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【観戦記事】 準決勝:Brian Braun-Duin(アメリカ) vs 八十岡 翔太(日本)

【観戦記事】 準決勝:Brian Braun-Duin(アメリカ) vs 八十岡 翔太(日本)

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Frank Karsten / Tr. Keiichi Kawazoe / TSV Yusuke Yoshikawa

2016年9月4日

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ブライアン・ブラウン=デュイン/Brian Braun-Duin(バント人間) vs 八十岡翔太(世界ランキング8位/バント・カンパニー)

 終わってみればあっという間であった。このマッチはお互いに《薄暮見の徴募兵/Duskwatch Recruiter(SOI)》と《不屈の追跡者/Tireless Tracker(SOI)》を擁するため、それらの処理の結果、長引く消耗戦になるのではないかと予想されていた。しかしその結果は、たった3ゲーム、32分で終わってしまったのだった。

プレイヤー紹介

 スイスラウンド14回戦で最も良い成績を残したのは、グランプリマスターであるブライアン・ブラウン=デュインその人だ。彼は30歳のゴールドレベル・プロで、記事の執筆者としても有名だ。数年前、彼は競技レベルでのキャリアの入り口に立っていた。そこから、少しずつレベルアップしてきたのだ。彼のこのシーズンのスケジュールは、グランプリサーキットのために世界中を飛び回った結果息つく暇もないレベルとなった。しかしながら、その成果が実り世界選手権への切符を手にし、この時点までイベントを支配してきた。彼は今まさに波に乗っていた。

 このトップ4という成果は彼のキャリアにおいて自身の想像を超えたものだったが、それでも彼は確かにその座を手に入れ、さらにその先を欲していた。「ここでの勝利は、今までのマジックで成し遂げたかったことの集大成となるだろうね」

 もう一人のプレイヤーは殿堂顕彰者である八十岡翔太だ。彼は2015~2016シーズンのアジア太平洋地域のプロポイントランキングによって参加資格を得た。この対戦において、彼はブラウン=デュインが霞んで見えるほどの実績に飾られたプレイヤーである。生涯獲得プロポイントは469点、賞金総額は250000ドル以上、そして2006年にはプレイヤー・オブ・ザ・イヤーも獲得しているのだ。

 彼はその自身の実績だけでなく、プレイの完成度や意思決定のスピードに対して仲間から極めて深い尊敬を向けられている(証言ツイートその1その2その3:英語)。実は、彼は世界選手権の歴史で最も高い勝率の記録に並んでいるのだ。2012年、彼はトップ4で敗退する前のスイスラウンドで11勝1敗を記録している。そして今年も、9勝5敗でトップ4に至っている。彼はこのトップ4の場に戻ってきたことを喜んでいるが、その一方で今度こそ、以前に逃したトロフィーを取ることを虎視眈々と狙っている。

デッキとマッチアップ

 ブラウン=デュインは構築ラウンド無敗であり、スタンダードではバント人間で4-0を記録している。「ブラッド・ネルソン/Brad Nelsonに褒められたんだよ」と、彼は自身のデッキ選択について語った。このイベントのために、彼はブラッド・ネルソン、マーティン・ミュラー/Martin Muller、そしてヨエル・ラーション/Joel Larssonと、特に昂揚デッキに対して有効なバント人間を調整してきたのだ。《ラムホルトの平和主義者/Lambholt Pacifist(SOI)》と《サリアの副官/Thalia's Lieutenant(SOI)》といった軽量の人間に率いられるバント人間は、《約束された終末、エムラクール/Emrakul, the Promised End(EMN)》が現れる前に対戦相手を倒すことができるのだ。

 しかしながら、八十岡はその13/13をプレイしているわけではない――そう、彼は伝統的なバント・カンパニーを使っているのだ。そして彼のチームメイトによれば、一般的に言ってこの組み合わせはブラウン=デュインにとって有利ではないとのことだ。バント・カンパニーは《無私の霊魂/Selfless Spirit(EMN)》や《呪文捕らえ/Spell Queller(EMN)》、そして《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn(SOI)》といった飛行戦力で盤面の膠着を打ち破れる上に、サイドボードからは不利な盤面に対処できる《悲劇的な傲慢/Tragic Arrogance(ORI)》が入れられるからだ。

 もっとも、八十岡のデッキは《無私の霊魂/Selfless Spirit(EMN)》と《呪文捕らえ/Spell Queller(EMN)》をメインには2枚ずつしか採用せず、また《悲劇的な傲慢/Tragic Arrogance(ORI)》はサイドボードに入っていない。これは、たとえ彼自身が数週間前にグランプリ・リミニでトップ8に入り、このデッキを使いこなす腕前を実証していたことを考えたとしても、このマッチアップがより接戦になるであろうことを意味していた。

