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【観戦記事】 準決勝:行弘 賢(日本) vs. Gerry Thompson(アメリカ)

【観戦記事】 準決勝:行弘 賢(日本) vs. Gerry Thompson(アメリカ)

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Frank Karsten / Tr. Tetsuya Yabuki

2017年5月14日

原文はこちら

行弘 賢(黒緑エネルギー) vs. ジェリー・トンプソン/Gerry Thompson(黒単ゾンビ)

 この準決勝で相見える両者は、どちらもプロツアー決勝ラウンドの舞台の経験者だ。高いプレイ技術のみならずデッキ構築の名手としても良記事を書くライターとしても広く知られているチーム「Mutiny」のジェリー・トンプソンは、プロツアー『ギルド門侵犯』にてトップ8入賞を経験している。対するチーム「Musashi」の行弘 賢は、これで自身3度目のプロツアー・トップ8入賞だ。

それぞれのデッキと相性

 トンプソンが操る「黒単ゾンビ」は、マナ・カーブに沿ってゾンビ・クリーチャーを展開し、そのシナジーを活かす部族デッキだ。《金属ミミック》や《呪われた者の王》、《リリアナの支配》といった「ロード」が大量に採用されており、並べたクリーチャーを強化して攻め寄せる。

 一方の行弘は、「黒緑エネルギー」を手に今大会へ臨んだ。このデッキは、《霊気との調和》や《巻きつき蛇》を駆使して、早ければ3ターン目に6/6の《牙長獣の仔》が攻撃に向かえる可能性を秘めている。行弘のデッキリストのユニークな点として、『アモンケット』から新たに《ホネツツキ》を加えていることが挙げられるだろう。事実、今大会のスタンダード・デッキすべてを見回しても《ホネツツキ》の採用枚数は4枚――行弘のデッキに搭載されているのみだ。この日本のゴールドレベル・プロは、常にローグ・デッキを愛し、熱意と笑顔をプレイに乗せて戦う。彼のデッキ構築は必ず予想を裏切り、今大会でも《ホネツツキ》が膠着した盤面を幾度となく突破し、その力を証明してきた。

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両者のうちどちらかは、ここで敗退となる。そして勝ち残った方は、プロツアー『アモンケット』王者のタイトルを懸けた最後の戦いへ挑む!

 だが総合的に見て、このマッチアップはトンプソン側が有利に感じられる。「実は『黒緑エネルギー』の使用も考えていたんだ」と、試合前にトンプソンが教えてくれた。「でも『ゾンビ』とのプレイ・テストでいつまで経っても勝てなかった。序盤は有利だが、3ターン目を超えたあたりからは『ロード』の連打でゾンビ側が圧倒する。除去が薄い『黒緑エネルギー』側がそのすべてに対処するのは難しい」

 トンプソンが懸念するのは、マナ・スクリューや《巻きつき蛇》と《歩行バリスタ》のコンボ、そして《キランの真意号》だ。それでも《致命的な一押し》や《闇の掌握》を有する彼のデッキは、行弘の繰り出す厄介なクリーチャーを除去できる。

ゲーム展開

 予選ラウンド上位の行弘が先攻を取り、彼のデッキが持つ最高のスタートのひとつを決めた。2ターン目、彼はトンプソンの《墓所破り》を《致命的な一押し》しつつ《ホネツツキ》を1マナで唱えたのだ。2ターン目に接死を持つ1マナ3/2飛行が出るというのは信じられないほどの脅威であり、行弘の優位は明確だった。

 トンプソンは《闇の救済》で《ホネツツキ》を対処したものの、行弘はその隙に《巻きつき蛇》から《ピーマの改革派、リシュカー》と繋いだ。4/5と4/4が戦場を駆けると、トンプソンはその勢いに押されたか、4/5の《巻きつき蛇》へ《闇の掌握》を差し向けるというミスを犯してしまう。

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トンプソンのミスもあり、第1ゲームを取った行弘。

 だが結果的に、そのミスは大きな問題ではなかった。その後行弘はさらに《ホネツツキ》を2体盤面へ追加。トンプソンが除去をどのように使おうと、飛行軍団を前に膝を屈することになったのだ。

「ときにはミスだってあるさ」と、トンプソンは試合後に語る。彼はそのミスを引きずらず、すぐに切り替えることができた。「起きてしまったミスについては考えないようにしている。それはもう起きてしまったことで、それをどうにかすることはできない。その後正しいプレイを続けるしかないんだ」

 第2ゲームは行弘がダブル・マリガンを喫し、対するトンプソンは《墓所破り》で《戦慄の放浪者》を捨てた。この動きは「ゾンビ」デッキが持つシナジーの代表的なものであり、捨てられた《戦慄の放浪者》はゲーム後半に戻ってくることができ、さらに《戦墓の巨人》を3/3で戦場に繰り出せる。

 《墓所破り》と《戦墓の巨人》は、行弘の《歩行バリスタ》と《致命的な一押し》との交換に終わった。しかしこれで2枚目の《戦墓の巨人》がより巨大になり、6/6というサイズは行弘のクリーチャーをゆうに上回った。トンプソンはさらに《闇の救済》を撃ち込み、行弘に有利なブロックを許さない。

