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【観戦記事】 決勝:Seth Manfield(アメリカ) vs. Owen Turtenwald(アメリカ)

【観戦記事】 決勝:Seth Manfield(アメリカ) vs. Owen Turtenwald(アメリカ)

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Adam Styborski / Tr. Tetsuya Yabuki

2015年8月30日

原文はこちら

セス・マンフィールド/Seth Manfield(世界ランキング4位/アブザン・コントロール)vs. オーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwald(世界ランキング10位/アブザン・コントロール)(スタンダード)

 マジックでの勝利。そのがむしゃらなまでの追求が、世界ランキング10位のオーウェン・ターテンワルドを世界選手権2015の決勝まで導いた。昇り龍の勢いで今年を勝ち進んだ彼は、グランプリ優勝なしに今年のベスト・プレイヤーのひとりになったのだ。2013年の前半にプロツアー・トップ8入賞を果たし、その年の後半も連続で勝ちを重ねたターテンワルドは、ついに「あと一歩のところで勝てない」という印象を払拭した。続けて2014年には自身2度目のプロツアー・トップ8入賞を狙い、それを実現。そして迎えた2015年、彼は世界選手権でトップ4入賞への道を拓き、プロツアー殿堂顕彰者にして世界ランキング3位のポール・リーツェル/Paul Rietzlを下してさらなるタイトルに手をかけた。

 だがそれを手に入れるには、驚くべき連勝記録を誇る相手を打ち破らなければならない。

 世界ランキング4位のセス・マンフィールドは、今大会を通してわずか1敗しかしていない。彼は初日の後半から2日目が終わるまで対戦相手たちを粉砕し続け、2012年の八十岡翔太以来となる世界選手権予選ラウンド最高成績を叩き出したのだ。迎えた決勝ラウンドでの彼の目標はただひとつ。次代の世界選手権王者となり、来年の世界選手権に出場することだけだ。

 新たに父となったマンフィールドは、競技マジックの最高レベルの舞台で戦う戦士としての自分と、家庭でのパパとしての自分を両立させようとしている。それを実現するための最高の手段は、ここで勝つことなのだ。

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世界選手権王者の栄冠を懸けた戦いは、ついに昨年のマジック界におけるふたりの巨人を残すのみとなった。果たして、勝つのはどちらか? 戴冠の瞬間を見届けるべく、多くの観衆が固唾を呑んで見守る
それぞれのデッキ

「アブザン・コントロール」は、予選ラウンドにおけるマンフィールドの圧倒的なパフォーマンスを支えただけでなく、ターテンワルドがその身を委ね、世界ランキング3位のポール・リーツェルを打ち破ったデッキとしてこの決勝の舞台に現れた。除去や《包囲サイ》、《太陽の勇者、エルズペス》を中心に、《衰滅》や《悲劇的な傲慢》を添えたこのデッキはこの週末を通して勝ち続け、ついにマジック界のふたりの巨人によるミラー・マッチへと突入したのだ。

 この試合の決め手となるのは、《異端の輝き》や《精霊龍、ウギン》といったサイド・カードの活躍だ。それから《巨森の予見者、ニッサ》の重要性が、より高くなることだろう。このミラー・マッチは、土地の確保と《精霊信者の賢人、ニッサ》に変身した後のアドバンテージをめぐる戦いなのだ。

ゲーム展開

 最初のゲームは、「アブザン・コントロール」同士ならではの始まりとなった。互いに《思考囲い》を撃ち合い、マンフィールドは《巨森の予見者、ニッサ》、ターテンワルドは《クルフィックスの狩猟者》を、それぞれの対戦相手の手札から抜き去る。続けてマンフィールドは《巨森の予見者、ニッサ》を繰り出し、ターテンワルドはマナを残してターンを終えた。

 マンフィールドは構わず《包囲サイ》を展開し、ターテンワルドは待っていましたとばかりに《アブザンの魔除け》でそれを追放する。ターテンワルドの2枚目の《思考囲い》がマンフィールドの手札から《太陽の勇者、エルズペス》を取り去り、彼はさらに《棲み家の防御者》を裏向きに戦場へ送り出した。

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盤面、手札のカード、互いのライフ総量、それをしっかりと確認しながらプレイを進めるマンフィールド

 マンフィールドは攻撃を続け、ターテンワルドのライフを残り8点とした。《棲み家の防御者》がターテンワルドに《巨森の予見者、ニッサ》をもたらすと、ゲームのスピードは落ちた。マンフィールドは2枚目の《クルフィックスの狩猟者》を引き込み、続けて3枚目も手に入れた。7枚目の土地を置き《巨森の予見者、ニッサ》を変身させると、マンフィールドは攻撃に乗り出し、ターテンワルドの残りライフを5点に落とす。ターテンワルドは、《棲み家の防御者》でも《巨森の予見者、ニッサ》でもブロックに入らなかった。

