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【観戦記事】 第6回戦:八十岡 翔太(日本) vs. Oliver Tiu(アメリカ)

【観戦記事】 第6回戦:八十岡 翔太(日本) vs. Oliver Tiu(アメリカ)

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Chapman Sim / Tr. Tetsuya Yabuki

2016年9月1日

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八十岡 翔太(世界ランキング8位/バント・カンパニー) vs. オリヴァー・ティウ/Oliver Tiu(世界ランキング14位/ターボ・エムラクール)

 八十岡 翔太は、世界選手権出場回数の多さも然ることながら、最高のプレイヤーのひとりとして世界中に認められている。プロツアー優勝、プレイヤー・オブ・ザ・イヤー受賞とあらゆるタイトルを総なめにしてきたベテランに足りないもの、それが「世界王者」のタイトルであり、八十岡はそれを埋めるべくこの週末に臨んでいる。

 八十岡の持つ革新的なデッキ構築の才能は、彼が殿堂入りを果たした際の大きな原動力となった。また、彼は構築のテストを必要としないことでも有名だ。それが長年の経験によるものなのか、それとも八十岡の飛び抜けた才能が構築フォーマットを解明してしまっているのか、それはわからない。

 だが仲間たちや世間からの高い評価とは裏腹に、八十岡の昨シーズンのプロツアーにおける構築部門の勝率は62%に留まっている。この試合の彼の相手は、なんと70%にも達しているのだ。


オリヴァー・ティウと八十岡 翔太。両者とも、ここで好成績を収めて構築部門の勝率をさらに高めたいところだ。

 昨シーズンのルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞したオリヴァー・ティウは、まだプロツアー出場4回ながら早くも構築フォーマットに優れていると評判になっている。「構築マスター」のタイトルは簡単に取れるものではない。ティウは昨シーズン、構築部門で誰よりも優れた成績を収めたのだ。

 ティウが操る「ターボ・エムラクール」(今大会では他に、オンドレイ・ストラスキー/Ondrej Straskyとリード・デューク/ Reid Dukeも使用している)は、既存の「ティムール『現出』」と異なり《ニッサの巡礼》や《原初のドルイド》、《見捨てられた神々の神殿》を採用しているという特徴がある。ゴールは可能な限り素早く《約束された終末、エムラクール》を唱えるというシンプルなものであり、《墓後家蜘蛛、イシュカナ》や《老いたる深海鬼》、《コジレックの帰還》といったカードでそのための時間を稼ぐ。

 一方の八十岡は6人の使用者を集めた「バント・カンパニー」を選択。グランプリ・リミニ2016で彼が手応えを感じたことを鑑みれば、驚く選択ではないだろう。しかしティウは八十岡の構築についてある点を指摘する。

「『バント・カンパニー』には備えてきましたし、特に八十岡さんの形との対戦は望むところです。彼は《呪文捕らえ》を2枚しか入れていない。僕のデッキにはそれを除去する手段がほとんどないので、一番効くんですが」

 八十岡は苦い顔で頷いた。ティウの殺人的な武器を八十岡が打ち破るには、幸運の女神の微笑みが必要なようだ。

ゲーム展開

 ダイス・ロールで勝利したティウは2ターン目に《発生の器》を展開し、続くターンに起動する構えを取った。しかし八十岡が2ターン目に《薄暮見の徴募兵》を繰り出すとその狙いは良いものでなくなり、ティウは《原初のドルイド》を展開することにした。

 八十岡は《無私の霊魂》を戦線に追加し、空中戦力を得ると同時にティウから放たれるであろう《コジレックの帰還》を牽制した。しかしそれは、ティウに大きなプレッシャーを与えることはできなかった。彼はこの場面で完璧なブロッカーとなる《巡礼者の目》を繰り出したのだ。八十岡はティウの防御を破る手立てが必要になる。なぜなら、ゲームが長引けば間違いなく不利になるからだ。《森の代言者》と《ヴリンの神童、ジェイス》を盤面に追加してもなお、八十岡は効果的な攻撃に出られず彼にとって好ましくない状況が続いた。

 ティウは《コジレックの帰還》を放ち、それを墓地に置いた――狙い通りの場所へと。これはティウのエルドラージが地平線上に見えるほど迫って来ていることの表れなのだろう。八十岡としては、《無私の霊魂》を生け贄に捧げて自軍を守る他にない。彼は2枚目の《無私の霊魂》を繰り出し、軍勢の強化に努めた。

