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【観戦記事】 決勝戦:意趣返しShaun McLaren(カナダ) vs. Jacob Wilson(カナダ)

【観戦記事】 決勝戦:意趣返し
Shaun McLaren(カナダ) vs. Jacob Wilson(カナダ)

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Nate Price / Tr. Tetsuya Yabuki

2014年2月23日

原文はこちら

ショーン・マクラーレン/Shaun McLaren(白青赤コントロール) vs. ジェイコブ・ウィルソン/Jacob Wilson(メリーラ・ポッド)

 プロツアー決勝の舞台に流れる空気というのは、何とも言えないものだ。ライトの熱に晒され、周りをジャッジとカメラに取り囲まれ、一挙手一投足がマジックの世界に生きるすべての人間から観察され、分析されている感覚は、大いに神経をすり減らすことだろう。加えて今大会のトップ8・ラウンドは、観客の声や雑音が入らないように、離れた場所に設営された特別な舞台で行われている。「緊張する」なんてものではない。

 しかしそれに反して、今この場に流れる空気は、ここまで激戦に次ぐ激戦が繰り広げられてきたトップ8・ラウンドと比べ穏やかだった。きっとその理由のひとつは、この場に座るショーン・マクラーレンとジェイコブ・ウィルソンの両者が仲の良い間柄であるためだろう。ピエール・ダジョン/Pierre Dagenとジェレミー・デザーニ/Jeremy Dezaniが決勝を争った、プロツアー『テーロス』のように。両者とも力みは感じられず、いくつか冗談も飛び出す。

「いやあ、このデッキ他のやつに全然及ばないよ」とマクラーレンは苦笑した。

 そう述べる彼のデッキは今週末ここまで9勝2敗1分を記録し、彼を予選ラウンド1位通過、そして決勝の舞台へと導いている。モダンでの勢力は「白青赤フラッシュ」の方が圧倒的だが、それを発展させたこの「白青赤コントロール」はこの環境に存在する優秀なコントロール的要素を満載し、それがこのデッキを選択した主な理由だという。一方ウィルソンは、解答を豊富に持ちながら対戦相手に対応を迫ることができるデッキを選んだ。彼自身「メリーラ・ポッド」打倒に挑戦し失敗したことから、ウィルソンは倒せないなら使えばいい、と判断したのだ。

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親しい友人同士であるショーン・マクラーレンとジェイコブ・ウィルソン。すべてがかかるこの一戦でも、緊張は見られない。

ゲーム展開

 マクラーレンの初手は必要なカード――打ち消し呪文と土地――が揃った強力なものだった。《根の壁》に《差し戻し》、3ターン目《出産の殻》には《マナ漏出》、とウィルソンの序盤の動きを抑えることに成功する。さらに4ターン目《イーオスのレインジャー》にも《瞬唱の魔道士》から《マナ漏出》で対処した。

 ゲーム中盤を迎えると、状況はマクラーレン有利に大きく傾いていた。彼はウィルソンの繰り出す脅威のほとんどを打ち消し、通ったものは火力で焼き払った。さらに《地盤の際》を2枚使い、若き殻使いの持つ土地をわずか2枚まで減らした。もがくウィルソンを後目に完全に優位を取ったマクラーレンは、《天界の列柱》と《稲妻》で素早く攻め込み、ウィルソンが土地を引き込む前に勝負を決めた。3本先取で行われる決勝の第1ゲームを取ったのは、マクラーレンだ。

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マクラーレンのデッキは、ときに対戦相手の展開を一切許さない。

 ウィルソンはトップ8・ラウンドのどこかで、コントロール・デッキに対してはコンボに頼らずクリーチャーで攻撃していきたい、と述べていた。第2ゲーム、彼は《根の壁》から《強情なベイロス》、《イーオスのレインジャー》とプレイし、そのプランを実行に移そうとする。《強情なベイロス》は《マナ漏出》を受けたものの、他はすべて戦場に着地する。4ターン目を終える頃には、ウィルソンの戦場に6体のクリーチャーが並んだ。

 マクラーレンは《斑岩の節》というかなり珍しいカードを用い、ウィルソンのクリーチャーたちを少しずつ削っていった。ところが、それでは遅すぎた。ウィルソンは《永遠の証人》で《召喚の調べ》を回収し、クリーチャーを展開し続ける。盤面の有利をさらに進めれば、あとは《思考囲い》をマクラーレンへ撃ち込み、投了を促すだけだ。

