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【戦略記事】 デッキテク:「ダーク・ジェスカイ」への服従

【戦略記事】 デッキテク:「ダーク・ジェスカイ」への服従

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Adam Styborski / Tr. Tetsuya Yabuki

2015年10月17日

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 プロツアーの舞台で初日無敗を通すのは、決して簡単なことではない。文字通り世界中の偉大なプレイヤーたちが集まりしのぎを削るこの大会では、初日の8戦全勝はトップ8入賞に向かって邁進するためのこれ以上ない滑り出しなのだ。

 グランプリトップ8入賞2回の経験を持つエリック・セヴァーソン/Eric Seversonは初日のドラフト・ラウンドで3戦全勝を果たし、最高の形でスタンダード・ラウンドを迎えた。プロツアーの舞台で突出したパフォーマンスを見せるのは困難なことだが、セヴァーソンは自身の手で調整を加えた「ダーク・ジェスカイ」でその難題に挑んだ。

「はじめは、このデッキをまったく検討していませんでした」と、エリック・セヴァーソンは認める。「あまりに知られ過ぎていましたから」。

 このデッキが今大会において一大勢力を築いた理由は何だろうか?「前環境の終わり頃にはもう活躍してたんですよね」と、セヴァーソンは切り出した。「そして、新環境最初のプロツアーでそれが表面化したんじゃないかと。とはいえ僕は、《ヴリンの神童、ジェイス》が登場するまで『ジェスカイ』は全然ダメだと考えていました。《ヴリンの神童、ジェイス》は極めて強力な1枚で、このカードが『ジェスカイ』を環境上位の戦略に押し上げたのだと思います。前回のプロツアーでも『ジェスカイ』を使ったプレイヤーがいましたよね。『ジェスカイ』は、以前より強くなったデッキのひとつだと思います」

 それからどんな変化が起きたのだろうか? 他のデッキに比べて、「ジェスカイ」は失ったものが少なかったのだという。「『ジェスカイ』が一気に数を増したのは、プロツアー『マジック・オリジン』の後です。ローテーションを迎えても、『ジェスカイ』は何も失わなかった。その結果、相対的に強くなったんです」

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ドラフトの優れた腕前と「ダーク・ジェスカイ」デッキを武器に、初日全勝を果たしたエリック・セヴァーソン

 では、「ジェスカイ」は何を得たのだろうか? それこそが、最近の「ジェスカイ」のデッキ名に「ダーク」と付くようになった理由だ。「本来、『ジェスカイ』に黒は必要ありません」と、セヴァーソンは言う。「『戦乱のゼンディカー』の土地によるマナ基盤の賜物です。『アラーラの断片』のような友好3色を使っていれば、友好色のフェッチ・ランドと2色土地だけで済んだはずです。しかし、《溢れかえる岸辺》では赤マナにアクセスできません。《窪み渓谷》のような色の噛み合わない土地を使う必要があったため、自然と黒も扱えるようになったわけです」

 ではその扱えるようになった黒のカードで、「ジェスカイ」は何をしたのだろうか?「《はじける破滅》は素晴らしいカードです。《包囲サイ》など、そのときの最大の脅威を除去しつつダメージも与えてくれますから」と、セヴァーソンは言う。「これにより、『ジェスカイ』は様々な角度から攻撃できるミッドレンジ・デッキになりました。プレイテストの結果、僕たちは『ジェスカイ』に明確な有利を取れるデッキを見つけられませんでした。それから、僕はずっとこのデッキをテストしていて、一番使い慣れていました。だから、今大会はこれで行こうと決めたんです」

 初日のフィーチャー・マッチでは、のちに今大会のトップ8に入賞することになる世界ランキング15位のオーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwaldから殿堂顕彰者の三原 槙仁まで、セヴァーソンは《ヴリンの神童、ジェイス》の「変身」と《はじける破滅》の力を存分に見せつけた。《束縛なきテレパス、ジェイス》の[+1]能力で対戦相手のクリーチャーのパワーを巧みに操ったセヴァーソンは、2/2の騎士・同盟者・トークンではなく《竜使いののけ者》を《はじける破滅》で狙い撃ちにし、三原がドラゴン・トークンをもたらそうとしていたところを阻んだのだった。

 では、そんな「ダーク・ジェスカイ」はどのような動きをするのだろうか?「コントロール寄りになりましたね――カードを引いて、軽量除去を駆使して――それから、サイドボードの強さはこの環境随一だと思います。コントロール相手には《強迫》、赤いデッキ相手には《光輝の炎》や白のライフ回復カードも使えます。僕は最後の最後まで悩んだ結果《アラシンの僧侶》は抜きましたが、採用してもいいと思います。そして何と言っても、このデッキは使っていて楽しいです。いつでも良いゲームが楽しめますよ」

「《ヴリンの神童、ジェイス》がスタンダードにある限り、このデッキも環境に存在すると僕は思います」と、セヴァーソンは続ける。「とはいえ《ヴリンの神童、ジェイス》を使うなら『白日の下に』系のデッキの方が強いですけどね。『ジェスカイ』の《束縛なきテレパス、ジェイス》は対戦相手の動きに対する解答をもたらす『だけ』ですが、『白日の下に』デッキのジェイスは《包囲サイ》を『フラッシュバック』できますから」

 このデッキの要は、《ヴリンの神童、ジェイス》のようだ。「プレイテストからも、《ヴリンの神童、ジェイス》は何が何でも除去しなければならないことを学びました」と、セヴァーソンは力説する。「今日も、そういう判断を求められるときがありましたよ。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》をプレイするか、5マナを費やして対戦相手の《ヴリンの神童、ジェイス》に《影響力の行使》を唱えるか。相手に《ヴリンの神童、ジェイス》を残したままアンタップを迎えさせれば、豊富な墓地から負けると判断した僕は、5マナで《ヴリンの神童、ジェイス》を『相手の戦場から除去』しました」

