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【戦略記事】 注目のデッキ:「ゾンビ」

【戦略記事】 注目のデッキ:「ゾンビ」

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Corbin Hosler / Tr. Tetsuya Yabuki

2017年5月13日

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 やつらは地表のすぐ下に潜んでいた。満足な活躍ができないまま、(文字通り)息を殺して待っていた。そして今、『アモンケット』でピラミッドは開かれた。墓は破られた。

 ゾンビがスタンダードに襲い来る。

 プロツアー『アモンケット』導入後の新たなスタンダードでは、ゾンビ部族が(墓からの)躍進を支える大きな後押しを受けた――その最たるものは《戦慄の放浪者》だろう。今大会のどこにでも現れたこの1マナ・クリーチャーこそ、「ゾンビ」デッキがメタゲームの最前線へ戻ることになった最大の要因なのだ。そして『アモンケット』の影響は、他にも見受けられる。

 「ゾンビ」デッキの核となる部分は、『異界月』の頃からあった。しかしそれは、ここ半年にわたりアーティファクト中心の戦略に押される形でメタゲーム外へ追いやられていた。『アモンケット』で《戦慄の放浪者》や《リリアナの支配》が登場し、ついに息を吹き返したというわけだ。

 デッキの形としては「黒単」型の方がより大きな人気を集め、「白黒」型の方はチーム「Lingering Souls」の面々が2日目も大きな活躍を見せ、クリス・フェネル/Chris Fennellをトップ8入賞へ導いた。だが、核となる部分に差異はない。

 鍵となるのは8枚の1マナ域だ。《戦慄の放浪者》はもちろんだが、《墓所破り》の存在も大きい。《墓所破り》は1ターン目からテンポよく展開を進める助けとなり、またそれ以上にゲーム後半のカード・アドバンテージを生み出す手段として重要だ。ゾンビをタップして1点のライフを支払えばカードを引くことができ、また不必要なカードをゾンビに変えることでプレッシャーをかけ続けられるのだ。

 よく勘違いされるが、「ゾンビ」デッキは単なるアグロ・デッキではない。《墓所破り》はこれ1枚で、信頼の置けるゲーム後半のプランをもたらしてくれるのだ。ゲームが「トップデッキ勝負」になった場合、カードを引く能力で1枚分有利に立つことができ、戦場に残るのが《墓所破り》のみでも不要な土地から不死の軍勢を生み出すことができる。同様に《戦慄の放浪者》も戦場へ戻り続けることができ、対戦相手へのプレッシャーは途切れない。

Alain Bardini - 「黒単ゾンビ」
プロツアー『アモンケット』 / スタンダード (2017年5月12~14日)
23 《沼》
1 《ウェストヴェイルの修道院》

-土地(24)-

4 《墓所破り》
4 《戦慄の放浪者》
4 《無情な死者》
3 《金属ミミック》
4 《戦墓の巨人》
3 《呪われた者の王》

-クリーチャー(22)-
3 《致命的な一押し》
3 《闇の掌握》
4 《リリアナの支配》
4 《闇の救済》

-呪文(14)-
4 《屑鉄場のたかり屋》
3 《豪華の王、ゴンティ》
3 《精神背信》
1 《没収》
2 《不帰+回帰》
2 《最後の望み、リリアナ》

-サイドボード(15)-

 2マナ域の採用カードには議論の余地があり、使用者たちはそれぞれの活路を見出している。多くのプレイヤーが便利な《無情な死者》や名誉ゾンビの《金属ミミック》を採用しているが、(フェネルのデッキのように)それを採用せずに大きな成功を収めたものもある。サイドボードには大半のリストに《屑鉄場のたかり屋》が採用されており、この墓地から戻ってくる強力な脅威は、全体除去を持つコントロール・デッキや「霊気池の驚異」デッキへの対策となっている。

 続けて「ロード」の採用。《呪われた者の王》は強力な全体強化カードであると同時に、すべてのゾンビに威迫を持たせて膠着した盤面を突破する助けにもなる。また、極めて強大な力を持ちながらこれまで長きにわたり忘れ去られていた《戦墓の巨人》も採用されている。これは4/4くらいにはすぐに成長し、戦場に出た後もゾンビの軍勢を増やし続けてくれる。

 マナ・カーブの最後には、採用枚数は2~4枚までさまざまだが新カードの《リリアナの支配》が据えられている。これは全体除去を受けた直後に盤面を回復する手段となるだけでなく、全体強化によって最後のひと押しにも役立ち、また同系戦においても2/2のゾンビ相手に3/3のゾンビで戦うことができ、非常に有効だ。

 除去呪文についても、最高のものが揃っている。《致命的な一押し》や《闇の掌握》はスタンダードにおける主力のほとんどに対処でき、さらに《闇の救済》はあらゆる脅威を排除できる。

 《闇の救済》は「ゾンビ」デッキならではの切り札であり、あらゆる用途がある。このカードは対戦相手のクリーチャーを除去しつつゾンビ・トークンを生み出す3マナの呪文として使えるだけでなく、ゲームが進行していくにつれてその威力を増していく。今大会においても、《闇の救済》が2体も3体もゾンビを生み出す光景は決して珍しいものではなかった。

 さて、「黒単」型と「白黒」型の大きな違いとは何か。「黒単」型には《ウェストヴェイルの修道院》や《呪われた者の揺り籠》が採用されており、土地にも有用性を与えている。「白黒」型はその多彩さを犠牲にせざるを得ないが、その代わり《むら気な召使い》(「ライフ・ドレイン・マシンガン」の強さは実証済みだ)や同系戦の鍵となる《束縛のミイラ》を採用できるようになっている。

Christopher Fennell - 「白黒ゾンビ」
プロツアー『アモンケット』 スイスラウンド1位 / スタンダード (2017年5月12~14日)
10 《沼》
6 《平地》
4 《秘密の中庭》
4 《乱脈な気孔》

-土地(24)-

4 《墓所破り》
4 《戦慄の放浪者》
4 《むら気な召使い》
2 《束縛のミイラ》
4 《戦墓の巨人》
4 《呪われた者の王》

-クリーチャー(22)-
4 《致命的な一押し》
2 《苦渋の破棄》
4 《リリアナの支配》
4 《闇の救済》

-呪文(14)-
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《精神背信》
2 《石の宣告》
1 《苦渋の破棄》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-サイドボード(15)-

 また「白黒」型は、「霊気池の驚異」デッキが幅を利かせる今大会のメタゲームにおいて決定的なカードを採用できている――《石の宣告》や《苦渋の破棄》は、「霊気池の驚異」デッキの切り札たる《絶え間ない飢餓、ウラモグ》に対処できるのだ。最も強力なカードをプレイされてもなお倒れない「白黒ゾンビ」は、「霊気池の驚異」デッキが一大勢力を築いた今大会の会場において大活躍を見せることができた。加えてサイドボードに《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を採用することで、《炎呼び、チャンドラ》を投入してコントロール寄りにした「霊気池」に対しても十分に渡り合うことができた。さらに《精神背信》や《屑鉄場のたかり屋》も駆使することで、「ゾンビ」デッキは「霊気池」デッキやコントロール・デッキに対して優位を得ることができたのだ。

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ゾンビ軍団とともに戦場をふらつくリー・シー・ティエン/Lee Shi Tian

 結論として、「ゾンビ」デッキは『アモンケット』導入後に爆発的に勢力を伸ばすことに成功した。序盤の攻撃力に終盤の粘り強さ、そしてそのメタゲームへの適応力は、今大会のスタンダード部門を席巻した。ゾンビの恐怖がすぐに終わることはないだろう。

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