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【観戦記事】 決勝:Brian Braun-Duin(アメリカ) vs. Marcio Carvalho(ポルトガル)

【観戦記事】 決勝:Brian Braun-Duin(アメリカ) vs. Marcio Carvalho(ポルトガル)

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Corbin Hosler / Tr. Tetsuya Yabuki

2016年9月4日

原文はこちら

ブライアン・ブラウン=デュイン/Brian Braun-Duin(バント人間)vs. マルシオ・カルヴァリョ/Marcio Carvalho(バント・カンパニー)

 シアトルのパラマウント・シアターにはたくさんの人が集まり、戦いの始まりに声を上げた。会場の人々と世界中の数万人の視聴者たちが鳴らすファンファーレの中、ふたりのプレイヤーが姿を現す。両者は人生の大部分にわたって、ただ黙々と努力を重ねてきた。それはいつか、この舞台に立つための努力だった。ここは、両者がこれまでのキャリアで体験したことのない、想像もできなかったほどの高みだ。

 マルシオ・カルヴァリョとブライアン・ブラウン=デュインは今、その舞台にいる。拡声器を通して会場中に響き渡る彼らの名前。何百人という観衆が声援を送る中、両者はその舞台へ歩みを進めた。

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豪華な特製トロフィーは、間もなくそれぞれの持ち主のもとへ行くだろう――最高の栄誉を手にするのはどちらだ?

 20年近くにわたるキャリアの最高潮を迎えた、とカルヴァリョは言う。16年前にグランプリ初参戦を果たし、プロツアー・トップ8入賞2回を記録するポルトガルのプロは、マジックにおける浮き沈みを経験してきた。しかし世界選手権決勝という頂上決戦は初めてのことだ。

 ブライアン・ブラウン=デュインは、昨シーズン最後の週まで熾烈な争いが続いた「グランプリ・マスター」を巡るポイント・レースを僅差で制して、今大会への出場を決めた。「地元トーナメントを食い荒らした」日々から離れてわずか数年、ブラウン=デュインは「参加費無料の大会」である世界選手権に向けて、スケジュールを先取りで空けておいた。その出場枠を得られたときのために。

 仮にブラウン=デュインが世界選手権2016の出場権をもっと早く獲得していたなら、彼のカレンダーには「決勝進出」まで先取りで書かれていたのかもしれない。

 この舞台に初めて上がったふたり。ここに来られるなんて思ってもいなかったふたり。これまでのマジック人生のすべてを懸けた戦いに臨むふたり。

 世界王者は、ただひとり。

ゲーム展開

 今大会の決勝は「バント」が占めた。対峙するのはブラウン=デュインの「バント人間」と、より基本的な形のカルヴァリョの「バント・カンパニー」だ。《集合した中隊》の同系戦となったが、これらのデッキにはわずかながらも重大な違いがある。最も大きな違いはブラウン=デュインが《サリアの副官》を採用している点であり、これによってカルヴァリョの軍勢をサイズで上回れるようになっている。一方、カルヴァリョ側には《老いたる深海鬼》という脅威があり、どのタイミングでも膠着したゲームを打開できるだろう。

 この一戦に懸かるものは非常に多く、両プレイヤーとも口数は少ない。試合開始の直前、彼らは静かに席に座り、開始の合図とともにブラウン=デュインが《森》を置いてゲームが始まった。幸先の良いスタートではなかったものの、こうして世界選手権決勝はその幕を開けたのだった。

 第1ゲームは、今大会中にさまざまな情報が発表された最新セット『カラデシュ』を象徴するかのように素早いレースが展開された。カルヴァリョの《森の代言者》がブラウン=デュインの《ラムホルトの平和主義者》2体と対峙する。ブラウン=デュインはクリーチャーを2体展開しているものの、土地が2枚で止まっていた。だがそれは、《ラムホルトの解体者》が盤面を支えているうちに引き込むことができるはずだ。

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「狼男の壁」の後ろで盤面が膠着することを望むブライアン・ブラウン=デュイン

