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(特集記事)アヴァシンの帰還・リミテッドにおける明滅効果の話

(特集記事)アヴァシンの帰還・リミテッドにおける明滅効果の話

Nate Price / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

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 アヴァシンの帰還には一目で分かるものの影に隠れた秘密のテーマが存在する。誰もがその存在を知りながら、それがテーマだとは気付かないようなもの、それが、戦場に出たときに誘発する能力だ。結魂メカニズムは誰もが知っている新メカニズムだ。結魂という能力は、結魂を持つクリーチャーが戦場に出たときと、組になっていない結魂クリーチャーがある戦場に他のクリーチャーが出たときに誘発する。《霧虚ろのグリフィン》や《国境地帯のレインジャー》《ミッドヴァストの守護者》のように明確で有用な戦場に出たときの誘発型能力を持つカードもあるし、他のカードが戦場に出たときに利益を生み出す《黄金夜の指揮官》や《クルーインの打撃者》《収穫の魂》といったカードも存在する。

 クリーチャーが戦場に出たときに利益を得るカードが多くあるので、このセットを見たマーク・ローズウォーターがお気に入りのメカニズムの1つ、ちらつきを再投入する最高のチャンスだと思うのは驚くことではない。メカニズム的に言うと、明滅はちらつきと完全に同じというわけではない。彼も言った通り、「ちらつきには2種類存在する。『ちらつき』と『即時ちらつき』だ。『ちらつき』の場合、そのクリーチャーが戦場に戻るのはターン終了時で、『即時ちらつき』の場合は即座に戦場に戻る。自分のものをちらつかせるなら、即座に戻したいと思うことだろう。今回は自分のものに使わせたかったので、『即時ちらつき』のほうを投入することにした。相手のものを対象にできるようにはしなかった。ちらつきをインスタント速度にすることによって、戦闘中、あるいは現在進行中のものに影響を及ぼすことが出来るようになった。これは非常に非常に強力なことである。攻撃中に結魂相手を変えることが出来るというのがどれだけ強烈なことか。」


マーク・ローズウォーターのお気に入りのメカニズム『ちらつき』は結魂のメリットを
受けるのがどのクリーチャーかを変えられるなど、アヴァシンの帰還のリミテッドに大きな影響を与えた。

 結魂絡みの相互作用だけが明滅の強さではない。再びローズウォーターの言葉を借りよう。「明滅はどのセットでも強力だが、このセットではさらにいい働きを見せるので、その量を増やすことにした。このセットのメカニズムの中でも探求の余地が大きいメカニズムなのだ。」プレイヤーが探求することとは、クリーチャーをリソースとして使う方法である。ローズウォーターと私で、プレイヤーがクリーチャーや自分のライフをリソースとして扱う考え方がここ数年で変わってきているという話をしたことがある。

 時が過ぎ、プレイヤーはクリーチャーを相打ちにしてよりシンプルな局面に向かうことを好むようになった。これの助けになったことの一つに、戦場に出たときの誘発型能力を持つカードが増えたことがある。戦場に出た後、その能力の解決後にはバニラ・クリーチャーあるいは飛行などの基本的なキーワード能力だけを持つフレンチ・バニラ・クリーチャーになるので、ローズウォーターはそれらを「実質バニラ」クリーチャーと呼んでいた。それらのクリーチャーは能力の解決後には同種のバニラ・クリーチャーと同等でしかなく、従って守る必要もあまりないので相打ちや生け贄に使われることがよくあったのだ。

 明滅によって、それらの実質バニラ・クリーチャーにさらなる活躍の場が与えられるようになったので、使い捨てて切り込むべきか、それとも再利用のために取っておくべきかの判断が必要になる。この判断はその能力の強さやそのクリーチャー本体の強さに依存するものだ。たとえば、2/1の《森林地の先達》なら相打ちに使い捨てても、《霧鴉》や《士気溢れる徴集兵》は使い捨てにしないものだと思われる。これはゲームがあまりに単純になるのを防ぐ思考の層を導入する一方で、ゲームが楽しくなくなるほど複雑にもならないようにしている。ローズウォーター曰く、「かつてのマジックでは、局面があまりに複雑になるということがよくあった。記憶しなければならないものが増えすぎると、マジックは楽しくなくなる。『記憶しなければならないものすべてを記憶する』ゲームは、楽しいものではない。マジックの楽しいのは、戦場にあるものを覚えることではなく、戦場にあるものをどう使うかを考えることだ。」明滅と、開発部の推し進めた実質バニラ・クリーチャー・カードの増加は、まさにそれを体現している。プレイヤーが盤上をより単純にするようにしむける一方で、想像力や判断力を発揮する余地を残しているのだ。

 明滅に関する好意的見解を求めるために、私は私の求めるデッキをドラフトしたプレイヤーを探し回った。そして見つけたのは、ブライアン・キブラーとそのデッキだった。彼が組んだのは青緑結魂デッキで、《翼作り》《ウルフィーの銀心》《信頼厚き腕力魔道士》《消え去り》《霧鴉》《花咲くもつれ樹》を詰め込んでいた。こういうのを「ビッグボーイ」マジックと呼んでいる。今挙げたような強すぎるカードに加え、《幽霊のゆらめき》《狙い澄ましの航海士》を入れて明滅できるように仕上げてある。つまり、彼は明滅の強さを認め、非常に強いと理解しているが、それはデッキと状況によるのだ。「リミテッドで重要な明滅カードは2種、安くて有効な《雲隠れ》と再利用できる《ネファリアの密輸人》だ。《幽霊のゆらめき》を入れたけれど、このデッキなら悪用しやすいからだ。一般には少し重すぎると思うよ」


ブライアン・キブラーは《幽霊のゆらめき》は少し重すぎると思っているが、
リミテッドではこの青のインスタントが非常に有用なデッキがあるとも思っている。
その一例が、この第2ドラフトでキブラーが使っている青緑結魂デッキだ。

 キブラーによると、それらのカードの最大の違いの一つは、有効に働く状況が何なのかだという。「《雲隠れ》はいつでも使いやすいよ。軽くて、使い道がはっきりしてる。《ネファリアの密輸人》は組み合わせるカードに緻密な計算が必要になる。正直なところ、俺は《霧鴉》2枚あれば充分だと思ってるけれど、一般にはもっと多くないと有利が得られるとは言えないんじゃないかな。」明滅メカニズムの最大の弱点は、時間とリソースを費やすにも関わらず、単純には何も得られないという点である。新しいクリーチャーを出すわけでもなければ、それ自体ではライフを得られるわけでもない。《雲隠れ》の長所はそこだ。充分に軽いので、有効な効果を出しながら他のクリーチャーを展開することができるのだ。

 他方は、コストに見合うようにするためには相当の効果を得なければならない。バウンス効果を2つ使うとか、1回の戦闘を完全にものにしてしまうとかが必要になるが、それらの効果を得るためにはそれなりの準備が必要になる。シナジー頼りのデッキの問題点はそこである。成立すれば非常に強力なのだが、準備中は脆弱で、もしその一部か失われれば壊滅的打撃を受けることになる。幸いにして、明滅はその両問題を解決してくれる。ブロック・クリーチャーを守ることも、シナジーの成立要素を守ることもできるのだ。

 見返りが確実ではないが、ブライアン・キブラーがそのデッキでできるようにしている《霧虚ろのグリフィン》を《狙い澄ましの航海士》と組にするというのも1つのゲームだ。刮目せねばなるまい。

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