 他に、「ジェスカイ」のプランに欠かせないものはあるだろうか?「《時を越えた探索》ですね」と、セヴァーソンは迷いなく答えた。「《時を越えた探索》は絶対です。《宝船の巡航》を採用している形もありますね」今大会のトップ8に入賞したマーティン・ミュラー/Martin Mullerが選択した「ジェスカイ・トークン」は、ゲーム・プランを維持するために《宝船の巡航》を何枚か採用している。「《宝船の巡航》を採用する大きな理由は、マナ・コストです。この環境では複数の色マナを揃えるのは簡単なのですが、同じ色マナをふたつ用意するのは難しいという面があります。僕たちは、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を使うためにマナ基盤を調整しています。《雷破の執政》と《龍詞の咆哮》を使いたい場合は、《時を越えた探索》ではなく《宝船の巡航》の方を採用することになるでしょう。どちらにするか悩ましいところですが、どちらか片方は必ず採用しますね」

 それから、《搭載歩行機械》はこのデッキとどのように噛み合うのだろうか? このデッキに何をもたらすのだろう?「《搭載歩行機械》と本当に噛み合うのは、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》だけですね」と、セヴァーソンは言う。「飛行機械・トークンが並んでいれば、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》はさらに強力になりますよ。とはいえ、相手が《搭載歩行機械》に困って立ち回りが乱れてくれればそれで十分です。このデッキだと、他のデッキ、例えばクリスティアン・カルカノ/Christian Calcanoの『青黒アリストクラッツ』デッキのようなものほど《搭載歩行機械》を活かせません。それほど魅力的じゃないのは事実です。それでも、相手にすると本当に困るカードですからね」

 他の青を用いた戦略と「ジェスカイ」を分ける特徴はあるだろうか?「確定カウンターがないことと、《軽蔑的な一撃》がサイドボードにあることでしょうか」と、セヴァーソンは答えた。「それでもメインに2種類の『命令』を採用しています。ひとつは《オジュタイの命令》です。クリーチャー呪文を打ち消すモードとカードを引くモードを選ぶのが強いですね。特に《風番いのロック》を打ち消せるのが最高です。とはいえそれだけだったら――4マナでクリーチャーを打ち消してカードを1枚引くだけだったら――物足りないと思います。《オジュタイの命令》が本当にすごいのは、クリーチャーを戦場に戻すモードの強さです。《ヴリンの神童、ジェイス》を戦場に戻せるのは極めて強力ですし、《竜使いののけ者》を戻せるのも驚異的です。ただの1/1を除去する手段がないデッキもあります。除去されても、対戦相手のターンの終わりに《オジュタイの命令》で戦場に戻してやれば、すぐにドラゴンをもたらしてくれるんです」

「それから、《シルムガルの命令》も1枚採用しました」と、セヴァーソンは続ける。「コストが重いため1枚に留めましたが、このカードはミラー・マッチで輝きますよ。プレインズウォーカーを除去するのは難しいものですが、このカードなら《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》に対する最高の解答になります。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を破壊しつつ、トークンをバウンスしてやればいいんです。それから、《ヴリンの神童、ジェイス》と《束縛なきテレパス、ジェイス》の両方が戦場にあるときは、同時に処理できます。そして、こちらの戦場に《竜使いののけ者》がいる場合、対戦相手はそれを除去しにかかるでしょう。そのときは除去呪文を打ち消しつつ、おまけに相手のクリーチャーを除去してやりましょう」

 セヴァーソンは、《シルムガルの命令》による恩恵をもうひとつ挙げてくれた。「今日の試合であったことなんですが、対戦相手の《嵐の憤怒、コラガン》をバウンスしつつ、こちらの3/3《搭載歩行機械》を除去して飛行機械・トークンを生み出し、ブロックに活かすことができました。この動きには、自分で感動しましたよ」

 最後に、セヴァーソンはこのデッキの総括を述べて締めくくってくれた。「柔軟性の高さと解答の幅の広さ、それがこのデッキへの対処を難しくしています。大原則として、《ヴリンの神童、ジェイス》は必ず除去すること。それでも、他に強力な脅威がいくつもありますけどね」

Eric Severson - 「ダーク・ジェスカイ」
プロツアー『戦乱のゼンディカー』 / スタンダード
3 《平地》
1 《島》
3 《山》
1 《沼》
2 《大草原の川》
1 《燻る湿地》
1 《窪み渓谷》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《汚染された三角州》
4 《血染めのぬかるみ》
1 《神秘の僧院》
1 《戦場の鍛冶場》

-土地(26)-

2 《竜使いののけ者》
4 《ヴリンの神童、ジェイス》
2 《魂火の大導師》
4 《カマキリの乗り手》
3 《搭載歩行機械》

-クリーチャー(15)-
2 《乱撃斬》
1 《払拭》
2 《絹包み》
1 《勇敢な姿勢》
4 《はじける破滅》
2 《オジュタイの命令》
1 《シルムガルの命令》
3 《時を越えた探索》
3 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文(19)-
2 《龍王オジュタイ》
1 《黄金牙、タシグル》
2 《強迫》
1 《払拭》
1 《焦熱の衝動》
3 《軽蔑的な一撃》
1 《勇敢な姿勢》
3 《光輝の炎》
1 《影響力の行使》

-サイドボード(15)-

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