 続々と数を増すゾンビの群れを前に防衛線も崩された行弘は、カードを片付けることになった。

 サイドボードが解禁される第3ゲームを迎えても、両者のデッキ相性は大きく変わらなかった。行弘のサイドボードは対「マルドゥ機体」やコントロール・デッキ、コンボ・デッキを重視したものであり、一方トンプソンのサイドボードにある《霊気圏の収集艇》や《豪華の王、ゴンティ》といったカードも、彼の戦略を劇的に変えるようなものではない。

 第3ゲームが始まると、両者はともに《闇の掌握》で序盤のクリーチャーを除去した。その後、《呪われた者の王》と《ピーマの改革派、リシュカー》が互いの盤面に残る。

 トンプソンは、手札に残るもう1枚の《闇の掌握》を行弘の《ピーマの改革派、リシュカー》へ使わないことを選んだ。4ターン目に何もプレイせずターンを渡した行弘を見て、トンプソンは行弘の手札にもう1枚《ピーマの改革派、リシュカー》があると睨んだのかもしれない。そのためか、あるいは今後行弘が繰り出すであろう飛行クリーチャーへの解答として持っておきたかったのか、いずれにしてもトンプソンは、《闇の掌握》を《ピーマの改革派、リシュカー》へ撃ち込まなかった。

 そして数ターン後、その決断が功を奏した。トンプソンは行弘を守る《巻きつき蛇》を《闇の掌握》で排除し、致命打を与えることができたのだった。

 第4ゲーム、行弘は3ターン目に変わったプレイを見せた。トンプソンの《戦慄の放浪者》へ《致命的な一押し》を差し向けたのだ。通常なら、貴重な除去呪文を墓地から戻ってくる軽量クリーチャーへ消費することはないだろう。しかしこの場面では、ここで除去を使ったことで早い段階で《ホネツツキ》を繰り出すことができた。

 その後またたく間に盤面にはクリーチャーがあふれ、膠着の様相が見えてきた――すなわち《ホネツツキ》の回避能力が決定打となる展開だ。

 しかしトンプソンは自ら膠着を破りにいった。彼は《呪われた者の王》と《風切る泥沼》の不利な交換を受け入れ、《致命的な一押し》の「紛争」を達成した。そして《ホネツツキ》を墓地へ送ることに成功したのだ。

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行弘の《ホネツツキ》がゲームを奪っていくのを阻止したジェリー・トンプソン

 その後は試合前にトンプソンが予想した通り、ゲーム後半は「ゾンビ」が圧倒した。その鍵となったのは、2枚の《リリアナの支配》だった。

 1枚目で行弘の攻撃を阻むと、2枚目でトンプソンのゾンビ・トークンはすべて4/4になり、彼の盤面は難攻不落のものとなった。それらがプレミアム版であったことも付け足しておこう。

 行弘にはこのゾンビ軍団を止めるすべはなかった。彼のもとにある最大のクリーチャーは3/4

の《緑地帯の暴れ者》。結末を見届けることなく敗北を認め、右手を差し出したのだった。

 こうして、合計4ゲームが29分間で決着した。驚くほど速い戦いであった。

「予想通りにゲームを進められた」と、試合後のインタビューでトンプソンは言う。「第1ゲームのひどいミスが玉に瑕で本当に恥ずかしいけれど......結果良ければということで!」

ジェリー・トンプソンが行弘 賢を3勝1敗で下し、決勝へ!
行弘 賢 - 「黒緑エネルギー」
プロツアー『アモンケット』 / スタンダード (2017年5月12~14日)
5 《森》
3 《沼》
4 《花盛りの湿地》
4 《風切る泥沼》
4 《霊気拠点》

-土地(20)-

4 《緑地帯の暴れ者》
4 《牙長獣の仔》
4 《歩行バリスタ》
4 《巻きつき蛇》
3 《光袖会の収集者》
4 《ピーマの改革派、リシュカー》
4 《ホネツツキ》

-クリーチャー(27)-
4 《霊気との調和》
4 《致命的な一押し》
2 《闇の掌握》
3 《キランの真意号》

-呪文(13)-
2 《不屈の追跡者》
4 《顕在的防御》
1 《闇の掌握》
1 《心臓露呈》
3 《刻み角》
2 《没収》
1 《キランの真意号》
1 《生命の力、ニッサ》

-サイドボード(15)-
Gerry Thompson - 「黒単ゾンビ」
プロツアー『アモンケット』 / スタンダード (2017年5月12~14日)
22 《沼》
2 《ウェストヴェイルの修道院》

-土地(24)-

4 《墓所破り》
4 《戦慄の放浪者》
4 《金属ミミック》
4 《無情な死者》
4 《戦墓の巨人》
4 《呪われた者の王》

-クリーチャー(24)-
2 《致命的な一押し》
3 《闇の掌握》
3 《リリアナの支配》
4 《闇の救済》

-呪文(12)-
3 《屑鉄場のたかり屋》
2 《豪華の王、ゴンティ》
2 《精神背信》
1 《闇の掌握》
2 《失われた遺産》
2 《霊気圏の収集艇》
3 《最後の望み、リリアナ》

-サイドボード(15)-

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