マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト

イベントカバレージ

【観戦記事】 決勝戦:瀧村 和幸(日本) vs. 玉田 遼一(日本)

【観戦記事】 決勝戦:瀧村 和幸(日本) vs. 玉田 遼一(日本)

By Masami Kaneko

2015年10月18日


 プロツアー・チャンプ。

 その昔、藤田剛史がプロツアー・東京2001で道を切り拓き。

 黒田正城が、小室修が、大澤拓也が、Kajiharu80(鍛冶友浩、齋藤友晴、八十岡翔太)が、三田村和弥がその栄冠をつかみ。

 今日、また新たな日本人が、そこにたどり着こうとしていた。


final_takimura_intro.jpg

 ひとりは、瀧村和幸。プロツアー『ニクスへの旅』ではじめてプロツアーという世界にデビューした彼は、再びプロツアー『運命再編』に参加すると、このイベントとプロツアー『タルキール龍紀伝』で立て続けに11勝5敗という好成績を残し、プロツアーの参加権利を維持。シルバーレベル・プロの地位を獲得しBIG MAGICのスポンサーを受け、マジックのプロとしてこのシーズン最初の一歩を踏み出すべく、プロツアーに参加した。

 そして、その一歩はとてつもなく大きな一歩となった。

 初日を6勝2敗の成績で切り抜けると、2日目のセカンドドラフトを2-1でまとめ、スタンダードラウンドを突き進んだ。スイスラウンド最終戦ではビデオ・マッチでアメリカの強豪リード・デューク/Reid Dukeを退けて決勝ラウンドに進出。準々決勝では世界選手権参加者でもあるマーティン・ミュラー/Martin Müllerを撃破し、準決勝ではポール・ディーン/Paul Deanとのアブザン同系対決で、トリプルマリガンに見舞われながら勝利を手繰り寄せた。

 まだ経験は浅いながら、「アブザン・アグロ」を手に、ビデオマッチでも堂々と落ち着いたプレイを見せ、世界にその実力を魅せつけたのだ。

final_tamada_intro.jpg

 もうひとりは、玉田遼一。過去に2回の日本選手権トップ8と2回グランプリトップ8入賞経験のある、実力派のシルバーレベル・プロだ。今年のワールド・マジック・カップの予選も突破し、12月に日の丸を背負って戦う彼は、今日個人としてプロツアーのトロフィーを獲得するべくこの決勝に臨む。

 初日を7勝1敗の好成績で切り抜けた玉田は、2日目も連勝を重ねて、一時はポールポジションについた。決勝ラウンドへの進出をかけた戦いでは同じく日本勢の高橋優太を下し、そして準決勝では、あの"Jonny Magic"ジョン・フィンケルを打ち倒し、この席についたのだ。

「ジェスカイ」というテクニカルなデッキを操る彼のプレイは、ビデオマッチを通し世界中のプレイヤーを魅了し、そして勝利という形で道を進んだ。そのゲームの美しさは、あのブライアン・デイヴィッド=マーシャル/Brian David-Marshallをして、「君のプレイは本当に美しい、見惚れる」と語るほどだ。

final_view.jpg

 プロツアー決勝戦。この3日間の戦いを戦い抜いた彼らは。

 このイベントの最後のマッチを戦うべく、準備を始めた。

ゲーム1

「お願いします。」という挨拶でゲームが始まる。これまでずっと「Good Luck」で挨拶してきたふたりが、ここで、母国の言葉で、この運命のゲームを開始した。

 ゲームは、瀧村の2ターン目、X=1の《搭載歩行機械/Hangarback Walker(ORI)》から動き出した。対処しにくいこのクリーチャーを前に、玉田は少考。《道の探求者/Seeker of the Way(KTK)》でダメージレースを挑む。

 だが、ここで瀧村は《搭載歩行機械/Hangarback Walker(ORI)》を成長させたうえで《ドロモカの命令/Dromoka's Command(DTK)》! この命令が《搭載歩行機械/Hangarback Walker(ORI)》を3/3まで成長させ、さらに《道の探求者/Seeker of the Way(KTK)》を破壊する。

