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【戦略記事】 スタンダード・メタゲーム概説

【戦略記事】 スタンダード・メタゲーム概説

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Frank Karsten / Tr. Keiichi Kawazoe & Yusuke Yoshikawa

2016年9月1日

原文はこちら

 スタンダードは2016年の世界選手権で、24名によって最初に行われる構築ラウンドである。そしてさらに大事なことに、日曜に行われるトップ4プレイオフのフォーマットでもある。

 最近のグランプリやMagic Onlineのリーグではスタンダードをバント・カンパニーが席巻している。このデッキは非常に強力だが、一方非常にわかりやすい急所を抱えている。しかしながら、結局多くのプレイヤーがこのバントカラーの《集合した中隊/Collected Company(DTK)》デッキ――しかも、非常に多様な進化を遂げた――をプレイし続けているのだ。

「デュエルデッキ:エムラクール vs 集合した中隊」。

 全てのスタンダードのデッキリストはここで閲覧できる。メタゲーム・ブレイクダウンは次の通りである。

アーキタイプ人数合計成績(勝率)
バント・カンパニー712-16 (43%)
バント人間58-12 (40%)
ティムール・現出49-7 (56%)
ターボ・エムラクール37-4-1 (64%)
ジャンド昂揚25-3 (63%)
黒緑昂揚11-3 (25%)
緑青怒濤覚醒12-1-1 (67%)
バント・スピリット13-1 (75%)

バント・カンパニー

 7人のプレイヤーが「環境最高のデッキ」を選択した。その内訳は世界ランキング12位のアンドレア・メングッチ/Andrea Mengucci、ニールス・ノーランダー/Niels Noorlander、同1位のオーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwald、同22位の玉田遼一、同8位の八十岡翔太、ティアゴ・サポリート/Thiago Saporito、そしてマルシオ・カルヴァリョだ。彼らは2ターン目に《森の代言者/Sylvan Advocate(OGW)》、3ターン目に《反射魔道士/Reflector Mage(OGW)》、そして4ターン目に《集合した中隊/Collected Company(DTK)》を唱えることを目指している。

 一部のプレイヤーについては、そのデッキ選択に驚く余地はない。メングッチと八十岡は、直近のグランプリ・リミニ2016においてバント・カンパニーを使いそれぞれトップ16とトップ8という素晴らしい成績を残しており、同じデッキを使うことは自然な選択であった。もちろん、過去の経験から昂揚デッキやエムラクールデッキへの対策をしっかりと採っている。

 一方オーウェン・ターテンワルドについていえば、プロツアー『異界月』でティムール・現出を使用して準優勝にまで至ったことからバント・カンパニーという選択はより驚きを呼んだ。「ティムール・現出は僕のもう一つの選択肢だったけどちょっと不合理に感じたし、なによりオンラインでバント・カンパニー相手の戦績があまりよくなかったんだ。バント・カンパニーを試したら、しっくり来たんだよ」

 マルシオ・カルヴァリョとティアゴ・サポリートは《老いたる深海鬼/Elder Deep-Fiend(EMN)》と《首絞め/Noose Constrictor(EMN)》に注目したリストを持ち込んだ。「僕らはミラーマッチや昂揚デッキに対して《老いたる深海鬼/Elder Deep-Fiend(EMN)》がよく効くんじゃないかと期待してるんだ」とサポリートは言う。また、《首絞め/Noose Constrictor(EMN)》は「赤青・《熱病の幻視/Fevered Visions(SOI)》」に対して《コジレックの帰還/Kozilek's Return(OGW)》に耐えられ、また他のいくつかの利点も考えると極めて効果的な2マナ域だ。「《ドロモカの命令/Dromoka's Command(DTK)》を切って、より呪文の枚数が減ったことで《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》が使えなくなったんだ」とカルヴァリョは言った。「だから、そこを《首絞め/Noose Constrictor(EMN)》で置き換えたんだ。ありがたいことに、こいつはセス・マンフィールドのバント・スピリットによく効いたよ。」

 《ドロモカの命令/Dromoka's Command(DTK)》について言えば、確かにその数が減少傾向にあった。

「みんな4枚から3枚に、そして2枚へと減らしているんだ。それで、僕は1枚にしてみて、結局最後0になったんだ」とサポリートは言う。オーウェン・ターテンワルドもまた0枚のデッキを使用しているが、それはグランプリ・ポートランド2016でのポール・リーツェル/Paul Rietzlのリストの影響を受けたものだった。「あれは《集合した中隊/Collected Company(DTK)》をより良くしてくれるんだ。クリーチャーが28枚あってもたまに1枚しかクリーチャーがめくれないこともあるし、僕はとにかく当たりが引きたいんだよ。」とターテンワルドは説明してくれた。

