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(翻訳記事)準々決勝:ある奇跡のマッチJon Finkel(アメリカ) vs. Alexander Hayne(カナダ)

(翻訳記事)準々決勝:ある奇跡のマッチJon Finkel(アメリカ) vs. Alexander Hayne(カナダ)

Nate Price / Tr. YOMEMURA "Pao" Kaoru

原文はこちら

ジョン・フィンケル/Jon Finkel(Geists) vs. アレクサンダー・ヘイン/Alexander Hayne(白青奇跡)

 ......うん。今は1999年じゃない、間違いない......間違いなく2012年だ。それなら、聞き間違いに違いない。ジョン・フィンケルがプロツアーのトップ8に連続入賞している? そんなわけない。私の耳がおかしくなったんだ。それとも、本当に? 14回目のプロツアー・トップ8出場だって? 14回なんてあり得るのか? どういうことだ? ありえん。彼がこのプロツアー・アヴァシンの帰還に出場したのは知っている、だから、彼がトップ8に入っても不思議じゃない、うん。

 考えていることはわかる、つまり、カナダのアレクサンダー・ヘインにはフィンケルを倒せるよう天の助けが必要だということ――いわゆる、奇跡が。彼にとって幸いなことに、ヘインは準備万端だ。トップ8のデッキの中で、ヘインの白青奇跡デッキ「ハレルヤ」は《壊滅的大潮》や《終末》を使って防衛線を引くことができる、フィンケルの青緑白のテンポ系霊デッキに対する相性がいいデッキなのだ。フィンケルと、彼の纏っているプロツアーの過去という霊が、ヘインとその神佑である奇跡に対峙する。この超自然の対立こそが壮大な物語なのだ。より深遠な謎が勝ち残ることになるだろう。


霊対奇跡の戦を始めようとする
ジョン・フィンケルとアレクサンダー・ヘイン

ゲーム1

 フィンケルがダイスロールに勝ち、先攻を選ぶ。フィンケルは《不可視の忍び寄り》を出し、素早くそれに《幽体の飛行》がついた。ヘインのライフは残り17点、さらに14点に削られていく。その後、ヘインは《壊滅的大潮》を奇跡で放ち、フィンケルの《不可視の忍び寄り》を手札に戻させる。一旦後退したものの、フィンケルは次のターンには再び《不可視の忍び寄り》が戦場に舞い戻った。その次のターン、有効な対策の打てなかったヘインに、《高まる残虐性》を使った重い一撃が振り下ろされ、8点のダメージが与えられて残りライフは6点になった。


亡霊軍団を率いるフィンケル

「奇跡が欲しいな」笑いながら言い、ヘインはゲームの最後の1枚になりうるカードに手を延ばす。天使の微笑みの代わりに、ヘインに与えられたのは第2ゲームへの切符だった。

ジョン・フィンケル 1-0 アレクサンダー・ヘイン

「昨夜、そのデッキの勝率を計算するプログラムが組めるかって冗談を言ってたんだけど」

 ゲーム終了後、フィンケルは笑いながら言った。

「うん、このデッキを使うのは、賭けみたいなものさ。しばしば失敗するよ」

 ヘインはそう答えた。

ゲーム2

 ゲーム前、静寂の中でカードを切り直す音だけが響いていた。

「先攻で」

 ヘインはシャッフルのためにフィンケルのデッキに手を伸ばしながらそう言う。

「はは、いい考えだな」

 ヘインは初手を見て満足したが、フィンケルはそうではなかった。フィンケルはマリガンしたが、今度の初手にはクリーチャーがなかったので2度目のマリガンを余儀なくされる。

