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【観戦記事】 準々決勝:Chris Fennell(アメリカ) vs. 渡辺 雄也(日本)

【観戦記事】 準々決勝:Chris Fennell(アメリカ) vs. 渡辺 雄也(日本)

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Corbin Hosler / Tr. Tetsuya Yabuki

2017年5月14日

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クリス・フェネル/Chris Fennell(白黒ゾンビ) vs.渡辺 雄也(世界ランキング22位/ティムール「霊気池」)

 まさか自分がこの舞台に立てるとは、とクリス・フェネルはそう思った。プロツアー『神々の軍勢』でプロツアー・トップ8入賞の経験自体はあるものの、今大会に向けては練習の時間がほとんど取れなかった。彼の所属するチーム「Lingering Souls」には世界的に有名なスーパー・チームのような練習環境はなかった。誰に聞いても、「フェネルがトップ8に入賞する」という声は返ってこなかった。

 だがフェネルの対戦相手は、そんな彼とは違った。現在世界ランキング22位の渡辺 雄也は「最強のマジック・プレイヤーは誰か」という話題になれば常に名前が挙がるような選手で、昨年殿堂入りも果たした。プロツアー・トップ8入賞はこれで4度目。彼にとってこの舞台は、よく知った場所だ。

お互いのデッキ

 フェネルは、今大会プロツアー『アモンケット』にて大量発生した「ゾンビ」デッキの完成形とされる「白黒ゾンビ」を選択した。チームメイトの多くが選択した「黒単」型から離れることで、「白黒」ならではのカード選択が生まれている――とりわけ《苦渋の破棄》と《石の宣告》は渡辺の「霊気池の驚異」デッキを相手にする上で鍵となるだろう。

 「霊気池の驚異」デッキは、『カラデシュ』導入以来スタンダードのメタゲームに存在し続けてきた。ここ数か月は雌伏のときを過ごしていたが、ここに来てメタゲームが追い風となり、今大会のトップ8入賞デッキの多くを占めることになった。渡辺の「ティムール『霊気池』」には《天才の片鱗》や《コジレックの帰還》、《検閲》などが採用されており、そしてもちろん、《霊気池の驚異》とエネルギー絡みのカード、《絶え間ない飢餓、ウラモグ》の強力な組み合わせを擁している。

 プロツアー『アモンケット』準々決勝が、今始まる。

ゲーム展開

 爆発的なスタートを切ることが可能なデッキを手にしながら1ターン目、2ターン目ともに動きがないというのは、フェネルにとって理想的とは言えなかった――マリガンなしの初手ならなおさらだ。彼は3ターン目に《呪われた者の王》でファースト・アクションを取ったが、それは《検閲》を受けることになった。渡辺は序盤のプレッシャーをかけられることなく、4ターン目に悠々と《霊気池の驚異》を設置してターンを渡す。

 《霊気池の驚異》を起動できるだけのエネルギーはなかったが、まだまだ時間はたっぷりある。フェネルはゾンビの群れを展開し始め、渡辺は《ならず者の精製屋》でエネルギーを貯めていく。やがてフェネルの盤面に《墓所破り》を含めてゾンビが3体並ぶと、彼はドローを増してアドバンテージ差をつけにかかった。

 しかしそのとき、渡辺の操る「霊気池」デッキは最高の動きを見せた。フェネルのターン終了時に《奔流の機械巨人》が飛び出すと《蓄霊稲妻》を「フラッシュバック」し、《墓所破り》を除去。同時にエネルギー・カウンターが6個へ至り、《霊気池の驚異》が起動される。《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を引き当てることはできなかったが、《天才の片鱗》も決してハズレではない。渡辺はゲームを手堅くコントロールし、自身のターンを迎える。

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戦い方を変え、第1ゲームを固くコントロールし出した渡辺。

 渡辺はここから緻密にプレイを進め、「ゾンビ」デッキを圧倒した。《奔流の機械巨人》による攻撃を始め、2度目の《霊気池の驚異》を起動すると《つむじ風の巨匠》を盤面へ追加する。フェネルが繰り出した6/6の《戦墓の巨人》も、エネルギーを充填した《蓄霊稲妻》で対処。3度目の《霊気池の驚異》は《織木師の組細工》だった――《絶え間ない飢餓、ウラモグ》の姿はない――が、《奔流の機械巨人》による攻撃でフェネルは自身のライフを心配せざるを得なくなった。

