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【観戦記事】 準決勝:Shahar Shenhar(イスラエル) vs. 渡辺 雄也(日本)

【観戦記事】 準決勝:Shahar Shenhar(イスラエル) vs. 渡辺 雄也(日本)

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Corbin Hosler / Tr. Tetsuya Yabuki

2014年12月7日

原文はこちら

 ふたりのマジック界の偉人。ふたりの世界王者。そしてここには、世界選手権準決勝の試合がひとつ。

 殿堂顕彰者からプロツアー王者、そして世界ランキング上位者で埋め尽くされたこの会場内でさえも、これほどの試合はお目にかかれない。

 決勝へ進み再び王者になるチャンスを得られるのは、どちらかひとり。現在世界ランキング9位の渡辺 雄也は2012年に世界王者の座を獲得し、世界ランキング14位のシャハール・シェンハー / Shahar Shenharは昨年の世界選手権を制した。両王者は、ここニースの地で再びの戴冠を求めている。

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世界ランキング14位のシャハール・シェンハーと、世界ランキング9位の渡辺 雄也。どちらがこの準決勝で勝っても、決勝は2度目の世界選手権王者のタイトルをかけたものになる。

それぞれのデッキ

 現在、スタンダード環境はかなり研究が進んだと見られているが、それでも渡辺はアイデアを閃かせ、革新的な最新の「ジェスカイ・トークン」デッキを披露した。最大の違いは、《ジェスカイの隆盛》を採用しながらもそれをコンボ・パーツとして使うのではなく、完璧な手札を作り上げるエンジンとして、また《宝船の巡航》の燃料としてこの強力なエンチャントを用い、トークンの軍勢を生み出すという点だ。

 シェンハーが操るのもまた、ここフランスの地で隆盛を見せたデッキ――「シディシ・ウィップ」だ。デッキ名の由来となっている《血の暴君、シディシ》と《エレボスの鞭》でアドバンテージを得ていくこのデッキは、《血の暴君、シディシ》や《女王スズメバチ》など、粘り強い(そして《エレボスの鞭》で活用できる)脅威を駆使して、環境のあらゆるデッキをじわじわと追い詰めることができる。

ゲーム展開

 手札を6枚にマリガンするということは確実にリスクを伴う行為であり、シェンハーは土地が1枚の手札をキープすることにした。第1ターンは《思考囲い》が使え、《森の女人像》と《サテュロスの道探し》が2枚目の土地を待っている。

 シェンハーは最初のドローで土地を引けなかったものの、2回目には幸運に恵まれ、《華やかな宮殿》を引き込んだ。タップ・インの土地はこのディフェンディング・チャンピオンに1ターンの遅れを取らせたが、それでも結果として歓迎すべきドローだ。

 渡辺の側は土地に悩まされることなく、3ターン目《ゴブリンの熟練扇動者》から行動を始めた。ゴブリン・トークンがこの試合最初のダメージを生み出す。

 シェンハーはその返しに《サテュロスの道探し》をプレイし、公開されたカードから土地を手に入れた。彼はその土地をプレイしてターンを渡し、《サテュロスの道探し》で墓地へ送ったカードと合わせて《残忍な切断》を《ゴブリンの熟練扇動者》に差し向けた。

 これで時間を稼いだシェンハーは、《森の女人像》から《エレボスの鞭》と繋ぎ、また2枚目の《ゴブリンの熟練扇動者》にこちらも2枚目の《残忍な切断》を当てた。渡辺は《紅蓮の達人チャンドラ》で反撃を試みるが、《エレボスの鞭》が機能し出すと苦戦を強いられるようになる。

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渡辺は、トークンによるビートダウンの他にいくつかの攻め手を持っている。

 それでも、《紅蓮の達人チャンドラ》には《エレボスの鞭》に劣らず多くのカード・アドバンテージをもたらす覚悟があった。彼女の[0]能力が渡辺に《軍族童の突発》に続けて《ジェスカイの魔除け》をもたらし、時間を稼ぐ。しかしシェンハーの《破滅喚起の巨人》が戦場に現れると、トークンは流され、その攻撃で《紅蓮の達人チャンドラ》も退場させられた。

 すぐに2枚目の《紅蓮の達人チャンドラ》が繰り出されるが、シェンハーはついにデッキ名にもなっている《血の暴君、シディシ》を墓地から《エレボスの鞭》で呼び寄せ(ゾンビを生み出し)、攻撃に向かわせた(さらにゾンビが戦場に出る)。そして彼は、手札からも《血の暴君、シディシ》を繰り出した(ここでもまたゾンビが生み出された)。次のターンに《女王スズメバチ》が続くと渡辺は笑うしかなくなり、試合は次のゲームへ移ることになった。

シェンハー 1-0 渡辺

 《ジェスカイの隆盛》を用いたデッキを創案したのは、渡辺ではない。だが彼がこのコンボなしのバージョンを世界選手権の舞台で披露したことで、このデッキに活力を与えたのは間違いないだろう。「ジェスカイ・トークン」デッキは今大会で話題になり、続くワールド・マジック・カップにも多大な影響を与えたのだ。

 そして2ゲーム目は、そのデッキリストの強さの理由が見て取れた。序盤の《ゴブリンの熟練扇動者》は除去を受けたものの、続く《ジェスカイの隆盛》が着地する。その後さらにもう1枚が続き、1枚は《スゥルタイの魔除け》で破壊されてしまうものの、渡辺は「ルーター能力」を機能させ始めた。