 一番ユニークなバント・カンパニーのリストは、《邪悪の使者/Foul Emissary(EMN)》と《老いたる深海鬼/Elder Deep-Fiend(EMN)》をメインで4枚ずつ積んだ玉田遼一のものだろう。彼曰く、それらはバント・カンパニーのミラーマッチに有効なのだという。「《邪悪の使者/Foul Emissary(EMN)》と《老いたる深海鬼/Elder Deep-Fiend(EMN)》はゲームをすみやかに終わらせるんです。勝つにしろ負けるにしろ、あっという間ですよ。」玉田は1-3に終わっているが、それでもこれは興味深い発明といえるだろう。

バント人間

 4ヶ月前、世界ランキング19位の渡辺雄也はバント人間というデッキを世界にもたらした。《ラムホルトの平和主義者/Lambholt Pacifist(SOI)》と《サリアの副官/Thalia's Lieutenant(SOI)》は、普通のバント・カンパニーよりも展開を早くしたのだ。《呪文捕らえ/Spell Queller(EMN)》が『異界月』で参入したとはいえ、《サリアの副官/Thalia's Lieutenant(SOI)》の能力を誘発させないために、このデッキにはまったくマッチしない。それでも、渡辺はこのバント人間に信頼を置いていた。

 同14位のブラッド・ネルソン/Brad Nelson、ブライアン・ブラウン=ドゥイン/Brian Braun-Duin、同7位のマーティン・ミュラー/Martin Muller、同9位のヨエル・ラーション/Joel Larssonの4人もまたバント人間を選択した。「テストプレイでこのデッキはよく働いたんだ」とネルソンは言う。「バント・カンパニーを中心としたメタゲームの中で、厳しいとは言っても勝てないわけではなく、そして他のアンチ・カンパニーデッキに対してかなり有利なんだよ。」彼らは今日が始まった時点ではメタゲームが読み通りであったことを喜んでいたが、結局スタンダードラウンドではブラウン=ドゥインを除いて良い成績を残せなかった。

 リストの中で目立つカードは《実地研究者、タミヨウ/Tamiyo, Field Researcher(EMN)》と《一日のやり直し/Day's Undoing(ORI)》だろう。「タミヨウは概ねどのデッキに対しても効くんだ。こいつは《墓後家蜘蛛、イシュカナ/Ishkanah, Grafwidow(EMN)》もタップさせられるし、カンパニーのミラーマッチでもより良く効くね。」とブラウン=ドゥインは言う。「で、《一日のやり直し/Day's Undoing(ORI)》はこのイベントのサイドボードとしてかなり優秀だよ。ティムール・現出はカードを墓地に置くためにターンを費やすから、その後で《一日のやり直し/Day's Undoing(ORI)》を撃つと復旧には2ターンくらいかかるんだ。勝つのがかなりたやすくなるね。」

世界選手権はバント人間で4-0して、6-1の首位タイ。ブラッド・ネルソンの読みは当たりだね。まだまだマジックは続く。

ティムール・現出

 シェアの3位を締めたのは、《老いたる深海鬼/Elder Deep-Fiend(EMN)》の連鎖と《約束された終末、エムラクール/Emrakul, the Promised End(EMN)》という2プランを持つティムール・現出だった。

このデッキを選択したのは世界ランキング4位のルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargas、同9位のサミュエル・パーディー/Samuel Pardee、同14位のマイク・シグリスト/Mike Sigrist、そして同じく14位のパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosaの調整チームが揃ってこのデッキを選択し、全員が勝ち越した。私がデッキ選択について聞いた時、「ミラーマッチではエムラクールよりも深海鬼で相手を封じるほうが遥かに効果的だね」とパーディーは言っていた。「サイドボードの《エルドラージの寸借者/Eldrazi Obligator(OGW)》はこのプランを取る上でよくはまるんだ。何度も試してみたけど、《原初のドルイド/Primal Druid(EMN)》は使えない一方で《節くれ木のドライアド/Gnarlwood Dryad(EMN)》と《巨森の予見者、ニッサ/Nissa, Vastwood Seer(ORI)》は良かったね。」