 だがそれも、渡辺が10枚目の土地を置いて《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を唱えるまでのことだった。フェネルはカードを片付け、第1ゲームは渡辺の側に軍配が上がった。

 第2ゲームは、序盤の数ターンに多くのプレイが交わされた。フェネルは《墓所破り》からゾンビ・トークンを生み出して素早く盤面を組み立てると、《蓄霊稲妻》で《墓所破り》を失いながらも続けて《呪われた者の王》を繰り出し、さらなる《蓄霊稲妻》で後続を対処する渡辺のライフを少しずつ削っていった。

 《天才の片鱗》を引き込んだ渡辺は、長い目でゲーム・プランを見据えてその準備を整える。《闇の救済》で数を増したゾンビ・トークンの群れによる攻撃で残りライフを7点まで減じた渡辺だが、《天才の片鱗》から続けて《霊気池の驚異》の設置に成功し、エネルギーも十分にあった。ここで幸運も彼に味方をする――《霊気池の驚異》で見た6枚の中には《絶え間ない飢餓、ウラモグ》の姿が。

 しかしフェネルは、《苦渋の破棄》を構えていた。《絶え間ない飢餓、ウラモグ》は渡辺に向けられる脅威を減らすことには成功したが、それが《苦渋の破棄》を受けて退場した今、彼はゾンビの群れに踏み潰される前にもう一度勝ち手段を引き当てなければならない。《織木師の組細工》は勝ち手段にはならないが、渡辺はこれを2枚続けて戦場に出したことで心許ないライフを回復し、エネルギーの再充填もできた。そしてそのエネルギーは最高の結果をもたらした。《霊気池の驚異》は《コジレックの帰還》を引き当て、フェネルの軍勢は薙ぎ払われた――それでもフェネルは9/9の《戦墓の巨人》を繰り出し、渡辺に回答を迫る。

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ゾンビの軍勢を一斉に失ってもフェネルは諦めない。まだゲームは終わっていない。

 渡辺による盤石のコントロールが揺らぐかどうかの分水嶺。渡辺はフェネルが体勢を立て直すチャンスを得る前に、強烈な一撃が必要だった。そしてその解答となったのは、またもや10枚目の土地だった。「素出し」の《絶え間ない飢餓、ウラモグ》が、このゲームを終わらせた。

 この週末を通して「霊気池」デッキを倒し続けてきたフェネルだが、ここに来て殿堂顕彰者を相手に2ゲームを先行されることになった。互いにサイドボーディングを終えて第3ゲームを迎えると、フェネルは《戦慄の放浪者》から《むら気な召使い》と素早いスタートを切った。

 早速フェネルによるビートダウンが始まった。彼はさらに攻めを加速すべく、3ターン目に《呪われた者の王》をプレイする。それは《検閲》を受けたものの、続くターンには《戦慄の放浪者》をもう2枚追加し、《むら気な召使い》のライフ・ドレイン能力で渡辺のライフを残り8点まで落とした。フェネルはついに、「ゾンビ」デッキが誇る高速スタートを決めたのだ。《織木師の組細工》と《蓄霊稲妻》が渡辺に多少の猶予を与えたが、依然として不利は覆らなかった。

 だがいかに最高のスタートを切っても、「ゾンビ」デッキが全体除去に弱いという事実は変わらない。渡辺は、《コジレックの帰還》を持っていた。フェネルも《戦墓の巨人》で完璧な対応を見せたが、4枚目の土地が置けておらず《検閲》を受けてしまう。渡辺が繰り出した《奔流の機械巨人》は《苦渋の破棄》で対処したものの、状況は深刻だ。手札に《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》と《リリアナの支配》を抱えたフェネルはマナ不足に悩まされ、一方の渡辺は土地を伸ばし続けた。

 今度は10枚の土地は必要なかった。《見捨てられた神々の神殿》が9ターン目に10マナをもたらしたのだ。渡辺が土地をフルタップするのを見ると、《絶え間ない飢餓、ウラモグ》が戦場に出るまでもなくフェネルはカードを片付け、渡辺の準決勝進出を祝して右手を伸ばしたのだった。

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渡辺 雄也がクリス・フェネルを3連勝で下し、準決勝へ!

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