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【トピック】 チームシリーズ決勝へ至る道

【トピック】 チームシリーズ決勝へ至る道

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Meghan Wolff / Tr. Tetsuya Yabuki

2017年10月8日

原文はこちら

 チームメイトとともにデッキを作り、プレイテストを積み重ね、戦いに挑み、仲間を応援し......そうして1年間プロツアーでの戦いを乗り越えてきた日々が、本日初開催されるプロツアー・チームシリーズ決勝に集約する。2016-2017年シーズンが閉幕したとき、チームシリーズのランキング上位に残ったのはチーム「Musashi」と「Genesis」だった。3回のプロツアーで、「Musashi」は141点、「Genesis」は131点ものプロ・ポイントを稼ぎ出したのだ。(編訳注:原文では「four Pro Tours」となっていますが、今回のチームシリーズはプロツアー『霊気紛争』から開始されました。)

 数多のプロ・プレイヤー、殿堂顕彰者、期待の新鋭が続々と参戦し30チームで争われた第1回プロツアー・チームシリーズ。その中でチーム「Musashi」と「Genesis」は驚くべき活躍を見せた。「Musashi」は今シーズンの大半で首位を維持し、プロツアー『アモンケット』でもトップ8入賞者を輩出することで1位通過をほぼ確実のものとした。プロツアー『アモンケット』では「Genesis」のメンバーからもトップ8入賞者が現れ、2位通過の可能性をぐっと高めた。そして両チームともシーズン最後のプロツアーで順位を守り、世界選手権の舞台で雌雄を決するときを迎えたのだ。

 「Musashi」と「Genesis」のメンバーは、ともに世界最高の舞台で戦うことに慣れた有名プレイヤー揃いだ。「Musashi」が擁するのは山本 賢太郎、渡辺 雄也、行弘 賢、市川 ユウキ、覚前 輝也、八十岡 翔太の6名。「Genesis」にはブラッド・ネルソン/Brad Nelson、ルーカス・ブロホン/Lukas Blohon、セス・マンフィールド/Seth Manfield、トーマス・ヘンドリクス/Thomas Hendriks、マーティン・ダン/Martin Dang、マーティン・ミュラー/Martin Mullerが名を連ねる。

 チームシリーズ決勝のフォーマットは、3人ひと組のチームふたつで行われる『イクサラン』チーム・シールドだ。本戦前の木曜日に「Musashi」と「Genesis」の面々には『イクサラン』チーム・シールド用のカード・プールが配布され、彼らはそれぞれ6つのデッキを構築した。そして今日、それを武器に彼らは戦い、初代チームシリーズ・チャンピオンを決めるのだ。なお構築の際は6人全員で取り組んでもよいが、2組のカード・プールはそれぞれ分けて組み上げなければならない。

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(後列左から)覚前 輝也、渡辺 雄也、山本 賢太郎
(前列左から)市川 ユウキ、行弘 賢、八十岡 翔太

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(後列左から)セス・マンフィールド、ブラッド・ネルソン、マーティン・ダン
(前列左から)トーマス・ヘンドリクス、ルーカス・ブロホン、マーティン・ミュラー

 「戦略は?」木曜日の朝、チーム・シールド用のカード・プールを配布する部屋に「Genesis」のメンバーが入るなり、ネルソンが口を開いた。

 「Musashi」のメンバーは笑い声をあげる。「戦略?」 渡辺が振り返り、「Genesis」を見据えて言った。「勝つ!」彼が拳を上げると、チームメイトも「勝つ!」と口を揃える。

 両チームとも、これから戦う相手の前で『イクサラン』リミテッドの戦略を語ろうとはしない。しかし「Genesis」は、シールドのカード・プールを待っている間の雑談でうっかりこのチーム独自の方針を漏らしてしまった。それは、決してネルソンとマーティン・ダンにはパックを開封させないこと。「ふたりは運がない」というのが、チーム全員の共通意見なのだ。代わりにその役目は、プロツアー『アモンケット』で4位に入賞し「Genesis」をチームシリーズ2位に押し上げてくれたマーティン・ミュラーが担うことになった。