ターボ・エムラクール

 前述の4人がエムラクールよりも《老いたる深海鬼/Elder Deep-Fiend(EMN)》を優先したのに対し、この3人はその逆を行くターボ・エムラクールを選択した。《ニッサの巡礼/Nissa's Pilgrimage(ORI)》や《原初のドルイド/Primal Druid(EMN)》、《見捨てられた神々の神殿/Shrine of the Forsaken Gods(BFZ)》、《発生の器/Vessel of Nascency(SOI)》といったカードから、13/13のエムラクールを速やかに展開するのだ。3人合計の戦績は7勝4敗1分けと、3人以上が使用したデッキの中では最高の成績となった。

 最初にこのデッキに目をつけたのは世界ランキング14位のオリヴァー・ティウ/Oliver Tiuだった。そして、パートナーである同11位で構築マスターのアンドレイ・ストラスキー/Ondrej Straskyは75枚まるごとコピーした。「バントを使いたかったんだけど、調整中にオリヴァーが僕に勝ち続けたんだ」とストラスキーが言った。

「いろんなティムールデッキを試してそのポテンシャルを試したんだけど、素晴らしいといえるほどのものはなかったんだ」と、終わった後でティウが説明してくれた。「予定以上にバントに負けすぎてたんだ。その時、StarCityGames.com Invitationalのトップ8でマイケル・メジャース/Michael Majorsのティムールのリストを見て、それが《呪文捕らえ/Spell Queller(EMN)》の影響を受けにくいがゆえにバントに強いことを見つけたんだ。その時、決心がついたんだ。」

 ターボ・エムラクールを試した3人目であるリード・デューク/Reid Dukeいわく、「僕はプロツアー『異界月』で赤緑ランプのいい経験を持ってたんだ」と言う。「このティムールデッキは僕の大好きなアーキタイプで、現出のパッケージはバント・カンパニーに対してより良いチャンスをくれるんだ。赤緑ランプでは土地7枚が必要だったのに、このデッキではより早く《コジレックの帰還/Kozilek's Return(OGW)》で盤面を一掃できるんだよ。このティムールデッキはよりスピーディで、4~5ターン目にでも勝てる盤面を築き上げるんだ。」

 デュークのデッキは《揺るぎないサルカン/Sarkhan Unbroken(DTK)》の採用という独特の選択をしている。「僕はスーパーアグロ以外に対しては現出パッケージをサイドアウトするのが好きなんだけど、そのためには受けの広いカードが欲しかったんだ。《揺るぎないサルカン/Sarkhan Unbroken(DTK)》は、ランプ戦略で良くプレイしてたから特に好きなカードなんだ。これが3色でさえなければ、もっとスタンダードで使われていただろうね。」

ジャンド昂揚

 ジャンド昂揚はフォーマットの中でもっともコントロール寄りのデッキの一つだ。《衰滅/Languish(ORI)》と《コジレックの帰還/Kozilek's Return(OGW)》という全体除去や《焦熱の衝動/Fiery Impulse(ORI)》のような軽い除去、そして《墓後家蜘蛛、イシュカナ/Ishkanah, Grafwidow(EMN)》で盤面を膠着させたり、《約束された終末、エムラクール/Emrakul, the Promised End(EMN)》を勝ち手段とする昂揚パッケージから構成されている。

 このデッキを選択したのは世界ランキング3位のルーカス・ブロホン/Lukas Blohonと、瀧村和幸だ。瀧村は振るわなかったが、ブロホンはスタンダードで4-0を記録した。彼のデッキでは、他の現出デッキに勝つためにメインから《精神背信/Transgress the Mind(BFZ)》を採用していた。「このデッキはどのデッキに対しても――特にバント・カンパニーに対していいマッチアップになるはずだ。たまに《膨らんだ意識曲げ/Distended Mindbender(EMN)》が初手に来ちゃうとちょっとアレだけど、でもこのデッキパワーは素晴らしいよ」とブロホンは言ってくれた。「このデッキで勝てて楽しいよ」

ジャンドで4-0できてうれしい。ドラフトでは1-2だったけど、明日のセカンドドラフトはもっとうまくやれるようにと思っているよ。

青緑怒涛覚醒

「このデッキは僕にスタンダードでプレイする意欲をくれたんだ」と、アシスタント・トーナメント・マネージャーのジャレード・シルヴィア/Jared Silvaがスティーヴ・ルービン/Steve Rubinのゲームを見た後に言った。このデッキは《棲み家の防御者/Den Protector(DTK)》で《押し潰す触手/Crush of Tentacles(OGW)》を使い回したり、《水の帳の分離/Part the Waterveil(BFZ)》でターンを得続けたりすることで勝ちに行く、エキサイティングかつユニークなものだ。