 さらに言えば、もしブラウン=デュインが《サリアの副官/Thalia's Lieutenant(SOI)》からスムーズに立ち上がり、そのまま《実地研究者、タミヨウ/Tamiyo, Field Researcher(EMN)》の2倍《霜のブレス/Frost Breath(M14)》で後押しすれば、八十岡のアドバンテージ源――《不屈の追跡者/Tireless Tracker(SOI)》《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》各4枚という、彼のコントロール志向を象徴するような構成だ――が長期戦での有利を形成する前に勝利に至ることができるだろう。

ゲーム展開

 カラデシュ世界の様式に整えられたパラマウント・シアターの舞台。その美しいエントランスをくぐり、両プレイヤーはテーブルに着いた。周囲の音を完全に遮断するためにヘッドセットを装着すると、彼らはようやく初手を引き始めた。

 第1ゲーム。ブラウン=デュインはスイスラウンドの結果によって、特に彼のような攻撃型のデッキにとっては値千金となる先手の権利を得ていた。序盤の多少のやり取りのあと、第5ターンの時点でブラウン=デュインは《反射魔道士/Reflector Mage(OGW)》2体、《ラムホルトの平和主義者/Lambholt Pacifist(SOI)》と《異端聖戦士、サリア/Thalia, Heretic Cathar(EMN)》を1体ずつコントロールしている一方、八十岡の手勢は《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》と《無私の霊魂/Selfless Spirit(EMN)》のみであった。

 八十岡はサリアに《反射魔道士/Reflector Mage(OGW)》で対処し、次のターンに破壊不能のブロッカーを用意できる状況を作ったが、それでは足りていなかった。《サリアの副官/Thalia's Lieutenant(SOI)》と《ドロモカの命令/Dromoka's Command(DTK)》がタイミングよくブラウン=デュインの軍勢を強化し、それらの総攻撃によって八十岡に致命傷を与えたのだった。

 第2ゲーム、八十岡の最初のアクションは《サリアの副官/Thalia's Lieutenant(SOI)》を《石の宣告/Declaration in Stone(SOI)》で対処することだった。第5ターンの時点で、彼は盤面でもダメージレースでも優位に立っていた。4/3になった《不屈の追跡者/Tireless Tracker(SOI)》、《森の代言者/Sylvan Advocate(OGW)》、そして《無私の霊魂/Selfless Spirit(EMN)》を擁している一方、ブラウン=デュインの手勢は《白蘭の騎士/Knight of the White Orchid(ORI)》と2/3の《スレイベンの検査官/Thraben Inspector(SOI)》のみだったのだ。言い換えれば、八十岡はパワー・タフネス・クリーチャー数の全てにおいて盤面を圧倒しており、さらにライフも12対10という優位であった。

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八十岡翔太は第2ゲームでブラウン=デュインを追い詰めていた

 しかし次のターン、ブラウン=デュインは状況を一変させた。《反射魔道士/Reflector Mage(OGW)》で相手の《森の代言者/Sylvan Advocate(OGW)》を戻して道を開け、《サリアの副官/Thalia's Lieutenant(SOI)》でクリーチャーを強化し、全軍攻撃で八十岡のライフを6まで削った。なんという一撃だろうか!

 この結果としてブラウン=デュインは八十岡を守勢に回らせることができたが、それ以上に《反射魔道士/Reflector Mage(OGW)》でテンポ面のアドバンテージを取ったことが大きかった。ブラウン=デュインにとって、かりそめの優位を確実なものにする手段が必要だ。幸運なことに、彼のデッキには2枚の《実地研究者、タミヨウ/Tamiyo, Field Researcher(EMN)》が採用されており、その1枚はちょうど手札にあった。彼はそれをプレイすると、2体のクリーチャーをタップさせた。そして、八十岡に《森の代言者/Sylvan Advocate(OGW)》を唱えなおしたり、手掛かりで《不屈の追跡者/Tireless Tracker(SOI)》を大きくする余裕を与えることなく、ゲームを奪ったのだった。

 第3ゲーム、両プレイヤーはようやくサイドボードを行ってデッキをより最適化する機会を得る。ブラウン=デュインは追加の《白蘭の騎士/Knight of the White Orchid(ORI)》と《巨森の予見者、ニッサ/Nissa, Vastwood Seer(ORI)》、そして《悲劇的な傲慢/Tragic Arrogance(ORI)》を加え、また八十岡は《大天使アヴァシン/Archangel Avacyn(SOI)》、《無私の霊魂/Selfless Spirit(EMN)》、《ドロモカの命令/Dromoka's Command(DTK)》、そして《異端聖戦士、サリア/Thalia, Heretic Cathar(EMN)》を加えた。

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ゲームカウントは2-0、ブライアン・ブラウン=デュインにとってはこの第3ゲームで勝利し、決勝の椅子を確定させたいところだ。

 このゲームで先手を取った八十岡はキープできる手を探してマリガンを選択した。一方のブラウン=デュインの最初のアクションは《ラムホルトの平和主義者/Lambholt Pacifist(SOI)》だ。