 《胆汁病》が、ターテンワルドの《巨森の予見者、ニッサ》の変身の目を摘み取った。ターテンワルドは、対戦相手の盤面に新たに加わった4/4を前に耐え切れず、ライフを3点に落としながらも《アブザンの魔除け》でドローを進める。これで解答となる《衰滅》を引き込んだのもつかの間、《太陽の勇者、エルズペス》と《精霊信者の賢人、ニッサ》の[+1]能力が、ターテンワルドに新たな難題を投げかける。

 今度は、その解答を用意することが叶わなかった。

 2ゲーム目も1ゲーム目と同様の始まりだった。ターテンワルドが《思考囲い》を放ち、マンフィールドの《異端の輝き》を墓地へ落とす。3枚目の土地を引き込めなかったマンフィールドが《棲み家の防御者》を表で繰り出したのに対し、ターテンワルドは3ターン目に《クルフィックスの狩猟者》を送り出した。

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プレイ中に起こり得るあらゆる可能性を考慮するターテンワルド

 マンフィールドがターンを返すなりターテンワルドの手札から《包囲サイ》が繰り出されると、このゲームはもう長くないことが明らかになった。それから3ターンを経ても、マンフィールドは3枚目の土地を引き込めなかった。

 この試合の3ゲーム目にして、マンフィールドは決勝ラウンドで初めて《羊毛鬣のライオン》を繰り出した。それでターテンワルドに攻勢を仕掛けたマンフィールドだったが、しかし3枚目の土地がなくプレイが続かない。4ターン目にも土地が置けなかった彼は、《棲み家の防御者》を表向きで繰り出した。

 ターテンワルドの《包囲サイ》が、マンフィールドの攻勢をぴたりと止める。それでも迎えたターンに3枚目の土地を引き込んだマンフィールドは、土地から2点のダメージを受けながらも《アブザンの魔除け》で《包囲サイ》を退場させ、プレッシャーをかけ続けた。

 それで終わりではなかった。

 《胆汁病》が《羊毛鬣のライオン》を戦場から取り去るものの、マンフィールドは裏向きのクリーチャーで盤面を補充した。ターテンワルドはそれに動じず《太陽の勇者、エルズペス》を呼び出す。マンフィールドは裏向きで出した《棲み家の防御者》を「大変異」し、《吹きさらしの荒野》を回収して4枚目の土地を確保した。だが兵士の大軍が心許ないマンフィールドのライフを脅かしていた。

 そのターンの終わりだった。ターテンワルドは、自身の盤面にある裏向きの《棲み家の防御者》に+1/+1カウンターをふたつ置いた。

「私の残りライフは9点になっているよね?」と、マンフィールドが尋ねた。ライフの確認をし、ターテンワルドが導き出した計算を追った。

「ああ」ターテンワルドは同意する。ターテンワルドが《思考囲い》を放つと、それで十分だった。マンフィールドは4ゲーム目に視線を据えた。

「役に立たないカードが多すぎたな」と、マンフィールドはシャッフルを行いながら口にした。彼が次なる世界選手権王者となるには、ここから連続でふたつのゲームを勝たなければならない。

 4ゲーム目も再び《羊毛鬣のライオン》からゲームを始めたマンフィールドだが、今回はマナも豊富に用意できた。その後《クルフィックスの狩猟者》同士が向かい合うことになったものの、マンフィールドは《アブザンの魔除け》で+1/+1カウンターを2体のクリーチャーにひとつずつ与え、ブロックしてきたターテンワルドの《クルフィックスの狩猟者》を倒すことに成功する。

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人生最大の勝負を迎え、手に汗握るマンフィールド

 ターテンワルドの《包囲サイ》がライフ差を埋める助けになったが、マンフィールドは《英雄の破滅》から攻撃を続け、ターテンワルドのライフを残り10点に落とした。続けて、《黄金牙、タシグル》も盤面に追加する。

 このゲームを掌握したのは、マンフィールドの側のようだ。ターテンワルドは《棲み家の防御者》の「大変異」を駆使して時間を稼ぐものの、マンフィールドの次なる攻撃をブロックすると、残りライフは7点まで落ち込んだ。

 マンフィールドも《棲み家の防御者》を裏向きで繰り出し、一方ターテンワルドはターンを迎えると《太陽の勇者、エルズペス》を唱えた。マンフィールドは《アブザンの魔除け》で《棲み家の防御者》を強化し、それから表向きにして兵士の壁を越えていった。そして続くターンには《棲み家の防御者》で回収した《アブザンの魔除け》を再び使い、致命傷となるダメージを与えたのだった。