 玉田は《カマキリの乗り手/Mantis Rider(KTK)》を展開し、このゲームはじめての戦闘ダメージが、瀧村に与えられる。この攻撃によって瀧村のライフは14に減少。だが、瀧村が続けて展開したのはアブザンを代表する1枚、《包囲サイ/Siege Rhino(KTK)》だった。

 玉田も負けてはいない。2体目の《カマキリの乗り手/Mantis Rider(KTK)》を呼び出し、ダメージレースの構え。『タルキール覇王譚』が出た当初から幾度と無く行わてきた因縁の対決、カマキリ vs. サイが、このゼンディカーの地でも行われているのだ。

 瀧村はそのサイを攻撃に向かわせ、《始まりの木の管理人/Warden of the First Tree(FRF)》を追加。そして、《ドロモカの命令/Dromoka's Command(DTK)》が3/3の《搭載歩行機械/Hangarback Walker(ORI)》が《カマキリの乗り手/Mantis Rider(KTK)》を撃ち落とし、さらに3体の飛行機械トークンが空に羽ばたく。アブザンの氏族が、地上だけでなく空も支配し始めた。

 玉田、次の猛攻を耐えるべく《ジェスカイの魔除け/Jeskai Charm(KTK)》を構えるが。攻撃を加えたうえでの2枚目の《包囲サイ/Siege Rhino(KTK)》が、大切な星をまずはひとつ、瀧村の元に届けた。

瀧村 1-0 玉田


 このプロツアー『戦乱のゼンディカー』決勝戦を戦うふたりに共通するのが、新たにシルバーレベル・プロになった若手だということだ。2014~2015年度シーズンで堅実な結果を残したふたりは、プロ・プレイヤーズ・クラブ:シルバー・レベルのステータスを身につけ、このプロツアーに参加した。

 事前に日本勢に話を聞けば、ふたりの実力を疑うものはいない。ふたりともが、周りの人間からは実力を認められながら、まだ世界にはその力を見せつけられなかった。

 ともすれば次のプロツアーに参加できるか危ぶまれるレベルだった彼らは、しかしこのゼンディカーの世界でその実力を見せつけ、今後のプロツアーへの参加を確かなものにしたのだ。

final_trophy.jpg

 そして、今、プロツアーチャンピオンという栄冠を手にするべく、この席で相まみえる。

ゲーム2

 玉田が「I play.」と宣言し、それを瀧村が「あいぷれい?なんで英語?」と聞き返す。「いや、これビデオ放送に流れてるんだし、英語じゃないとわからん人もいるしね。」と答えた玉田は、世界を確実に意識している。

 ゲームは瀧村の《始まりの木の管理人/Warden of the First Tree(FRF)》から始まった。これを受けるは玉田の《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》。瀧村は《始まりの木の管理人/Warden of the First Tree(FRF)》を重ねるが、玉田の《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》には対処できない。

 《搭載歩行機械/Hangarback Walker(ORI)》を追加する玉田。一方3マナを立てて何も展開できない瀧村。

 《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》がフェッチ・ランドの力を借りて《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound(ORI)》へ変身、さらには《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》!

 このプレインズウォーカーたちに対処するべく、瀧村は《包囲サイ/Siege Rhino(KTK)》を展開。数多のプレインズウォーカーを押しつぶしてきたであろうこのサイも、玉田含めて合計3人のプレインズウォーカーが相手では分が悪い。《焦熱の衝動/Fiery Impulse(ORI)》が《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound(ORI)》の力も借りて瀧村の2体の《始まりの木の管理人/Warden of the First Tree(FRF)》を焼き払い、盤面は《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》に元に集う同盟者で埋め尽くされていく。

 瀧村も負けじと追加の《包囲サイ/Siege Rhino(KTK)》を展開するが、玉田は《カマキリの乗り手/Mantis Rider(KTK)》を展開。地上が止められたならば、空を。

