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【戦略記事】 スタンダード・メタゲームブレイクダウン

【戦略記事】 スタンダード・メタゲームブレイクダウン

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Adam Styborski / Tr. Tetsuya Yabuki

2015年8月28日

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 昨日のモダンのアーキタイプ分析で見受けられた通り、世界選手権ではわずかなプレイヤーの選択が環境に大きな影響を及ぼす。

 今大会のスタンダードにおいては、手堅い選択が目立つ結果になった。

デッキ名使用者数使用割合
ジェスカイ729%
アブザン・コントロール521%
エスパー・ドラゴン521%
ハンガーバック・アブザン313%
アタルカ・レッド28%
赤緑ドラゴン14%
白単信心14%
合計24100%

 会場のほぼ3分の1を占めて使用率最上位となった「ジェスカイ」は、プロツアー『マジック・オリジン』以来使用者を伸ばしてきた。プロツアー『マジック・オリジン』決勝の舞台でスポットライトを受けた「青赤《アーティファクトの魂込め》」や「赤アグロ」と異なり、「ジェスカイ」はそれらに負けない優秀な脅威を持ちつつも、広く対応できる柔軟性も有している。《魂火の大導師》により「無限に」呪文を唱えることができ、また《ゴブリンの熟練扇動者》や《カマキリの乗り手》、《嵐の息吹のドラゴン》は対処に困るデッキがいくつもあるだろう。《時を越えた探索》はデッキの勢いを維持するのに役立ち、ゲーム後半に《ジェスカイの魔除け》や《かき立てる炎》などの火力呪文を探して対戦相手に止めを刺す助けにもなる。さらにこのデッキには、それらの優秀な呪文の数々を再び唱えられるようにしてくれる《ヴリンの神童、ジェイス》まで搭載されているのだ。

今大会で最も多くの人気を集めたのは、白と青と赤のベスト・カードを詰め込んだ「ジェスカイ」デッキだった

 このデッキを選んだプレイヤーもまた、そうそうたるメンバーだ。現在世界ランキング1位にして殿堂顕彰に選ばれたエリック・フローリッヒ/Eric Froehlich、現行の世界王者にして世界ランキング13位、シャハール・シェンハー/Shahar Shenhar。ランキング19位のアレクサンダー・ヘイン/Alexander Hayne、プロツアー『マジック・オリジン』準優勝者にしてランキング2位のマイク・シグリスト/Mike Sigrist、そして6位のジェイコブ・ウィルソン/Jacob Wilson、彼らがみな同じ結論に至った。それからチームでの出場ではないプレイヤーからは、世界ランキング14位のショーン・マクラーレン/Shaun McLarenと12位の渡辺雄也が《平地》と《山》と《島》を使うことにした。

 使用率第2位のデッキには、特に驚きはないだろう。プロツアー『タルキール覇王譚』当時からスタンダードで使われ続けてきた「アブザン・コントロール」だ。《アブザンの魔除け》や《英雄の破滅》、《胆汁病》、《究極の価格》、《悲劇的な傲慢》、《衰滅》といった単体除去や全体除去を積み重ね、その後に《包囲サイ》や《太陽の勇者、エルズペス》、《精霊龍、ウギン》で圧倒するこのデッキは、ゲームの支配をもぎとるまで徹底的に対戦相手を追い込むものだ。

《包囲サイ》や強大なプレインズウォーカーたちは、世界選手権2015の舞台でも主力となっている。

 およそ20%のプレイヤーが「アブザン・コントロール」を持ち込んだ。その内訳はプロツアー『タルキール覇王譚』王者にして現在世界ランキング7位のアリ・ラックス/Ari Laxやランキング4位のセス・マンフィールド/Seth Manfield、スタンダードのスペシャリストとして知られる世界ランキング9位のブラッド・ネルソン/Brad Nelson、ランキング17位のスティーヴ・ルービン/Steve Rubin、そしてランキング10位のオーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwaldだ。

 そしてもう20%のプレイヤーが、別のコントロール戦略を手に取った。それは「エスパー・ドラゴン」だ。「アブザン・コントロール」と似通った点はあるものの(どちらのデッキも豊富な除去がかなめのデッキだ)、「エスパー・ドラゴン」は《シルムガルの嘲笑》と《解消》という打ち消し呪文を加えている。それから、ゲームの決め手として《龍王シルムガル》と《龍王オジュタイ》、そして《漂う死、シルムガル》を採用している。そしてこのデッキなら《時を越えた探索》も使うことができ、1対1交換を繰り返して対戦相手を消耗させてからゲームを支配することが可能なのだ。

