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【戦略記事】 世界選手権2016ドラフト部門好プレイ集

【戦略記事】 世界選手権2016ドラフト部門好プレイ集

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Frank Karsten / Tr. Tetsuya Yabuki

2016年9月2日

原文はこちら

 木曜の朝と金曜の午後は、世界選手権2016のドラフト部門が行われた。世界最高の24人が『異界月』ブースターパック2個と『イニストラードを覆う影』ブースターパック1個を用いて勝利への道を競い合い、私たちは現環境のドラフトの最高レベルを目にした。

 ここで、私が特に感銘を受けた瞬間を6つ挙げよう。

オーウェンのドラフトの妙

 世界ランキング1位のオーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwaldは、3パック目に難しいピックを迫られた(その様子はこちらから確認できる:英語動画)。シグナルを正確に読んだ彼は「白青」に舵を切っていたが、《教団の歓迎》と《グリフの加護》の2択に当たったのだ。そこでの彼の選択が、解説者から放送を見ていた者まで多くの議論を引き起こした。

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難しい選択を迫られ、あらゆる可能性を吟味するオーウェン・ターテンワルド

 《グリフの加護》は「白青」の2マナ域のクリーチャーや《巧妙なスカーブ》との相性が良い。それでもターテンワルドは、《教団の歓迎》をピックした。なぜなら、この時点で彼はデッキの力不足を感じており、《グリフの加護》を機能させるには強力なカードがもっと必要だったのだ。ターテンワルドは、そのときの選択について以下のように述べる。「デッキが弱くなってしまった場合、《支配魔法》の効果ならゲームに勝てるチャンスがある。ライフ・レースを有利に進めるだけのカードは、そういうときに弱いんだ。賭けをするなら、あるゲームで劇的に効くカードの方に賭けたいね」

 つまりこのとき、ターテンワルドは自身のデッキを6点と見積もっており、周りは7点だと予想した。《グリフの加護》は6点のデッキを6.5点に強化するカードであり、それでは足りなかったのだ。一方の《教団の歓迎》は、3試合中2試合は6点のまま(良い対象がいない)かもしれないが、(良い対象がある)1試合は7.5点までデッキを強くしてくれて、勝ちを拾えるかもしれない。彼はただ優れたカードをピックするだけでなく、自身のデッキの強さを正確に見定め、適切に軸をずらしておいたのだ。これは極めてレベルの高い戦略だが、ターテンワルドほどの腕前を持つプレイヤーなら当たり前のように身につけているようだ。

 結果、彼のピックは功を奏した。ターテンワルドは瀧村 和幸との戦いで《捨て身の歩哨》のコントロールを奪い、《不憫なグリフ》の「現出」のコストにした。見事に《支配魔法》を活かしたのだ!

ブロホンの忍耐力

 第2回戦、世界ランキング9位のヨエル・ラーション/Joel Larssonと対戦した同3位のルーカス・ブロホン/Lukas Blohonは、《折れた刃、ギセラ》と《木こりの気概》を手札に持っていた。ここでブロホンは、4ターン目に《折れた刃、ギセラ》を繰り出す強力な動きを選ばず、対戦相手の動きを予想しゲーム・プランを練ることの大切さを見せつけた。

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ルーカス・ブロホンの忍耐は実を結び、彼は切り札の天使を守ることに成功した。

 ラーションがダメージによる除去を使うことを知っていたブロホンは、7マナ用意できるまで《折れた刃、ギセラ》の展開を待ち、それを守れるようにした。「2ターンにわたって何もプレイせずただ待つ必要があったけれど、さすがにヒヤヒヤしたよ」と、ブロホンは笑う。「でも相手が除去を1枚しか持っていなければ、それでこちらの勝ちだからね」

マルシオ・カルヴァリョが一挙16点ものダメージを叩き出す

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もはや議論の余地もないだろう――マルシオ・カルヴァリョはドラフトを熟知している。

 「ドラフト・マスター」マルシオ・カルヴァリョ/Marcio Carvalhoが、「構築マスター」オリヴァー・ティウ/Oliver Tiuを相手にクリーチャー1体のみで5ターン・キルを決めた。2ターン目に《貪欲な求血者》を繰り出すと、3ターン目に《無差別な怒り》をエンチャントし、5ターン目の攻撃をブロックしなかったティウに《放たれた怒り》で止めを刺したのだ。

