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プロツアー『タルキール龍紀伝』

戦略記事

ドラフト全勝者たち

矢吹 哲也
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Craig Jones / Tr. Tetsuya Yabuki

2015年4月11日


 うーむ......ドラフトの記事をもうひとつか。私がリミテッドをあまり得意としていないことは、よく知られているはずだ、そうだよね? そんな私にドラフトの記事を書かせるということはつまり、他の上手い人に話を聞いてこいということだろう。きっと得るものがあるはずだ。

 今大会、プロツアー『タルキール龍紀伝』のドラフト部門では、3人のプレイヤーが6戦全勝を果たした。そこで私は彼らに取材を申し込み、ドラフト成功の要因を語ってもらった。

 10月のプロツアー『タルキール覇王譚』でも上位32位以内に入賞しているスティーヴ・ルービン/Steve Rubinは、今大会のドラフト・ラウンドで2回とも緑をドラフトした(初日は赤、2日目は白を相棒にした)。彼はアグレッシブさがこの環境の鍵だと捉えた。彼が言うには、この環境では対戦相手を守勢に回らせ、そのまま押し切るまでプレッシャーをかけ続けたいとのことだ。彼はとりわけ1つの呪文を挙げるのは難しいと言いつつ、《ドロモカの贈り物》と《切翼の宴》といったカードが役に立ったという。とりわけ《ドロモカの贈り物》はかなり遅い順目で手に入ることが多々あり、驚いたそうだ。

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今シーズン、その名を上げているスティーヴ・ルービン。彼はいくつかのプランをまとめて現在のドラフト環境に挑んだ。

 プロツアー前の練習として、ルービンは彼の所属するチームで6回か7回ドラフトを行った。その練習を経て、彼は青をドラフトしないことを決めた。青は『運命再編』に強力なカードを有しているが、『タルキール龍紀伝』のコモンが弱いのだという。以前のドラフト環境なら、彼は構えて待つ戦略を好んだ。環境が変わった今、彼は戦い方を変え、青をできる限り避けて積極的に攻める方針をとったのだ。

 そんなルービンと対照的に、同じく全勝のカイル・ボージェム/Kyle Boggemesはドラフト2回とも青黒のデッキに仕上げた。彼もまた、いつでも率先して動けるデッキをドラフトすることが成功の秘訣だと確信している。初日のドラフトでは、彼は「疾駆」を持つカードを多くピックし、2日目のドラフトでは飛行を持つクリーチャーを多く集めた。これにより、彼は後手を選ぶプレイヤーを仕留めてきたのだ。それから、打ち消し呪文も多くピックした。私も実際に、第11回戦で彼が《否定》のようなカードを駆使する姿を目にした。

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青黒の戦略でドラフト・ラウンド6戦全勝を遂げた、カイル・ボージェム。

 ボージェムは今大会に向けて、10回ほどドラフトを練習した。その経験から、青黒が最高のアーキタイプだと心に決めたのだ。その戦略にこだわる必要はないものの(「反復」を活かした白青の前のめりな形も、必ず意識するアーキタイプだという)、彼は2日目のドラフトで幸運にも《屍術使いのドラゴン》を引き当て、方針はすぐに決まったのだった。

 最後にご紹介するドラフト全勝プレイヤーは、エイドリアン・サリバン/Adrian Sullivanだ。彼は赤を好んだものの、初日のドラフトでは《陽焼の執政》を引き当て白黒タッチ青のデッキに落ち着いた。それでも、2日目のドラフトでは彼自身も「理想そのもの」と評した赤白のデッキを仕上げた。

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エイドリアン・サリバンは、広く知られている「青黒が最強」という説に真っ向から反対し、《剣歯虎の先導隊》といった強力なクリーチャーを擁する赤で安定した成績を残した。

 サリバンはチーム「Ultra PRO」の一員として今大会に出場し、練習も抜かりなく行ってきた。彼のホーム・エリアであるウィスコンシン州マディソンでは、新セットが発売するたびに「ドラフト強化合宿」が行われるのだという。今大会前にも、彼は20回ほどドラフトをこなしてきた。合宿には30人ほどのプレイヤーが参加し、そのうち12人か13人が今大会に参加する。それ以外のプレイヤーもほとんどがプロツアー経験者で、プレイのレベルが高いそうだ。「プロツアーでもそうお目にかかれないドラフト卓だ」と、サリバンは言う。

 彼はこの環境のドラフトを、「決してブロックに回りたくない環境だ」と評した。必要なのは攻撃か、あるいはクリーチャーの除去だという(初日のドラフトでは、サリバンは後者の戦略に頼った)。また『タルキール龍紀伝』でお気に入りのコモンを尋ねると、彼は《剣歯虎の先導隊》を挙げた。こいつはマナコストに相応しい強打を持ち、「圧倒」が機能しだせばブロックするのが極めて難しくなる。《龍詞の咆哮》のようなカードよりも優先したい、とサリバンは主張した。

 以上のように、全勝者3人が語る戦略はそれぞれ大きく異なっていた。『タルキール龍紀伝』のブースタードラフトを完全に把握するには、まだいくつかの大会を経る必要があるのかもしれない。

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RESULTS

対戦結果 順位
16 16
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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