「7枚目なんてない方が本当だろ?」

 ヘインはシャッフル中のフィンケルにそう問いかける。

「ああ、6枚が普通だ。5枚でも充分だよ」

 フィンケルはそう認めた。

 フィンケルの5枚の手札は、順調な滑り出しを見せた。《アヴァシンの巡礼者》から《絡み根の霊》とつなぎ、2体でヘインを攻撃してライフを17点に減らす。ヘインは自分の側にもクリーチャーを呼び出す、《聖トラフトの霊》である。フィンケルは自分の《聖トラフトの霊》を守りに回すのではなく、攻撃することを選んだ。ヘインはフィンケルが防御のために残した《アヴァシンの巡礼者》や、もしかしたらフィンケルが出すかも知れない《ウルフィーの報復者》で《聖トラフトの霊》を討ち取られるのを恐れ、攻めの手を止めてターンを返した。

 フィンケルはアンタップし、《聖トラフトの霊》でヘインの《聖トラフトの霊》を倒して《絡み根の霊》の道を空けさせる。ヘインは《熟慮》で奇跡を引こうとするも、何も引けずにダメージを受けた。これでヘインのライフは残り13点。ヘインのターンに、《月の賢者タミヨウ》が登場する。そしてフィンケルのたった1枚の《島》を止めると、フィンケルの使えるマナ源は《森》2枚と《アヴァシンの巡礼者》だけになってしまった。フィンケルは《月の賢者タミヨウ》を攻撃して残り忠誠度を3に減らし、3マナを浮かせた状態でターンを終える。ヘインは《月の賢者タミヨウ》を巧く使い、フィンケルの土地を固めた状態で《終末》を放った。


《月の賢者タミヨウ》でロックを決めるヘイン

 道は開けて、フィンケルは土地に困っている。ヘインはさらに締め上げる。《月の賢者タミヨウ》で2枚の土地を固めると、《聖トラフトの霊》を唱える。フィンケルは4枚目の土地を引けないまま6点ずつの攻撃を受け、ついには《天使への願い》がX=5で唱えられた。フィンケルは最後のカードを引くと、さっくりと投了した。

「回るもんだなぁ」

ジョン・フィンケル 1-1 アレクサンダー・ヘイン

ゲーム3

 第2ゲームと第3ゲームの間にも2人は静寂の中でサイドボードを行ない、より重視すべきカードを入れたり、あるいは少なくともうまく行くと思われるような構成に調整したりしていた。そして、やはり静寂の中で、前のゲームと同様のパイル・シャッフルを行なう。フィーチャー・マッチ・エリアは全体として恐ろしいほどに静かで、昨日までの喧噪や、これまでのプロツアーとはまったく違う様相を見せていた。このイベントの特別さ、そして重みが、痛いほどに示される瞬間だった。

 この静寂を破り、ゴーデニス・ヴィドゥギリスが彼のマッチからフィンケルに状況を尋ねる声をかけてくる。チームメイトにマッチの状況を伝えると、フィンケルは再びシャッフルに戻った。

「先攻で」

 シャッフルされたデッキを手に取り、フィンケルはそう宣言する。

「間違いない?」

 ヘインは問い返す。

「間違ってるかもしれないけど、先攻で」

 フィンケルはそう冗談を返す。

「間違いだ」

 フィンケルは第1ターンに《アヴァシンの巡礼者》を出し、第2ターンにそれで攻撃する。さらに《豊かな成長》を2枚使い、デッキを回すとともにマナを安定化させた。ヘインは《進化する未開地》から《平地》、《島》と同じようにマナを延ばし、ライブラリーに眠る奇跡の来訪を待ち望む。フィンケルは次のターン、《アヴァシンの巡礼者》まで全てのマナを総動員して《高まる残虐性》を使い、《アヴァシンの巡礼者》にカウンターを5個載せる。ヘインが引いたカードは奇跡ではなく、単にターンを返すだけだった。

