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【観戦記事】 第6回戦:Patrick Chapin(アメリカ) vs. 山本賢太郎(日本)

【観戦記事】 第6回戦:Patrick Chapin(アメリカ) vs. 山本賢太郎(日本)

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Josh Bennett / Tr. Tetsuya Yabuki

2014年12月2日

原文はこちら

「ただひとりの全勝者」、なんて素敵な響きだろうか。第5ラウンドを終えて、世界ランキング19位のパトリック・チャピン/Patrick Chapinは「ただひとりの全勝」と書かれたマントをはおり、ご満悦の様子だ。

 マジックというゲームにかける情熱において、パトリック・チャピンに匹敵する者はまずいない。彼は長年にわたり食事、睡眠、マジックという生活を続け、その熱意が彼をこのゲームの頂点へと導いた。近頃はプロ・プレイヤーとしての仕事とは「別の」、ゲーム・デザイナーとして求められる仕事とのバランスを取っている。そんな彼が今週モダン構築ラウンドに向けて選択したのは「青赤デルバー」だ。その鍵となる《宝船の巡航》は、彼いわく「この環境で最も強力なカード」だという。

 このラウンドでチャピンが戦う相手は、日本のライジング・スター、山本 賢太郎だ。2007年、双頭巨人戦で行われたプロツアー・サンディエゴ2007で高橋 優太と共にひそかに準優勝を果たしており、それ以来日本での活躍が知られるプレイヤーとなる。その後も彼は着実に進歩を続け、ついにダブリンで行われたプロツアー『テーロス』にてトップ8入賞のときを迎えたのだった。冷静で緻密なプレイヤーである彼はプロ・ポイント獲得を積み重ね、ポイント上位の枠で今大会の参加権を得た。モダン・ラウンドでは、《タルモゴイフ》のために緑をタッチし、その上で《宝船の巡航》によるアドバンテージを余すところなく活用する「ティムール・デルバー」に望みを託した。山本は現時点で4勝1敗の成績を収めている。

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殿堂顕彰者パトリック・チャピンは、今大会6勝目を挙げるべくこの試合に臨む。一方の山本も5勝目を狙っている。両プレイヤーとも、今大会で輝かしいスタートを切っている。

ゲーム展開

 チャピンは3点のライフと引き換えにフェッチ・ランドから《蒸気孔》をアンタップ・インし、《僧院の速槍》を展開するとすぐに《ギタクシア派の調査》で打点を上げた。公開された山本の手札は土地が1枚の辛いものだったが、こちらにも《僧院の速槍》と《ギタクシア派の調査》の組み合わせがあり、他には《秘密を掘り下げる者》、《血清の幻視》、《稲妻》、《宝船の巡航》があった。チャピンは《ギタクシア派の調査》の効果でカードを1枚引くと、動きを止めた。肩をすくめ、2枚目の《ギタクシア派の調査》を放つ。山本がカードをプレイする前に、チャピンのライフは13点になったのだ。

 山本もターンを迎えると《ギタクシア派の調査》を撃ち込み、続けてフェッチ・ランドで《島》を持ってくると《秘密を掘り下げる者》をプレイした。チャピンは喜んでそこに《イゼットの魔除け》を当てて戦場から取り去ると、山本へ2点のダメージを加える。山本も3点のライフを支払い、《タルモゴイフ》のためにアンタップ状態の緑マナ源を確保したのだが、結果的にこれはチャピンを助けることになった。

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山本の「ティムール・デルバー」デッキは、《タルモゴイフ》をタッチすることでスピードと大型クリーチャーを両立させている。

 続くチャピンのターンは苛烈を極めた。《蒸気の絡みつき》を《タルモゴイフ》へ、《稲妻》を山本へ、そして《宝船の巡航》を唱え、《僧院の速槍》が4点で攻撃。これで山本のライフはひと桁に落ち込む。その後数ターンは持ちこたえたものの、《若き紅蓮術士》がチャピンに十分な数のアタッカーをもたらし、勝利を掴んだのだった。

 第2ゲームでは、山本が防戦の構えを見せた。チャピンが最初に繰り出した《秘密を掘り下げる者》を、《マグマのしぶき》で除去。チャピンは2枚目をプレイし直したが、山本は待っていたとばかりに《不忠の糸》でそれを奪った。だが山本がタップ・アウトのタイミングで、チャピンがチャンスを掴む。《血染めの月》を通し、山本の土地3枚を《山》に変えたのだ。それでも簡単には止まらない山本。チャピンから奪った《秘密を掘り下げる者》が《血清の幻視》をめくり、変身したのだ。山本は《島》をプレイし、《宝船の巡航》を放つ。さらに、残ったマナでチャピンの盤面最後の脅威である《僧院の速槍》を除去した。

 緑マナが封じられているという点を除けば、形勢は山本側有利に見えた。チャピンはアンタップ後、運命を逆転させるべく《若き紅蓮術士》を繰り出し、さらに《蒸気の絡みつき》で「不忠」な《秘密を掘り下げる者》を取り戻した。これでチャピンは盤面を制し、一方の山本は《宝船の巡航》をもう1枚使うだけでターンを終えた。チャピンは2枚目の《僧院の速槍》を繰り出し山本のライフを残り9点に落とすと、《秘密を掘り下げる者》を再びプレイし直した。