 八十岡はマナを伸ばすことができず、3ターン目に何も唱えずにターンを返してしまった結果、3/3の人間・狼男は4/4の狼男へと変身した。これは八十岡にとって大きな不利に映ったが、次のターンのブラウン=デュインの《サリアの副官/Thalia's Lieutenant(SOI)》は結局この4/4には何の効果も与えなかったため、変身自体はそこまで大きな問題とはならなかった。

 しかしながら、ブラウン=デュインは続く2枚で優位をさらに確かなものとした。《サリアの副官/Thalia's Lieutenant(SOI)》でクリーチャーを強化し、そして《ドロモカの命令/Dromoka's Command(DTK)》で八十岡の《不屈の追跡者/Tireless Tracker(SOI)》を倒したのだ。

 八十岡の不利はかなり決定的なものであり、挽回するためには《集合した中隊/Collected Company(DTK)》で良いものを引き当てるしかなかった。《反射魔道士/Reflector Mage(OGW)》と《森の代言者/Sylvan Advocate(OGW)》でも引き当てられれば、ブラウン=デュインからの波をせき止めることができるだろう。

 しかし、運は八十岡に味方しなかった。ライブラリーの上からめくれた6枚の中にはただ《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》1枚があるのみで、それはブラウン=デュインの攻勢を凌ぐためには到底足りていなかった。

 八十岡は手を差し出して投了の意思を示し、ブライアン・ブラウン=デュインは決勝へと駒を進めた。

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八十岡翔太はブライアン・ブラウン=デュインと握手し、決勝進出に祝いの言葉を伝えた。
ブライアン・ブラウン=デュインが3-0で八十岡翔太を下し、決勝進出!

 終わってみれば、このバント同士の対決は、片方のプレイヤーの独走を同じ3回見せられるだけのものだった。

「昨日の晩、セス(セス・マンフィールド/Seth Manfield)と練習した時は8割以上負けてたんだ」とブラウン=デュインは試合後のインタビューで語った。「ただ、そこで『どう立ち回ればいいのか』『何が有利に働くのか』ということを学んだんだ。クリーチャーの相打ちは可能な限り避けて、盤面を充実させて、そして可能な限りアグレッシブに動かなきゃいけないのさ。そういう動きを知ることができて、そしてその通りにプレイできたのは本当に良かったよ。」

 ブライアン・ブラウン=デュインにとって、マジック世界の頂点まであと1マッチというところまで手が伸びているが、彼自身はその状況をまだはっきりと飲み込めてはいないようだった。「いや、こんなこと信じられるわけがないよ。この大会でプレイするのも楽しいんだ。確かにだんだんストレスも感じているけど、ここまでは好調だし、あとはできることを全部やりつくすだけだね」

Brian Braun-Duin - 「バント人間カンパニー」
世界選手権2016 トップ4 / スタンダード (2016年9月1~4日)
3 《森》
6 《平地》
1 《島》
2 《梢の眺望》
4 《要塞化した村》
3 《大草原の川》
2 《ヤヴィマヤの沿岸》
4 《進化する未開地》

-土地(25)-

3 《スレイベンの検査官》
4 《ラムホルトの平和主義者》
4 《サリアの副官》
2 《白蘭の騎士》
1 《薄暮見の徴募兵》
4 《反射魔道士》
4 《不屈の追跡者》
3 《異端聖戦士、サリア》

-クリーチャー(25)-
4 《ドロモカの命令》
4 《集合した中隊》
2 《実地研究者、タミヨウ》

-呪文(10)-
1 《薄暮見の徴募兵》
1 《白蘭の騎士》
2 《巨森の予見者、ニッサ》
2 《石の宣告》
2 《否認》
2 《一日のやり直し》
2 《悲劇的な傲慢》
3 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-サイドボード(15)-
八十岡 翔太 - 「バント・カンパニー」
世界選手権2016 トップ4 / スタンダード (2016年9月1~4日)
4 《森》
4 《平地》
2 《島》
3 《梢の眺望》
3 《大草原の川》
4 《ヤヴィマヤの沿岸》
2 《伐採地の滝》
4 《進化する未開地》

-土地(26)-

4 《ヴリンの神童、ジェイス》
4 《森の代言者》
3 《薄暮見の徴募兵》
2 《無私の霊魂》
4 《反射魔道士》
4 《不屈の追跡者》
2 《巨森の予見者、ニッサ》
2 《呪文捕らえ》

-クリーチャー(25)-
2 《石の宣告》
2 《ドロモカの命令》
4 《集合した中隊》
1 《オジュタイの命令》

-呪文(9)-
2 《無私の霊魂》
1 《巨森の予見者、ニッサ》
1 《異端聖戦士、サリア》
2 《大天使アヴァシン》
2 《老いたる深海鬼》
3 《否認》
1 《ドロモカの命令》
2 《過去に学ぶ》
1 《実地研究者、タミヨウ》

-サイドボード(15)-

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