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【観戦記事】 準決勝: Samuel Black(アメリカ) vs. Seth Manfield(アメリカ)

【観戦記事】 準決勝: Samuel Black(アメリカ) vs. Seth Manfield(アメリカ)

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Adam Styborski / Tr. Tetsuya Yabuki

2015年8月30日

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サミュエル・ブラック/Samuel Black(世界ランキング8位/白単信心)vs. セス・マンフィールド/Seth Manfield(世界ランキング4位/アブザン・コントロール)(スタンダード)

 世界ランキング8位のサミュエル・ブラックにとって、世界選手権2015トップ4入賞は望外のことであった。予選最終ラウンドでオーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwaldを下してオポネント勝負に滑り込んだブラックは、金曜日のトップ4入賞者発表セレモニーで最後にその名を呼ばれたのだ。その瞬間、彼は喜びをあらわに満面の笑みを浮かべ、先に呼ばれた3人の元へ飛び込んで行った。彼のマジックに注ぐ努力は人生をかけたものであり、ここ数週間の徹底的な準備のみではない。その努力の最大の成果として、彼は世界選手権王者のタイトルを獲りにいく。

 だが頂点の獲得に熱意をあげる人間は、ブラックだけではない。

 世界ランキング4位、セス・マンフィールド。彼もまた、異なる理由で熱烈に世界選手権優勝を追い求めていた。プレイヤーとしては、最高レベルでの競技とその旅を「楽しむ」のが彼のスタンスだ。だが今は、新たに「父」として、一刻も早く成功を収めることが大いなる目的となっていた。予選ラウンドにて世界選手権史上最高成績を叩き出したマンフィールドは、この会場を圧倒し、本日の決勝ラウンド進出を文句なしの一番乗りで決めた。勢いそのままに優勝すれば来シーズンのプラチナ・レベルが手に入り、来年の世界選手権出場も確定する。

 その地位と名声を得ることができれば、彼のマジックと家族との生活が安定する助けになるだろう。

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セス・マンフィールドは家庭生活の始まりを飾るために勝利を欲する。サミュエル・ブラックは厳しいオポネント勝負に勝ちこの舞台へ進出した。そんなふたりが、本日最初の準決勝にて対峙する
それぞれのデッキ

 マンフィールドのデッキは、予選ラウンドのスタンダード部門を無敗で切り抜けた。「アブザン・コントロール」は人気のあるデッキであり、今大会でも有力な選択肢であると知られていた。その予想通りになったことに驚きはないだろう。《究極の価格》や《アブザンの魔除け》、《英雄の破滅》、《衰滅》など強力な除去呪文の数々を搭載し、同時に《包囲サイ》や《太陽の勇者、エルズペス》に代表される対戦相手を押し潰すカードを擁するこのデッキは、ここまでスタンダードを牽引してきたその馬力を今大会でも発揮している。

 1日空きとなった土曜日にブラックとマンフィールドはそれぞれテストを行ったが、この準決勝で激突するふたつのデッキでは、マンフィールドのものの方が有利だと結論が出た。

 ブラックのデッキ選択は、「白単信心」。周りの勧めからこのデッキに決めたそうだ。元となるものを作り上げたのはジャスティン・ヘイリグ/Justin Heiligで、クレイグ・ウェスコー/Craig Wescoeがそこに加わり、彼は先週行われたアメリカのワールド・マジック・カップ予選でトップ8に入賞したのだ。ウェスコーは他の誰よりもまず、今大会に臨むブラックにそのデッキを勧め、彼のグループでデッキをシェアしてプレイテストを行った。《万神殿の兵士》や《アクロスの英雄、キテオン》、《白蘭の騎士》、《オレスコスの王、ブリマーズ》という素早い戦力と、《ニクスの祭殿、ニクソス》や《徴税の大天使》、《風番いのロック》、《見えざるものの熟達》という長期戦でも戦える戦力の組み合わせが、今大会で最も予想外なスタンダード・デッキをブラックにもたらしたのだった。

 だが、世界最高のプレイヤーたちが万全の準備を行ってきたアブザンに埋め尽くされたこの決勝ラウンドを戦い抜くのは、数々の困難が伴うことだろう。

ゲーム展開

「先手を選べるのは私だよね?」 両者が戦いの舞台につくと、マンフィールドが尋ねた。

「予選ラウンド1位で抜けたのを忘れたの?」 ブラックは疑わしげに返す。

 マンフィールドは意外にも、にっこりと微笑んだ。予選ラウンドをほぼ負けなしで突破した彼にはもちろん、先手を取る特権が与えられる。

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マンフィールドは試合に集中し、この日曜日の大舞台に気負いは見られない

 ブラックの「白単信心」が《万神殿の兵士》で戦端を開き、マンフィールドが防御を展開する前に圧倒する狙いを見せた。マンフィールドの《思考囲い》が《徴税の大天使》、《風番いのロック》、2枚目の《万神殿の兵士》、そして《勇敢な姿勢》というブラックの手札を公開し――ブラックが攻撃のチャンスを得る前に《徴税の大天使》が取り去られた。