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《宝船の巡航》が解決されるとどれだけ危険なのかを示すチャピン。

 山本は6枚の土地を立たせ、何もせずエンド。そのターンの終わりに、チャピンは《稲妻》を山本に差し向ける。山本はそれに対応して、こちらも《稲妻》で《秘密を掘り下げる者》を止めにかかり、さらに《イゼットの静電術師》を「瞬速」で繰り出した。これで《若き紅蓮術士》は山本の脅威になり得なくなった。しかし、まだ《僧院の速槍》がいる。その後、山本はリスクを承知で2/3の《僧院の速槍》をブロック。だがチャピンは戦闘中に《思考掃き》を用い、山本の狙いは成就しなかった。

 チャピンは山本に解答を迫り続ける。《宝船の巡航》がカード・アドバンテージ上の有利を山本に維持させるが、彼のライフ総量はひと桁台前半にまで下がっていた。チャピンは山本の土地がタップされるのを待ち、《稲妻》2枚を見せるのだった。

チャピン 2-0 山本

 両者は握手を交わし、残りの試合の幸運をお互いに祈り合った。私はインタビュー中のチャピンになんとか声をかけ、いくつか質問に答えてもらった。今大会がチャピンにとってどれだけ大切なものかはよく知られているところだが、1年間で最大の激戦を6戦全勝していることについて、彼はどう思っているのだろうか?

 チャピンは珍しく、言葉少なめに答えた。「いい気分だよ。今日はもうすぐ終わりだけど、明日もたくさんマジックをプレイできる」喜びを爆発させるでもなく、あと何勝すれば、と皮算用をするでもなく。私は彼に、成功のためにプレッシャーをコントロールするのは大変かどうか、いや正確に言うなら、どうやってベストな精神状態に持っていきつつもそれが自身を焼かないようなバランスを見つければいいのかを尋ねた。「たぶん、どちらの方向にも間違えながら20年続けることじゃないかな」彼は小さく笑みを見せて答えた。

 これだけの成功を収めながらも、チャピンはマジックというゲームを学び続ける姿勢を崩さない。「学ぶべきことはいつだってたくさんあるよ。今大会でも、『Vintage Masters』に慣れていないせいですでにミスを犯しているし。そのミスが試合を潰すようなものじゃなくてラッキーだったけれど、そこから目は離さず、学ばなくちゃいけない。仮にこっちが20個正解して対戦相手が20個ミスを犯しても、そんなの関係なく1回のミスで負けることもある。21個目も正解しなきゃいけないんだ。マジックについて率直に思うことは、自分自身や自分のプレイと練習に誠実であることが、過小評価されているように感じる。まずはマジックの学び方を学ぶべきで、私はそのことを本に書いて教えたいと考えているよ。ただルールを羅列するだけじゃなくて、このゲームに対する考え方を広げる助けになれば、きっと読んでくれた人の役に立つだろうから」

Patrick Chapin - 青赤デルバー
世界選手権2014 / モダン
4 《溢れかえる岸辺》
4 《島》
4 《沸騰する小湖》
3 《蒸気孔》
1 《乾燥台地》
1 《山》
1 《硫黄の滝》

-土地(18)-

4 《秘密を掘り下げる者》
4 《僧院の速槍》
4 《若き紅蓮術士》
1 《瞬唱の魔道士》

-クリーチャー(13)-
4 《ギタクシア派の調査》
4 《稲妻》
4 《血清の幻視》
3 《思考掃き》
2 《二股の稲妻》
2 《呪文嵌め》
2 《蒸気の絡みつき》
1 《イゼットの魔除け》
1 《マナ漏出》
1 《差し戻し》
1 《電解》
4 《宝船の巡航》

-呪文(29)-
2 《払拭》
2 《呪文貫き》
1 《電謀》
1 《マグマのしぶき》
2 《粉々》
1 《収穫の火》
1 《否認》
2 《血染めの月》
1 《忌むべき者のかがり火》
1 《イゼットの静電術師》
1 《不忠の糸》

-サイドボード(15)-
山本 賢太郎 - 青赤緑デルバー
世界選手権2014 / モダン
4 《霧深い雨林》
4 《沸騰する小湖》
2 《島》
2 《蒸気孔》
2 《樹木茂る山麓》
1 《繁殖池》
1 《山》
1 《踏み鳴らされる地》
1 《硫黄の滝》

-土地(18)-

4 《秘密を掘り下げる者》
4 《僧院の速槍》
4 《タルモゴイフ》
1 《瞬唱の魔道士》

-クリーチャー(13)-
4 《稲妻》
4 《血清の幻視》
3 《ギタクシア派の調査》
3 《呪文嵌め》
3 《思考掃き》
2 《二股の稲妻》
2 《呪文貫き》
2 《蒸気の絡みつき》
2 《差し戻し》
4 《宝船の巡航》

-呪文(29)-
2 《Molten rain》
1 《払拭》
1 《マグマのしぶき》
2 《古えの遺恨》
2 《剥奪》
1 《破壊的な享楽》
1 《漁る軟泥》
2 《不忠の糸》
1 《イゼットの静電術師》
1 《凶暴な拳刃》
1 《ヴェンディリオン三人衆》

-サイドボード(15)-

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