 少考のうえ《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》を犠牲にし、自軍を強化した玉田。ギデオンの魂を乗せた《カマキリの乗り手/Mantis Rider(KTK)》が攻撃を加えたうえで、さらに追加の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》を展開した。

 どうにか《風番いのロック/Wingmate Roc(KTK)》で盤面を切り抜けようとする瀧村に対して、ギデオンが再びその身を犠牲に紋章を玉田のもとに。さらに《ジェスカイの魔除け/Jeskai Charm(KTK)》も重ねた玉田の攻撃を、瀧村は耐えることができなかった。

瀧村 1-1 玉田

final_tamada1.jpg

 玉田遼一。大阪でマジックをプレイする彼は、謙虚な好青年だ。ポールポジションにつけば「いや、ただの上ブレなんで」と語り、トップ8に進出すれば「たまたまです」と謙遜し、準決勝でジョン・フィンケルを打ち倒せば「もうこれでも満足」と破顔する。

 だが、この決勝ラウンドの席でのプレイ、眼光を見れば、その心は強い情熱で燃えているのがわかるはずだ。多くの苦しい試合、細い道を、その正確なプレイで渡りきったのだ。これ以上ない形で世界デビューを果たした彼は、栄冠を掴むべく、この決勝戦に挑む。

ゲーム3

 瀧村が《搭載歩行機械/Hangarback Walker(ORI)》、玉田が《道の探求者/Seeker of the Way(KTK)》というゲーム1と同様の立ち上がり。

  • 《真面目な訪問者、ソリン/Sorin, Solemn Visitor(KTK)》
  • 《風番いのロック/Wingmate Roc(KTK)》
  • 《先頭に立つもの、アナフェンザ/Anafenza, the Foremost(KTK)》
  • 《包囲サイ/Siege Rhino(KTK)》
  • 《ドロモカの命令/Dromoka's Command(DTK)》

という高カロリーな手札の瀧村、しかし4枚目の土地を置けずにターンを終える。

 玉田は《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》を展開。瀧村も《ドロモカの命令/Dromoka's Command(DTK)》で《搭載歩行機械/Hangarback Walker(ORI)》を4/4としたうえで《道の探求者/Seeker of the Way(KTK)》を破壊、さらには4枚目の土地を引き、《包囲サイ/Siege Rhino(KTK)》で盤面を圧倒していく。

 しかし玉田はこれを《勇敢な姿勢/Valorous Stance(FRF)》と《ジェスカイの魔除け/Jeskai Charm(KTK)》で対処。《包囲サイ/Siege Rhino(KTK)》が破壊され、《搭載歩行機械/Hangarback Walker(ORI)》はライブラリーの上に。

 瀧村は少し考え《搭載歩行機械/Hangarback Walker(ORI)》をふたたび展開するが、また同じく《ジェスカイの魔除け/Jeskai Charm(KTK)》が。みたび登場した《搭載歩行機械/Hangarback Walker(ORI)》を《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke(KTK)》が受け止め、返す刀で《カマキリの乗り手/Mantis Rider(KTK)》!

 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》率いるこの軍勢に対処しきれない瀧村は、カードを片付け次のゲームに向けての準備を始めた。

瀧村 1-2 玉田

final_takimura1.jpg

 スイスラウンド最終戦を終え、12勝3敗1分けでトップ8進出を確定させた瀧村は、「妻、チーム豚小屋、市川ユウキさん、応援してくれたみなさんのおかげです。」と語った。

「チーム豚小屋」とは、日本のマジック・コミュニティの名前だ。その昔、草の根大会の下位テーブルの隔離部屋。そこに集結していた彼らが、自分たちのグループを多大な自虐を込めて「豚小屋」と名付けた。

