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(翻訳記事)第6回戦:最後の望みの大惨事Brad Nelson(アメリカ) vs. Kai Budde(ドイツ)

(翻訳記事)第6回戦:最後の望みの大惨事Brad Nelson(アメリカ) vs. Kai Budde(ドイツ)

Nate Price / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

原文はこちら

ブラド・ネルソン/Brad Nelson vs. カイ・ブッディ/Kai Budde (ドラフト)

「デッキはどうです?」

 すでにテーブルについているカイ・ブッディに軽い調子で尋ねるネルソンに、殿堂顕彰者は肩をすくめて答える。

「んー、10点中6点かな」

「いいじゃないですか。僕はどうとも言えないですね。3-0するかもしれないし、0-3かも」

 このフィーチャー・マッチに挑んだプレイヤー2人はどちらも華々しい歴史を持つ。ブラド・ネルソンはマジック・オンラインでその技量を示した後、2009年のプロツアー・ホノルルで9位。マジック・オンラインでの連戦において、ネルソンはマジック界にその想像を絶するほどに熟達した技量と、プロツアー参戦歴がわずかだとは思わせない経験を見せつけた。昨年のマジック・ウィークエンド・パリでネルソンが帽子に羽根を挿していたのは、最優秀選手決定戦でフランスのギョーム・マティノンを下した証であった。

 対するブッディは、ジョン・フィンケルやブライアン・キブラーという名前でないどのプレイヤーと比べても語ることが多いプレイヤーだろう。ジョン・フィンケル以外には、「ジャーマン・ジャガーノート」と呼ばれる男のような無敗の帝王となったプレイヤーはいない。仕事のためにマジックを離れていたが、ブッディは時折イベントに姿を見せ、殿堂顕彰者の権利で予選免除でイベントに参加することができる。もちろん、予選で落ちるような男でもない。彼は7度のプロツアー王者であり、7度のグランプリ優勝者であり、4度の最優秀選手に輝いた男だ。マジックが下手なわけがない。


「マジック・オンライン・ジャガーノート」ブラド・ネルソンに
対峙する「ジャーマン・ジャガーノート」カイ・ブッディ

ゲーム1

 ネルソンは《沼》を出し、それを見たブッディはため息をついて頭を抱える。

「なんてこった」

 ネルソンが最初のクリーチャーを戦場に出し、《墓所を歩くもの》と《グールの解体人》を唱える。《森》2枚と《島》1枚を出していたブッディが、《二人組の見張り番》を出したものの、結魂相手がいない。ネルソンは《グールの解体人》を残して《墓所を歩くもの》だけで攻撃し、ブッディのライフを16点に削ると、出したばかりの《島》から《アンデッドの処刑人》を出した。ブッディは《二人組の見張り番》に加えて《花咲くもつれ樹》を出した。ネルソンがタップアウトして《憑依された護衛》と《魂の収穫者》を出すと、なぜ彼が《グールの解体人》で攻撃しなかったかがわかった。《魂の収穫者》で今後充分なアドバンテージが取れ、そしてブッディの青緑デッキではそれに対処するのが難しいのだ。

 ブッディは《消え去り》を使ってそれをネルソンのライブラリーの上に戻すファインプレイを見せ、《グリフの先兵》で攻撃に移る。《月の神秘家》を出したところで、ネルソンが動いた。《アンデッドの処刑人》を生け贄に捧げて《骨の粉砕》を唱え、《花咲くもつれ樹》と《グリフの先兵》を除去。そして3枚のカードを手にする。さらにクリーチャーを2体並べると、反撃を開始した。ブッディはその攻撃を防ぐため最善の手をつくしていく。《悪寒》で《魂の収穫者》を足止めし、《月の神秘家》でカードを引く。しかし、もう逃げ場はなかった。《魂の収穫者》が戻ってくると、ネルソンはそれ以上ゲームを長引かせる必要はなかった。クリーチャーが戦闘で死ぬたびにネルソンの手札が増えていく。2ターン後、7体のネルソンのクリーチャーに囲まれたブッディは弓折れ矢尽きて投了した。