 《森の代言者》が4/5になると、ティウの《原初のドルイド》が彼を守り土地になった。ティウは《発生の器》で《老いたる深海鬼》を手に入れると続けて《ウルヴェンワルド横断》で2枚目も手札に加え、その狙いを明らかにした。すなわち、1枚目の《老いたる深海鬼》で八十岡の土地を寝かせ(同時に《コジレックの帰還》の誘発で《無私の霊魂》を生け贄に捧げさせる)、そして破壊不能の効果がなくなったところで1体目の《老いたる深海鬼》を「現出」のコストにして2枚目を唱える。これがうまくいけば、八十岡の盤面は一掃されるはずだ。


計画を実行に移すオリヴァー・ティウ

 ティウは練り上げた計画を成功させ、八十岡の盤面を更地にした。八十岡は《不屈の追跡者》と《反射魔道士》で盤面の再構築を目指したが、その努力もむなしく、彼にできたのは《老いたる深海鬼》をティウの手札に戻して一時しのぎをすることだけだった。

 ティウは2枚目の《ウルヴェンワルド横断》で《約束された終末、エムラクール》を手に入れ、八十岡が立て直すチャンスを潰した。《集合した中隊》で《反射魔道士》を引き当てた八十岡は《約束された終末、エムラクール》をティウの手札に戻して最後まで勇敢に戦ったものの、ティウがエルドラージの巨人を再び唱え直すまでにゲームを終わらせることはできなかった。

 第2ゲーム、八十岡は初動3ターン目に《巨森の予見者、ニッサ》。ティウは1ターン目《発生の器》から2ターン目にそれを起動すると、3ターン目は《コジレックの帰還》で《巨森の予見者、ニッサ》を除去するのみに留めた。八十岡は《集合した中隊》を放ち《森の代言者》と《ヴリンの神童、ジェイス》を戦場に送り出した。《ヴリンの神童、ジェイス》は2枚目の《コジレックの帰還》で対処されたものの、彼は2枚目の《森の代言者》を戦線に加える。

 ティウが《墓後家蜘蛛、イシュカナ》と子グモたちで盤面を守ろうとすると、八十岡は《石の宣告》で蜘蛛・トークンを一掃し、イシュカナ本体も《反射魔道士》でバウンスし道を開いた。《森の代言者》2体の攻撃で、ティウのライフは残り10点となる。《墓後家蜘蛛、イシュカナ》をすぐに唱え直すことができないティウは、八十岡が6枚目の土地を持っていないことを祈りながらターンを返した。

 八十岡は土地を持っていた。4/5となった《森の代言者》2体と2/3の《反射魔道士》でちょうど10点。八十岡は立ち向かうべき難題に完璧に答えてみせ、あっという間に戦績をタイに戻したのだった。


第2ゲームをしっかりと掌中に収めた八十岡。

 第3ゲーム、マリガンを喫したティウは《群れの結集》で《巡礼者の目》を手札に加えた。しかし彼は3枚目の土地を置けず、早くも《無私の霊魂》のプレッシャーに晒されることになった。さらに、土地を持ってくるべく唱えた《ウルヴェンワルド横断》も《呪文捕らえ》に追放されてしまう。

 八十岡の繰り出した追撃は、あってもなくても同じだった。ティウは次のドローを確認すると、握手を求めたのだ。

「相手が八十岡さんじゃしょうがない。彼のデッキとの相性は決して悪くなかったです。『彼に対して僕が』不利なんです。強すぎますよ。プロツアー『イニストラードを覆う影』でもトップ8入賞を懸けた試合でやられましたし、今朝のリミテッド部門でも負けた。そして今回も!」

 八十岡はデッキの不利を大いに認め、勝利した2ゲームは本当に運が良かったと述べる。

「さっき悪い流れをこれでもかと食らったので。《集合した中隊》を2枚手札に抱えたまま4枚目の土地を引けなかったり、負けが決まる最後のターンにようやく土地を引いたと思ったらタップインだったりね。これで4勝2敗。最後勝って、5勝2敗で初日を終えられたら嬉しいね!」

八十岡 翔太がオリヴァー・ティウを2勝1敗で撃破。

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