 両プレイヤーとも、このマッチアップに採用できるサイドボードは非常に多い。第2ゲームの流れを見ると、マクラーレン側にとって《神々の憤怒》がより重要性を増すだろう。ウィルソンのようにクリーチャーでの勝利を狙う相手に対して、この『テーロス』のレアは劇的に効く。厄介な「頑強」を持つクリーチャーがあるなら、尚更だ。先ほどのゲームでマクラーレンがこれを持っていたなら、ウィルソンの軍勢をすべて流すことができ、敗色濃厚の状況が一転していただろう。

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「メリーラ・ポッド」を操るウィルソンだが、彼は皮肉にもトップ8・ラウンドのほとんどで《シルヴォクののけ者、メリーラ》のコンボをサイド・アウトした。

 第3ゲーム、ウィルソンは勝負の鍵となるサイド・カードのひとつ、《思考囲い》からゲームを始めた。マクラーレンの手札を見ると、彼は《マナ漏出》、《謎めいた命令》、そして残りは土地、という手札をキープしていた。ウィルソンは《マナ漏出》を抜き去り、3ターン目《出産の殻》が通る道を整える。しかし、マクラーレンはウィルソンが《出産の殻》を繰り出す前に《石のような静寂》を引き込み、《出産の殻》の機能を停止させた。

 《出産の殻》の方針を断たれたウィルソンはクリーチャーを展開し、攻撃という昔ながらの勝利手段を選ぶ。ちょうど《イーオスのレインジャー》も引き込み、《貴族の教主》を2体持ってくると、《イーオスのレインジャー》は6点のダメージを稼ぎ出す脅威となった。マクラーレンは《謎めいた命令》でウィルソンの攻撃を防ぎ、同時に《神々の憤怒》を求めてドローを進めた。引いたのは《流刑への道》で、《イーオスのレインジャー》には対処できた。しかし大量の「賛美」を止められず、ウィルソンの戦場に残ったクリーチャーはいまだ強大な脅威であった。

 マクラーレンのデッキは彼に追加の除去をもたらさず、沈黙を通した。追い詰められた彼は《天界の列柱》を起動して、チャンプ・ブロックに入る。これで青マナを失ったことをあざ笑うかのように、マクラーレンのデッキは《謎めいた命令》を彼に渡した。続くターンには《稲妻》も引き込んだが、ウィルソンが《思考囲い》でそれを抜き去り、勝利への道をこじ開けた。《臓物の予見者》でクリーチャーを墓地へ送り込み、それらを《漁る軟泥》が食べると、与えるダメージは致死量に届いた。

 第4ゲームも、序盤はほぼ同じだった。ウィルソンがクリーチャーを唱え、マクラーレンがそれを打ち消す。先ほどのゲームと異なっていたのは、マクラーレンが隙を埋める除去を多く持っていたことだ。ウィルソンの盤面が空になると、マクラーレンは《復讐のアジャニ》を着地させ、ウィルソンの展開を抑えながら着実に忠誠度を伸ばしていった。

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マクラーレンはこの週末を通して、モダンで《蒸気孔》と《神聖なる泉》が組み合わされると実に恐ろしいコントロール・デッキが完成する、ということを証明し続けてきた。

 マクラーレンが《復讐のアジャニ》の忠誠度を高める中で、ウィルソンは盤面にクリーチャーがなく機能していない《出産の殻》を信じ、耐えた。数ターン後、《台所の嫌がらせ屋》が戦場に降り立つと《出産の殻》が息を吹き返し、《台所の嫌がらせ屋》を《残忍なレッドキャップ》へ変えた。《残忍なレッドキャップ》は《復讐のアジャニ》にダメージを与え、最終奥義から後退させる。これで《出産の殻》がタップされ、マクラーレンは《復讐のアジャニ》の[+1]能力の対象を《寺院の庭》から《出産の殻》に変えた。

 ウィルソンは手札にカードを抱えており、縛られていたマナも解放された。そこで彼は展開を始める。ところが、その展開はマクラーレンが抱えていた《神々の憤怒》の餌食となり、盤面はリセットされた。ウィルソンは次の展開を始める前に《思考囲い》でマクラーレンの手札を確認し、2枚目の《神々の憤怒》が公開されるなりそれを抜き去った。これでマクラーレンの手札には《島》1枚と《斑岩の節》のみとなる。ウィルソンは素早く1マナ域2枚を戦場に加え、ターンを渡した。

