが、それでもドローに一縷の望みをかけた。

「なにか、引け」

 その言葉は悲しく空を切った。

柳田 0-2 片岡


 両チームから見て2-0と0-2となったA・C卓。

 チーム戦の行く末が、B卓の大森と三田村の肩にかかってくる。

 名実ともに大将戦となるようだ。


B卓 三田村(青黒海賊) vs. 大森(青黒海賊) ゲーム2

 再び、三田村の《流血の空渡り》プレイでゲームが始まる。

 三田村のデッキは海賊を軸にこそしているものの、三田村のチームは吸血鬼のアーキタイプを選んでおらず、単体として優秀な《流血の空渡り》がここで採用されている。それも、2枚。ライフを吸いつつ、自然に飛行アタッカーを続けていく。

 そして《海賊のカットラス》も、2枚。

 もちろん《流血の空渡り》は海賊ではないため、装備コストの踏み倒しこそできないが、装備先として《セイレーンの見張り番》を挟んでおり、ぬかりはない。

 《指名手配の獄道者》。《帆凧の掠め盗り》。《自暴自棄の漂流者》。

 そのまま黒の海賊を流れるように展開しつづけた三田村が、大森の――決して悪くない展開を超え続けた。

 《人質取り》で《セイレーンの見張り番》を奪取した大森だったが、最終的には《海賊のカットラス》での修整によるパワーの差を受け止めきれなかった。

三田村 1-1 大森

 チームメンバー2人が見つめ、応援する中、B卓ゲーム3が始まる。

B卓 三田村(青黒海賊) vs. 大森(青黒海賊) ゲーム3

 三田村が繰り出したのは、4回目となる《流血の空渡り》。

 それに対して大森は《》《》で土地が止まる。最大の不運がここで突き刺さった。

 《源流の歩哨》、そして《略奪者の痕跡》と続ける三田村。ライフと手札を同時に攻める手立てだ。

 土地さえ引ければ......大森の願いは、二度通らない。

 そして都合2ターンの差を得た三田村にとって、大森のライフ20という数字を削りきる算段をつけるのは、そう難しいものではなかったようだ。

三田村 2-1 大森


 三田村と大森のミラーマッチ総力戦は、最終的には大森のマナスクリュー(土地不足)という形で三田村に軍配が上がったが、ゲーム1、2での細かいライフのやり取りは、熟達した技術や視野を見せていた。

 秋山/三田村/柳田チーム、4戦全勝。

 彼らの名を今ふたたび競技シーンの最前線で見るようになる日も、近いようだ。

 いや、それはもしかしたら、今日からなのかもしれない。

チーム 秋山/三田村/柳田 Win!
  • この記事をシェアする

RESULTS

対戦結果 順位
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

RANKING

NEWEST

サイト内検索