 フィンケルが6点の打撃を与えると、ヘインのライフは残り13点に。手札にカードはあっても、ヘインの全体除去に対するためにクリーチャーを1体ずつ出す戦略に切り替えたのだ。ヘインの側は、何もやることがないようだった。カードを引き、少し考えてからターンを返す。フィンケルはもう1体クリーチャーを出すことにした。《絡み根の霊》を出してから攻撃する。ヘインは《瞬唱の魔道士》で巨大な《アヴァシンの巡礼者》をチャンプ・ブロックし、ライフを10点以上に保つ。そして引いてきたのは、やはり奇跡ではなかった。手札は7枚あるが、出来ることは《聖トラフトの霊》を出すことだけだった。フィンケルはヘインが6枚目の土地を出せないことを確認して、《雲散霧消》でそれを打ち消した。


プロツアー・サンデーになじみの顔だけあって、マッチ中は石のように固い意志で冷静なフィンケル

 フィンケルに必要なものはゲームを終わらせる主砲で、そして彼のデッキには充分以上の主砲が詰まっている。アヴァシンの帰還最強の名も高い《ウルフィーの銀心》が現われ、《絡み根の霊》が致命的なサイズに膨らむ。そして突撃が始まった。ヘインにはあと1度だけ、奇跡を引き当てる可能性が残っている。ヘインは《思考掃き》を唱え、《平地》1枚だけがアンタップで残される。《天使への願い》と《思考掃き》が墓地に落ち、そして引いたカードは――

 《終末》ではなかった。

 少なくとも、ハレルヤ・デッキには奇跡を願える瞬間があると言える。ヘインはカードを片付けると、第4ゲームの準備を始めた。フィンケルが1ゲーム先行している。

ジョン・フィンケル 2-1 アレクサンダー・ヘイン

ゲーム4

「そろそろ《奇跡の復活》の時かな」

 笑いながら言うヘイン。

「ジョーク考えるのに時間かけてそうだな。ゴーデニスも昨夜そんなことやってたよ。アイツは頭は回るんだが、くだらない冗談ばかり言うんだ」

 肩越しに視線を向けて笑いながら、フィンケルは答えた。

 ヘインは手札を見るやマリガン、フィンケルは少し考えてからキープを選んだ。

「いけそうかい?」

「いつでも行けるさ」

 ヘインの問いに、無表情に答えるフィンケル。

 しばらくのシャッフルの後、ヘインは笑いながら言う。

「このデッキの一番良いところは、奇跡が起こったときに相手が驚くことだよ」

 フィンケルはただ笑った。

「そう簡単に俺は驚かないよ。俺と同じぐらい負けてりゃ分かる」

 フィンケルのキャリアの長さ(彼は第1回プロツアーでのジュニア・イベント出身なのだ!)を考えると、彼の言に嘘はない。

 その特徴に反して、フィンケルは第1ターン、第2ターン、第3ターンと動かなかった。これはゲームを長引かせたいヘインにとって好都合だった。第4ターンにようやく《情け知らずのガラク》を出し、即座に狼を出した。《情け知らずのガラク》に対応できる全体除去呪文は《壊滅的大潮》だけである。そこでヘインは攻撃で《情け知らずのガラク》を片付けるべく《天使への願い》をX=1で使った。しかし、その前にフィンケルが《ウルフィーの銀心》を使って狼を巨大化させ、さらにもう1体の狼を生みだしていく。

 ヘインはアンタップし、天使の攻撃で《情け知らずのガラク》を殺すと、《戦慄の感覚》をフィンケルのアップキープに使って結魂しているクリーチャーをタップさせる。フィンケルがさらに《ウルフィーの銀心》と狼の組を作ろうとしたが、再び《戦慄の感覚》がその足を止めた。ヘインは攻撃して4点のダメージを与え、フィンケルのライフは16点に。さらに《時間の熟達》を使ってもう1ターンの時間と、もう1枚のドローを得る。


