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【観戦記事】 第1回戦:William Jensen(アメリカ) vs. Lee Shi Tian(香港)

【観戦記事】 第1回戦:William Jensen(アメリカ) vs. Lee Shi Tian(香港)

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Blake Rasmussen / Tr. Tetsuya Yabuki

2014年12月2日

原文はこちら

 ドラフト中、私は第5席に座る渡辺雄也のピック記録を喜んで取っていた。だが、認めなくてはならないだろう。ドラフトが進むにつれて、私の視線は第6席にもさまよっていったのだ。そこには、世界ランキング7位、ウィリアム・ジェンセン/William Jensenが座っていた。

 ご存知かもしれないが、渡辺雄也はまさに実直なアグレッシブ・デッキをドラフトしていた。多少の奇手はあるものの、究極的には攻撃、攻撃、攻撃あるのみといったものだ。それも悪くないデッキであり、いや、見事とも言えるかもしれない。しかし、惹きつけられるものではなかった。

 一方、ジェンセンの《時間の亀裂》が私の目を捕らえたその瞬間、私の注意はそちらに引かれた。そしてもう一度目を向けるなり、完全にやられてしまった。《サイカトグ》、打ち消し呪文、「儀式」系の呪文、そして複数の「ストーム」呪文。それらのカードが、ジェンセンのピックしたカードの束に鎮座していたのだ。《Mana Drain》、種々様々なドロー・カード――それは、このフォーマットで見受けられるデッキの中でもまさにエキサイティングなものだった。

 さらに詳しいことは間もなく話すが、まずはこの試合で戦う両者を紹介しよう。ジェンセンは――彼についての詳細なプロフィールはどこかで読むことができる――再び世界の頂点に立っている。マジックの世界に復帰して、わずか数年後のことだ。彼は何より歴史に残るシーズンを過ごした。この24人が争う舞台への旅を獲得しただけでなく、1シーズンにグランプリ・トップ8入賞8回という大記録を打ち立てたのだ――これは友人であり、チームメイトであり、そして現在世界ランキング1位のオーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwaldが有していた前記録を打ち破っての樹立だった。

 リー・シー・ティエン/Lee Shi Tianもまた素晴らしいシーズンを過ごし、さらに彼は直近のプロツアー『タルキール覇王譚』にて記憶に残るトップ8入賞を果たして、力強く新シーズンの第一歩を踏み出していた。彼はアジア太平洋地域の代表2名のうちのひとりとして、今大会の権利を得た。現在の世界ランキングは10位。彼もまた、詳細なプロフィールが見つかるプレイヤーだろう。

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世界ランキング7位のウィリアム・ジェンセンが組み上げた素敵な「ストーム」デッキは、力を秘めている。しかし世界ランキング10位のリー・シー・ティエンのデッキには残忍な軍勢が満載で、ジェンセンが「ストーム」を巻き起こす前に倒し切ることも可能だ。

それぞれのデッキ

 ああ、デッキね。すでにジェンセンのデッキについてはその中身を少し噴き出させてしまった(そうとも、《噴出》も入っている)が、その実態は2枚の《サイカトグ》を追加の勝ち手段に据えた典型的な「青黒ストーム」デッキだ。追加の勝ち手段として《サイカトグ》を使えるなら――それも2枚あるなら――実に良いデッキと言えるだろう。

「まさにベスト・デッキだと思う」この方針を始めるきっかけとなった《思考停止》を見せながら、ジェンセンは言い切った。「これでもまだ穴はあるけどね。《大あわての捜索》が1枚もないし、マナを生み出すカードが《転換》しかない」

「でも」と彼は続ける。「時々、《サイカトグ》が20点で攻撃するよ」

 一方、リーは主要なアーキタイプである「白緑オーラ」デッキを手にしている。《象の導き》(しかも複数枚!)や《アルマジロの外套》を用いたアグレッシブなデッキだ。このデッキには強打と速さがあり、ジェンセンのコンボ・デッキに対して「一瞬でも足を止めたら痛い目にあうぞ」という雰囲気を与えられるものなのは間違いないだろう。それから、リーが幸運にも1枚手に入れた《金切るときの声》は、『Vintage Masters』の中でもトップ・コモンであると広く認識されている。

 アグロ対コンボ。太古から続く物語だ。

ゲーム展開

 先手はジェンセン。2ターン目に《夜景学院の使い魔》を繰り出すと、これを防壁として、そして1ターンに大量の呪文を唱えるという彼のプランを加速させる手段として、最大限に活用した。《対抗呪文》が《アルマジロの外套》を的確に止め、ジェンセンは4ターン目にして《綿密な分析》をプレイし「さらに」フラッシュバックまでやってのけた。