 こうして勝負のゆくえは5ゲーム目までもつれ込み、この世界選手権の週末を興奮の渦が取り巻いた。2013年、シャハール・シェンハー/Shahar Shenharが王手をかけたリード・デューク/Reid Duke相手に2ゲーム差を逆転したときと同じように、マンフィールドはターテンワルドの猛攻に敢然と立ち向かい、スコアをイーブンに戻した。ここまでのゲームすべてが、その選択のすべてが、そのドローのすべてが、世界選手権王者を決める最後の1ゲームに繋がっている。

 最後に勝利を掴むのは、家族に見守られるマンフィールドか、それとも可能な限りの練習を積み重ねてきたターテンワルドか。

 最後のゲームも、始まりは見慣れたものだった。ターテンワルドの《思考囲い》がマンフィールドに《巨森の予見者、ニッサ》を捨てさせ、それに対してマンフィールドは2ターン目に《羊毛鬣のライオン》を繰り出す。ターテンワルドの《アブザンの魔除け》がマンフィールドの攻撃を阻み、さらに2枚目の《思考囲い》が《太陽の勇者、エルズペス》をも取り去った。

 マンフィールドは続けて《包囲サイ》を戦場に出し、続く攻撃でターテンワルドのライフを残り7点にした。ターテンワルドもあと1ターンで《巨森の予見者、ニッサ》が変身するところまできたが、それまで彼自身が生き残らなければならない。

 続けて繰り出された《包囲サイ》によりターテンワルドのライフは4点になるが、彼のライブラリーの一番上にも《包囲サイ》が見えていた。マンフィールドは戦闘後にしばらく選択肢を吟味し、こちらも《巨森の予見者、ニッサ》を繰り出して、それから《棲み家の防御者》を裏向きでプレイすることにした。

 返しのターン、ターテンワルドは《巨森の予見者、ニッサ》を変身させ、それから引き込んだばかりの《包囲サイ》を展開する。彼が4/4のエレメンタルを生み出してからターンを渡すと、マンフィールドも《巨森の予見者、ニッサ》を変身させた。彼は[+1]能力の方を起動して土地を増やすと、《真面目な訪問者、ソリン》を呼び出し2/2飛行の吸血鬼を戦場に出した。

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高いプレッシャーがかかる状況は経験済み。ターテンワルドは勝利の可能性を最大にするため、必要なことに集中する。

 ターテンワルドも《精霊信者の賢人、ニッサ》の[+1]能力を起動し10マナを確保すると、《精霊龍、ウギン》を呼び出し「幽霊火」で裏向きの《棲み家の防御者》を除去した。マンフィールドは《真面目な訪問者、ソリン》の[+1]能力を起動して攻撃。吸血鬼・トークンを《精霊信者の賢人、ニッサ》へ、《包囲サイ》を《精霊龍、ウギン》へ向かわせた。ターテンワルドは《包囲サイ》のブロックで《クルフィックスの狩猟者》を失った。そしてマンフィールドが《アブザンの魔除け》でドローをすると、彼は《英雄の破滅》を引き込み、頭を悩ませていた《精霊龍、ウギン》の対処に成功した。さらに彼は、再び《棲み家の防御者》を裏向きに展開する。

 激しい消耗戦の末に優位を得たのは、マンフィールドだった。ターテンワルドは自軍をマンフィールドのプレインズウォーカーたちへ向かわせた――《包囲サイ》を《真面目な訪問者、ソリン》へ、4/4のエレメンタル・トークンを《精霊信者の賢人、ニッサ》へ。マンフィールドは、《真面目な訪問者、ソリン》を《クルフィックスの狩猟者》で守った。

 ターテンワルドはマンフィールドのアンタップ前に《英雄の破滅》を撃ち込み、《棲み家の防御者》の「大変異」を防いでターンを渡した。マンフィールドは吸血鬼・トークンで攻撃したのちに、《太陽の勇者、エルズペス》をプレイ。戦場にいる大型クリーチャーを一掃した。

 ターンを迎えたターテンワルドは、土地を置いてターンを返す。

 《包囲サイ》が多少の時間を稼いだものの、《真面目な訪問者、ソリン》の[+1]能力を受けて2体の吸血鬼がターテンワルドを襲った。そこへさらに《包囲サイ》が続くと、マンフィールドは一番聞きたかった言葉を耳にした――「グッドゲーム」。

 ターテンワルドが、右手を差し出していた。

 マンフィールドがその手を握ると、彼のチームメイトや友人、そして世界中のマジック・ファンが大歓声をあげた。

 この成し遂げた男の顔を見れば、家族のために勝つという意思が満面に表れているのがわかるだろう。そしてその家族は、会場に鳴り響く声に負けないくらいの大歓声を家から送っているはずだ。

 マンフィールドは父になった。そして今、彼の愛するゲームの世界王者になったのだ。

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セス・マンフィールド、世界選手権2015優勝おめでとう!

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