カードを殖やして勝ち、殿堂顕彰者である対戦相手に一歩先んじるネルソン

カイ・ブッディ 0-1 ブラド・ネルソン

ゲーム2

 前のゲームに比べ、ブッディの立ち上がりは多少いいペースだった。《錬金術師の弟子》と《枷霊》を手早く並べ、ネルソンの側には《グールの解体人》1体だけ。《枷霊》のコストを支払いたくないブッディはネルソンのターンの終了時に《錬金術師の弟子》を生け贄に捧げたが、これに乗じたネルソンの《悪寒》に《枷霊》を捕えられると攻撃の手を失ってしまう。ブッディは《森》2枚と《島》2枚を立てた状態でターンを返す。攻撃した後、ネルソンは《グールの解体人》を《枷霊》に《骨の粉砕》で投げつけて強化する。ブッディはアンタップし、《グリフの先兵》を出すとターンを返した。

 ネルソンは、ジャーマン・ジャガーノートに、再び深いため息をつかせた。《人殺しの隠遁生活》に強化された《グールの解体人》はパワー5で絆魂という脅威的な存在になっている。ブッディはそのクロック差を埋めようと再び《グリフの先兵》を出すが、ネルソンの方が先を行っていた。さらに《魂の収穫者》を加えて、ブッディを取り巻く状況はさらに悪化することになった。幸いにして、2体目のクリーチャーが出たことで《人殺しの隠遁生活》は効果を失ったが、不幸にして、その2体目のクリーチャーは前のゲームでブッディを打ち倒したそのクリーチャーだったのだ。さらにネルソンが《死体の交易商人》を加えると、状況はさらに悪化した。ネルソンはいつでも自分のクリーチャーを減らすことができるようになり、しかも《魂の収穫者》がいるのでカードを引くこともできるのだ。

 しかし、ブッディにも望みがないわけではなかった。《花咲くもつれ樹》と《ドルイドの使い魔》を出して、13点の攻撃手段を手に入れたのだ。ネルソンはこの攻撃に際して《花咲くもつれ樹》を《死体の交易商人》でチャンプ・ブロックし、ブッディに傾きかけた流れを強烈な一撃で取り戻す。《アンデッドの処刑人》を出し、即座に《骨の粉砕》の生け贄にしたのだ。《花咲くもつれ樹》と《ドルイドの使い魔》を一度に倒し、3枚のカードを手にすると、ネルソンは攻撃してブッディのライフを5点にまで削りこむ。ブッディはなおも諦めず、飛行クリーチャー2体で攻撃してネルソンのライフを9点にし、3体目の《グリフの先兵》を唱える。突然、ネルソンはあと1度の攻撃で息の根を止められるところにまで追い込まれてしまった! 大量にカードを引いたネルソンだったが、そのほとんどは土地だった。ネルソンは必死で道を探ったものの、実らず、ブッディの9点分の飛行クリーチャーを止める手段を引けなかったネルソンは投了した。ネルソンがカードを片付け始めても、ブッディは固まったままだった。


カイ・ブッディ:「マジックが下手なわけがない」

カイ・ブッディ 1-1 ブラド・ネルソン

ゲーム3

 第3ゲーム、先手を切ったのは《錬金術師の弟子》と《屑肌のドレイク》を擁するブッディだったが、ネルソンはそれ以上の速度を見せた。《終わりなき休息の器》で第4ターンに《グリフの先兵》を出し、次のターンに2体のクリーチャーで攻撃してきたところには《錬金術師の弟子》の攻撃はブラフだと読み、ブッディがそれを生け贄にせざるを得なくした。ブッディは戦闘後に《花咲くもつれ樹》を出してターンを返し、これと組になる結魂クリーチャーの来訪を待った。