 その「豚小屋」勢が、草の根大会の上位に名を連ねるようになり、100人を超えるイベントでも優勝するようになり、そして、グランプリのトップ8に名前が出るようになり。

 自虐から誇りへ。

 今、「プロツアー優勝」という栄誉を前に、「豚小屋」という言葉には。

 この席についたという自負と、そして仲間からの万感の想いが乗せられているのだ。


ゲーム4

 玉田がマリガン、苦笑しながら6枚でキープ。そしてなんと、1ターン目を土地を置かずにターンを終えた。バンクーバーマリガンによる「占術1」に頼ったキープだが、裏目に出てしまったか。

 一方、《搭載歩行機械/Hangarback Walker(ORI)》を連発する瀧村。1枚は土地を引くものの、2枚目の土地が引けず苦笑しながら手札を溢れさせる玉田。

 土地が止まって動けない玉田に対して《包囲サイ/Siege Rhino(KTK)》。次のターンも土地を引けなかった玉田。勝敗は最終ゲームまでもつれ込んだ。

瀧村 2-2 玉田

 多くの視聴者が疑問を覚えたであろう、このゲーム4。はたしてこのキープはミスだったのか?

 結果論で語れば、もちろん「もう1回マリガンすれば良かった」だろう。だが、玉田の考えは違う。

「先手で即キープのアブザン・アグロに対して、5枚スタートで勝てるわけがない。だったらこの手札で、『占術1』も含めて3枚見た中に、2枚の土地があるほうが確率が高い。《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》のあるこの手札なら、土地を2枚引けば戦える。」

 後にそう語った玉田。結果は結果。しかし、そこに至るまでの過程、その思考にこそ意味があるのだ。

 そして、その「結果」を出すべく、玉田は、瀧村は最後のゲームに進む。


ゲーム5

 ふたたびマリガンになった玉田に対して、瀧村はじっくりと考えたキープ。玉田は6枚でキープし、今度こそ土地を置いてゲームをスタートした。

 《始まりの木の管理人/Warden of the First Tree(FRF)》を展開した瀧村に対して、玉田は《焦熱の衝動/Fiery Impulse(ORI)》を撃ち込んだうえで、《カマキリの乗り手/Mantis Rider(KTK)》。ダメージレースを先行していく。

 様々な選択肢のある瀧村だが、まずは《絹包み/Silkwrap(DTK)》で盤面の脅威に対処。そして何も展開できなかった玉田に対して、《強迫/Duress(DTK)》!

 これが2枚の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》と《風番いのロック/Wingmate Roc(KTK)》をさらけ出し、片方の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》が墓地へ。

 後手に回ってしまった玉田、とりあえず《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》を展開するが、瀧村は《搭載歩行機械/Hangarback Walker(ORI)》を展開したうえで《ドロモカの命令/Dromoka's Command(DTK)》!

 この命令が同盟者・トークンを打ち倒し、《先頭に立つもの、アナフェンザ/Anafenza, the Foremost(KTK)》が重い一撃を《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》に与え、ギデオンは退場。

 そして。

 初登場の『タルキール覇王譚』で、「プロツアーチャンピオン」という肩書をアリ・ラックス/Ari Laxに与えたこのサイは。

 玉田のライフとともに、ふたたびプロツアー『戦乱のゼンディカー』チャンピオンというタイトルを、瀧村和幸のもとに届けたのだ!

瀧村 3-2 玉田

final_shakehands.jpg

 優勝インタビューで、「家に帰って、妻に会いたい」と語った、今年末に結婚するという瀧村。

 世界最高の名誉を手にした戦士は、日本に帰り、またすぐに戦いに旅立つ。

 そう、またすぐに彼には、「プラチナレベル・プロ」としての戦いが待っているのだから。

 だから、今は少しばかりの休息を。仲間とともに。家族とともに。

final_champion_takimura.jpg

おめでとう瀧村和幸、プロツアー『戦乱のゼンディカー』チャンピオン!

前の記事: 【英語記事】 Finals: Kazuyuki Takimura vs. Ryoichi Tamada | 次の記事: 【トピック】 プロツアー『戦乱のゼンディカー』 トップ5カード
プロツアー『戦乱のゼンディカー』 一覧に戻る