 マクラーレンの《復讐のアジャニ》が忠誠度を7まで高め、不穏な空気を醸し出す。ウィルソンは《復活の声》と《納墓の総督》を盤面に加え、さらに前のターンに除去されていた《極楽鳥》も戦場に復帰させ、きたる最終奥義に備えた。マクラーレンは《流刑への道》で《極楽鳥》を取り除き、続けてウィルソンの土地をすべて吹き飛ばした。

 迎えたウィルソンのターン、彼がデッキ・トップをめくると、《新緑の地下墓地》という最高のドロー。ウィルソンはこれまでにないほど素早くフェッチ・ランドを切り《森》を手に入れると、《出産の殻》を起動し《納墓の総督》を《目覚ましヒバリ》へ変えた。今大会最大級の劇的なターンを見せたウィルソンだったが、それでもなお、彼は危険な状況にあった。先ほどの《出産の殻》起動で彼のライフは3まで落ち込み、マクラーレンのデッキにある火力呪文の圏内に入ってしまったのだ。さらにマクラーレンの戦場には《斑岩の節》もあり、《出産の殻》でクリーチャーの入れ替えを行ってもそれを失う危険があった。状況は確かに厳しい。しかしここで土地をトップしなければ、ゲームは続いていなかったのだ。

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土地をすべて失うという厳しい展開を迎えた第4ゲーム、それでもウィルソンは逆境に負けず、プロツアー初優勝への道を探る。

 戦場に残るのは《目覚ましヒバリ》、《森》1枚、《出産の殻》のみ。ウィルソンは必死に食らいついていた。マクラーレンはターンを迎えると、《目覚ましヒバリ》を除去した後も《斑岩の節》がしっかりと戦場に残るように、《天界の列柱》を起動した。ウィルソンは《目覚ましヒバリ》の効果で《極楽鳥》と《復活の声》を戦場に戻す。マクラーレンは《流刑への道》で《極楽鳥》を取り除くと、《天界の列柱》で攻撃し最後の戦いへと駒を進めるのだった。

 すべてがかかる最終戦、ウィルソンは1枚少ない手札でゲームを始めることになった。マリガン後の手札もキープをしばらく悩むものだったが、《極楽鳥》、《復活の声》、そして土地4枚という手札はキープできると判断した。彼は最初のドローで《思考囲い》を引き込み、マクラーレンの手札から危険性の高い《電解》を抜き去ることに成功する。残る手札は《大祖始の遺産》、《瞬唱の魔道士》、それと土地だ。

 ウィルソンは攻勢に入る。これまでのゲームとは比べ物にならないほど遅い攻めだったが、この時点でマクラーレンの手札にはそれを止めるすべがなかった。ところが、《流刑への道》がウィルソンの唯一の攻め手を追放し、状況を変えた。《瞬唱の魔道士》も手札に控えているマクラーレンが、ゲームをコントロールしだす。《強情なベイロス》がウィルソンの戦場に駆けつけるが、マクラーレンの《瞬唱の魔道士》が《流刑への道》を引き起こし、追放した。これで両者とも手札に有効打がなくなり、盤面はマクラーレンがやや有利だった。ここからはトップデッキ勝負に突入する。

 先に新たなカードを手に入れたのはマクラーレンだった。《大祖始の遺産》を使いドローを進めると、悪くない引きを見せた。このターンに《マナ漏出》、《不忠の糸》と脅威を2枚集めると、続くターンには2枚目の《マナ漏出》も加わった。マクラーレンの手札は充実し、《瞬唱の魔道士》1体で殴り切れそうな状況になった。ウィルソンは《瞬唱の魔道士》こそ数ターン後に対処できたものの、マクラーレンの手札はあまりに強力だった。ウィルソンがトップデッキした《漁る軟泥》を繰り出すと、マクレーンはそれを《不忠の糸》で奪う。

 最後の一撃は、ウィルソン自身のクリーチャーによるものとなったのだ。

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ショーン・マクラーレン、プロツアー『神々の軍勢』優勝おめでとう!

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