 このデッキには《パズルの欠片/Pieces of the Puzzle(SOI)》が4枚投入されており、実に71%の確率で呪文を2枚引き当てられる。しかも、《ニッサの巡礼/Nissa's Pilgrimage(ORI)》や《爆発的植生/Explosive Vegetation(ONS)》で圧縮することでさらに確率は上がるのだ。

「このデッキがグランプリ・ポートランドで9位に入り、そしてそれとは違う2人がSCG Invitationalで7-1以上を収めたのを見たんだ」と世界ランキング5位のスティーブ・ルービンが話してくれた。そこで彼はこのデッキを試し、そのコンボらしさを気に入ったのだった。「僕が思うにこのデッキは、全体の半分を占めるであろうエムラクールデッキによく効くはずなんだ。バント・カンパニー相手は少し厳しいけど、でもそこまでじゃない。」

 ひとつ奇妙な点を挙げれば、《森の代言者/Sylvan Advocate(OGW)》が3枚で《エルフの幻想家/Elvish Visionary(C15)》が0枚だということだ。「必要なのはブロッカーなのさ」とルービンは説明する。「幻想家は《押し潰す触手/Crush of Tentacles(OGW)》の怒濤にとってはいいものだけど、でもサイクリングに2マナはもったいなくて、もっと役に立つカードが欲しいんだ。代言者はその点ブロックもこなすし、コンボの穴を狭くしてくれるし、そして相手に迅速にとどめを刺してくれるんだ。」これは彼にとって、自身(とブライアン・ブラウン=ドゥイン)がプロツアー『イニストラードを覆う影』で緑白トークンデッキに加え勝利に至った時のデジャヴに見えた。

黒緑昂揚

 ジャアチェン・タオ/Jiachen Taoはプロツアー『異界月』とグランプリ・ポートランドで使った黒緑昂揚を選択した。彼は、メタゲームの情勢よりも使い慣れていることを理由にこの黒緑デッキを選んだのだった。

 彼のリストはグランプリ・ポートランドでトップ8に入ったマイケル・ハンツ/Michael Hantzのデッキに似ており、《残忍な剥ぎ取り/Grim Flayer(EMN)》のかわりに《発生の器/Vessel of Nascency(SOI)》を採用していた。「《残忍な剥ぎ取り/Grim Flayer(EMN)》は勝っている時には強いんだけど、負けている時にはすごく弱いんだ」とタオは言った。

バント・スピリット

 最も驚くべきデッキであるバント・スピリットを持ち込んだのは、他でもない昨年王者、2位のセス・マンフィールドだ。

 プロツアー『異界月』で、ヤーン・クサンドル/Jan Ksandrをはじめとする数名が持ち込んだアーキタイプ(違いといえば《オジュタイの命令/Ojutai's Command(DTK)》・《意思の激突/Clash of Wills(ORI)》のかわりに《薄暮見の徴募兵/Duskwatch Recruiter(SOI)》を採用したことくらいだ)だったが、その時は6勝4敗より良い成績を残した者はいなかった。セス・マンフィールドのチームも同様にそのデッキを調整していたが、結局使用を見送ったのだった。

 この世界選手権に向けて、Magic Onlineでさらにさまざまなデッキ相手に100戦以上をこなした結果として、マンフィールドはこのバント・スピリットが実際良くできていると感じた。「このデッキに到達したのは水曜朝の最後の数分だったんだ。このリストの最適解が何なのかの自信はないけど、でもよくできていると感じてる。皆によく知られている他の多くのデッキではなく、他の誰とも違うデッキを持ち込みたかったし、この選択は正解だったと思うよ。」

 メタゲームの状況はマンフィールドの選択を後押しするかも知れない。彼いわく「唯一の苦手なマッチアップ」である白単人間もいなければ、《最後の望み、リリアナ/Liliana, the Last Hope(EMN)》もほとんど見られないからだ。「リリアナを使うデッキとは相性が悪いんだよ。こっちのカードは全部インスタントタイミングで、カウンターを抱えて動きたいデッキだからね」と付け加えた。

 マンフィールドのサイドボードで特に目を引くのは《霊体の羊飼い/Spectral Shepherd(SOI)》だろう。「チームメートのひとりがこれを見つけて気に入ったんだ。『よし、こいつを持って行こう』ってね。何しろ《呪文捕らえ/Spell Queller(EMN)》との相性が素晴らしいんだ。」 5マナかかるとはいえ、毎ターン打てるカウンターが素晴らしいのは確かだ。

 マンフィールドはスタンダードで3-1を記録し、このデッキがイベントで通用しうること、そして昨年の王者が本命の一人であることを証明して見せた。

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