 うひゃー。

 実のところ《綿密な分析》のフラッシュバック・コスト――3点のライフ――はリーのビートダウン・プランを助けることになったのだが、ジェンセンの手札は完全に回復し、すぐにでもコンボを始動できるほどだった。リーは勝機を感じ取れない。

 それでも、彼は前に進み続けた。《夢鞘のドルイド》が――《象の導き》をエンチャントしたため――苗木・トークンを生み出し始め、《茨の鎧》をまとった《サルタリーの強兵》が《サイカトグ》を掻い潜っていく。ジェンセンは《締めつける綱》を「サイクリング」し、1ターンの間《サルタリーの強兵》を背後に近寄らせない。だが苗木の群れは成長を続けているため、ジェンセンはすぐにでもビッグ・ターンを迎えなければならなかった。

 それはまさにビッグ・ターンだった。

(2マナ浮かせてからの)《噴出》、続けて《暗黒の儀式》から《権力への嘆願》。そこで一度動きを止めて考える。彼は11枚の手札から《時間の亀裂》の「ストーム」を5まで伸ばしリーの軍勢を取り払うと、《サイカトグ》を一気に危険域まで育て上げた。これはジェンセンのデッキが勝つために不可欠なビッグ・ターンであり、試合の主導権が確実なものになることが予想されるお手本のようなターンだった。

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数字を数えるジェンセン。2000年代初期の頃を再現するかのように、《サイカトグ》1体でゲームを終わらせようとする。

 リーは《ベナリアのわな師》と《サルタリーの強兵》を繰り出し、可能な限り盤面を立て直した。実際に《サイカトグ》との相性はすこぶる良い盤面だが――続くターンにジェンセンが置いた2枚目の《サイカトグ》に対してはどうしようもなかった。

 ああ、それからジェンセンの手札はいまだに豊富で、墓地もよく肥えている。《サイカトグ》へ注ぎ込んで、一瞬のうちに天まで届くほどのサイズにする準備は整った。そして《転換》がリーの軍勢をタップしチャンプ・ブロックを封じると、ジェンセンは《サイカトグ》のパワーを19まで育て上げ、両プレイヤーをサイドボーディングへと移らせたのだった。

ジェンセン 1-0 リー

 今度はリーが素早いスタートを切る番だった。《熟達の刃の精鋭》と《サルタリーの使者》、そこへ《アルマジロの外套》も加わり、あっという間にジェンセンの身を速いクロックに晒した。《金切るときの声》がさらにプレッシャーをかけ、ジェンセンのライフは残り11点に。リーはかなりの速さでジェンセンを追い詰めた。

「ふむ」ジェンセンは土地3枚と《サイカトグ》が並ぶ盤面を見て、ひと言。そして彼がなぜ熱心に手札を見ていたのかが、すぐに明らかになる。

 《噴出》、《暗黒の儀式》、《夜景学院の使い魔》、《暗黒の儀式》、《権力への嘆願》、《夜景学院の使い魔》、《思考停止》(21枚を墓地へ)......ここで打ち止め。ジェンセンは次のターンに《思考停止》をもう1枚唱えてリーのサイドボード・プランを確認するが、わずか「ストーム」1の《思考停止》ではゲームを奪うには至らなかった。

 リーは致死量のダメージを与え、この試合の決め手となる3ゲーム目に移った。ジェンセンのデッキは彼の期待に応えられず、その上をリーが駆け抜けていったのだ。

ジェンセン 1-1 リー

 ジェンセンは死んだ。死んだ。確かに死んだはずだ。ほとんど何もできずに。リーが為したことは決して少なくない。ジェンセンは残りライフ6点の状態で、タップされて動けない有能な味方ブロッカーの倍はあろうかという敵クリーチャーと対峙していた。ジェンセンは死んだ。確かに死んだはずだ。

 話はさかのぼる。

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リーの白緑デッキは、ロデオのように繊細なものだ。だからといって、フォーマット内で最高にアグレッシブなカードを持っているときに繊細さや巧妙さは必要ないだろう。

 この試合にふさわしく、最終ゲームは《サルタリーの強兵》が「ドクター・ティース」こと《サイカトグ》に立ち向かう展開からスタート。そこへ《金切るときの声》が姿を現したが、このトークンを生み出す強力カードは《堂々巡り》が止めに入った。

 ジェンセンはまだフル回転の動きを見せていないように見えた。手札は残り3枚で、そこにドロー呪文の顔はない。主に第2ゲームがそうであったように、「ストーム」デッキは時折こうやってつまずくことがある。ジェンセンが一番必要としているときに、その期待に応えられていないようだ。

 実質的には、ジェンセンは何もしていないのと同じだった。リーは《ベナリアのわな師》で《サイカトグ》を抑えつつ、クリーチャーを送り出し続けた。ジェンセンのライフは6点まで落ち込み、いよいよ見通しが厳しくなってきた。

 そしてジェンセンは死んだ。彼は死んだはずだ。そうだろう?