 だが幸運にも、今回のシールドではパックを開封することはない。4組分のチーム・シールド・プールはすでに開封されてスタンプが押されており、記録もされた状態で各チームを待っているのだ。彼らはただ、それを選ぶだけだ。それでも「Genesis」は不運のリスクを避け、カード・プール選びをミュラーに任せた。「Musashi」側は渡辺がカード・プールを選んだ。

 シールド・プールは手に入った。両チームはそれぞれの部屋へ移動し、デッキ構築を始める。

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ふたつのチーム・シールド用カード・プールを分析し、どのようなデッキが組めるかを吟味する「Genesis」。

 各チームは制限時間の2時間をフルに使ってデッキを組み、6つのデッキを登録した。グランプリなどで行われる通常のチーム戦におけるデッキ構築時間の倍だが、全員の考えをまとめるだけで増えた分は費やしたと「Genesis」は認める。

 「Genesis」はネルソン、ミュラー、ダンの3人とヘンドリクス、マンフィールド、ブロホンの3人でグループを分け、それぞれのカード・プールをまずは色ごとに分けた。その作業を行いながら、強力なレアやマーフォークや海賊といった部族シナジーを活かすことで最高の力を発揮するカードを別にしておく。

 「見てくれ、アーティファクトだらけだ!」 マンフィールドはテーブルの反対側のメンバーに《魔学コンパス/Thaumatic Compass(XLN)》や《原初の呪物/Primal Amulet(XLN)》、《陰鬱な帆船/Shadowed Caravel(XLN)》といったレアを見せながら言った。カード・プールの第一印象は決して良いものでなく、さらにその後1時間をかけてデッキの方針をまとめていくにつれて、厳しい戦いの予感は深まっていった。

「戦えるデッキを3つなんとかしてかき集めなきゃ」とマンフィールドが言った。「もう負けそうだけど、やれることに全力を尽くすよ。強いカード・プールがひとつだけあればいいんだから」

 その「ひとつ」とは、彼の対面にいる3人が扱うカード・プールのことだ。マンフィールドの反対側では、ミュラーの幸運が発揮されていた。彼のチームは、ネルソンがこの環境で最強だと考える2枚、《覚醒の太陽の化身/Wakening Sun's Avatar(XLN)》と《人質取り/Hostage Taker(XLN)》の姿があった。

 「Genesis」の両グループは、『イクサラン』の部族や相性の良い色の組み合わせに注目してデッキの大枠を作り始めた。それから、マナ・カーブにも目を光らせる。強力なカードを手に入れたからこそ、序盤の展開で不利に立たされてはならない。

 強力な《覚醒の太陽の化身/Wakening Sun's Avatar(XLN)》をマナ域の頂点に据えた「白緑」デッキでは、3マナ域が多すぎた。

 「ちょっと、恐竜王」とネルソンがブロホンに声をかけた。「こっち来てデッキを見てくれ。勝ち方を教えてほしい」

 こうしてそれぞれのグループがデッキの原型を組み上げると、彼らはそれらを交換し、また新しい視点からデッキ構築を進めた。《嵐を変容する者/Storm Sculptor(XLN)》や《太陽鳥の祈祷/Sunbird's Invocation(XLN)》について議論を交わし、それぞれのデッキの核となる戦略は残したまま洗練させていく。

 そしてデッキ構築時間が終了すると、ネルソンとミュラーとダンのグループはアグレッシブな「白赤恐竜」と、回避能力持ちを多く採用し《人質取り/Hostage Taker(XLN)》や《狡猾な漂流者、ジェイス/Jace, Cunning Castaway(XLN)》も搭載した「青黒海賊」、そして《覚醒の太陽の化身/Wakening Sun's Avatar(XLN)》を擁する「白緑恐竜」デッキを完成させた。