 《巨森の予見者、ニッサ》を繰り出したマンフィールドは、続くターンに置く土地を確保しつつ、ブラックのクリーチャーを相討ちに取るチャンスを得た。だがブラックはマンフィールドにとってより大きな脅威となる《見えざるものの熟達》を引き込む。

 しかしブラックには、それを起動するマナが足りない。土地が3枚で止まっていた。

 マンフィールドの《クルフィックスの狩猟者》が《勇敢な姿勢》を受けたものの、それは6ターン目に《太陽の勇者、エルズペス》を呼び出す助けになった。《払拭の光》がすぐにそのプレインズウォーカーを取り去ったが、マンフィールドにプレッシャーはかかっていない――ブラックはまだ4枚目の土地を引き込めていなかった。

 《包囲サイ》が戦場に現れ、マンフィールドは兵士・トークンたちを攻撃に向かわせる。だが、2枚目の《払拭の光》が《包囲サイ》を追放した。ブラックはようやく4枚目の土地を引き込んだが、ここでマンフィールドがビッグ・プレイを見せた。《棲み家の防御者》の「大変異」を解き放ち《巨森の予見者、ニッサ》を回収すると、それをプレイして《森》を置き、即座に《精霊信者の賢人、ニッサ》へと変身させる。そして最後に[+1]を起動すると、《アブザンの魔除け》が公開されたのだ。

 「予示」でクリーチャーを生み出すブラックだが、それではサイズが物足りなかった。

 「予示」したクリーチャーで《精霊信者の賢人、ニッサ》へと攻撃するブラックだが、2体の兵士・トークンとの交換を余儀なくされる。それでもその後に、彼は《風番いのロック》を繰り出した。マンフィールドは《棲み家の防御者》で反撃すると、《衰滅》を放った。これで戦場を一掃したのちに《精霊信者の賢人、ニッサ》で4/4の伝説のクリーチャー・トークンを生み出し、さらにマンフィールドは《包囲サイ》もプレイした。ブラックのライフは残り7点になる。

 2枚目の《思考囲い》でブラックの手札から2枚目の《見えざるものの熟達》を取り去り、マンフィールドは攻撃を加えた。ブラックは「予示」で生み出したクリーチャーでチャンプ・ブロックし、3点のライフを残す。ここでマンフィールドは《精霊信者の賢人、ニッサ》の忠誠度を使い切り、伝説のエレメンタル・トークンをもう1体生み出した――彼がこのミスに気づいたときにはもう手遅れだったが、致命的な問題にはならなかった。

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ミスをしても冷静さを取り戻し、再び集中するマンフィールド

「このゲームは君の勝ちだ」 ブラックはターンを迎えると、カードを片付けた。両者はサイドボーディングを行い、シャッフルを始める。

「バカなことをしてしまった」と、マンフィールドは口を開いた。《精霊信者の賢人、ニッサ》の生み出すトークンが「伝説の」クリーチャーであることをうっかり忘れていたことについてだ。

「僕もだ」と、ブラックが言う。

 マンフィールドにはそれがわからなかった。「どこで?」

「《万神殿の兵士》さ」ブラックは、マンフィールドが2枚目の《包囲サイ》を繰り出したときに《万神殿の兵士》での回復を忘れたと思っていたのだ。

「いや、先に《衰滅》を唱えてから《包囲サイ》だったよ」マンフィールドはそのときの状況を説明する。

「ああ、それならミスじゃないね!」とブラック。「罰として大量に腕立て伏せをするハメになるところだった」 ゲーム中にミスをするたび腕立て伏せを行うという罰は、冗談で言っているわけではない。両者ともプレイングを可能な限り高めるためにその罰を己に課していて、それは身体の健康にも良いことなのだ。

 その罰に効果があったか尋ねてみると、ブラックはシンプルに答えた。「おかげで、今ここにいるよ」

 2ゲーム目、ブラックはマンフィールドのデッキに対して最も効果的な《見えざるものの熟達》を2ターン目に繰り出した。対するマンフィールドは、《巨森の予見者、ニッサ》。《白蘭の騎士》からX=1の《搭載歩行機械》へ繋げたブラックは、マンフィールドに二方向から脅威を突きつけることになった。《見えざるものの熟達》と、成長を続ける《搭載歩行機械》のふたつだ。

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不利な試合でも、決して諦めていないブラック

 ブラックは《搭載歩行機械》で攻撃に向かい、マンフィールドはそれをダブル・ブロック。ブラックの戦場に飛行機械・トークンが現れ、そこへ《風番いのロック》が続いた。だが《悲劇的な傲慢》がブラックの動きを台無しにし、一方のマンフィールドは《クルフィックスの狩猟者》がエンチャントであるためクリーチャーを2体とも残すことができた。

 続けてマンフィールドが《太陽の勇者、エルズペス》を繰り出すと、ブラックのデッキでその差を埋めるのは困難になった。ブラックは2枚目の《見えざるものの熟達》を展開するが、マンフィールドは迎えたターンに《ドロモカの命令》。それに素早く対応したブラックは「予示」を行い、そして《アクロスの英雄、キテオン》を表向きにすると、2枚の《見えざるものの熟達》の能力が誘発して彼のライフは23点になった。