 しかしカルヴァリョはそのチャンスを与えなかった。《石の宣告》が《ラムホルトの解体者》2体を一気に除去すると、ブラウン=デュインは3枚目の土地を探すのに役立つ「手掛かり」を2枚手に入れたものの、大きく盤面差をつけられた。彼の繰り出した《反射魔道士》もカルヴァリョの《呪文捕らえ》に捕まり、両者は早くも第2ゲームへ向かうことになった。

 瞬く間に1ゲームを落とし苦境に立たされたブラウン=デュインだが、第2ゲームではマリガンを喫し、状況は悪化するばかりだった。それでも彼は先手の有利を持っており、2ターン目《スレイベンの検査官》から《薄暮見の徴募兵》と先に展開を進めることができた。カルヴァリョは2ターン目にアクションを起こせなかったものの、3ターン目に《反射魔道士》で《薄暮見の徴募兵》を戻し、ブラウン=デュインの展開を阻害する。

 カルヴァリョは4ターン目も何もせずターンを渡した。ブラウン=デュインは《集合した中隊》を放てるマナを立たせたカルヴァリョを恐れず、攻撃に向かう。その恐るべき呪文は飛び出さず、ブラウン=デュインはカルヴァリョのライフを残り15点に落とした。これでマナを構えた理由が暴かれたカルヴァリョは、ブラウン=デュインのターン終了時に《呪文捕らえ》を繰り出した。それは無事着地したが、そこでブラウン=デュイン側が《集合した中隊》を放つチャンスが生まれた。《サリアの副官》が彼の戦線を強化し、《反射魔道士》が着地したばかりの《呪文捕らえ》をカルヴァリョの手札へ送った。一瞬で繰り広げられた呪文の応酬で、ブラウン=デュインは合計パワー10の軍勢を築き上げてターンを終えたのだった。

 主導権を取り返すべく、カルヴァリョは《無私の霊魂》と《不屈の追跡者》を盤面に加える。これらが優れたクリーチャーであるのは間違いないが、この状況に対抗するには力が足りない。続くブラウン=デュインの強打をカルヴァリョはすべて受け、残りライフは4点に。さらに次のターンには《ドロモカの命令》で命綱であるブロッカーを除去され、試合は振り出しに戻った。

 第3ゲームはマジックの歴史に残る熱戦だった。試合時間は実に67分間にわたり、しかも信じられないことに、それは盤面が膠着してまったく動きがなくなり、ただ時間が過ぎていったわけではないのだ。長い試合時間の中で何度も攻守が入れ替わり、盤面が劇的に変わっていった。両プレイヤーとも、最後の最後まで強烈な一撃を浴びせあった。

 序盤に《ドロモカの命令》で盤面を握ったのはカルヴァリョ。しかし《反射魔道士》を駆使して最初にダメージを与えたのはブラウン=デュインの方だ。カルヴァリョのライフは18に。

 ここから両者のライフは1時間にわたり動かなかった。しかし盤面は一度たりとも落ち着かず、目まぐるしく変わり続けた。両者ともクリーチャーで盤面をかき回して主導権を握ろうとしたが、完全には掌握できなかった。猛烈な勢いでクリーチャーの交換が行われ、両者とも決め手を無事に着地させるべく優位を争った。

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ゲームが長引くにつれてみるみる複雑になっていく盤面に、集中する両プレイヤー

 ゲームの決め手を最初に得たのはブラウン=デュインだった。《実地研究者、タミヨウ》を着地させると、[+1]能力でカルヴァリョに攻撃を思い留まらせようとする。勢いをやや削がれたカルヴァリョの軍勢だったが、それでも彼は《精霊信者の賢人、ニッサ》から次々ともたらされるクリーチャーを活かして《実地研究者、タミヨウ》へプレッシャーを与え続けた。しかし《実地研究者、タミヨウ》が最終奥義に向かって進むのを防ぎ、ブラウン=デュインの軍勢に攻撃をためらわせたカルヴァリョだが、厄介なプレインズウォーカーを退場させるには至らなかった。先制攻撃を持つ《白蘭の騎士》が《サリアの副官》と《ドロモカの命令》によって強化され、彼の前に立ちはだかっていたのだ。

