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【観戦記事】 準々決勝ステージ1:Jan Ksandr(チェコ) vs. Paulo Vitor Damo da Rosa(ブラジル)

【観戦記事】 準々決勝ステージ1:Jan Ksandr(チェコ) vs. Paulo Vitor Damo da Rosa(ブラジル)

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Tobi Henke / Tr. Tetsuya Yabuki

2017年2月5日

原文はこちら

ヤーン・クサンドル/Jan Ksandr(黒緑昂揚) vs. パウロ・ヴィタ―・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosa(世界ランキング7位/マルドゥ機体)

 ヤーン・クサンドルは、チェコ共和国が生んだ若き才能たちの中でも特に新しいプレイヤーだ。チェコのプレイヤーからは、毎年のようにこのゲームの頂点に立つ者が現れている。2014-2015年シーズンではアンドレイ・ストラスキー/Ondřej Stráskýが2度のプロツアー・トップ8入賞を果たし、昨シーズンではペトル・ソフーレク/Petr Sochůrekがストラスキーに続き「プラチナ」レベルを達成しているのだ。そして今シーズンは、ヤーン・クサンドルという新鋭が現れた。予選ラウンドをもう1試合残した時点で早くも自身初のトップ8入賞を決めた彼は、ストラスキーとソフーレクに祝福の言葉をもらったのだった。

 プラハ出身の24歳は昨シーズン、グランプリ・シドニー2016で決勝まで駒を進めたものの、「シルバー」レベル達成に必要なプロ・ポイント18点にわずかに届かなかった。しかし今シーズンはグランプリ・ロンドン2016で13勝2敗の成績を収め、今大会への参加権利とプロ・ポイント4点を獲得するなど、すでに10点のポイントを集めている。そして今大会でトップ8に入賞したことで15点が上乗せされ、シーズン半ばのこの時点で「ゴールド」レベルや「プラチナ」レベルまで視野に入っている。

 無論ここでこれ以上のポイントを稼ぐには、この準々決勝ステージ1を突破しなければならない。そしてその相手は強敵だ。年齢は5つしか違わないものの、パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサはベテラン中のベテランなのだ。これまでのプロツアー・トップ8入賞は、プロツアー・サンファン2010での優勝を含め実に10回。歴代で第2位の記録保持者なのだ。

 「プラチナ」レベルにも長く在籍し、2012年には殿堂顕彰を受けた。今シーズンは最も注目を集めるチームのひとつである「ChannelFireball Ice」の一員となり、世界ランキングにも名を連ねている。彼の持つ「7位」は今大会終了後により良い数字になるだろう。プロ・ポイントも、今大会を迎えるにあたってすでに29点有しており、「プラチナ」レベルに必要な52点も比較的容易に稼ぎ出すだろう。

 クサンドルは第16回戦を引き分けで終え、ダモ・ダ・ロサは12勝4敗のプレイヤーで唯一トップ8に滑り込んだ。予選ラウンド終了時、クサンドルの順位は5位、ダモ・ダ・ロサは8位だった。決勝ラウンドの形式が変わったため、両者は準々決勝ステージ1にて対峙し、勝者のみが準決勝進出を懸けたステージ2の舞台に上がることができる。

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準々決勝ステージ1、殿堂顕彰者パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサとチェコの新進気鋭のプレイヤー、ヤーン・クサンドルが激突する。

 決勝ラウンドの舞台に立っても落ち着いた様子のダモ・ダ・ロサは、今大会最も人気を集め最も成功したデッキを手にしている。新戦力として《キランの真意号》や《産業の塔》などを手に入れた「マルドゥ機体」は、今こそ好機であると著名なチームがいくつも注目し、トップ8に6人を送り込んだ。

 対するクサンドルの選択は「黒緑昂揚」。「機体」系のデッキと渡り合える数少ないデッキと目されているものだ。このマッチアップについてはさまざまな意見があるが、いずれにしても接戦が繰り広げられることだろう。

ゲーム展開

 第1ゲームは互いにクリーチャーを除去で対処する展開で幕を開けた。《キランの真意号》には《致命的な一押し》が差し向けられ、《残忍な剥ぎ取り》は《ショック》に撃たれ、《模範操縦士、デパラ》は《闇の掌握》に掴まれた。

