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グランプリ・台北2016

観戦記事

準々決勝:Lien, Chien-Hung(台湾) vs. 市川 ユウキ(神奈川)

By 矢吹 哲也

「奇跡が起きた。(敗色濃厚の場面で)正直晩飯のことを考えていた」と第15回戦を逆転勝利し、入賞の喜びを語る市川 ユウキ。あいにくその瞬間をつぶさに目撃することは筆者には叶わなかったが、小さな光明から奇跡を「引き込んだ」のだということは想像に難くない。準々決勝での対戦相手となるリェン・チェン=ファン/Lien, Chien-Hungと試合前に言葉を交わし、和やかにトップ8入賞を称え合った市川だが、デッキリストを渡されると再び集中を高めた。

 これで市川は自身6度目のグランプリ・トップ8入賞。今シーズンはグランプリ・北京2015で準優勝、グランプリ・メルボルン2016で3位、グランプリ・東京2016で9位と好成績を重ね、その力を証明し続けている。

 対するリェンも、「渡辺 雄也を信じて選択した(トップ8プロフィールより:英語)」と言い切る「バント人間カンパニー」を操り、地元プレイヤーとして奮闘してきた。彼は今大会、その「渡辺 雄也」をはじめ、日本の強豪たちを打ち破ってきている。ここでもうひとつ金星をあげ、優勝トロフィーに手を伸ばせるだろうか。

 ジャッジが試合開始のアナウンスをする。いよいよ決戦のとき――

「You have 50 minutes, You may begin(制限時間50分。始めてください)」

 決勝ラウンドに時間制限はない。フィーチャー・マッチ・エリアのプレイヤーたちが思わず振り返ると、アナウンスをしたジャッジは「冗談だよ」とウインクをひとつ。本当に冗談だったのかは定かではないが、フィーチャー・マッチ・エリアの空気が和んだところで、改めて決勝ラウンドの幕が上がった。


リェン・チェン=ファン vs. 市川 ユウキ

リェン・チェン=ファン(バント人間カンパニー) vs. 市川 ユウキ(バント・カンパニー)

 後手のリェンがマリガンを選択したものの、初動は彼が飾った。2ターン続けて土地をタップ・インした市川に対し、リェンは《ラムホルトの平和主義者》から《スレイベンの検査官》、《サリアの副官》と強力な動きを見せる。

 市川は《ヴリンの神童、ジェイス》を始点に動き出したが、リェンのプレッシャーは極めて大きかった。彼は《サリアの副官》をもう1枚追加し、一挙8点の打撃を市川に与えた。


リェンは開幕早々強烈な動きを繰り出し、このゲームを一気に奪おうとする。

 《森の代言者》と《ドロモカの命令》で反撃した市川だったが、5/5になった《ラムホルトの平和主義者》が止まらない。それでも《ヴリンの神童、ジェイス》でライブラリーを掘り進め、《森の代言者》を盤面に追加。残りライフは3点と心許ないが、6枚目の土地も置かれた今、市川の守りは堅い。

 ここから市川の反撃が始まる。リェンのターン終了時に《集合した中隊》を放ち、さらなる《森の代言者》と《薄暮見の徴募兵》を獲得。《ヴリンの神童、ジェイス》を「変身」させまいと《ドロモカの命令》を放ったリェンだったが、そこへ市川も《ドロモカの命令》を合わせる!

 これで大勢は決した。古代マケドニアのファランクス(密集陣形)のごとく堅い《森の代言者》の戦列を前に、リェンは隙を見出せない。市川はそのまま《反射魔道士》で詰めに入り、第1ゲームを制したのだった。


リェンの序盤の猛攻を耐え、《ドロモカの命令》を巡る戦いを制し、市川は第1ゲームを奪取した。

 2ゲーム目、初手を見て熟考するリェン。やがて、土地が多く盤面の取り合いに不利な手札をライブラリーへ送り返すと、再び6枚の手札で市川と対峙することになった。2ターン目《森の代言者》でスタートした市川に対し、リェンは3ターン目、4ターン目と《ラムホルトの平和主義者》を並べる。

 市川の《集合した中隊》が、《森の代言者》と《巨森の予見者、ニッサ》を盤面へ送り出す。そのターンの終わりにリェンは《ドロモカの命令》で《巨森の予見者、ニッサ》を除去し、迎えたターンに《サリアの副官》を追加すると、5/5と4/4の《ラムホルトの平和主義者》たちで攻撃を仕掛けた。

 4/4の方を複数ブロックで討ち取った市川は、その後2度にわたり《反射魔道士》でリェンの防御を破りながら反撃。6枚目の土地で《森の代言者》が強化されると、その攻撃はさらに苛烈なものになった。

 リェンも《反射魔道士》を繰り出し市川の攻勢を阻むと、《グリフの加護》を《サリアの副官》にエンチャントし、上空から市川に襲いかかった。市川は《集合した中隊》で《ヴリンの神童、ジェイス》と《森の代言者》を繰り出すが、《ヴリンの神童、ジェイス》は《ドロモカの命令》で仕留められる。

 だがいかんせん、マリガンによる動きの差と《集合した中隊》によるリソース差は覆せない。そこへ市川は《悲劇的な傲慢》で追い討ちをかけ、有利な盤面を固定した。

 リェンはこの状況を打破する手立てを最後まで見出せず、やがて右手を差し出すのだった。

リェン 0-2 市川

市川 ユウキが2連勝でリェン・チェン=ファンを下し、準決勝へ!
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