 ヘンドリクスとマンフィールドとブロホンのグループは、恐竜を多く採用したアグレッシブな「白赤」デッキと「青緑マーフォーク」、そして軽量クリーチャーや攻撃的な飛行クリーチャーと《依頼殺人/Contract Killing(XLN)》や《溢れ出る洞察/Overflowing Insight(XLN)》のようなコントロール寄りのカードを組み合わせた「青黒海賊」デッキを完成させた。

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カード・プールを色ごとに分け、その後部族ごとに分けて構築するデッキを決める「Musashi」。

 もうひとつの部屋では、山本、市川、行弘の3人が笑いながら平凡なレアを次々と目の前のテーブルに放っていた。彼らはこれまでにない大きなものが懸かったチーム・イベントと直面しているにも関わらず、チームメイトと過ごす時間を心から楽しんでいるようだ。3人とも歓声を上げながら、手に入れたカードの良し悪しを共有していく。いくつか悪くないレアもあり、それらはきっとさらなる力を引き出してもらえるだろう。初めてのチームシリーズ決勝。どのレアにもより良い使い道があるはずだ。

 そんな3人に混ざって、覚前と八十岡と渡辺はそれぞれの役割を分担しカード・プールを仕分けていった。もうひとつのグループと同様に、レアや強力なアンコモンはテーブルの中央に並べる。

 デッキ構築に入る前に、「Musashi」の両グループは色ごとに分けられたすべてのカードを並べてそれぞれのカード・プールにおける戦略とシナジーを話し合った。戦略の鍵になり得るカードや単体で強いカードについて、意見をすり合わせる。

 それから山本、市川、行弘の3人は、カードをまとめてデッキの原型を作り始めた。除去を分けて、それぞれの色について使用に足るカードでマナ・カーブを埋めていく。テーブルの反対側では、覚前と八十岡と渡辺がそれぞれ色の分担を決め、そこからデッキを組み上げていった。

 「Genesis」と同様に、「Musashi」も『イクサラン』で相性の良い色の組み合わせに注目して構築を進め、しかし「Genesis」ほど部族のシナジーには執着しなかった。代わりに彼らが重視したのは、各色のベスト・カードを使用することだ。ときには部族シナジーを崩してでも、各デッキのマナ・カーブを整え強力なアンコモンが行き渡るようにした。

 最初の構築が終わると、彼らは場所を入れ替えてチームメイトが作ったデッキを確認した。「Genesis」と異なり、「Musashi」の面々は再びすべてのカードを色ごと、シナジーごとに分け直して最初から構築をやり直した。結果的に同じ色の組み合わせになっても、シナジーや相互作用をより強固にしたり、デッキの核となる戦略を可能な限り多くのプレイヤーで練り込んでいく余地はある。

 だがすべてのプロセスが終わっても、覚前は彼のグループのカード・プールの柔軟性と強さに一抹の不安を拭い切れなかったようだ。

「この中で一番強いデッキは僕が使うものです」と彼は説明する。「だからまず僕が勝ち、残るふたりのどちらかがもう1勝取るのを願うしかないですね。僕は絶対に勝たないといけない」

 とはいえ、覚前の言う「残るふたり」はどちらも殿堂顕彰者だ。たとえデッキ自体が強力でなくとも、その力を最大限に引き出せる技術が彼らにはある。

 八十岡、覚前、渡辺の3人は、緑以外の「4色」デッキと《翡翠の守護者/Jade Guardian(XLN)》と《風と共に/One With the Wind(XLN)》を2枚ずつ採用した「青緑」、そしてアグレッシブな「白赤恐竜」デッキを完成させた。

 2時間後、すべての可能性を吟味しすべてのデッキを登録した両チームは、それぞれのデッキを提出した。それらは3日後、彼らの運命を決める戦いで使う武器だ。日曜日の開幕を飾るチームシリーズ決勝に向けて、彼らは待つ。練習し、祈りを捧げ、決意を新たにし、自らを奮い立たせ、彼らはそのときを待つ。

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