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【戦略記事】 プロツアー『異界月』・初日アーキタイプ分析

【戦略記事】 プロツアー『異界月』・初日アーキタイプ分析

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Marc Calderaro / Tr. Tetsuya Yabuki

2016年8月5日

原文はこちら

今回のアーキタイプ分析は、シム・チャップマン/Chapman Sim協力のもとに行われました。各アーキタイプの数やその内容をまとめ、詳細なデータとして見やすく合理的なものにできたのは、彼の協力の賜物です。この場を借りて御礼申し上げます。


 各デッキの数とその内容をお届けしよう! 新セット導入後の新たなスタンダード環境を深く調査するなら、やはりプロツアーに目を向けて、このフォーマットに新風を吹き込むプロ・プレイヤーたちが何をもたらすのかに注目すべきだろう。プロツアー『異界月』も例外ではなく、多くのプレイヤーが新環境の海へ潜っていった。

 今大会を迎えるにあたり、プレイヤーたちは(《呪文捕らえ》という新たな戦力の登場によりアーキタイプとして一層強化された)「バント・カンパニー」が最大の勝ち組であると見ていた。データを見るに、「理論上」その視点は正しいと言えるだろう。理論的には「バント・カンパニー」、その通りだ。

 だがデータを紐解いていくと、メイン・デッキに目新しいカードたちの姿が現れた――《約束された終末、エムラクール》、《最後の望み、リリアナ》、《老いたる深海鬼》、《コジレックの帰還》、《ヴォルダーレンの下層民》、《憑依された死体》(と《秘蔵の縫合体》の組み合わせ)。

 早速、全体のアーキタイプ分析を見てみよう。

アーキタイプ使用者数使用率
バント・カンパニー5819.20%
黒緑「昂揚」3712.30%
白黒コントロール217.00%
青黒ゾンビ196.30%
4色「現出」175.60%
ティムール「現出」175.60%
緑白トークン144.60%
黒緑ミッドレンジ124.00%
ジャンド「昂揚」124.00%
赤緑ランプ82.60%
白青スピリット72.30%
バント・スピリット62.00%
ナヤ「伝説」62.00%
スゥルタイ・コントロール62.00%
白黒天使62.00%
赤緑「昂揚」ランプ51.70%
青黒「マッドネス」41.30%
白単人間41.30%
ゾンビ「現出」41.30%
バント・エルドラージ・儀式31.00%
青赤「熱病の幻視」31.00%
赤単ゴーグル31.00%
アブザン・コントロール20.70%
バント人間20.70%
黒緑「過ぎ去った季節」20.70%
青緑「現出」20.70%
青単「岸の飲み込み」20.70%
4色「悪魔の契約」10.30%
5色スーパーフレンズ10.30%
アブザン「過ぎ去った季節」10.30%
黒緑サクリファイス10.30%
黒赤コントロール10.30%
青黒コントロール10.30%
青赤「現出」10.30%
無色エルドラージ10.30%
エスパー・コントロール10.30%
グリクシス・コントロール10.30%
赤白「伝説」10.30%
「狼の試作機」搭載型「昂揚」10.30%
黒単コントロール10.30%
黒単ゾンビ10.30%
赤単アグロ10.30%
赤単エルドラージ10.30%
ナヤ・プレインズウォーカーズ10.30%
赤緑トークン10.30%
赤白ゴーグル10.30%
スゥルタイ「現出」10.30%
合計302 

 ご覧の通り、メタゲームの19.2%を占めて環境トップとなっているのは「バント・カンパニー」だ。しかし、これは想定されていた数字よりずっと少ない(30%に達するのではないかとも予想されていたのだ)。そして2位以下も刺激的なデッキが多く名を連ねている。「バント・カンパニー」の選択が正解だったのかどうかは、日を経ることでわかるだろう。

 墓地に4種類以上のカード・タイプを揃えることで強化される呪文を用いて強力な動きを見せる「黒緑『昂揚』」は、『異界月』が導入されるなり環境で2番手の地位を獲得した。《過去との取り組み》や《群れの結集》、そしてときに《発生の器》も採用することで、このデッキは効率よく「昂揚」を達成する手段を得た。なんとこのデッキ、3ターン目には「昂揚」を達成し、4/4の《残忍な剥ぎ取り》で攻撃してくるのだ! だがこのデッキの力はまだまだそんなものじゃない。

 このアーキタイプは、大きくふたつに分かれている。すなわち、《残忍な剥ぎ取り》を用いるか《過去との取り組み》を用いるかのふたつだ。それらの採用基準は「どれだけ攻撃的に向かうか」ということになるが、どちらも「アグロ」と呼べるほど前のめりな形ではない。ただしひとつだけ、《狼の試作機》まで採用して早ければ3ターン目に大打撃を与える「『狼の試作機』搭載型『昂揚』」デッキは、まさしく「アグロ」と呼ぶべきものであったことを付記しておこう。ほぼすべての「黒緑『昂揚』」デッキに採用されていたのは、《墓後家蜘蛛、イシュカナ》と新たにゲートウォッチ入りした《最後の望み、リリアナ》だ。《最後の望み、リリアナ》は、クリーチャーの除去に「昂揚」のサポート、墓地のクリーチャー回収にと、あらゆる仕事をこなす1枚となっている。