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《ジェスカイの隆盛》への解答をひとつは持っていたシェンハーだが、もう1枚に対処するすべを見つけなければならない。

 これで《紅蓮の達人チャンドラ》を引き込んだ渡辺はそれを戦場に繰り出し、シェンハーの《サテュロスの道探し》を除去しつつ彼のライフを攻める。《英雄の破滅》が《紅蓮の達人チャンドラ》を退場させたものの、それは続く《太陽の勇者、エルズペス》への避雷針となった。

 だが、シェンハーの備えは万全だった。ターンを迎えた彼は《時を越えた探索》を放ち、2枚目の《英雄の破滅》を《太陽の勇者、エルズペス》へ差し向けると、さらに《破滅喚起の巨人》を着地させて兵士・トークンも残らず排除した。

 《ジェスカイの隆盛》の能力により渡辺の墓地はカードで溢れていたため、《宝船の巡航》のコストがわずか1マナにまで軽減され《Ancestral Recall》を彷彿とさせる最高の動きを見せた。《急報》が再び盤面を作り出す。《ジェスカイの隆盛》がある以上、インスタント・タイミングのスペルを唱えれば、強固なブロッカーになることだろう。

 しかし、墓地が肥えているのは渡辺だけではなかった。シェンハーの墓地には、長いこと《イニストラードの魂》が潜んでいたのだ。彼は《イニストラードの魂》の能力を起動し、3体のクリーチャーを手札に戻した。そのうちの1体である《クルフィックスの狩猟者》が《破滅喚起の巨人》の能力を誘発させ、渡辺の盤面は再び空になる。追い詰められて放った《対立の終結》で渡辺はライフを1点残し、続けて《ゴブリンの熟練扇動者》がゲームを取り戻しにかかるが、シェンハーは引いたばかりの《エレボスの鞭》を使い、墓地からアタッカーを呼び出して勝利を得たのだった。

シェンハー 2-0 渡辺

 第3ゲームは2ターン目にシェンハーから《思考囲い》が放たれ、《ゴブリンの熟練扇動者》、《宝船の巡航》、《軽蔑的な一撃》、《稲妻の一撃》という渡辺の手札が公開された。つまり、ロング・ゲームを戦えるだけの備えがあるということだ。シェンハーは《ゴブリンの熟練扇動者》を取り去り、両プレイヤーともドロー・ゴーが続いた。

 その流れを断ち切ったのは、渡辺だった。2ターン後に《急報》を放ち、シェンハーのライフを攻め始める。兵士・トークンによる攻撃が数ターン続き、シェンハーのライフが11まで落ち込んだところで、彼はダメージを抑えるべくトークン1体に《英雄の破滅》を撃ち込むことを選択した。

 それは思惑通りになった。渡辺はその後毎ターン1点で攻撃することしかできない。しかしシェンハー側も問題を抱えており、土地が「ペイン・ランド」と《マナの合流点》ばかりだったため、呪文を唱え、あるいは《苦悶の神、ファリカ》の能力を起動するたびに、危険を冒すことになった。

 まさに「危険を冒した」挑戦だった。シェンハーは土地からのダメージを受けながら《血の暴君、シディシ》を唱える。しかしこれは、渡辺の打ち消し呪文を受ける結果になった。このプレイによってシェンハーは貴重なライフをもう2点失い、そこへ渡辺の《ゴブリンの熟練扇動者》がさらなるプレッシャーをかけていく。

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渡辺がこのまま終わるとは、到底思えない。

 《ゴブリンの熟練扇動者》が睨みを利かせている中でビッグ・プレイが必要となったシェンハーは、再び自らダメージを負い、今度はライフを残り1点にしながら《血の暴君、シディシ》を唱えた。しかし渡辺の手札から《軽蔑的な一撃》が繰り出されると、このゲームは渡辺の手に渡り、これで彼も3本先取の試合に乗り出したのだった。

シェンハー2-1渡辺

 やはり渡辺がこのまま終わるとは思えない。1勝をもぎとった彼は自信に満ち溢れ、完全に息を吹き返したように見えた。

 だが、ここにいる世界王者は渡辺だけではない。シェンハーは《思考囲い》(渡辺の手札から除去を抜き去る)から《クルフィックスの狩猟者》、続けて《血の暴君、シディシ》と完璧な回りを見せた。ゾンビの群れが戦場に流れ込み、渡辺が《血の暴君、シディシ》を退場させてもすぐに2体目が着地した。

 それでも、すべてが終わったわけではない。渡辺のライフはプレッシャーに晒されていたが、デッキ・トップから現れた《対立の終結》がシェンハーのクリーチャーたちを一斉に流す。続くターンのドローでは何も引き込めなかったものの、彼の繰り出す《ゴブリンの熟練扇動者》がもう一度彼のチャンスを繋ぐ。

 増え続けるゾンビの軍勢から攻撃を受け、次のカードを引く渡辺。彼は手札を見つめ、マナを数え......そして、世界選手権決勝でのシェンハーの武運を祈り、右手を差し出すのだった。

シャハール・シェンハーが渡辺 雄也を3勝1敗で制し、決勝へ!

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