 この難問を打破する解答、すなわち《大天使アヴァシン》がカルヴァリョのもとへやって来た。これで地上の争いを後目に制空権を奪えるだろう。ブラウン=デュインの終了ステップに狂える天使が降臨すると、状況は大きく動いた。

 ブラウン=デュインは《ドロモカの命令》で《反射魔道士》を4/5に強化し、《大天使アヴァシン》と格闘させた。カルヴァリョはそれに対応してこちらも《ドロモカの命令》を放ち、《大天使アヴァシン》に+1/+1カウンターを置きつつ《不屈の追跡者》との格闘で《反射魔道士》を倒そうとした。これできっとカルヴァリョの《大天使アヴァシン》は生き残り、ブラウン=デュインの盤面を崩すことができる。

 だがここは「世界選手権決勝」だ――ブラウン=デュインは2枚目の《ドロモカの命令》を放ち、《反射魔道士》に+1/+1カウンターを追加しながら《サリアの副官》との格闘でカルヴァリョの《不屈の追跡者》を除去した。重なり合った《ドロモカの命令》が解決されていき最初の1枚に至ると、5/6の《反射魔道士》が5/5の《大天使アヴァシン》と格闘した。ブラウン=デュインは困難を覆し、生き残ったのだ。

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3枚の《ドロモカの命令》による攻防。これに敗れたマルシオ・カルヴァリョは、取り返す道を見出さねばならない。

 このゲームはまだまだ終わらない。カルヴァリョはアンタップを迎えると再び盤面を埋めていき、《精霊信者の賢人、ニッサ》を加えたブラウン=デュインに対して苛烈な攻撃を仕掛けると、やがてプレインズウォーカー2体を退場させることに成功した。さまざまな苦境を乗り越え、ついにゲームの主導権を取ったのだ。

 しかしゲームの天秤はまたもや大きく傾いた。ブラウン=デュインは、取っておきの1枚を引き込んだのだ。《悲劇的な傲慢》がカルヴァリョの築き上げた圧倒的盤面を一掃し、ブラウン=デュインの戦場に残った強大な《不屈の追跡者》が長いゲームに終止符を打ったのだった。

 歴史に残るゲームを制したブラウン=デュインは、いよいよ彼の名前そのものを歴史に残すときが来たことを悟った。1本目を落とした後、彼はゲームを取り返し2勝1敗でリードしている。世界王者のタイトルまであと1勝だ。

 だがその1勝は、決して簡単なものではない。カルヴァリョは序盤から《首絞め》を展開し、盤面を制圧した。彼はブラウン=デュインが2ターン目に繰り出した《ラムホルトの平和主義者》を突破するべく、《不屈の追跡者》と《森の代言者》を《首絞め》強化のために捨てる決断を下す。このプレイでカードの枚数的には下回ったカルヴァリョだが、ブラウン=デュインは3枚目の土地を置けず、主導権はカルヴァリョのものになった。彼も3枚目の土地を置けなかったものの、「変身」まで見据えられる《薄暮見の徴募兵》を追加できた。

 早くも盤面の優位を失ったブラウン=デュインは、周りに+1/+1カウンターを与えられない状況でも《サリアの副官》をプレイせざるを得なかった。苦しい動きではあるが、この困難を乗り越えたときに反撃への助けとなるだろう。しかしこのときはカルヴァリョに流れがあり、彼は3枚目の土地を引き込むと《爪の群れの咆哮者》でコストが下がった《不屈の追跡者》を繰り出し、土地を置いて「手掛かり」も加えて盤面差を広げた。

 だがカルヴァリョに知る由はなかった。その「3枚目の土地」こそ、ブラウン=デュインが動き出すための鍵であったことを。彼は《白蘭の騎士》をプレイして土地を持ってくると、続けて《大草原の川》も引き込んだ。

