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【戦略記事】 Drafting with Mihara

【戦略記事】 Drafting with Mihara

By Masami Kaneko

「魔王」三原槙仁。

 あまりの強さに「魔王」とまで称された、2006世界チャンプ三原は、社会人になっても依然として結果を残し続けており、同じくリミテッドで開催された昨年のグランプリ・台北2012を優勝していたのも記憶に新しい。遡れば同じく国内リミテッドグランプリのグランプリ・岡山2008でも優勝しており、その魔王たる所以の根源にはドラフトの強さが多分に含まれているのだろう。

 今回はそんな三原のピックを追って、「魔王」ドラフティングを勉強していこう。


「魔王」三原槙仁

第1パック

1手目
  • ○《軍勢の集結/Assemble the Legion(GTC)》
魔王力!

 単純なカードパワーで一択。あっさりと強力なレアを引き当てるあたり、三原には「魔王」としての力、いうなれば「魔王力」のようなものが存在するのではないだろうか?

 しかしこのパックで注目するべきは他のカード達で、《強打/Smite(GTC)》《オルドルーンの古参兵/Ordruun Veteran(GTC)》《ドレイク翼の混成体/Drakewing Krasis(GTC)》といった多くの強力カードがバランスよく含まれており、下家の動向や今後のピックの指針を決めるために三原はギリギリまで他のカードを見つめていた。

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 また、裏返しでカードの枚数を数えたあとに、裏返しのままレアとアンコモンをパックの先頭に持ってきていた。その位置をしっかり覚えているドラフト慣れも流石といえるが、判断を早くするために即座にそういった行動をおこなうのが三原らしいといえる。

2手目
  • ○《発光の始源体/Luminate Primordial(GTC)》
  • 《ヴィーアシーノの軸尾/Viashino Shanktail(GTC)》
魔王力!!

 クリーチャーとしてもコンバットトリックとしても手頃な《ヴィーアシーノの軸尾/Viashino Shanktail(GTC)》もあるものの、ここは重かろうとも強力レアの《発光の始源体/Luminate Primordial(GTC)》を。初手、2手目とレアであり既に魔王力が迸っている。

3手目
  • ○《忌まわしい光景/Grisly Spectacle(GTC)》
  • 《聖堂の金切り声上げ/Basilica Screecher(GTC)》
  • 《心見のドレイク/Mindeye Drake(GTC)》
  • 《身分詐称/Stolen Identity(GTC)》

 《身分詐称/Stolen Identity(GTC)》という強力レアが流れてきてあわや3手目まで全てレアかと思われたが、流石にこれは方針が違いすぎて取れず。

 《発光の始源体/Luminate Primordial(GTC)》からオルゾフというプランが見えているので《忌まわしい光景/Grisly Spectacle(GTC)》をピック。

4手目
  • ○《ウォジェクの矛槍兵/Wojek Halberdiers(GTC)》
  • 《シミックの魔除け/Simic Charm(GTC)》
  • 《エリマキ眼魔/Frilled Oculus(GTC)》

 シミックが開いている。それは間違いない。しかし、だからといってここから方針転換は難しい。そもそも《ウォジェクの矛槍兵/Wojek Halberdiers(GTC)》は初手とも噛み合っている強力なコモンカード。文句が有るはずもないのだ。三原もそう考えて《ウォジェクの矛槍兵/Wojek Halberdiers(GTC)》を取った。

5手目
  • ○《宮廷通りの住人/Court Street Denizen(GTC)》

 他に選択肢も無く、色が合っているため文句があるはずもなく。

6手目
  • ○《排水路潜み/Gutter Skulk(GTC)》
  • 《死の接近/Death's Approach(GTC)》

 方針は大分ボロスに寄ってはきたが、しかしオルゾフの目が消えたわけではない。ボロスのカードが無いならば黒をピックする。両天秤の状態で、どちらがデッキにとって役に立つかじっくり考えたうえで、安定の2マナクリーチャーをピックした。