 カルヴァリョは手札を2枚捨てて8/2二段攻撃を作り出し、一挙に16点ものダメージを与えた。ティウは試合後に「あれは完全に見落としていた」と語るが、カルヴァリョが「ドラフト・マスター」足る理由を見せつける形となった。彼は勝利の可能性が現れたとき、決してそれを見逃さないのだ。

「勝つのにボムレアは必要ないよ」と、カルヴァリョはのちに語った。「必要なのは良いマナ・カーブとコンバット・トリック。この環境のリミテッドでは、赤が断トツで強いね」

リード・デュークが敗勢を覆す

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リード・デュークは、どちらかのライフが0になるまで決して勝負を諦めない。

 第2回戦ではもうひとつ、素晴らしいプレイが見られた。世界ランキング4位のルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargasと同6位のリード・デューク/Reid Dukeによる最終ゲームでのことだ。このゲームの序盤はこちらから、最後はこちらから確認できる(英語動画)。最終盤、両者のライフは10対7でスコット=ヴァーガスがリードしており、デュークの戦場には《巧妙なスカーブ》1体のみ。一方スコット=ヴァーガスの盤面には4体のクリーチャーが並んでいた。2体はタップ状態で、もう2体はアンタップ状態だ。

 デュークの敗色濃厚に見えるこの場面、実際に彼は敗勢だった。しかしその後放たれた呪文が、ゲームの流れを一変させる。《回答の強要》でスコット=ヴァーガスのブロッカーを1体無力化し、《巧妙なスカーブ》は3/4に。さらに《非実体化》で2体目のブロッカーも排除し、《巧妙なスカーブ》は4/5に。そして《焼夷流》がスコット=ヴァーガスのライフを残り7点にし、《巧妙なスカーブ》は5/6に。デュークは《巧妙なスカーブ》のパワーを2回上げ、止めの一撃を放った――Twitchのコメント欄は大騒ぎになったのだった。

 世界選手権の出場選手たちが度々見せてくれているように、マジックというゲームでは予想もつかないことが起きるものなのだ。

ニールス・ノアランダーの「クレイジー・スペル」デッキ

 「Magic Online Champion」のニールス・ノアランダー/Niels Noorlanderは、金曜のドラフトで構築デッキに匹敵するほどの「赤青スペル」デッキを組み上げ、使用に耐えないと評価されていた《有事対策》を注目の1枚に変えた。

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組み上げたドラフト・デッキに大満足のニールス・ノアランダー

 第9回戦でアンドレア・メングッチ/Andrea Mengucciと対峙したノアランダーは、ゲーム序盤に《有事対策》を唱えてインスタントやソーサリーを2枚と《改良された縫い翼》を墓地へ送った。彼はさらにインスタントやソーサリーを2枚捨てて《改良された縫い翼》を戦場に戻すと、あまりに早い段階で《騒乱の歓楽者》を唱えることに成功したのだ。

 また別のゲームでは、彼は6ターン目にして《潮からの蘇生》で7体のゾンビを生み出した。「ニールスのデッキは僕に完璧に刺さったよ」と、アンドレア・メングッチは感嘆した様子で語るのだった。

オリヴァー・ティウがすべての情報を駆使する

 世界選手権では、各試合の前に対戦相手がドラフトしたカードのリストを見ることができる。つまり使用されるカードのすべての情報が開示されており、それを活かした戦略を取ることも可能なのだ。

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《揺るぎない信仰》とともに《刺し込む光》に対抗したオリヴァー・ティウ

 ティウはあるゲームで、「情報」を存分に活かした。「こちらの《偏執的な教区刃》に向かって、《信仰持ちの聖騎士》が攻撃してきました」と、ティウは振り返る。「僕は相手が《刺し込む光》をドラフトしたことを知っていて、『昂揚』達成のためにはインスタントを墓地へ置く必要がありました。そこでブロック指定前に《邪悪の暴露》を使い、《偏執的な教区刃》を4/2にして《刺し込む光》の対象から外したんです」

 ティウが今大会に向けてともに練習したアンドレイ・ストラスキー/Ondrej Straskyにこの話をすると、「おお、やるじゃん!」とハイタッチを求められた。ティウは「まあ結局相手は《執念》を持っていて、こっちがやられたんだけどね」と続け、その場の笑いを誘ったのだった。

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