奇跡は待ち人の元に現われる――ヘインの場合、待ち時間は短い

 ヘインは困った様子だった。眉をしかめて考えた後、《月の賢者タミヨウ》を唱えて《ウルフィーの銀心》をタップさせる。そして2マナを残した状態でターンを返した。フィンケルの攻撃に対し、《思考掃き》から《終末》に繋ぐことを狙っているのかもしれない。フィンケルはヘインのライフが14点であることを確認すると、狼に《幽体の飛行》をつけてから攻撃に入る。ヘインが《戦慄の感覚》で飛行している狼と《ウルフィーの銀心》を止めると、攻撃できるのは飛行していない狼1体だけになった。フィンケルが《月の賢者タミヨウ》に攻撃すると、ヘインは天使を犠牲にして《月の賢者タミヨウ》を守った。状況を維持し、4枚のカードを引くには彼女の力が必要なのだ。

 そして、奇跡が訪れる。ヘインは《時間の熟達》を引き当てたのだ。彼は《月の賢者タミヨウ》を使って4枚のカードを引くと、欲しかったアドバンテージを活用し始める。その後、《聖トラフトの霊》を唱え、《瞬唱の魔道士》を空打ちして一旦ターンを終了する。次のターン、《月の賢者タミヨウ》で4枚引いてから3枚目の《時間の熟達》を唱えると、フィンケルはカードを片付け始めた。序盤の出遅れが、第4ゲームの勝敗を決めたのだ。

ジョン・フィンケル 2-2 アレクサンダー・ヘイン

ゲーム5

 このマッチでは、ここまで先攻プレイヤーが全勝している。そして、今度はフィンケルが先攻である。

「じゃ、先攻で」

 フィンケルが宣言する。

「先攻が勝ってるからな」

 ヘインが答えた。

「いや、1本目はそっちが勝ったろ」

「いや、そっちだよ。忘れてるだけだ」

 フィンケルの言葉に、冗談めかして答えるヘイン。

「ま、どっちが1本目に勝ったかなんてたいしたことじゃないな」

 フィンケルは言った。

 このとき、ヘインもまたあることを忘れていた。フィンケルがシャッフルを終えてデッキを返してきたとき、65枚状態でデッキを提示してしまったことに気付いたのだ。サイドボードで加えたカードを抜き忘れていたのである。

「その5枚を抜いてくれればいいよ」

 フィンケルは近づいてきたヘッド・ジャッジにそう訴える。こんなつまらない【ゲームの敗北】にしたくはないのだ。

「いろんなミスは想定してきたけど、これは想定してなかった」

 ヘインは冗談を言った。

「ああ、そりゃそうだ。これで有利を得ようなんて思ってないのは分かってる」

 フィンケルが励ます。

「今度はトリプルチェックするよ」

 60枚になったデッキをシャッフルしながら、ヘインは笑った。

「気にすんなよ。さて、それじゃ手札は、と」

 フィンケルは手札を見ながらそう言った。

 両プレイヤーともマリガンなしで、この決着戦第5ゲームは始まった。第4ゲームと同じように、フィンケルのドローは軽快さを欠いていた。第3ターンまでプレイできなかったのも前ゲームと同じ。最大の違いは、今回は彼が先攻だと言うことだ。第4ターンにも何もしなかったのを見て、ヘインは戸惑いを見せた。

 ヘインの側も、土地を出すだけしか行動できていなかった。最初の動きは、フィンケルの第5ターンの《聖トラフトの霊》だったが、これはヘインが《雲散霧消》で対処する。戦場に無事に出られたのはヘインの《月の賢者タミヨウ》が最初だった。これでヘインはフィンケルの唯一の白マナ源を封じにかかる。フィンケルが《ウルフィーの銀心》を唱えると、ヘインがスイッチを切り替え、この怪物候補を封じに入った。ヘインは次のターン《天使への願い》を引き当て、X=3で唱えてターンを終了させた。

 フィンケルは《豊かな成長》を使ってカードを引くが、何も出てこない。ヘインの攻撃で、フィンケルのライフは残り8点だ。解決手段のないフィンケルは、投了することを選んだ。


ジョニー・マジック相手の勝利を喜ぶヘインの同胞たち

ジョン・フィンケル 2-3 アレクサンダー・ヘイン

 アレクサンダー・ヘインが3−2で準決勝進出!

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