7手目
  • ○《オルゾフの魔鍵/Orzhov Keyrune(GTC)》
  • 《反逆の行動/Act of Treason(GTC)》

 両極端な二択。2手目のレアである《発光の始源体/Luminate Primordial(GTC)》を見据えると相性の良い《オルゾフの魔鍵/Orzhov Keyrune(GTC)》をピック。やはり魔王にも準備は必要ということか。

8手目
  • ○《組織の処罰者/Syndicate Enforcer(GTC)》

 今度はかなりオルゾフの方針が強くなってきた。......しかし。

9手目
  • ○《大規模な奇襲/Massive Raid(GTC)》
  • 《オルドルーンの古参兵/Ordruun Veteran(GTC)》
  • 《ドレイク翼の混成体/Drakewing Krasis(GTC)》

 一周して帰ってきたパックは、ボロスの空きがある程度想定できるカード達が残されたいた。

 ここは流石に迷うも、大隊しないと力弱い《オルドルーンの古参兵/Ordruun Veteran(GTC)》よりも、安定の除去である《大規模な奇襲/Massive Raid(GTC)》をピック。

10手目
  • ○《戦心の歩兵/Warmind Infantry(GTC)》
  • 《ボロスのギルド門/Boros Guildgate(GTC)》

 2手目では流石に選択肢にならなかったものの、一周してくるとなれば話は別。赤の空き、つまり卓にボロスが薄いことが見てとれる一周となった。

11手目
  • ○《守られた道/Shielded Passage(GTC)》
12手目
  • ○《虚無渡り/Voidwalk(GTC)》
13手目
  • ○《殺人の捜査/Murder Investigation(GTC)》
14手目
  • ○《構造崩壊/Structural Collapse(GTC)》

 オルゾフとボロスの両天秤でピックを続けていて、後半で大分ボロス寄りの流れが来た。まだ確定はしていないだろうが、このまま流れが良いならばぜひボロスを続けたいところだろう。

第2パック

1手目
  • ○《溶鉄の始源体/Molten Primordial(GTC)》
  • 《カルテルの貴種/Cartel Aristocrat(GTC)》
  • 《重要人物のペット/Kingpin's Pet(GTC)》
魔王力!!!

 ボロスというアーキタイプにぴったり合うわけではないが強力な赤のレアの《溶鉄の始源体/Molten Primordial(GTC)》と、オルゾフのカード達。少し考えた末に三原がピックしたのは赤のレアのほうだった。決め手は魔王力!......ではなく、やはり後半のボロスの流れもあり、ここは赤に行きたい。......そう、赤に行きたい。

2手目
  • ○《欄干のスパイ/Balustrade Spy(GTC)》
  • 《聖堂の金切り声上げ/Basilica Screecher(GTC)》
  • 《第6管区のワイト/Wight of Precinct Six(GTC)》

 しかし、三原の願いは通じない。一転して黒のカードしか候補に無いこのパック。

 単純な強さならば《聖堂の金切り声上げ/Basilica Screecher(GTC)》になるのだろうが、黒はタッチになる可能性も非常に高く、それを見据えてか《欄干のスパイ/Balustrade Spy(GTC)》をピック。

3手目
  • ○《従順なスラル/Dutiful Thrull(GTC)》
  • 《そびえ立つ雷拳/Towering Thunderfist(GTC)》
  • 《殺戮角/Slaughterhorn(GTC)》

 ボロスのカードとしては《そびえ立つ雷拳/Towering Thunderfist(GTC)》になるが、《従順なスラル/Dutiful Thrull(GTC)》ならば黒がタッチだとしても十分に使用に値するためこちらをピック。

4手目
  • ○《大規模な奇襲/Massive Raid(GTC)》

 あまり選択肢もなく、ボロスの方針を継続してピック。

5手目
  • ○《ウォジェクの矛槍兵/Wojek Halberdiers(GTC)》
  • 《宮廷通りの住人/Court Street Denizen(GTC)》

 同時に流れてきて悲しいといった話は置いておけば、この順目でこの強力な2マナ域が取れるのは僥倖。やはり卓にボロスは薄いのだろうか?