 また、資料を見ると《ウルヴェンワルド横断》の採用枚数が108枚となっており、恐らくこれが「黒緑『昂揚』」デッキで最も多く使われたカードになると思われる。

 それからもちろん、《約束された終末、エムラクール》にも注目すべきだろう――この怪物は、いとも容易く13ターン目を待たずして姿を現しているのだ。

 「ジャンド『昂揚』」や「スゥルタイ『昂揚』」、「黒緑ミッドレンジ」も合わせると、「黒緑」という色の組み合わせは以前の「黒白」の地位を奪い一大勢力を築いているようだ。現在の「黒緑」に「コントロール」デッキの姿は見受けられず、多くはかつての「The Rock」や「ジャンド」のような形になっている。各マナ域で対戦相手より優れたカードを繰り出し、「昂揚」や墓地を利用して勝利を目指すものだ。

 次に特筆すべきは、ゾンビの侵攻だろう! 最も使用されているのは「青黒ゾンビ」だが、中には「青黒マッドネス」や「黒単ゾンビ」、「ゾンビ『現出』」という形もある。多くの形に共通して採用されているのは《憑依された死体》や《墓所破り》、《波止場の潜入者》、《最後の望み、リリアナ》、《ヴリンの神童、ジェイス》となっており、存分に墓地を活かしている。《ギサとゲラルフ》や《ゲトの裏切り者、カリタス》といったカードを採用した手の込んだリストもあったが、どの形も墓地にクリーチャーを詰め込みカードを引き、そして(何よりも)《ヴォルダーレンの下層民》で盤面を一掃していた。

 《ヴォルダーレンの下層民》は、《憑依された死体》のようなカードと組み合わせることで凄まじい力を発揮する。こちらは生け贄に捧げても痛くないクリーチャーや再利用できるクリーチャーを失うのに対して、対戦相手は貴重な「戦力」を生け贄に捧げなければならないのだ。

 これらの最新カードを用いてデッキ構築を楽しんできた方は、あるカードがいまだに紹介されていないことを不思議に思っているだろう――お待たせした、《秘蔵の縫合体》だ。すでにあらゆる「ゾンビ」デッキがこのカードを採用しているが(唱えられないのに採用しているリストもあるほどだ)、どうやらその活躍はエターナル・フォーマットだけに終わることはないようだ。《憑依された死体》と組み合わせることで、なんと《秘蔵の縫合体》は「ゾンビ」でないアーキタイプにまでタッチされている。今大会ここまでで、最も面白いエピソードと言えるだろう。

 「ゾンビ」以外で《秘蔵の縫合体》と《憑依された死体》を用いた最も注目すべきデッキは、「4色『現出』」だ。「現出」は今大会で多く使用されているメカニズムであり、「4色『現出』」に「ティムール『現出』」も加えると、メタゲームの実に12%を占めている! どちらの「現出」デッキも、墓地を満たし(できればここで《コジレックの帰還》も落としておきたい)、大型クリーチャーを「現出」で繰り出し(同時に《コジレックの帰還》が誘発して盤面を一掃する)、あとはひたすら暴力を叩きつけるのみだ。《ウギンの聖域》は《老いたる深海鬼》を連鎖させるのに使う他に、コストが軽減された巨大な《約束された終末、エムラクール》やその他の大型クリーチャーを呼び寄せることもできる。

 そしてここに《秘蔵の縫合体》と《憑依された死体》が加わる。

 「ティムール『現出』」と「4色『現出』」の最大の違いは、《秘蔵の縫合体》と《憑依された死体》がフル投入されていることだ。クリーチャーを墓地から再利用することで、低コストで「現出」の種を手に入れられるだけでなく(どのように戦場へ出したとしても、生け贄に捧げればその点数で見たマナ・コスト分「現出」クリーチャーのコストを軽減できる)、《州民を滅ぼすもの》のようなカードで小粒な「現出」の種たちを強化して莫大なダメージを与えることもできる! 実に......大味なゲームになるだろう。

 以上のように注目すべき点が多くあったため、今回の記事では最大勢力の「バント・カンパニー」が話題の中心にならなかった。「現出」デッキは、《秘蔵の縫合体》や《コジレックの帰還》のような既存のカードを一線級に押し上げた。《最後の望み、リリアナ》や《過去との取り組み》、《墓後家蜘蛛、イシュカナ》、《残忍な剥ぎ取り》は「昂揚」戦略を前進させ、そして《ヴォルダーレンの下層民》が至るところで姿を現した。

 木曜日、私はトップ・プロたちにふたつの質問を投げかけた。ひとつは「『バント・カンパニー』はメタゲームの何%を占めると思いますか?」 そしてもうひとつは「『バント・カンパニー』を使用するプレイヤーに隙はないのでしょうか?」

 ほぼすべてのプレイヤーが、ふたつ目の質問に「盤石ではない」と答えた。プロは知っていた。「バント・カンパニー」を脅かすデッキが存在することを。彼らは知っていた。それらのデッキは、今大会の倒すべき怪物である《集合した中隊》と、少なくとも善戦を繰り広げるだろう、と。

 ここで紹介した新デッキの数々がその力を発揮し、使用者をトップ8へ導くかどうかはまだわからない――だが膨大な数の新デッキや新カードが使われている今の状況を見ると、これからの構築フォーマットが楽しみになるのは間違いない。この週末だけでなく、今後のグランプリ、プロツアー予選、そしてフライデー・ナイト・マジックでは、どのようなデッキが活躍するだろうか......

......いやはや、《サリアの槍騎兵》で《紅蓮術師のゴーグル》を持ってくるデッキなんて考えたこともなかったよ。

 読者の皆さんも楽しんでくれ!

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