 ネルソンはアンタップし、《常夜の影》を戦力に加え、攻撃に行かずにターンを終了する。ブッディはカードを引いて、少し考えてから《骨の粉砕》を唱え、続いて《ドルイドの使い魔》を出して《花咲くもつれ樹》と結魂させる。7/7クリーチャーが攻撃してくれば、ネルソンは不死持ちの《常夜の影》でブロックするしかない。このターン、ネルソンは《花咲くもつれ樹》への対策になり得る手段、《照明灯の霊》を手に入れていた。《終わりなき休息の器》のおかげで《照明灯の霊》を唱えることが出来、ネルソンは手元にいざというときの起動用マナを残した状態でターンを終える。

 ブッディはカードを引き、どうすべきか考えを巡らせた。土地は4枚で止まっており(それはさほど問題ではなかったが)、青マナは1つしか出せない状態だった。彼は盤面を見て思考をフル回転させる。その結論として、彼は全軍をレッドゾーンに送り込んだ。ネルソンは《照明灯の霊》で《花咲くもつれ樹》を、《常夜の影》で《ドルイドの使い魔》を、《グリフの先兵》で《屑肌のドレイク》をブロックした。ブッディはなぜ4/4が2/2でブロックされたのかといぶかしんだが、《花咲くもつれ樹》が倒れたら2/2に縮むので致死ダメージになると言うことに思い至った。その狙いのままにさせる気はなかったので、《連携攻撃》を使って《ドルイドの使い魔》を生き残らせる手を選ぶ。戦場が敵味方とも一気に数を減らした戦場に、ブッディの《錬金術師の弟子》と《戦墓の随員》が姿を見せた。ネルソンが《血のやりとり》を使うと、ブッディは笑いながら目を白黒させた。

「なんて言ったらいいか――これで全部、かな」

 そう言って、ネルソンは笑った。

 ブッディはクリーチャー全てを生け贄にして《ドルイドの使い魔》を生き残らせ、次のターンに《グリフの先兵》を呼び出すことに望みを繋ぐ。ネルソンは《常夜の影》と《グールの解体人》で不死の部隊を並べるが、ブッディの一撃で一旦は死ぬことになる。《二人組の見張り番》と《電位式錬金術師》を出してから、ブッディは戦場を見据えた。ネルソンがアンタップして《魂の収穫者》を出すと、局面は変化した。ブッディは手を止められ、単にターンを返すだけになる。ターンの最後に《消え去り》を使ってネルソンの《常夜の影》を戻させてから、ブッディは《グリフの先兵》で攻撃してネルソンのライフは残り7点。ネルソンが《悪寒》でこの《グリフの先兵》を止めると、ブッディは《防護の言葉》でそれを防ぐ。ネルソンは再び《常夜の影》を唱えてターンを終える。ブッディはさらに《グリフの先兵》を出し、そして攻撃せずにターンを終えた。《常夜の影》が飛行クリーチャーで、攻撃をブロックされると思ったのだろう。

 ネルソンは真剣にブッディを観察していた。次のターンにブッディは3体目の《グリフの先兵》を加えてから、何か計算を始めた。そして飛行クリーチャーでの攻撃を選んだのを見て、ネルソンは握手を求めたのだった。

カイ・ブッディ 2-1 ブラド・ネルソン

 マッチの終了後に、ネルソンが尋ねる。

「何やってたんです?」

「んー・・・」

 ブッディは手を伸ばし、《常夜の影》を手に取った。

「・・・え、これ、飛行じゃないの!? 何やってんだ俺、それならこのカードそんなに強くないんじゃ?」

 ブッディは笑いながらそう問い返す。

「ああ。すごいカードじゃないけど、弱いカードでもないですよ」

 ネルソンはそう答えた。

「みんながすごいすごいって言うから、てっきり飛行だと思ってた。そうじゃなけりゃ、そんなすごくはないだろ。あー、俺、アヴァシンの帰還のドラフトまだ3回目なんだよ。構築は練習してたけど、カードの確認が足りなかったんだろうな」

 そして二人は笑った。いつも陽気なネルソンは、負けたときにも大笑いできる方法を探していた。そして、ネルソンがもし誰かに負けるとしたら、その相手はこのブッディに違いなかった。

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