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グランプリ・東京2016

戦略記事

行弘賢の「スゥルタイ・サクリファイス」

By Masashi Koyama

※この記事はグランプリ本戦1日目第5回戦終了後に取材を行いました。

 プロツアー『イニストラードを覆う影』は群雄割拠のプレイオフとなった。なにせトップ8に残ったプレイヤーが使用したデッキが全て異なる前代未聞の事態となったのだ。

 結果として優勝したのはスティーヴ・ルービンの緑白トークンとなったが、話題をさらったのは惜しくも敗退したジョン・フィンケルの黒緑《過ぎ去った季節》や、LSVことルイス・スコット=ヴァルガスの黒緑サクリファイスではなかったろうか。

 その結果を受け行われているこのグランプリ・東京2016。絶対的と言える仮想敵がいない、まさに「謎」に満ちた環境で、日本屈指のデッキビルダーであり、プロツアーシーンへの復帰を目指す行弘賢が持ち込んで来たデッキがこれだ。

行弘 賢
グランプリ・東京2016 / スタンダード[MO] [ARENA]
5 《
4 《
4 《風切る泥沼
4 《ラノワールの荒原
3 《ヤヴィマヤの沿岸
3 《ウェストヴェイルの修道院

-土地(23)-

4 《壌土のドライアド
3 《膨れ鞘
4 《薄暮見の徴募兵
4 《エルフの幻想家
4 《ズーラポートの殺し屋
4 《地下墓地の選別者
4 《ナントゥーコの鞘虫
1 《異端の癒し手、リリアナ
2 《龍王シルムガル

-クリーチャー(30)-
3 《謎の石の儀式
4 《集合した中隊

-呪文(7)-
2 《難題の予見者
1 《光り葉の選別者
4 《究極の価格
2 《進化の飛躍
2 《否認
4 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ

-サイドボード(15)-

 一見したところ、LSVの緑黒サクリファイスを進化させたデッキのように見えるが、行弘はどのような過程でこのデッキを使用するに至ったのだろうか。ラウンドの間に、行弘にお願いして、使用デッキを選択した経緯についてインタビューをお願いした。

yukuhiro_deck_interview.jpg

――緑黒サクリファイスが元となっているように見えるのですが、どのような仮想敵を想定してこのデッキになったのでしょうか。

「仮想敵を想定する、というよりまず回してみた感触で、デッキパワーがすごく高いデッキだなと思いました」

 行弘はカードを広げながら、デッキについて話し始めてくれた。

yukuhiro_deck.jpg

「そこから本格的に回し始めてみた結果、緑白トークンやバント・カンパニーには、相性の良さとデッキパワーの高さで負けないなと。苦手なマッチアップはほとんどなくて、《ゲトの裏切り者、カリタス》だけがキツいのですが、それだけ乗り越えればこのデッキはポテンシャルが凄まじいので、《龍王シルムガル》を試してみたり、サイドボードにコントロールに勝てるカードを取ってみたところ、サイドボード後は(《ゲトの裏切り者、カリタス》入りのデッキに)有利がつくようになったので(このグランプリで)使うことなりました」

――ということは《ゲトの裏切り者、カリタス》の入っているデッキには当たりたくはないのでしょうか。

「《ゲトの裏切り者、カリタス》デッキには当たりたいわけではないですね。メイン戦は落としてしまうので。とは言え、サイドボード後はかなり相性が良くなるので、すごくキツくはないです。どっちかと言えば、赤単ゴーグルなど想定していないデッキの方が嫌ですね。唯一やりたくないと言えるのは白単ウィニーですね。相性としては五分で、本当に引きの強さ勝負になってしまうので」

――《龍王シルムガル》をタッチしたのはどういう理由からでしょうか。このデッキだと唯一《集合した中隊》で戦場に出すことができないクリーチャーですよね。

「《ゲトの裏切り者、カリタス》にメインデッキから触ることができるのが、評価点が高いポイントです。《龍王シルムガル》をメインから除去するカードはほぼ無いので、唱えるとそのままターンが返ってくることが多いです。マルチカラーのタフネス5の飛行クリーチャー、というのが環境的に強いですね」


 行弘のデッキはいかがだっただろうか。サイドボード後は《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》を全力投入し、黒緑のトークン・デッキのような動きもできる柔軟性を持っている。

 行弘に話を伺って感じるのは、彼は非常に言語化能力が高いということだ。同時に英語版カバレージの取材を受けていた行弘だが、一つ一つの質問に明確で理路整然とした答えを返してくれ、懇切丁寧に説明をしてくれる。

 しっかり論理を構築しているからこそ、全ての事柄に理由付けができ、新たなデッキを日々生み出せるのだろう。

 行弘は果たしてグランプリ・東京2016でどのような結果を残すのだろうか。少なくとも彼はここまで彼の言葉を証明するように、《ゲトの裏切り者、カリタス》の入ったデッキに2勝を挙げている。

 最終スタンディングが貼りだされる時に彼がどの位置に立っているのか、そのパフォーマンスに注目だ。

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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