6手目
  • ○《空騎士の軍団兵/Skyknight Legionnaire(GTC)》
  • 《ボロスの精鋭/Boros Elite(GTC)》

 コモンのエースクリーチャーが6手目で取れた。また強烈に匂い立ってきたボロス空き。ある程度は絞っているものの、方針が絞り切れない。

7手目
  • ○《ボロスのギルド門/Boros Guildgate(GTC)》
  • 《軍部の栄光/Martial Glory(GTC)》
  • 《キヅタ小径の住人/Ivy Lane Denizen(GTC)》

 優秀なコンバットトリック《軍部の栄光/Martial Glory(GTC)》という選択もあったが、まずはマナベースを。

8手目
  • ○《そびえ立つ雷拳/Towering Thunderfist(GTC)》

 単純な地上クリーチャーはここで回収。

9手目
  • ○《天駆ける進撃/Aerial Maneuver(GTC)》
  • 《キヅタ小径の住人/Ivy Lane Denizen(GTC)》

 一応ながらコンバットトリックだが、横を流れていく緑の強力カードが気になってくる。

10手目
  • ○《天駆ける進撃/Aerial Maneuver(GTC)》
11手目
  • ○《猛然たる抵抗/Furious Resistance(GTC)》
12手目
  • ○《破壊的一撃/Shattering Blow(GTC)》
13手目
  • ○《帰化/Naturalize(GTC)》
14手目
  • ○《盗賊の道/Way of the Thief(GTC)》

 完全に絞りきれたわけではないもののボロスの方針を固めてきた三原。少し重めの構成であり、一般的な前のめりなボロスでないだけに、ピックの腕が問われるだろう。

第3パック

1手目
  • ○《強盗/Mugging(GTC)》
  • 《忌まわしい光景/Grisly Spectacle(GTC)》
  • 《聖堂の金切り声上げ/Basilica Screecher(GTC)》
  • 《神出鬼没の混成体/Elusive Krasis(GTC)》

 軽い除去であり、ボロスならばどのような構成でも欲しい《強盗/Mugging(GTC)》。これは一択といった感じで即決。

2手目
  • ○《果敢なスカイジェク/Daring Skyjek(GTC)》

 これまた一択。

3手目
  • ○《くすぶり獣/Ember Beast(GTC)》
  • 《処刑人の一振り/Executioner's Swing(GTC)》
  • 《そびえ立つ雷拳/Towering Thunderfist(GTC)》

 タッチ黒の実施について検討していたようだが、可能ならば二色で組みたい、ということで《くすぶり獣/Ember Beast(GTC)》をピック。

4手目
  • ○《燃えがらの精霊/Cinder Elemental(GTC)》
  • 《軍勢の忠節者/Legion Loyalist(GTC)》
  • 《聖堂の金切り声上げ/Basilica Screecher(GTC)》

 X火力でもあるクリーチャーをこれは即決とばかりにキープ。前のめりなデッキならば《軍勢の忠節者/Legion Loyalist(GTC)》が強いこともあるだろうが、三原のデッキはかなりコントロール寄りだ。

5手目
  • ○《亡霊招き/Beckon Apparition(GTC)》
  • 《欄干のスパイ/Balustrade Spy(GTC)》

 タッチ黒についてはもう捨てたのだろう。使うであろう手頃な飛行クリーチャーを。

6手目
  • ○《聖堂の護衛/Basilica Guards(GTC)》
  • 《ボロスの精鋭/Boros Elite(GTC)》
  • 《シミックの干渉者/Simic Manipulator(GTC)》
ボロスだけれども。

 まさかの強力レア《シミックの干渉者/Simic Manipulator(GTC)》が6手目。あまりに卓に薄い青に三原も困り顔だが、しかし今更取るわけにはいかない。自分のデッキに入るカードを取りにいく。