 だが、《包囲サイ》でそのターンを締めくくったマンフィールドに対し、ブラックは飛行機械・トークンで《太陽の勇者、エルズペス》の忠誠度を上げないようにするくらいしかできなかった。

 《ニクスの祭殿、ニクソス》で大量のマナを生み出すにも、「信心」のためのパーマネントが足りない。だがそれでも、ブラックは8枚並んだ土地を使って「予示」を2回行い、盤面の優位を奪おうと試みた。

 マンフィールドは《究極の価格》で《万神殿の兵士》を除去し、《吹きさらしの荒野》でデッキをシャッフルする。するとライブラリーの一番上に現れたのは《衰滅》。彼は全軍で攻撃したのちに《棲み家の防御者》を裏向きにプレイした。ブラックが「予示」を行いタップ・アウトの状態になると、マンフィールドは《棲み家の防御者》を表向きにし、《ドロモカの命令》を回収した。

 ブラックのライフは残り3点。ライフをもたらす大切なエンチャントも失った。続くターン、彼は《見えざるものの熟達》で「予示」したものが最後の最後まで《平地》ばかりであったことを示して投了したのだった。

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ゲームの流れを変える見通しが厳しいものであっても、断固として逆転を狙うブラック

 分水嶺となる3ゲーム目を前に集中する両プレイヤーは、言葉を交わさなかった。1ターン目に《万神殿の兵士》で先手を取ると、ブラックは2ターン目に《見えざるものの熟達》。ブラックが土地を十分に集めるまでこのエンチャントが戦場に残れば、マンフィールドを圧倒するチャンスが生まれるはずだ。

 だがそのプランは、マンフィールドのサイドボードから現れた《異端の輝き》が阻んだ。

 《白蘭の騎士》がブラックに土地をもたらし、マンフィールドも《アブザンの魔除け》のカードを引くモードで4枚目の土地を引き込みにかかった。だがマンフィールドはそれに失敗し、ブラックの攻撃で残りライフを9点まで落とす。長かったブラックの1勝目が、目前まで迫った。

 マンフィールドの《究極の価格》も《勇敢な姿勢》で弾き、ブラックは《風番いのロック》でマンフィールドにさらなるプレッシャーをかける。マンフィールドがこの状況を打破するには、土地をアンタップ状態で置き《衰滅》を唱える他にない。

 マンフィールドはドロー後、3枚の土地を片付けた。ついにブラックが1勝を挙げたのだ。

 4ゲーム目はマンフィールドが後手を選択し、ブラックの1ターン目の動きに注目した。ブラックはマリガンを喫し、1ターン目にクリーチャーを送り出すことができなかった。だが2ターン目のX=1の《搭載歩行機械》はもちろん、続く3ターン目の《見えざるものの熟達》も、ブラックの序盤の動きとして強力なものだった。

 《異端の輝き》で《見えざるものの熟達》のプランを潰しにかかったマンフィールドだが、ブラックはすぐ次のターンに2枚目を繰り出す。

 マンフィールドは《クルフィックスの狩猟者》で《搭載歩行機械》の攻撃を止め、その結果2体生み出された飛行機械・トークンに加えて《風番いのロック》がブラックの盤面に加わる。マンフィールドは迎えたターンに《クルフィックスの狩猟者》で攻撃。それは、《衰滅》の合図だった。

 盤面が土地と《見えざるものの熟達》のみに戻ったブラックは、「予示」プランに切り替えていく。マンフィールドは、《巨森の予見者、ニッサ》と2枚目の《クルフィックスの狩猟者》で土地を伸ばし続けた。ターンの終わりにブラックが「予示」を行うと、アンタップ後、ライブラリーの一番上から再び《風番いのロック》が現れた。

 マンフィールドは《アブザンの魔除け》2枚でロック鳥2体を対処するとブラックに攻撃を加え、《巨森の予見者、ニッサ》を変身させた。4/4のエレメンタルを繰り出したマンフィールドは、続くターンに《霊気のほころび》で《見えざるものの熟達》も対処する。

 ブラックは残る時間も選択肢も失った。戦場に「予示」したクリーチャーが2体残っているものの、《見えざるものの熟達》はもうない。さらに、ブラックのターンの終わりにマンフィールドが《アブザンの魔除け》でカードを引くと、《クルフィックスの狩猟者》の能力によって《悲劇的な傲慢》が2枚見えた。

 マンフィールドの手札に満載されている全体除去の数々に、思わず笑いが出るブラック。彼の手札は残り1枚で、マンフィールドの手札は豊富だった。それは、ブラックにとってはあまりに多すぎた。それでも彼はドロー後、圧倒的な盤面を前に最後まで向き合った。

「決勝、頑張ってくれ」ブラックが声をかけ、マンフィールドに右手を差し出す。こうして今年のブラックの挑戦は終わりを告げ、新たな父が新たな世界王者となるのに、あと1試合となったのだった。

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セス・マンフィールドがサミュエル・ブラックを3勝1敗で下し、世界選手権2015決勝へ進出!

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