 やがてダモ・ダ・ロサの盤面には2枚目の《キランの真意号》と《屑鉄場のたかり屋》が残り、一方のクサンドルの戦線は2/2の《歩行バリスタ》が支えた。クサンドルは《ピーマの改革派、リシュカー》を繰り出し2体の《歩行バリスタ》を3/3に育てようと試みたが、ダモ・ダ・ロサはそれに対応して《無許可の分解》を放ち、自身も《屑鉄場のたかり屋》を失うことになったが《歩行バリスタ》1体を墓地へ送った。

 クリーチャーを失い手札も枯れたダモ・ダ・ロサは何もプレイすることなくターンを渡し、致命打を繰り出したクサンドルの軍勢と対峙した。墓地から《屑鉄場のたかり屋》を戻し《キランの真意号》へ「搭乗」させたが、そこへ2枚目の《闇の掌握》が刺さり、第1ゲームはクサンドルのものになった。

 第2ゲームは1ターン目《模範的な造り手》、2ターン目《経験豊富な操縦者》、3ターン目《ピア・ナラー》という超高速の立ち上がり。一方のクサンドルはマリガンを喫しており、2枚目の土地も置けずに3ターン目には投了することになった。

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この週末は超高速の「マルドゥ『機体』」を選択したダモ・ダ・ロサ。

 クサンドルは第3ゲームでもマリガンを喫し、さらにもう一度マリガン。最初の3ターンの間土地しかプレイできなかった。しかし幸いと言うべきか、ダモ・ダ・ロサの側も素早いスタートを切ることはなかった。

 1ターン目に《スレイベンの検査官》を繰り出したダモ・ダ・ロサは、その後クサンドルの《精神壊しの悪魔》や《ゲトの裏切り者、カリタス》を除去で対処しつつ《耕作者の荷馬車》2枚に《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》と大型の脅威を連打していった。

 クサンドルはマリガンが響き、間もなくしてガス欠に陥ってしまう。そうなればもう、ただ圧倒されるだけだった。

 第4ゲームでは今度はダモ・ダ・ロサがマリガンを喫する番だった。6枚となった手札にはマナ源が《霊気拠点》1枚しかなく、その上《スレイベンの検査官》や2枚の《経験豊富な操縦者》など色の要求が厳しいものだった。残る2枚は《屑鉄場のたかり屋》と《耕作者の荷馬車》だ。ダモ・ダ・ロサは大いに頭を悩ませ、そしてこの手札をキープする決断を下した。占術で見たカードもライブラリーの一番下へ送る。

 両者はカメラが戻ってくるのを待った――死の臭いを嗅ぎつけたハゲワシのように旋回して向かってくるのを。と、ここでクサンドルがダモ・ダ・ロサに話しかけた。

「聞きたいことがあったんです。マジックを始めて何年ですか?」

「始めたのが8歳のときだから......」とダモ・ダ・ロサは答え、動きを止めて素早く計算をした。いや、計算をした結果に動きを止めたのかもしれない。「......21年だね」

「ではほとんど最初の頃から?」

「うん、確か発売して2、3年くらいだったと思う」

 目を丸くするクサンドルに「君はどれくらいプレイしてるの?」とダモ・ダ・ロサが聞き返す。

「3、4年です。でも大会に出始めたのはここ最近です」

「歳はいくつ?」と、ダモ・ダ・ロサは続けた。「18歳くらい?」

 クサンドルは笑みをこぼした。「24歳です」

「僕が言った歳よりずっと上だから笑ったのかずっと下だから笑ったのかわからなかったよ。『15歳です』って言われても信じた」

 ゲーム再開の合図がかかると、両者は戦いに戻っていった。ダモ・ダ・ロサは2枚目の土地を置けず、対するクサンドルは《残忍な剥ぎ取り》から《巻きつき蛇》、《精神壊しの悪魔》と繰り出していく。1ターン遅れたものの、ダモ・ダ・ロサはなんとか《経験豊富な操縦者》をプレイし、続けて《耕作者の荷馬車》を展開した。6/6となった《耕作者の荷馬車》で4/4の《残忍な剥ぎ取り》をブロックしたダモ・ダ・ロサだが、《闇の掌握》で《耕作者の荷馬車》が2/2に弱体化させられ、その後間もなくしてこのゲームは決着した。

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プロツアーでは新顔のクサンドル。ここ数年間注目されている若きチェコのプレイヤーたちから、スポット・ライトが当たる3人目のプレイヤーが誕生した。