 通常のボロスならば《ボロスの精鋭/Boros Elite(GTC)》のほうが強いかもしれないが、そこは三原。自分のデッキの構成を考えたうえできっちりと《聖堂の護衛/Basilica Guards(GTC)》をピックした。

7手目
  • ○《ザリーチ虎/Zarichi Tiger(GTC)》
  • 《予言のプリズム/Prophetic Prism(GTC)》
  • 《第6管区のワイト/Wight of Precinct Six(GTC)》

 防御寄りのデッキでは嬉しい一枚。

8手目
  • ○《不敬の粛清/Purge the Profane(GTC)》
9th
  • ○《神出鬼没の混成体/Elusive Krasis(GTC)》

 まさかの一周。本当に卓に居ないのだろうか。欲しいカードも無いのでとりあえずはとカット。

10手目
  • ○《道迷い/Totally Lost(GTC)》
  • 《束縛の手/Hands of Binding(GTC)》

 どちらも十分に使える青いカード。考えた末に、暗号化されても対処可能なデッキだということで使われると困るほうをピック。

11手目
  • ○《呪文裂き/Spell Rupture(GTC)》
12手目
  • ○《シミックのギルド門/Simic Guildgate(GTC)》
13th
  • ○《捕食者の関係/Predator's Rapport(GTC)》
14th
  • ○《天空試合/Skygames(GTC)》
Mihara, Makihito / グランプリ・横浜2013 2nd Draft
8 《山》
8 《平地》
1 《ボロスのギルド門》

-土地(17)-

1 《従順なスラル》
2 《ウォジェクの矛槍兵》
1 《果敢なスカイジェク》
1 《聖堂の護衛》
1 《宮廷通りの住人》
1 《くすぶり獣》
1 《空騎士の軍団兵》
1 《戦心の歩兵》
1 《燃えがらの精霊》
1 《ザリーチ虎》
1 《そびえ立つ雷拳》
1 《発光の始源体》
1 《溶鉄の始源体》

-クリーチャー(14)-
1 《亡霊招き》
1 《強盗》
1 《守られた道》
2 《天駆ける進撃》
2 《大規模な奇襲》
1 《オルゾフの魔鍵》
1 《軍勢の集結》

-呪文(9)-

 出来上がったデッキは「魔王」三原らしく、魔王力もといレアに溢れたボロス。マナ加速と《従順なスラル/Dutiful Thrull(GTC)》の再生のためだけに《オルゾフの魔鍵/Orzhov Keyrune(GTC)》が投入されている。

 三原曰く「オルゾフ寄りのボロス」。なるほど、滅多にないアーキタイプかもしれないが、デッキ構成を見れば納得だ。ピック方針もそれを見据えてしっかり行なっており、一般的なボロスとは違う点数でピックをしているあたりが三原の上手さなのだろう。脇を固めるカードにこそ不満はあるものの、レアに繋げれば十分な魔王力を発揮できる。


三原は語る

「今回のドラフトを見る限り、みんなぐちゃってると思うんですよ。明らかにみんな青をドラフトしてない。卓のみんなが4色でドラフトしちゃったパターン。」

「こういうときって、みんなのデッキが弱くなるんですよね。だからそこは、レアの有る私が勝ちますよ。」

 そう語ってくれた三原。

「デッキの色はボロスですが、コンセプト自体はほとんどオルゾフです。守ってレアにつなげて勝つ感じですね。《ボロスの精鋭/Boros Elite(GTC)》より《聖堂の護衛/Basilica Guards(GTC)》を優先したところとかスゴいでしょ? あとは《強打/Smite(GTC)》があれば良かったんですけどね。」

と少し変わったコンセプトについて解説してくれた。

 後半にスゴい勢いで流れていたシミックについて訊いてみたところ、

「......サムブラック(下家)かまーくん(北山雅也:下下家)がシミックだったら投了。ライン違うし当たらないでしょ!」

 と語ってくれた。

 Top8に向けてあとひと踏ん張り。

 三原にはぜひこの横浜の地でも「魔王」として君臨し、この地を魔界としてほしいところだ。

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