 ジェンセン自身もそれをはっきりと感じていた。しかし、何はともあれ計算に取り組まなければならない。彼はリーの戦場にあるカードと手札のカードを数え、リーの残りデッキ枚数を明らかにした。

「うん、残り26枚か」 ジェンセンはもう一度数えながら言った。「いや27枚か。サイドボードから、41枚に増やしたのか?」

 作戦が明らかになるとリーは笑顔を見せ、笑い声を漏らした。

「お見事」とジェンセン。「27枚は厳しいな」

 彼は死んだ。確かに死んだはずだ。

 ジェンセンは計算を始め、《権力への嘆願》でカードを引いた。彼の「嘆願」はどうやら聞き届けられたらしく、彼は目を見開くと姿勢を正した。

「いいぞ。うん、いいぞ。それでいいんだ」 ジェンセンはそう口にすると、マナをまとめてマナ・プールに放り込む。

 彼は死んだのか?

 致命傷が与えられるひとつ前のターン、まさに死にかけているように見えたそのとき、ジェンセンが2枚目の《思考停止》を引き込んだ。

 呪文をふたつ放ってから《転換》でマナを引き出し、「ストーム」3で《思考停止》、続けて「ストーム」4でもう1発。ジェンセンは死んでなんかいなかった――勝者となったのだ。

「デッキ、本当に強いね」 ジェンセンは息を吐き出しながら言った。「普通のデッキだったら勝てなかった」

 相手が普通のデッキでありダイス・ロールにも勝っていれば、リーの方が有利だった、という点には両者とも同意する。

「1ゲーム目は先手だったら勝てたと思います」 と、リー。ジェンセンは大きく頷く。

「デッキリストを見るなり、ダイス勝たせてくれって思ったよ」

 ジェンセンは確かにダイスを振り、このギャンブルに勝ったのだ。

ジェンセン 2-1 リー
William Jensen
世界選手権2014 / 『Vintage Masters』ブースタードラフト
9 《島》
6 《沼》
2 《孤立した砂州》

-土地(17)-

2 《夜景学院の使い魔》
2 《サイカトグ》
1 《パリンクロン》

-クリーチャー(5)-
3 《強迫的な捜索》
2 《暗黒の儀式》
2 《思考停止》
1 《対抗呪文》
1 《Mana Drain》
1 《堂々巡り》
2 《綿密な分析》
2 《権力への嘆願》
1 《締めつける綱》
1 《転換》
1 《噴出》
1 《時間の亀裂》

-呪文(18)-
1 《平穏な茂み》
2 《アクアミーバ》
1 《陰謀団の儀式》
2 《撤回》
1 《押し寄せる砂》
1 《ヤヴィマヤの火》
1 《クロヴの魔術師》
1 《海のドレイク》
3 《追い返し》
1 《余震》
1 《甲虫背の酋長》
1 《生き返りの蒸気》
1 《ジャングル・ワーム》
1 《殺人鯨》
1 《スカージの使い魔》
1 《時間の亀裂》

-サイドボード(20)-
Lee Shi Tian
世界選手権2014 / 『Vintage Masters』ブースタードラフト
10 《平地》
7 《森》

-土地(17)-

2 《熟達の刃の精鋭》
1 《心優しきボディガード》
3 《サルタリーの強兵》
2 《ベナリアのわな師》
2 《サルタリーの使者》
1 《夢鞘のドルイド》
1 《誠実な証人》
1 《クローサのむさぼり獣》
1 《ミストムーン・グリフィン》
1 《飛行機械隊》

-クリーチャー(15)-
2 《茨の鎧》
1 《避難》
1 《森の知恵》
2 《象の導き》
1 《アルマジロの外套》
1 《金切るときの声》

-呪文(8)-
1 《忘れられた洞窟》
2 《もつれ》
1 《使い魔のフクロウ》
1 《幻影の遊牧の民》
1 《誘発》
1 《野生への貢ぎ物》
1 《拡散の壁》
2 《死後の生命》
1 《流刑》
1 《隠れ潜む邪悪》
1 《知恵の蛇》
1 《撤回》
1 《うなる類人猿》
1 《甲虫背の酋長》
1 《ガイアの抱擁》
1 《突然の力》
1 《火炎破》
1 《気高き院僧》
1 《暗影のワーム》

-サイドボード(21)-

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