 ようやく体勢を立て直したブラウン=デュインだが、まだカルヴァリョとの差は大きい。カルヴァリョは《巨森の予見者、ニッサ》で5枚目の土地を確保すると、《精霊信者の賢人、ニッサ》への「変身」も間もないことを示唆する。彼はマナをすべて残して続くターンを終え、《大天使アヴァシン》の存在を匂わせながら再び《薄暮見の徴募兵》を「変身」させた。ブラウン=デュインも負けじと《巨森の予見者、ニッサ》を繰り出して土地を手に入れると、《ラムホルトの平和主義者》で盤面を組み立て直す。ゲームが長引けば、戦場の《サリアの副官》と手札の《集合した中隊》が彼に優位をもたらすはずだ。

 その事態を避けるべく、カルヴァリョはベストを尽くした。《巨森の予見者、ニッサ》を生け贄に捧げて《老いたる深海鬼》を繰り出すと、ブラウン=デュインのライフを残り7点まで減らした。手札には5枚のカードがあり、チャンスさえあれば《首絞め》もゲームを終わらせる脅威になる。

 そのチャンスを潰したのは、ブラウン=デュインのデッキ内最強カード――《集合した中隊》だった。彼がそれを2ターン続けてメイン・フェイズに唱えると、カルヴァリョの繰り出す致命打を防げるだけのクリーチャーが一気に並んだ。

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ブライアン・ブラウン=デュインは冷静さを保ち、《首絞め》が巻き付くのをかわした。

 眼前の脅威が去り、両者は先ほどのゲームを思わせる膠着状態に入った。再び、どちらが先にこの状況を打破できるカードを引き込むか、という勝負になったのだ。ブラウン=デュインは引き込んだ《集合した中隊》に望みを託したが、なんとここで6枚の中にクリーチャーの姿が見当たらなかった。一方のカルヴァリョは《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を着地させ、両者の明暗は分かれた。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》は勝利を直接掴むには足りなかったが、いまや10/10までサイズを上げた《サリアの副官》を止める役目を果たした。

 カルヴァリョの盤面には《不屈の追跡者》が3体いるため、ゲームがこのまま膠着すればカードの枚数で優位に立てる。ブラウン=デュインの軍勢で最も強力なものは、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が抑えている。行動を起こすべきはブラウン=デュインの方であり、彼はその第一歩としてトップ・デッキした《実地研究者、タミヨウ》を戦場へ送り込んだ。それは対処必須の脅威であり、のちに盤面を切り開くための1枚でもあった。

 そして、彼は再び困難を覆した。丁寧に計画を練り上げたブラウン=デュインは《実地研究者、タミヨウ》を駆使してターンを稼ぎ、ついに《悲劇的な傲慢》を放った。カルヴァリョの盤面には《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》と騎士・トークンが1体残るのみとなり、ブラウン=デュインは《実地研究者、タミヨウ》と10/10の《サリアの副官》を残した。さらに《ドロモカの命令》でブロッカーを除去すると、《サリアの副官》の攻撃で《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を退場させ、ブラウン=デュインはゲームの主導権を取り返したのだった。

 カルヴァリョは《伐採地の滝》で反撃しブラウン=デュインのライフを残り4点にすると、ブロッカーを2体展開した。《サリアの副官》の攻撃を1発は耐えられるが、それでも勝てるかはわからない――そしてその状況はさらに悪化した。アンタップを迎えたブラウン=デュインは大量のクリーチャーを展開し、《サリアの副官》の攻撃でカルヴァリョのライフを残り4点と追い詰めたのだ。

 カルヴァリョにできることは、大量の「手掛かり」で打開策を見出すのみ。《悲劇的な傲慢》でもう一度盤面を更地にすれば――

 1枚目――はずれ。

 2枚目――《悲劇的な傲慢》の姿はない。

 3枚目――ない。

 これにて決着。カルヴァリョは右手を差し出し、世界選手権2016王者ブライアン・ブラウン=デュインを称えたのだった。

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ブライアン・ブラウン=デュイン、世界選手権2016優勝おめでとう!

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