 準々決勝ステージ2へ進出するプレイヤーを決める戦いは、最終第5ゲームを迎えた。ここでダモ・ダ・ロサは、《スレイベンの検査官》、《キランの真意号》、《ピア・ナラー》という素早い動きを再び見せる。

 3ターン目、クサンドルは《残忍な剥ぎ取り》がある盤面へ《巻きつき蛇》を加え、《沼》を立たせてターンを渡した。ダモ・ダ・ロサは少考したが、クリーチャーを《キランの真意号》へ「搭乗」させる。果たしてクサンドルの手札に《致命的な一押し》はなく、これで残りライフは10点。ダモ・ダ・ロサは戦闘後、《耕作者の荷馬車》で彼の艦隊をさらに強化した。

 クサンドルは《精神壊しの悪魔》を呼び出し、《残忍な剥ぎ取り》で攻撃。しかしターンの終了時にダモ・ダ・ロサは《致命的な一押し》を《巻きつき蛇》へ差し向け、クサンドルを守るクリーチャーは《精神壊しの悪魔》だけになった。

 嫌な予感がした。そのクサンドルの予感は的中し、ダモ・ダ・ロサの手札にはクサンドルのライフを削りきるのに必要な《無許可の分解》と《経験豊富な操縦者》の姿があった。彼はカードを片付けると、右手を差し出したのだった。

ヤーン・クサンドル 2-3 パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ

 試合後、ダモ・ダ・ロサは両者のデッキ相性について「ほぼイーブンだ」と語った。「サイド前はこちらに分があるけれど、サイド後は不利になると思う。向こうの《致命的な一押し》の枚数が増える一方、こちらはあまり入れるものがない」

「全体的に先手側がかなり有利だね」とダモ・ダ・ロサは続けた。それはこの試合の最終ゲームでも示されている。「とはいえ、ちょっとマリガンが多くて何とも言えないけどね」というのも事実だ。

 クサンドルはダモ・ダ・ロサの健闘を祈った。続く準々決勝ステージ2ではドナルド・スミス/Donald Smithが待ち構えており、「マルドゥ機体」同系戦の幕が上がる。

パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサがヤーン・クサンドルを3勝2敗で下し、準々決勝ステージ2へ進出!

Jan Ksandr - 「黒緑昂揚」
プロツアー『霊気紛争』 スイスラウンド5位 / スタンダード (2017年2月3~5日)
7 《沼》
6 《森》
4 《花盛りの湿地》
4 《風切る泥沼》
2 《進化する未開地》

-土地(23)-

4 《巻きつき蛇》
3 《屑鉄場のたかり屋》
2 《残忍な剥ぎ取り》
3 《ピーマの改革派、リシュカー》
3 《不屈の追跡者》
4 《精神壊しの悪魔》
4 《新緑の機械巨人》
4 《歩行バリスタ》

-クリーチャー(27)-
3 《ウルヴェンワルド横断》
1 《致命的な一押し》
4 《闇の掌握》
2 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》

-呪文(10)-
1 《不屈の追跡者》
2 《ゲトの裏切り者、カリタス》
1 《害悪の機械巨人》
3 《致命的な一押し》
3 《精神背信》
1 《人工物への興味》
1 《造命師の動物記》
1 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》
1 《生命の力、ニッサ》
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》

-サイドボード(15)-
Paulo Vitor Damo da Rosa - 「マルドゥ機体」
プロツアー『霊気紛争』 スイスラウンド8位 / スタンダード (2017年2月3~5日)
4 《平地》
2 《山》
4 《感動的な眺望所》
1 《鋭い突端》
4 《秘密の中庭》
1 《乱脈な気孔》
2 《尖塔断の運河》
4 《産業の塔》
1 《霊気拠点》

-土地(23)-

4 《スレイベンの検査官》
4 《模範的な造り手》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《経験豊富な操縦者》
2 《模範操縦士、デパラ》
2 《ピア・ナラー》

-クリーチャー(20)-
3 《ショック》
4 《無許可の分解》
4 《キランの真意号》
2 《耕作者の荷馬車》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文(17)-
2 《異端聖戦士、サリア》
2 《致命的な一押し》
2 《儀礼的拒否》
3 《金属の叱責》
2 《グレムリン解放》
1 《耕作者の荷馬車》
1 《反逆の先導者、チャンドラ》
2 《尖塔断の運河》

-サイドボード(15)-

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