今大会では、「エスパー・ドラゴン」が「アブザン・コントロール」に匹敵する勢力を得た。

 そんな「エスパー・ドラゴン」を選択したプレイヤーでまず注目すべきは、殿堂顕彰者にして現在世界ランキング5位のパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosaだろう。彼は今年のはじめにこのデッキを用いて、グランプリ・クラクフ2015でトップ8入賞、そしてグランプリ・サンパウロ2015では優勝と大きな成功を収めた。彼に続いて、プロツアー『マジック・オリジン』王者にして世界ランキング15位のヨエル・ラーション/Joel Larsson、それからマーティン・ミュラー/Martin Muller、ティアゴ・サポリート/Thiago Saporito、アンドレイ・ストラスキー/Ondrej Straskyがこのデッキを選んだ。

 それに続くのが、「ハンガーバック・アブザン」だ。「アブザン・アグロ」を発展させたこのデッキは、グランプリ・ロンドン2015で一大勢力を誇った。《羊毛鬣のライオン》や《先頭に立つもの、アナフェンザ》、《棲み家の防御者》、そして《包囲サイ》という面々に《搭載歩行機械》が加わることで、このデッキはコントロールに対する強みを獲得し(数多くの+1/+1カウンターが置かれた《搭載歩行機械》を対処するのは困難だ)、同時に早い段階でプレッシャーをかける手段を追加した。世界ランキング12位のリー・シー・ティエン/Lee Shi Tian、殿堂顕彰者にして世界ランキング21位のポール・リーツェル/Paul Rietzl、そしてランキング24位のアントニオ・デル・モラル・レオン/Antonio Del Moral Leonが、このアグレッシブな形に取り組んだ。

先日スタンダードで行われたグランプリで《搭載歩行機械》が大量に使われた。そして今大会でも3人のプレイヤーがアブザン・デッキを《搭載歩行機械》で強化している。

 残る4人のプレイヤーは、3つのデッキに散らばった。「アタルカ・レッド」は、《僧院の速槍》や《ケラル砦の修道院長》、《ドラゴンの餌》といったカードを駆使する1マナ域と2マナ域満載のアグレッシブな赤デッキへ、《アタルカの命令》を唱えるためだけに緑をタッチしたものだ。このデッキはマーティン・ダン/Martin Dangをプロツアー『タルキール龍紀伝』優勝へと導き、Magic Online王者のマグナス・ラント/Magnus Lanttoも、この《山》を基盤にしたアグレッシブな方向からこの週末に挑みかかった。

マーティン・ダンとマグナス・ラントの両名は、《アタルカの命令》とともに対戦相手を殴りつけることを選んだ

 現在世界ランキング25位の山本賢太郎はただひとり「赤緑ドラゴン」を選択し、Magic Onlineでの手広い調整を経てしっかりと築き上げてきた。《死霧の猛禽》と《棲み家の防御者》の「大変異パッケージ」に加えて、《爪鳴らしの神秘家》のようなマナ加速を駆使して《雷破の執政》や《嵐の息吹のドラゴン》を繰り出す山本のデッキは、どのゲームでもマナ・カーブに沿って恐ろしい脅威を繰り出してくることだろう。それから《火口の爪》や《龍詞の咆哮》が火を噴き、ゲームを終わらせるはずだ。

この週末、山本賢太郎はただひとり、「赤緑ドラゴン」を持ち込んだ

 そして最後に紹介するのは、最もユニークなデッキだ。先週末クレイグ・ウェスコー/Craig Wescoeがワールド・マジック・カップ予選で使用しトップ8に入賞したときのように、世界ランキング8位のサミュエル・ブラック/Samuel Blackが《平地》と《ニクスの祭殿、ニクソス》をマナ基盤に据えたデッキを組み上げてきたのだ。《万神殿の兵士》や《白蘭の騎士》、そして《オレスコスの王、ブリマーズ》を用いたアグレッシブな方針にしたブラックのデッキは、マナ域の頂点に《風番いのロック》と《徴税の大天使》を置いている。

サミュエル・ブラックがこの戦いに持ち込んだ「白単信心」は、恐らく本日見られる中で最もユニークなデッキだ

 それから、《アクロスの英雄、キテオン》と《搭載歩行機械》も大きな活躍を見せている。この2枚は序盤にアグレッシブな動きができると同時に、ゲームが長引いた場合も手広く戦える。また、様々な脅威を繰り出して《ニクスの祭殿、ニクソス》で大量のマナを生み出せるようになれば、《見えざるものの熟達》でさらなる恩恵を得られるだろう――『タルキール龍紀伝』の登場とともに「緑白信心」が衰退してからというもの目にする機会もなくなった1枚に、ブラックは再び注目したのだ。さらに、サイドボードにはより速度を落とす方針のカードが採用されており(《太陽の勇者、エルズペス》や《悲劇的な傲慢》はアグレッシブなカードではないだろう)、ブラックは自身が世界有数のデッキ・ビルダーであるその理由を見せつけようとしている。

 残るはスタンダード・ラウンド4回戦。これでトップ4の席に座る者と、来年また世界選手権へ出場するための計画を始める者が決まる。

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